最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi

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第2話 勇者パーティからの追放

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夜が明けた。灰色の空が白んでゆく中、勇者アレス率いる一行は、冷たい朝靄の中を進んでいた。ルークを追放した翌朝。空気は妙に重く、誰もが口を閉ざしていた。

「……何か、静かすぎるな。」  
戦士ガロスがぼそりと呟いた。  
「森の気配も、変だ。」

「そんなの気のせいよ。」  
魔法使いセリナが苛立たしげに返す。  
しかし、その声に力はなかった。

ルークがいた時、戦闘後の疲労はすぐに癒えていた。夜の寒さも、それほど堪えなかった。彼が祈っていたせいなのかもしれない。だが今は違う。身体の芯から冷えが這い上がり、徐々に重くなる足取り。視界の端で、魔物の影がちらついても、妙な不安が残った。

「……気のせいじゃねぇかもな。」  
ガロスは剣を抜いた。その刹那、茂みの奥から黒い獣が飛び出した。  
「イビルウルフか!? またかよ!」

「ちょっと、連日の戦闘なんて聞いてないんだけど!」  
セリナの詠唱が遅れ、瞬く間に狼が迫る。その爪がガロスの腕を裂いた。  
「ぐっ……!」

血が飛び散る。アレスが剣を振り払い、狼の首を斬り落としたが、息をつく暇もなく次の群れが現れた。

「セリナ! 回復を――!」

「やってる! けど……魔法が、全然間に合わないの!」

焦る声。カイルが忌々しげに杖を振るも、輝きは弱々しかった。癒しの力が届かず、ガロスの腕からはなお血が滴る。

アレスは歯を食いしばった。「くそっ、俺たちがこんなことで手こずるなんて……!」

狼たちをなんとか退けた時、全員が泥と汗と血にまみれていた。小さな戦闘だったはずなのに、全員の消耗は異常だった。

カイルは震える声で呟く。「ねえ……やっぱり、ルークの祈りって……効果があった、んじゃないかな。」

セリナが顔をしかめた。「今さら何言ってるのよ。あいつは役立たずだったじゃない。」

「でも……あの時までは、戦闘の後、すぐに傷が治ってたし、疲れも残らなかった。それが昨日から、こんなに……」

アレスは無言だった。否定できなかったからだ。  
「……様子を見るしかない。だが、この調子では魔王討伐どころか、王都へ戻ることさえ危うい。」

彼らの胸の奥に、不安がじわじわと広がっていった。

***

その頃、追放されたルークは、小村の一角で目を覚ました。木造の屋根から透ける朝日が眩しい。昨夜助けてくれた少女の家だった。

「おはようございます。よく眠れましたか?」  
少女――リリアが湯気の立つスープを差し出した。栗色の髪が朝の光に透け、優しい微笑みが浮かぶ。

「ああ、助かったよ。本当にありがとう。」  
ルークは椅子に座り、ようやく落ち着いて朝食をとった。薄いパンと野菜のスープ。素朴だが心に染みる味だった。  
「悪いな、急に泊めてもらっちゃって。」

「気にしないでください。昨日は森から血だらけで出てきたんですもの。放っておけません。」

「……ああ、あれはイビルウルフに襲われて。でも、どういうわけか助かったんだ。」

「助かった?」  
リリアが目を瞬かせると、ルークは苦笑した。

「よく分からないんだ。ただ祈っただけなのに、あの狼が光に包まれて消えて……」

「それは……奇跡、ですね。」  
リリアの声が小さく震えた。「もしかすると、本当に神様があなたを守ったのかもしれません。」

ルークは首を傾げた。「俺の祈りなんて、今まで何の役にも立たなかったはずなのに。」

リリアはふと真剣な表情になった。「この村ではね、昔から“選ばれし祈祷士”の伝承があるんです。神々の声を聞き、祈りで奇跡を起こした人の話。」

「選ばれし祈祷士……?」

「はい。その人は“神の子”と呼ばれていました。もしあなたがその力を持っているのなら――たとえご自身が気づいていなくても、あなたを導く声があるはずです。」

ルークはリリアを見つめた。彼女の瞳はまっすぐで、嘘を感じさせない。

「……俺はただの落ちこぼれの祈祷士だよ。昨日まで、仲間に追い出されたばかりなんだ。」

「あら……そうなんですか。でも、追放されても命を救う力を持ってる人なら、落ちこぼれなんかじゃありませんよ。」  
リリアはやわらかく笑い、その笑顔にルークの胸の痛みが少し和らいだ。

その後、彼は村の手伝いをすることになった。畑仕事、井戸の修理、荷運び。どれも地味な仕事だが、村人たちは温かく迎えてくれた。

日が暮れる頃、リリアの家の前でルークは小さくため息をついた。  
(不思議だ……ここにいるだけで、心が落ち着く。)

すると、足元で子供の泣き声がした。十歳ほどの少年が、血のついた手を押さえている。  
「いたいよ……お母さん、いたい……!」

リリアが駆け寄ろうとした瞬間、ルークの身体が自然に動いた。  
「大丈夫だ、こっちを見るんだ。」

無意識に手が伸びる。指先が光を帯び、その光が少年の傷口にそっと染み込んでいった。  
眩い金の紋様が瞬いたかと思うと、傷は一瞬で塞がった。

「う……うそ……治った!」  
少年が驚き、リリアも息を呑んだ。  
「ルークさん、今のは……!」

「俺にも分からない。祈っただけだ。それだけで……」

金の輝きが消えた後も、少年の手は完全に癒えていた。何の跡も残らない。  
リリアの瞳が潤む。「これはまさに神の奇跡……あなた、本当に祈祷士なんですね。」

ルークは戸惑いながらも、小さく頷くことしかできなかった。  
(俺の祈りは、本当に神に届いている……?)

その夜。村の空に満月が昇る。ルークは一人、丘の上で星空を見上げていた。  
(仲間に裏切られたはずなのに、不思議と怒りは湧かない。ただ、この力が本物だというなら……誰かのために使いたい。)

その瞬間、再びどこかで声がした。  
――“やさしき祈りは届きました。次は、試練の地へ進みなさい。”  

風が頬を撫でた。声は確かに聞こえたが、姿はどこにもない。夜空の星々がゆっくりと輝きを増す。

(試練の地……? 一体、どこへ導こうとしているんだ。)

だが、不思議なことに恐怖はなかった。むしろ、胸の奥から静かな希望が湧き上がってくる。  
(俺はもう、足手まといじゃない。祈ることしかできなくても、その祈りで救える命があるなら――)

その声に導かれるように、ルークは決意を固めた。  
「明日……出よう。この村を出て、行き先を探そう。」

彼の瞳には、かつて失ったはずの光が戻っていた。  
その光は、夜風の中でかすかにきらめき、まるで天に昇る道標のように彼を包んだ。

(続く)
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