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8/5『ハコの中身はなんだろな』
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玄関先に謎の箱が置かれていた。通販した記憶はないけど、僕宛の伝票が貼られている。
家に入って外装のビニールを剥がし、箱の開け口を探していたら『シュポポポポン!』と音を立てて箱の中から何かが出て来た。
ビックリして落とした箱は、くるんと一回転して床に着地。
『ふう、ようやく着いた』
そして喋った。
口を開けてぽかんと見つめる僕に、箱が気づく。
『こんにちは! キミがムサシノ・アツオミくん?』
「そ、そうですけど……」
『ボク、箱型ロボットのハコ太! 初めまして!』
「初めまして……え? なんですか? なんかのキャンペーン?」
『忘れちゃってても無理ないよ。だって、キミがボクを生んでくれたのは二十年も前のことだから』
「二十年……あっ! もしかして、コンテストの⁈」
『そう! 覚えててくれたんだね!』
「うん、そういうので受賞したのそれ一回だけだし、忘れてたけど覚えてるよ」
『忘れてたのに覚えてるの? 人間って面白いね』
正方形で薄型の箱の、おそらく蓋になるだろう部分に表示された顔が笑う。持った感じ段ボール箱だったけど、ちゃんとロボットなんだと感激した。
それは僕が小学生の頃、遠足で行った【未来のロボット展】で応募した『みんなで考える“未来のロボット”コンテスト』の受賞作だった。
思いつかなかったとかやっつけで描いたとかじゃなくて、本当にこんな形のロボットがいたら可愛いな、と思って描いた【正方形の箱から四本の手足が生えてるロボット】。クラスメイトには散々バカにされたし、親にも適当に描いたねって笑われたけど、審査員の有識者は理解してくれたみたいで、なんと特別賞に輝いたのだ。
絵を描くための応募用紙の裏面、白紙部分にサイズとか性能とか役割とかその他諸々の細かくて読むのも嫌になるくらいの設定を書いたのもポイントが高かったみたい。審査員の一人も寸評でその情熱を褒めてくれていた。
立体化するとこんな感じなんだ……と感慨にふけって、ふと我に返る。
「でもどうして……」
『特別賞の副賞、覚えてない?』
「……覚えてない」
自分のアイデアが大人に認められたことが嬉しくて、正直その辺はあまり眼中になかった。
『そっか。ほら、これ』
ハコ太がクルッと背中を向けた。一面にウェブサイトが表示されている。上部に大きく『みんなで考える“未来のロボット”コンテスト』のロゴがあった。
「持ってもいい?」
『もちろん』
ハコ太を持ち上げ、ソファへ座る。
『操作方法はタブレットと一緒だよ』
「なるほど」
モニターに触れて操作をしたら、僕の名前とハコ太のイラストが出てきた。
その下に小さく【副賞:応募内容に応じた実物のロボット(技術の発達に応じて作成/引き渡し時期未定)】と書かれていた。
「へぇ、そうだったんだ」
『キミの作品が素晴らしくて緻密だったから、開発に二十年かかっちゃったんだって』
「えぇ、すごい。にしてもよく住所わかったね」
『登録されてる住所に定期的に手紙を出してたんだ。キミが転居したら教えてね、って。多分、親御さんが送ってくれてたんじゃないかな』
「そうなんだ、ありがたい」
『どうかな、ボク……』
「めっちゃサイコウ! これからよろしくね、ハコ太」
背中の画面が消えたのを確認してハコ太を裏返したら、ハコ太は嬉しそうに笑っていた。
身体に対して手足が短くて不便そうだなと感じたけど、手足はフレキシブル三脚なんかで使われている、ゴム管の中にアルミ芯が入っている部材が使われており、伸縮可能で問題ないそうだ。
『キミが書いた【説明書】に載ってたはずだよ』
「そうだっけ。そこまで覚えてないや……」
『じゃあいま背中に表示するね』
「ありがとう」
『はーい』
ハコ太はテーブルの上に正座して、背中を僕に見せてくれた。
子供の頃の夢と欲望がギッチリ詰まった手書きの説明書は、部分的に赤文字で注釈が入れられている。
「ねぇ、この【実装できたらお知らせします】っていうのは……」
『ボクのOSはたまに更新されるんだけど、その最新のOSに順次組み込む、って博士が』
「博士」
身近ではあまり聞かない役職にワクワクする。
『あ。キミが思ってるような“博士”じゃないよ。って言っておいてって言ってた』
「そうなんだ。会ってみたいなー、博士」
『たまにアンケート送るって言ってたから、良かったら協力してあげてね』
「するする。ハコ太の生みの親でしょ? お礼しないと」
『えへへ、ありがと』
「こちらこそ」
ハコ太は防水加工されていて、家事全般が得意。
