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怒鳴り込み
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「残念じゃのう」
昨夜、寝る前から降り始めた雨は翌朝になっても止むことはなく、時計はそろそろ昼を指そうとしているのに空はどんどん暗くなる。
「雷様が起こっておるぞ」
「雷の原理を知らないのか?」
「お前様はロマンがないのう」
やれやれと呆れように首を振るユズリハの顔はいつ見ても腹が立つのだが、ハロルドはこの家をもはや自分の家と化しているため帰ろうとはしない。
自分の部屋に帰ったのはいつだったかと一カ月前の記憶を遡ってもその記憶は出てこない。
雨は珍しいものではないが、雷雨は珍しい。
ハロルド自身、まだ遠い雷の音を聞いたのはそれこそいつだったかと思い出せないほど昔のこと。
「父上たちは大丈夫かのう……」
「国が違うから和の国は雨じゃないと思うぞ」
「わからぬではないか。お前様は和の国まで覗き見れる望遠鏡でも持っておるのか?」
「持ってない」
「ならわからぬであろうが」
シキを見てユズリハを指差すとシキは頭の横で人差し指をくるくると回してから手を開いた。
「見えておるぞ」
「おっと、鍋が吹きこぼれる前に火を止めないとな」
台所へと逃げていくシキの背中を睨みつけるもすぐに空へと顔を向ける。
「ジジ様は金をかけてくれたものじゃな。わらわの家にはこのような窓はなかったぞ」
いつもは開放的な縁側にはウォルター個人の判断でつけられたガラス製の雨戸が設置されていた。そのおかげで縁側が濡れることはなく、問題なく歩けるし庭も眺められる。
屋根はあっても風が強く吹けば雨が吹き込む。濡れるから出るなと言われた雨の日はひどく退屈で大嫌いだった。
ウォルターの配慮のおかげで雨の日でも縁側に出て庭を眺められる設備は父親にも教えたいと思うほどだが、雨であることは変わらないため気分は上がらない。
「雨は嫌いか?」
「好きという者がおるのか?」
「僕は嫌いじゃない」
「わらわ、雨を好きと豪語する奴は自己陶酔型じゃと思うておる」
「偏見がひどいぞ」
「当たらずも遠からずじゃろう?」
「当たってない」
努力をしてきた部分は自分を認めているが、ナルシストではないと否定するハロルドにユズリハがニヤつきを見せる。その顔がまた腹が立つと持っていたペンを置いて立ち上がり、ユズリハの後ろに立つ。
「な、なぜ後ろに立つ!?」
「別に理由はないけど」
「わらわは後ろに立たれるのが嫌いじゃ!」
「焦ることないだろ」
「わ、わらわが嫌と言うておるのじゃから後ろに立つでない!」
最近、ハロルドは積極的にスキンシップを仕掛けることを心掛けているのだが、その度にユズリハが警戒する。
振り返ってそれ以上近付くなと野良猫のような警戒を見せる姿に今度はハロルドがニヤつく。
少し触れるだけで赤くなるスキンシップに慣れていないユズリハの純な部分が見たいハロルドにユズリハは警戒を解かない。
「和の国では妻が夫を邪険に扱うのは普通か?」
「この国では夫が妻の嫌がることをするのは普通か?」
口達者なユズリハがガラス戸を背にファイティングポーズを取るもハロルドには猫が爪を出して構えているようにしか見えず、そのままガラス戸に両手をついてユズリハの逃げ道をなくす。
「な、なんなのじゃ! 最近のお前様は変じゃぞ!」
「変、ねぇ。夫婦としては普通のスキンシップだと思うけど?」
「ふ、夫婦と言えど我らは仮の──」
「なんだ?」
門のほうで聞こえた馬の嘶き。よほどの急用でもない限り、雨の日に馬車を飛ばす者は少ない。
それが馬が嘶くほど強く止めた馬鹿は誰だと二人が同時に玄関へと向かうと大きな声が聞こえてきた。
「ウォルター・ヘインズ伯爵! 貴殿に話がある!!」
