63 / 69
Chapter.63
しおりを挟む
会食も終わり、壁面にかけていた上着を各々が着ているとき
「つぐみのさん」後藤がソッと近付き、呼びかけた。
「はい」
「紫輝くん、マジでつぐみのさんのこと大事に想ってるんで、俺が言うのもおかしいかもですけど、あいつのこと、よろしくお願いします」
「はい。私も大事にします」
後藤は鹿乃江の答えを聞いて、ホッとしたように微笑む。
「前原さん、愛されてるんですね」
その反応を見た鹿乃江が思わず言って、後藤の表情に気付き口をつぐむ。
「そうなんですよ、愛されてるんです、紫輝くん」だから、と後藤はニヤリと笑い「男女関係なくライバル多いんで、取られないようにしてください」冗談めかして言った。
「はい。がんばります」
笑いながら答える鹿乃江と一緒に後藤も笑う。
「あー、ちょっとなになにー。仲良しじゃなーい? いいなー」
鹿乃江と後藤の間に、右嶋が割って入る。
「シキくん、カノジョとられちゃうかもよ?」
「えっ! だめだめ! オレのっ」
反対側の壁際にいた紫輝が、大股で近付いて鹿乃江を引き寄せた。唐突に位置を移動させられて、鹿乃江がキョトンとした顔になる。すぐ近くにヤキモチを妬いた紫輝の顔。思わず後藤を見ると、やはり後藤も同じようにキョトンとした顔をしている。
「信用なーい。ねっ」
左々木の言葉に、後藤と鹿乃江は顔を見合わせて、少し残念そうな顔を見せて肩をすくめた。
「えっ、違う違う! してる! 信用! 信用してます!」紫輝は後藤と鹿乃江を交互に見て、慌てて弁明する。表情がかなり必死だ。
「こういうとこっす」後藤が言った。
「わかります」
その言葉に真顔で即答した鹿乃江と、後藤が一緒に頷き合って、そして笑う。
「なんすか? えっ? なに?」突然の意気投合に紫輝が声を裏返らせて鹿乃江と後藤を見比べる。
「なんでもないよ。ねぇ」
「はい。なんでもないですよ?」
どう言えば適切なのかと言葉を探す紫輝の横で、右嶋が後藤と鹿乃江を交互に見て口を開いた。
「なんか、ごっちとつぐみのさんって、似てるよね」
「えっ」
「そうですか?」
後藤と鹿乃江が意外そうな顔を見せるが
「あー、雰囲気ね。わかる」
左々木が右嶋に同意して、後藤と鹿乃江を遠巻きに見る。
「一緒にいて落ち着く感じとか、ちょっと離れて優しく見守る感じとか」
「ね」
「うん」
「え、ちょっとやめてよ。二人とも俺のことそんな風に見てたの?」
引き気味に問う後藤に、
「うん」
左々木、右嶋に加え、紫輝まで同調した。
「わぁー、やだぁー、やめてぇー?」
後藤は自分で自分の体を抱いて、両の腕をさする。
「帰ろー。もう帰ろー」
そのままの体勢で小さく首を横に振りながら出口へ移動した。
後藤に続いてフォクの三人が出口へ向かう。その少しあとから鹿乃江。
人がいないのを確認して、ホールで一緒にエレベーターの到着を待つ。仕事の話はせず日常会話を楽しんでいるフォクは、普通の親友同士のようだ。
「つぐみのさん」後藤がソッと近付き、呼びかけた。
「はい」
「紫輝くん、マジでつぐみのさんのこと大事に想ってるんで、俺が言うのもおかしいかもですけど、あいつのこと、よろしくお願いします」
「はい。私も大事にします」
後藤は鹿乃江の答えを聞いて、ホッとしたように微笑む。
「前原さん、愛されてるんですね」
その反応を見た鹿乃江が思わず言って、後藤の表情に気付き口をつぐむ。
「そうなんですよ、愛されてるんです、紫輝くん」だから、と後藤はニヤリと笑い「男女関係なくライバル多いんで、取られないようにしてください」冗談めかして言った。
「はい。がんばります」
笑いながら答える鹿乃江と一緒に後藤も笑う。
「あー、ちょっとなになにー。仲良しじゃなーい? いいなー」
鹿乃江と後藤の間に、右嶋が割って入る。
「シキくん、カノジョとられちゃうかもよ?」
「えっ! だめだめ! オレのっ」
反対側の壁際にいた紫輝が、大股で近付いて鹿乃江を引き寄せた。唐突に位置を移動させられて、鹿乃江がキョトンとした顔になる。すぐ近くにヤキモチを妬いた紫輝の顔。思わず後藤を見ると、やはり後藤も同じようにキョトンとした顔をしている。
「信用なーい。ねっ」
左々木の言葉に、後藤と鹿乃江は顔を見合わせて、少し残念そうな顔を見せて肩をすくめた。
「えっ、違う違う! してる! 信用! 信用してます!」紫輝は後藤と鹿乃江を交互に見て、慌てて弁明する。表情がかなり必死だ。
「こういうとこっす」後藤が言った。
「わかります」
その言葉に真顔で即答した鹿乃江と、後藤が一緒に頷き合って、そして笑う。
「なんすか? えっ? なに?」突然の意気投合に紫輝が声を裏返らせて鹿乃江と後藤を見比べる。
「なんでもないよ。ねぇ」
「はい。なんでもないですよ?」
どう言えば適切なのかと言葉を探す紫輝の横で、右嶋が後藤と鹿乃江を交互に見て口を開いた。
「なんか、ごっちとつぐみのさんって、似てるよね」
「えっ」
「そうですか?」
後藤と鹿乃江が意外そうな顔を見せるが
「あー、雰囲気ね。わかる」
左々木が右嶋に同意して、後藤と鹿乃江を遠巻きに見る。
「一緒にいて落ち着く感じとか、ちょっと離れて優しく見守る感じとか」
「ね」
「うん」
「え、ちょっとやめてよ。二人とも俺のことそんな風に見てたの?」
引き気味に問う後藤に、
「うん」
左々木、右嶋に加え、紫輝まで同調した。
「わぁー、やだぁー、やめてぇー?」
後藤は自分で自分の体を抱いて、両の腕をさする。
「帰ろー。もう帰ろー」
そのままの体勢で小さく首を横に振りながら出口へ移動した。
後藤に続いてフォクの三人が出口へ向かう。その少しあとから鹿乃江。
人がいないのを確認して、ホールで一緒にエレベーターの到着を待つ。仕事の話はせず日常会話を楽しんでいるフォクは、普通の親友同士のようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる