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Chapter.18
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忙しくてなかなか会えず、鹿乃江とはメッセでの連絡しかとっていない。鹿乃江から誘ってくることはなく、かといって紫輝から誘うにも仕事が忙しく、夜中近くにならないと時間が空かないから約束を取り付けるに至らない。
そんなある日、紫輝は呼び出されて事務所に出向く。よっぽどのことがない限り単独でチーフに呼び出されることはないため、内心不安でいっぱいだ。
デスクワークをしている社員に挨拶をすると「応接室に通してほしいって言ってましたよ」と教えられた。紫輝は礼を言って事務所の一角にある個室へ移動し、ドアをノックした。
「はーい、どうぞー」
「失礼します……」言いながらドアを開けて入室する。
「おー、来た。お疲れ様。そこ座って?」
中で待っていたチーフマネージャーの小群が、テーブルを挟んだ向かいにあるソファを手で示して着席を促した。
「お疲れ様です」
言いながらソファへ座る。
「あのー……」思い当たる用件もなく、どう切り出そうか悩む紫輝に
「なんか飲む?」小群が問いかけた。
「あ…じゃあ…お茶で」
カウンタに置かれた小型の冷蔵庫から350mlのペットボトルを取り出して、小群がソファに座りながら「ほい」と紫輝に渡す。
「ありがとうございます」受け取って礼を言う紫輝に
「突然だけど、いまお前、彼女いるの?」小群が再度問いかける。
「へ?」唐突な質問に、間抜けな声が出た。「いないっすいないっす」手を横に振る。
(好きな人はいるけど)
とは、もちろん言わない。
「ふーん」と小群はあごひげを指でさすってから「単刀直入に言うね? 再来週発売の週刊誌に、お前が載ります」話を続けた。
「え? 単独で取材受けましたっけ?」
「取材は受けてないやつです」
「へ?」
「これです」
小群はテーブル脇のマガジンラックから、既に発売されているゴシップ系写真週刊誌を机上に移した。
「えっ? あっ!?」
それにリンクして、鹿乃江の顔が浮かぶ。
「事務所としてコメント求められてんだけど、本当に彼女いない?」
「いないっす! それは本当に!」
小群は少し考えてから、かたわらに置いていたビジネスバッグからクリアファイル入りの書類を取り出した。
「もしかして、この子のこと思い浮かべた?」
二つ折りにされたA3サイズの紙には、仮組みのレイアウトと共に粒子の荒い画像が何枚か印刷されている。
「そう…っすね……」
一ヶ月ほど前、鹿乃江と食事に行った帰りのものだ。自分が被せたキャップに隠れ鹿乃江の顔がほとんど見えていないのを確認して、紫輝は内心安堵した。
「同業者じゃないみたいだし、相手の顔はわからないように加工されるけど、一応相手には事前に説明してあげるといいよ」
怒るでもなく小群が言う。
「これ…絶対載ります?」
「よほどの大事件でもなければ載るねぇ」
「良く似た赤の他人ですよー的な」
「お前コレとおんなじ服、仕事で私服公開企画やったとき使ってたじゃん」
「あ」口に手をやる。
(っていうか、その仕事帰りに会ったんだわ)
「……油断してました。すみません」
「いやまぁプライベートの話だし、犯罪でもない限りは自由にしていいと思ってるんだけどね? こっちも一応仕事だし、業務として聞いてるだけよ?」
「はい」
「ほかにも誰か一緒にいた?」
「いえ、二人だけでした」
「んー」とあごひげをさすりながら小群は考えて、「……まぁ、知人ってことでコメント出しておくよ」書類をバッグの中に仕舞った。「今日はそんだけ。悪かったね、急に呼び出して」
「いえ。お手数おかけしてすみません」
「……一応もっかい言っとくね? 知人ってことでコメント出すから」
「? はい」
「狙ってるんだったらしっかり説明なり弁明なり、ちゃんとフォローしとけよ? ってこと」
小群の言葉に、紫輝が目を大きく開く。
「反対しないんすか」
「もう大人なんだし、別にハメ外さなきゃいいよ。ファンは大変だろうけど」
「うっ」
「初スキャンダルだし」
「うぅっ」
「相手特定されないようにしばらく気をつけてやれよ? 一般の人だろ?」
「そうっすね…気をつけます……」
失礼しますと応接室を出て、同じビル内の地下駐車場で所沢と落ち合い、移動車に乗った。
数か月先に控えたツアーで販売するグッズ用の写真を撮影するためにスタジオへ向かう。途中でメンバーの自宅に寄り、ほかの三人を拾う。まずは事務所から一番近くに住んでいる後藤が乗り込んだ。
軽い挨拶をして、紫輝が車外の景色を眺め始める。