まだ雷鳴は遠いのに、その声が落雷でも起こしたのかと思うほど大きく、ハロルドを不快にさせる。
「雨の日はあまり良いことが起こらぬ」
「そうだな」
互いに雨の日に良い思い出はなく、暴君ウォルター・ヘインズに噛みつこうとする輩が誰なのか玄関からではよく見えない。
「なんの用か聞いてくる」
靴を履こうとするハロルドの肩を掴んだユズリハを見上げると声がするほうを見つめている。
今日は風が強くないからか、暑かろうと寒かろうと雨だろうと雪だろうと関係なく窓を開放しているウォルターにはこの声が届いているだろう。
もうすぐ出てくるはずだと止めた。
「嫌な予感がする」
「嫌な予感?」
男の声は聞いたことがない。だが、妙に胸がザワつく。焦って出した声ではなく怒って出している怒鳴り声。
怒鳴られるのが苦手なせいかと思い込もうとするが、先日のアーリーンとのことがあっただけにユズリハの中で不安が込み上げる。
「雨の日に大声を出すな。ただでさえ鬱陶しい一日が更に鬱陶しくなる」
出てきたウォルターがドンッと杖をついて言葉のとおり、鬱陶しそうに声を出す。
「アーリーンの件で来た! 意味はわかるな!?」
「アーリーンの父親か! やっぱり僕が行かないと!」
「ジジ様が同席を許すと思うのか?」
「それは……」
大人の問題は大人が片付ける。子供は出しゃばるなと言われたことがある。
今回のことは自分のいい加減さが招いたことであるためコールマン伯爵に説明責任があると思ってはいるが、ユズリハの予想どおりの結果が容易に想像がついてしまう。
靴に入れた爪先を抜いて不安げに眺めていると顎を動かしたウォルターに従ってアーリーンの父親がヘインズ邸に入っていった。
「貴殿の孫にうちのアーリーンが傷つけられたのはご存知か!?」
「アントニオ・コールマン、声を落とせ。俺はそこまで耳が遠いわけではない。普通に話していても聞こえるんだ」
「私は怒っているんだ! 大事な大事な一人娘が傷つけられて毎日泣いている! 貴殿の教育不足のせいでな! なぜ私の可愛いアーリーンが薄汚く卑しい和女に負けるのか理解できん!」
「窓を閉めろ。ユズリハに聞こえる」
慌てて全ての窓を閉めに走る使用人たち。玄関に立ったままのユズリハたちからもその光景はよく見えた。
窓辺に寄ったウォルターと窓越しに目が合うと声は聞こえなかったが、閉めろとジェスチャーしているのがわかり、ハロルドは玄関の戸を閉めた。
「聞かせればいいだろう!!」
耳の近くで話されれば確実に鼓膜が破れるだろう声量に鼓膜が震えるのを感じながらもウィルターはすぐに言葉を返さず、口を開いたのは開けていた窓が全て閉まりきったあと。
「お前の娘が泣いているのは俺の孫のせいだと?」
「そうだ!! 貴殿の教育不足のせいで私の可愛い娘は傷ついているんだ!!」
「恋が成就せずに泣くぐらいあるだろう」
「貴殿がそのような考え方だから孫は紳士に育たなかったんだ!!」
部屋に響き渡る大声にウォルターが窓の代わりにドアを開けるよう手で指示する。
息子夫婦と長男夫婦はいるが、ハロルドとユズリハがいなければそれでいい。二人に聴かせるにはアントニオはあまりにも感情的になりすぎている。
「アーリーンに好意を寄せておきながら物珍しさから和女に興味を持ったらアーリーンを傷つけるとは紳士どころか男の風上にも置けん奴だ!! どんな育て方をしたらあんな非道な人間に育つのか不思議で仕方ない!!」
「座ったらどうだ?」
部屋の真ん中に設置してあるソファーの後ろに仁王立ちするアントニオに着席を促すと巨体が勢いよくソファーに腰掛けた。壊れるのではないかと思わせる木が軋む音に値段を知っている使用人がヒヤヒヤする。
その向かいに静かに腰掛けたウォルターの表情に当然焦りはない。
ウォルター・ヘインズの焦った顔を見たことがある者は一人もいない。何があろうといつも冷静沈着。そして口を開けば冷酷なことを口にすることも多いため、いつも携行している杖は仕込み杖なのではないかと噂も立つほど。
