前の野原でつぐみが鳴いた

小海音かなた

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Chapter.21

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 休日の朝、たまたま点けたテレビでワイドショーが流れている。
『さぁ。続いては、グループ初の熱愛報道です』
(ん)
 なんとなく気になって、家事の手を止めた。
 画面中央、大きなパネルに貼り出された雑誌記事に見覚えのある名前が見出しとして載っている。
「ひっ」
 思わず変な声が出た。
『人気アイドルグループ、FourQuartersのリーダー、前原紫輝さんに熱愛発覚?!』
 コーナー担当の女性アナウンサーが雑誌の見出しを読み上げる。
『フォクの愛称で知られるアイドルグループの前原紫輝さんに、初の熱愛報道です』
 雑誌から拡大コピーされたらしき紫輝と自分の写真が画面に映し出された。
「うわ……」
 紫輝から多少聞いてはいたものの、実際目の当たりにすると想像以上の動揺に襲われる。
(か、顔は…わからないよね……?)
 画面越しに見る粒子の荒い写真からは、“紫輝と一緒に、キャップを被った女性がいる”ということしかわからない。
『お相手の女性については一切情報が公開されていないみたいですねー』
『事務所のコメントですが、お相手の女性は前原さんの“知人”とのことでしたー…。さて、続いての話題です。都内の動物園で……』
 2~3分足らずの記事紹介。しかし鹿乃江に衝撃を与えるには充分な時間だった。
(あの服、しばらく封印しとこ……)
 家事を再開して考える。
 紫輝は鹿乃江に迷惑をかけると心配していた。でも、それは紫輝の杞憂に過ぎない。
(迷惑なんかじゃ、ないです)
 会おうと誘ってくれること。写真を撮られたこと。それが雑誌に掲載されてしまうこと。
 電話をしているとき言おうと思ったのに、どのタイミングで言おうかとまごまごしているうちに、紫輝に先に言われてしまった。タイミングを失ったまま、その言葉を伝えることができなかった。
「めーわくじゃないですよー」
 テーブルの上に置いたスマホに呼びかけて、ヘッと鼻で笑う。スマホに話しかけたところで、紫輝の耳に届くわけじゃない。

 紫輝からの連絡は、あの日から途絶えたままだった。

* * *
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