最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi

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第1話 祈祷士ルーク、役立たずと罵られる

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魔王討伐を目指す勇者パーティの陣営には、ピリピリとした緊張が走っていた。夜の森を淡い灯火が照らし、焚き火の赤い炎が揺らめく。その火の前に立たされているのは、一人の青年――祈祷士ルークだった。

「……もう限界だ、ルーク。お前は、明日からパーティを外れてもらう。」

静寂を破ったのは勇者アレスの声だった。金髪を風に揺らしながら、彼はまっすぐルークを見据える。その表情は冷たく、決意に満ちている。

「……どういうことだ? 俺は……皆を支えるために――」
ルークは思わず言葉を詰まらせる。彼の職業は“祈祷士”。直接戦うことはできず、仲間の加護や回復を祈ることで後方支援を担う。だが、その力が認められたことなど、一度もなかった。

「支える? ハッ、何を支えてるっていうのよ」小悪魔的な笑みを浮かべたのは、魔法使いのセリナだった。桃色の髪を翻し、冷たい声を放つ。「あなたの“祈り”なんて、何も起きてないじゃない。戦闘中、回復が遅れてるって騎士団からも苦情が来てるのよ。」

「ぼ、僕も……そう思う。ルークの祈りって、何の効果があるのか分からないし……」神官カイルが目を逸らしながら呟く。

「俺、正直お荷物だと思ってたぜ」豪放な戦士ガロスが肩をすくめる。「戦闘力もねぇし、魔法もねぇ。旅の荷物だけ増やしてどうすんだ。」

胸の奥が締めつけられた。だが、ルークは唇をかみしめ、ただうなだれるしかなかった。自分が無能なのかもしれない――そんな思いが、頭の奥から離れない。

「……分かった。俺が、出ていけばいいんだな。」

「分かってくれて助かるよ」アレスは淡々と告げる。「お前には、辺境ででも暮らしてもらった方がいい。魔王討伐の旅に、不要な足手まといは要らない。」

ルークは無言で荷包を手に取り、焚き火の前を離れた。夜風が頬を打ち、どこかでフクロウが鳴く。足取りは重く、けれど涙は流れなかった。ただ、胸の中に穴が空いたような感覚だけが残った。

***

夜明け前の森は冷たく、霧が立ち込めていた。野営を終えたパーティを見送る者は誰もいない。ルークは最後に、一度だけ振り返った。焚き火のあった場所には、もう彼の影はなかった。

「……俺、やっぱり役立たずなんだろうか。」

ぽつりとつぶやいた声が、霧に吸い込まれて消える。この半年間、仲間のために祈り続けてきた。必死に加護を願った。だが、誰一人、振り返ってはくれなかった。

歩きながら、ルークは自分の右手を見る。指先には微かな光が宿っていた。温もりのようなそれは、誰も気づかないほど小さな輝きだった。

「……これが、俺の“祈り”の力、か。」

自嘲気味に呟き、森の奥へと進む。小さな村があると聞いていた。そこで働き口を探そうと思ったのだ。だが、その途中だった。

――ギャアアアアアッ!

突然、森を切り裂く咆哮。木々が揺れ、空気が震えた。巨大な牙を持つイビルウルフが黒い影となって飛びかかってくる。

「クソッ、なんでこんな――!」

咄嗟に身を転がして避ける。だが武器はない。戦士でも魔法使いでもない祈祷士が、獣に敵うはずがない。

ルークは必死に両手を組み、祈りの言葉を紡いだ。

「……どうか、この命を……守ってくれ……!」

次の瞬間、風が吹いた。温かく、やさしい風。その風がルークの身体を包み、イビルウルフが牙を立てる直前、閃光が弾けた。

――ゴォォォッ!

一瞬で、狼の身体が白い炎に包まれ、灰となって散る。ルークは呆然と立ち尽くした。

「……な、なにが……?」

その場に、神々しい静寂が広がった。陽光が差し込み、霧が晴れていく。いつのまにか、彼の右手に黄金の紋が浮かんでいた。柔らかく輝き、まるで誰かの祝福の証のように。

(これは……祈りの、答え? 誰かが……俺の声を聞いてくれたのか?)

空を仰ぐ。風に乗って、かすかな声が耳に届いた。

――“おまえの祈りは届いている。進みなさい、我が子よ。”

驚いて周囲を見回すが、誰もいない。まるで空そのものから、声が降り注ぐようだった。

(俺の祈り……届いていたんだ。誰かに、確かに届いていた……!)

胸が熱くなった。仲間に否定され、追放され、無価値だと思っていた。それなのに、神のような存在が自分を見ていた。そう思うと、涙があふれそうになった。

「……ありがとう。」

拳を握り、立ち上がる。失ったものは多い。けれど、今この瞬間、初めて自分の力を信じられた気がした。

***

その頃、アレスたちが野営を続ける別の場所では、思いもよらぬ異変が起きていた。

「おい、セリナ! 回復魔法、早く! ガロスがっ!」

「ま、待って……! 詠唱が失敗する……!」

焦る声が響く。ガロスの腕は毒に侵され、黒ずんでいた。ルークが祈っていた頃は、傷がすぐ癒えていた。だが今は、どれだけ回復を重ねても効果が出ない。

「どうなってる!? なぜ回復が遅い!」

アレスが怒鳴ると、カイルが震える声で続けた。「た、多分……ルークが祈ってた時、僕ら……気づかないうちに恩恵を受けてたんじゃ……!」

沈黙が落ちる。轟く風の中に、焦燥と恐怖が入り交じっていた。

「まさか……まさか、あいつが……」

誰も答えなかった。だが全員が同じことを考えていた。もしルークの祈りが、本当に奇跡を起こしていたのだとしたら――。

彼らは取り返しのつかない過ちを犯していたのかもしれない。

***

ルークはその夜、小さな村の外れに辿り着いた。村の入口には、水桶を持つ少女が立っていた。栗色の髪を揺らし、柔らかく微笑む。

「旅の方ですか? お疲れのようですね。」

「ああ、少し休ませてもらえますか。」

少女はうなずいた。「もちろん。よければ、私の家へどうぞ。母が温かいスープを作ってますから。」

差し出された手が、やさしく光に包まれる。ルークの中で、何かがはっきりと変わった。

(俺は……まだ終わってない。たとえ誰も信じなくても、俺だけは信じよう。)

その想いが、彼の背後で小さく輝く光となり、夜空へと昇っていった。

(続く)
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