アントニオもその噂を知らないわけではないが、ヘインズ邸に赴くことは家族に伝えてきたためそこまで心配していない。今はその心配よりもウォルターの孫であるハロルドに腹を立てている感情が勝っている。
「孫が私の娘にした悪逆非道な行為をどうお考えか!?」
お茶の準備をすべきか迷っている使用人に部屋から出るよう指示すれば、こっちを見ろと言わんばかりにテーブルを叩いて怒鳴りつける。
ウォルターはこういう野蛮的な人間が反吐が出るほど嫌悪している。ダイゴロウも一歩間違えれば野蛮人と化すが、彼はいつも笑顔でいるため思い出すだけで笑顔になれる。人を思い遣って笑顔にする豪快な男。アントニオとは似ても似つかない。だから怒鳴り散らして唾を飛ばすことしか知らないアントニオの前で首を傾けた。
「俺の孫がお前の娘を傷物にしたのか?」
「心を傷つけたんだ!」
「フラれただけだろう」
「髪飾りを贈っておきながら気がなかったとでも言うつもりか!?」
ハロルドが髪飾りを贈ったことは初めて知ったため心の中でハロルドに馬鹿者と叱るも表情は崩さない。
「気が変わることは珍しいことじゃない。恋愛中にはよくあることだ」
「それで済ませようというのか!? アーリーンは毎日泣いているんだぞ!! 部屋から一歩も出られないぐらいにな!!」
「失恋すれば誰でもそうなる。時間が解決してくれることだ、様子を見ておいてやれ。そしてハロルドのことなど忘れるほどイイ男との縁談を取り付けてやるんだな」
悪びれる素振りさえ見せないウォルターにアントニオの顔が怒りで赤くなる。
娘の泣く声が耳について離れない。もうおしまいだと悲鳴にも似た泣き叫びを思い出すだけで胸が痛くなる。
大事に育ててきた可愛い一人娘は心に深い傷を負ったのに、傷を負わせたほうは詫びることもしないのかと拳を震わせる。
「なんだその言い草は!! 貴殿の孫は婚約者がいながらアーリーンに言い寄ったんだぞ!! 不埒な男だ!!」
杖をソファーに立てかけたウォルターはそのまま目の前のローテーブルに足を乗せて足先だけを組む。腹の上で両手を組みながらアントニオの言葉に嘲笑を向けた。
「お前の娘はその婚約者に別れを迫ったと聞いたが?」
ダイゴロウとの約束を守るべく、ユズリハの生活にもユズリハの精神状態にも問題が出ないようシキに何かあればすぐに報告するよう言っていた。だからあの日のことは全てウォルターの耳に入っている。
アントニオはそんな話は聞いていないため眉を寄せながらも口を閉じていた。
「俺の孫はお前の娘に髪飾りを贈る以外に何かしたのか? 好きだと言ったのか? キスをしたか? 馬車の中で処女を奪ったのか?」
「そんなわけないだろ!! アーリーンは不埒な娘ではない!!」
「それならただの心変わりだ。弄んだわけじゃない。俺の孫はお前の娘に少し気があった瞬間があった。それだけだろう」
「それだけだと……?」
「婚約の約束をしていない以上は本人同士の問題だ。想いを伝え合うわけでも深い仲だったわけでもない。傷つけられたと親が出張るのは少し異常だと思うがな?」
「大事な一人娘を──」
異常と言われてカッとなったアントニオが声を上げようとするのを顔の前まで手を上げることで遮る。
「それは何度も聞いた。馬鹿の一つ覚えを何度も繰り返すな、煩わしい」
「なんだと!?」
組んだ爪先を左右に揺らすそれがウォルターの感情なのだろうが、どの感情かわからないだけに気になって視線を向けてしまう。
腹は立つが、ウォルター・ヘインズは警戒しなければならない男。
怒りの中に見える迷いを感じ取ったウォルターがハッとあからさまな嘲笑を放つ。
「お前の娘は親の背中を見て育っているんだな。人の家に押しかけて怒鳴る父親。馬車に連れ込んで怒鳴る娘。謝罪を求める父親。別れを求める娘。自分は正しいと思い込んでいるところも、性根が卑しいところもよく似ている」
「アーリーンを侮辱するな!! 私の娘を知らないだろう!!」