ゴム鞠みたいな手で器用に物を掴んだりしてて、昔視ていたアニメのナントカ助とかナンチャラえもんみたい。
遊び相手にもなってくれて、思いがけず旧友と再会したみたいで、ちょっとくすぐったい気持ちだ。
家に入って外装のビニールを剥がし、箱の開け口を探していたら『シュポポポポン!』と音を立てて箱の中から何かが出て来た。
ビックリして落とした箱は、くるんと一回転して床に着地。
『ふう、ようやく着いた』
そして喋った。
口を開けてぽかんと見つめる僕に、箱が気づく。
『こんにちは! キミがムサシノ・アツオミくん?』
「そ、そうですけど……」
『ボク、箱型ロボットのハコ太! 初めまして!』
「初めまして……え? なんですか? なんかのキャンペーン?」
『忘れちゃってても無理ないよ。だって、キミがボクを生んでくれたのは二十年も前のことだから』
「二十年……あっ! もしかして、コンテストの⁈」
『そう! 覚えててくれたんだね!』
「うん、そういうので受賞したのそれ一回だけだし、忘れてたけど覚えてるよ」
『忘れてたのに覚えてるの? 人間って面白いね』
正方形で薄型の箱の、おそらく蓋になるだろう部分に表示された顔が笑う。持った感じ段ボール箱だったけど、ちゃんとロボットなんだと感激した。
それは僕が小学生の頃、遠足で行った【未来のロボット展】で応募した『みんなで考える“未来のロボット”コンテスト』の受賞作だった。
思いつかなかったとかやっつけで描いたとかじゃなくて、本当にこんな形のロボットがいたら可愛いな、と思って描いた【正方形の箱から四本の手足が生えてるロボット】。クラスメイトには散々バカにされたし、親にも適当に描いたねって笑われたけど、審査員の有識者は理解してくれたみたいで、なんと特別賞に輝いたのだ。
絵を描くための応募用紙の裏面、白紙部分にサイズとか性能とか役割とかその他諸々の細かくて読むのも嫌になるくらいの設定を書いたのもポイントが高かったみたい。審査員の一人も寸評でその情熱を褒めてくれていた。
立体化するとこんな感じなんだ……と感慨にふけって、ふと我に返る。
「でもどうして……」
『特別賞の副賞、覚えてない?』
「……覚えてない」
自分のアイデアが大人に認められたことが嬉しくて、正直その辺はあまり眼中になかった。
『そっか。ほら、これ』
ハコ太がクルッと背中を向けた。一面にウェブサイトが表示されている。上部に大きく『みんなで考える“未来のロボット”コンテスト』のロゴがあった。
「持ってもいい?」
『もちろん』
ハコ太を持ち上げ、ソファへ座る。
『操作方法はタブレットと一緒だよ』
「なるほど」
モニターに触れて操作をしたら、僕の名前とハコ太のイラストが出てきた。
その下に小さく【副賞:応募内容に応じた実物のロボット(技術の発達に応じて作成/引き渡し時期未定)】と書かれていた。
「へぇ、そうだったんだ」
『キミの作品が素晴らしくて緻密だったから、開発に二十年かかっちゃったんだって』
「えぇ、すごい。にしてもよく住所わかったね」
『登録されてる住所に定期的に手紙を出してたんだ。キミが転居したら教えてね、って。多分、親御さんが送ってくれてたんじゃないかな』
「そうなんだ、ありがたい」
『どうかな、ボク……』
「めっちゃサイコウ! これからよろしくね、ハコ太」
背中の画面が消えたのを確認してハコ太を裏返したら、ハコ太は嬉しそうに笑っていた。
身体に対して手足が短くて不便そうだなと感じたけど、手足はフレキシブル三脚なんかで使われている、ゴム管の中にアルミ芯が入っている部材が使われており、伸縮可能で問題ないそうだ。
『キミが書いた【説明書】に載ってたはずだよ』
「そうだっけ。そこまで覚えてないや……」
『じゃあいま背中に表示するね』
「ありがとう」
『はーい』
ハコ太はテーブルの上に正座して、背中を僕に見せてくれた。
子供の頃の夢と欲望がギッチリ詰まった手書きの説明書は、部分的に赤文字で注釈が入れられている。
「ねぇ、この【実装できたらお知らせします】っていうのは……」
『ボクのOSはたまに更新されるんだけど、その最新のOSに順次組み込む、って博士が』
「博士」
身近ではあまり聞かない役職にワクワクする。
『あ。キミが思ってるような“博士”じゃないよ。って言っておいてって言ってた』
「そうなんだ。会ってみたいなー、博士」
『たまにアンケート送るって言ってたから、良かったら協力してあげてね』
「するする。ハコ太の生みの親でしょ? お礼しないと」
『えへへ、ありがと』
「こちらこそ」
ハコ太は防水加工されていて、家事全般が得意。
ゴム鞠みたいな手で器用に物を掴んだりしてて、昔視ていたアニメのナントカ助とかナンチャラえもんみたい。
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