気を付けていたつもりだったのに、“まさか自分が”という気分だ。鹿乃江にも気にかけてもらっていたのに、それを無下にしてしまった。
(もういっそ付き合って公表したい)
なんてできもしないことを考える。
「はあぁー」
声でも出さなければやってられない気持ちになって、ため息を声に出して吐いた。
そんなある日、紫輝は呼び出されて事務所に出向く。よっぽどのことがない限り単独でチーフに呼び出されることはないため、内心不安でいっぱいだ。
デスクワークをしている社員に挨拶をすると「応接室に通してほしいって言ってましたよ」と教えられた。紫輝は礼を言って事務所の一角にある個室へ移動し、ドアをノックした。
「はーい、どうぞー」
「失礼します……」言いながらドアを開けて入室する。
「おー、来た。お疲れ様。そこ座って?」
中で待っていたチーフマネージャーの小群が、テーブルを挟んだ向かいにあるソファを手で示して着席を促した。
「お疲れ様です」
言いながらソファへ座る。
「あのー……」思い当たる用件もなく、どう切り出そうか悩む紫輝に
「なんか飲む?」小群が問いかけた。
「あ…じゃあ…お茶で」
カウンタに置かれた小型の冷蔵庫から350mlのペットボトルを取り出して、小群がソファに座りながら「ほい」と紫輝に渡す。
「ありがとうございます」受け取って礼を言う紫輝に
「突然だけど、いまお前、彼女いるの?」小群が再度問いかける。
「へ?」唐突な質問に、間抜けな声が出た。「いないっすいないっす」手を横に振る。
(好きな人はいるけど)
とは、もちろん言わない。
「ふーん」と小群はあごひげを指でさすってから「単刀直入に言うね? 再来週発売の週刊誌に、お前が載ります」話を続けた。
「え? 単独で取材受けましたっけ?」
「取材は受けてないやつです」
「へ?」
「これです」
小群はテーブル脇のマガジンラックから、既に発売されているゴシップ系写真週刊誌を机上に移した。
「えっ? あっ!?」
それにリンクして、鹿乃江の顔が浮かぶ。
「事務所としてコメント求められてんだけど、本当に彼女いない?」
「いないっす! それは本当に!」
小群は少し考えてから、かたわらに置いていたビジネスバッグからクリアファイル入りの書類を取り出した。
「もしかして、この子のこと思い浮かべた?」
二つ折りにされたA3サイズの紙には、仮組みのレイアウトと共に粒子の荒い画像が何枚か印刷されている。
「そう…っすね……」
一ヶ月ほど前、鹿乃江と食事に行った帰りのものだ。自分が被せたキャップに隠れ鹿乃江の顔がほとんど見えていないのを確認して、紫輝は内心安堵した。
「同業者じゃないみたいだし、相手の顔はわからないように加工されるけど、一応相手には事前に説明してあげるといいよ」
怒るでもなく小群が言う。
「これ…絶対載ります?」
「よほどの大事件でもなければ載るねぇ」
「良く似た赤の他人ですよー的な」
「お前コレとおんなじ服、仕事で私服公開企画やったとき使ってたじゃん」
「あ」口に手をやる。
(っていうか、その仕事帰りに会ったんだわ)
「……油断してました。すみません」
「いやまぁプライベートの話だし、犯罪でもない限りは自由にしていいと思ってるんだけどね? こっちも一応仕事だし、業務として聞いてるだけよ?」
「はい」
「ほかにも誰か一緒にいた?」
「いえ、二人だけでした」
「んー」とあごひげをさすりながら小群は考えて、「……まぁ、知人ってことでコメント出しておくよ」書類をバッグの中に仕舞った。「今日はそんだけ。悪かったね、急に呼び出して」
「いえ。お手数おかけしてすみません」
「……一応もっかい言っとくね? 知人ってことでコメント出すから」
「? はい」
「狙ってるんだったらしっかり説明なり弁明なり、ちゃんとフォローしとけよ? ってこと」
小群の言葉に、紫輝が目を大きく開く。
「反対しないんすか」
「もう大人なんだし、別にハメ外さなきゃいいよ。ファンは大変だろうけど」
「うっ」
「初スキャンダルだし」
「うぅっ」
「相手特定されないようにしばらく気をつけてやれよ? 一般の人だろ?」
「そうっすね…気をつけます……」
失礼しますと応接室を出て、同じビル内の地下駐車場で所沢と落ち合い、移動車に乗った。
数か月先に控えたツアーで販売するグッズ用の写真を撮影するためにスタジオへ向かう。途中でメンバーの自宅に寄り、ほかの三人を拾う。まずは事務所から一番近くに住んでいる後藤が乗り込んだ。
軽い挨拶をして、紫輝が車外の景色を眺め始める。
気を付けていたつもりだったのに、“まさか自分が”という気分だ。鹿乃江にも気にかけてもらっていたのに、それを無下にしてしまった。
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