「お前のような男の娘がどういう醜悪な女かなど知りたくもない」
怒りで握りしめる拳からは今にも血が吹き出しそうなほど真っ赤になり、抑えきれないほど震わせる拳がウォルターの足が乗るテーブルへと振り下ろされるも寸前で止まる。
顔を上げたアントニオの顔には汗が滲んでいるが、どこか勝ち誇ったような表情が見えた。
「貴殿の孫は自分の愚かな行いをすぐ後悔することだろう。醜悪な和女に興味を示した瞬間があったがばかりにアーリーンを逃してしまったんだからな」
「頭の悪い父親に育てられた娘と縁がなかったぐらいで俺の孫は後悔などせん」
「大体、卑しさの象徴である和の国の人間を我が国に入れること自体──ッ!」
一瞬のことだった。それ以上の発言は許さないと言わんばかりに喉元に突きつけられた杖の先が軽くアントニオの喉を押す。
さっきまでソファーに立てかけられていたはずの杖をいつの間に取って振ったのかと混乱にアントニオの動きが停止する。
「俺を怒らせるなよ、アントニオ・コールマン」
見開かれた目と氷のように冷たい声に心臓が掴まれているような感覚に陥る。
「そんなに娘が大事なら傷がつかんように家に縛りつけておけばいいだろう。期待させたほうが悪いのか? 期待したほうが悪いのか? 恋をすれば失恋があるのは当然だ。そこにどんな贈り物があろうとな」
「だ、だが、アーリーンは純粋で……」
「言っておくが、お前の娘が俺の孫の心を捉えられなかっただけだ。それを傷つけられたなどとみっともなく喚くな」
トンッと軽く喉を押し離した杖の先が床に着地する。ゲホッゲホッと咽せ返るアントニオが首を押さえて必死にならなくてもいい呼吸を必死に繰り返しながら立ち上がった。
殺されるのではないかと思った。喉を突かれて死ぬ自分がイメージできた。あれは人殺しの目だとアントニオの直感が告げている。
この残虐性を知っているから、だから誰もウォルター・ヘインズには逆らわないのだと確信したアントニオはそのままソファーの後ろに立って距離を取った。
「上手くいかなくて当然。叶わなくて当然。それが人生だと教えてやれ。そのことをお前が今知ったのであれば娘と共に学習しろ」
「和女なんかと……」
今度は距離がある。言われっぱなしでたまるかと言い返そうとしたものの、言葉が止まった。ウォルターの目つきが変わったのだ。
ウォルター・ヘインズが和の国好きなことは有名だが、ここまで傾いているとは思っていなかった。
目だけで人の心臓を掴める男。自慢の巨体を、自分の身体なのに自由に動かせなくなったアントニオの頬を汗が伝う。
「その先を口にすることは俺に喧嘩を売るということになると言っておいてやる」
「ッ! ま、孫に言っておけ!! 二度とアーリーンに近付くなとな!!」
逃げるように去っていくアントニオの大きな背中にウォルターの上機嫌な声がぶつかる。
「お前の娘にも同じことを言っておけ!」
テーブルも壊れなかった。窓も壊れなかった。ソファーが破れなかった。そのことに安堵しながらもテーブルに傷はないかと確認しに入ってきた使用人たちに「お前たちは働き者だな」と声をかけるウォルターは嘘のように晴れやかな笑顔を見せた。
昨夜、寝る前から降り始めた雨は翌朝になっても止むことはなく、時計はそろそろ昼を指そうとしているのに空はどんどん暗くなる。
「雷様が起こっておるぞ」
「雷の原理を知らないのか?」
「お前様はロマンがないのう」
やれやれと呆れように首を振るユズリハの顔はいつ見ても腹が立つのだが、ハロルドはこの家をもはや自分の家と化しているため帰ろうとはしない。
自分の部屋に帰ったのはいつだったかと一カ月前の記憶を遡ってもその記憶は出てこない。
雨は珍しいものではないが、雷雨は珍しい。
ハロルド自身、まだ遠い雷の音を聞いたのはそれこそいつだったかと思い出せないほど昔のこと。
「父上たちは大丈夫かのう……」
「国が違うから和の国は雨じゃないと思うぞ」
「わからぬではないか。お前様は和の国まで覗き見れる望遠鏡でも持っておるのか?」
「持ってない」
「ならわからぬであろうが」
シキを見てユズリハを指差すとシキは頭の横で人差し指をくるくると回してから手を開いた。
「見えておるぞ」
「おっと、鍋が吹きこぼれる前に火を止めないとな」
台所へと逃げていくシキの背中を睨みつけるもすぐに空へと顔を向ける。
「ジジ様は金をかけてくれたものじゃな。わらわの家にはこのような窓はなかったぞ」
いつもは開放的な縁側にはウォルター個人の判断でつけられたガラス製の雨戸が設置されていた。そのおかげで縁側が濡れることはなく、問題なく歩けるし庭も眺められる。
屋根はあっても風が強く吹けば雨が吹き込む。濡れるから出るなと言われた雨の日はひどく退屈で大嫌いだった。
ウォルターの配慮のおかげで雨の日でも縁側に出て庭を眺められる設備は父親にも教えたいと思うほどだが、雨であることは変わらないため気分は上がらない。
「雨は嫌いか?」
「好きという者がおるのか?」
「僕は嫌いじゃない」
「わらわ、雨を好きと豪語する奴は自己陶酔型じゃと思うておる」
「偏見がひどいぞ」
「当たらずも遠からずじゃろう?」
「当たってない」
努力をしてきた部分は自分を認めているが、ナルシストではないと否定するハロルドにユズリハがニヤつきを見せる。その顔がまた腹が立つと持っていたペンを置いて立ち上がり、ユズリハの後ろに立つ。
「な、なぜ後ろに立つ!?」
「別に理由はないけど」
「わらわは後ろに立たれるのが嫌いじゃ!」
「焦ることないだろ」
「わ、わらわが嫌と言うておるのじゃから後ろに立つでない!」
最近、ハロルドは積極的にスキンシップを仕掛けることを心掛けているのだが、その度にユズリハが警戒する。
振り返ってそれ以上近付くなと野良猫のような警戒を見せる姿に今度はハロルドがニヤつく。
少し触れるだけで赤くなるスキンシップに慣れていないユズリハの純な部分が見たいハロルドにユズリハは警戒を解かない。
「和の国では妻が夫を邪険に扱うのは普通か?」
「この国では夫が妻の嫌がることをするのは普通か?」
口達者なユズリハがガラス戸を背にファイティングポーズを取るもハロルドには猫が爪を出して構えているようにしか見えず、そのままガラス戸に両手をついてユズリハの逃げ道をなくす。
「な、なんなのじゃ! 最近のお前様は変じゃぞ!」
「変、ねぇ。夫婦としては普通のスキンシップだと思うけど?」
「ふ、夫婦と言えど我らは仮の──」
「なんだ?」
門のほうで聞こえた馬の嘶き。よほどの急用でもない限り、雨の日に馬車を飛ばす者は少ない。
それが馬が嘶くほど強く止めた馬鹿は誰だと二人が同時に玄関へと向かうと大きな声が聞こえてきた。
「ウォルター・ヘインズ伯爵! 貴殿に話がある!!」
まだ雷鳴は遠いのに、その声が落雷でも起こしたのかと思うほど大きく、ハロルドを不快にさせる。
「雨の日はあまり良いことが起こらぬ」
「そうだな」
互いに雨の日に良い思い出はなく、暴君ウォルター・ヘインズに噛みつこうとする輩が誰なのか玄関からではよく見えない。
「なんの用か聞いてくる」
靴を履こうとするハロルドの肩を掴んだユズリハを見上げると声がするほうを見つめている。
今日は風が強くないからか、暑かろうと寒かろうと雨だろうと雪だろうと関係なく窓を開放しているウォルターにはこの声が届いているだろう。
もうすぐ出てくるはずだと止めた。
「嫌な予感がする」
「嫌な予感?」
男の声は聞いたことがない。だが、妙に胸がザワつく。焦って出した声ではなく怒って出している怒鳴り声。
怒鳴られるのが苦手なせいかと思い込もうとするが、先日のアーリーンとのことがあっただけにユズリハの中で不安が込み上げる。
「雨の日に大声を出すな。ただでさえ鬱陶しい一日が更に鬱陶しくなる」
出てきたウォルターがドンッと杖をついて言葉のとおり、鬱陶しそうに声を出す。
「アーリーンの件で来た! 意味はわかるな!?」
「アーリーンの父親か! やっぱり僕が行かないと!」
「ジジ様が同席を許すと思うのか?」
「それは……」
大人の問題は大人が片付ける。子供は出しゃばるなと言われたことがある。
今回のことは自分のいい加減さが招いたことであるためコールマン伯爵に説明責任があると思ってはいるが、ユズリハの予想どおりの結果が容易に想像がついてしまう。
靴に入れた爪先を抜いて不安げに眺めていると顎を動かしたウォルターに従ってアーリーンの父親がヘインズ邸に入っていった。
「貴殿の孫にうちのアーリーンが傷つけられたのはご存知か!?」
「アントニオ・コールマン、声を落とせ。俺はそこまで耳が遠いわけではない。普通に話していても聞こえるんだ」
「私は怒っているんだ! 大事な大事な一人娘が傷つけられて毎日泣いている! 貴殿の教育不足のせいでな! なぜ私の可愛いアーリーンが薄汚く卑しい和女に負けるのか理解できん!」
「窓を閉めろ。ユズリハに聞こえる」
慌てて全ての窓を閉めに走る使用人たち。玄関に立ったままのユズリハたちからもその光景はよく見えた。
窓辺に寄ったウォルターと窓越しに目が合うと声は聞こえなかったが、閉めろとジェスチャーしているのがわかり、ハロルドは玄関の戸を閉めた。
「聞かせればいいだろう!!」
耳の近くで話されれば確実に鼓膜が破れるだろう声量に鼓膜が震えるのを感じながらもウィルターはすぐに言葉を返さず、口を開いたのは開けていた窓が全て閉まりきったあと。
「お前の娘が泣いているのは俺の孫のせいだと?」
「そうだ!! 貴殿の教育不足のせいで私の可愛い娘は傷ついているんだ!!」
「恋が成就せずに泣くぐらいあるだろう」
「貴殿がそのような考え方だから孫は紳士に育たなかったんだ!!」
部屋に響き渡る大声にウォルターが窓の代わりにドアを開けるよう手で指示する。
息子夫婦と長男夫婦はいるが、ハロルドとユズリハがいなければそれでいい。二人に聴かせるにはアントニオはあまりにも感情的になりすぎている。
「アーリーンに好意を寄せておきながら物珍しさから和女に興味を持ったらアーリーンを傷つけるとは紳士どころか男の風上にも置けん奴だ!! どんな育て方をしたらあんな非道な人間に育つのか不思議で仕方ない!!」
「座ったらどうだ?」
部屋の真ん中に設置してあるソファーの後ろに仁王立ちするアントニオに着席を促すと巨体が勢いよくソファーに腰掛けた。壊れるのではないかと思わせる木が軋む音に値段を知っている使用人がヒヤヒヤする。
その向かいに静かに腰掛けたウォルターの表情に当然焦りはない。
ウォルター・ヘインズの焦った顔を見たことがある者は一人もいない。何があろうといつも冷静沈着。そして口を開けば冷酷なことを口にすることも多いため、いつも携行している杖は仕込み杖なのではないかと噂も立つほど。
アントニオもその噂を知らないわけではないが、ヘインズ邸に赴くことは家族に伝えてきたためそこまで心配していない。今はその心配よりもウォルターの孫であるハロルドに腹を立てている感情が勝っている。
「孫が私の娘にした悪逆非道な行為をどうお考えか!?」
お茶の準備をすべきか迷っている使用人に部屋から出るよう指示すれば、こっちを見ろと言わんばかりにテーブルを叩いて怒鳴りつける。
ウォルターはこういう野蛮的な人間が反吐が出るほど嫌悪している。ダイゴロウも一歩間違えれば野蛮人と化すが、彼はいつも笑顔でいるため思い出すだけで笑顔になれる。人を思い遣って笑顔にする豪快な男。アントニオとは似ても似つかない。だから怒鳴り散らして唾を飛ばすことしか知らないアントニオの前で首を傾けた。
「俺の孫がお前の娘を傷物にしたのか?」
「心を傷つけたんだ!」
「フラれただけだろう」
「髪飾りを贈っておきながら気がなかったとでも言うつもりか!?」
ハロルドが髪飾りを贈ったことは初めて知ったため心の中でハロルドに馬鹿者と叱るも表情は崩さない。
「気が変わることは珍しいことじゃない。恋愛中にはよくあることだ」
「それで済ませようというのか!? アーリーンは毎日泣いているんだぞ!! 部屋から一歩も出られないぐらいにな!!」
「失恋すれば誰でもそうなる。時間が解決してくれることだ、様子を見ておいてやれ。そしてハロルドのことなど忘れるほどイイ男との縁談を取り付けてやるんだな」
悪びれる素振りさえ見せないウォルターにアントニオの顔が怒りで赤くなる。
娘の泣く声が耳について離れない。もうおしまいだと悲鳴にも似た泣き叫びを思い出すだけで胸が痛くなる。
大事に育ててきた可愛い一人娘は心に深い傷を負ったのに、傷を負わせたほうは詫びることもしないのかと拳を震わせる。
「なんだその言い草は!! 貴殿の孫は婚約者がいながらアーリーンに言い寄ったんだぞ!! 不埒な男だ!!」
杖をソファーに立てかけたウォルターはそのまま目の前のローテーブルに足を乗せて足先だけを組む。腹の上で両手を組みながらアントニオの言葉に嘲笑を向けた。
「お前の娘はその婚約者に別れを迫ったと聞いたが?」
ダイゴロウとの約束を守るべく、ユズリハの生活にもユズリハの精神状態にも問題が出ないようシキに何かあればすぐに報告するよう言っていた。だからあの日のことは全てウォルターの耳に入っている。
アントニオはそんな話は聞いていないため眉を寄せながらも口を閉じていた。
「俺の孫はお前の娘に髪飾りを贈る以外に何かしたのか? 好きだと言ったのか? キスをしたか? 馬車の中で処女を奪ったのか?」
「そんなわけないだろ!! アーリーンは不埒な娘ではない!!」
「それならただの心変わりだ。弄んだわけじゃない。俺の孫はお前の娘に少し気があった瞬間があった。それだけだろう」
「それだけだと……?」
「婚約の約束をしていない以上は本人同士の問題だ。想いを伝え合うわけでも深い仲だったわけでもない。傷つけられたと親が出張るのは少し異常だと思うがな?」
「大事な一人娘を──」
異常と言われてカッとなったアントニオが声を上げようとするのを顔の前まで手を上げることで遮る。
「それは何度も聞いた。馬鹿の一つ覚えを何度も繰り返すな、煩わしい」
「なんだと!?」
組んだ爪先を左右に揺らすそれがウォルターの感情なのだろうが、どの感情かわからないだけに気になって視線を向けてしまう。
腹は立つが、ウォルター・ヘインズは警戒しなければならない男。
怒りの中に見える迷いを感じ取ったウォルターがハッとあからさまな嘲笑を放つ。
「お前の娘は親の背中を見て育っているんだな。人の家に押しかけて怒鳴る父親。馬車に連れ込んで怒鳴る娘。謝罪を求める父親。別れを求める娘。自分は正しいと思い込んでいるところも、性根が卑しいところもよく似ている」
「アーリーンを侮辱するな!! 私の娘を知らないだろう!!」
「お前のような男の娘がどういう醜悪な女かなど知りたくもない」
怒りで握りしめる拳からは今にも血が吹き出しそうなほど真っ赤になり、抑えきれないほど震わせる拳がウォルターの足が乗るテーブルへと振り下ろされるも寸前で止まる。
顔を上げたアントニオの顔には汗が滲んでいるが、どこか勝ち誇ったような表情が見えた。
「貴殿の孫は自分の愚かな行いをすぐ後悔することだろう。醜悪な和女に興味を示した瞬間があったがばかりにアーリーンを逃してしまったんだからな」
「頭の悪い父親に育てられた娘と縁がなかったぐらいで俺の孫は後悔などせん」
「大体、卑しさの象徴である和の国の人間を我が国に入れること自体──ッ!」
一瞬のことだった。それ以上の発言は許さないと言わんばかりに喉元に突きつけられた杖の先が軽くアントニオの喉を押す。
さっきまでソファーに立てかけられていたはずの杖をいつの間に取って振ったのかと混乱にアントニオの動きが停止する。
「俺を怒らせるなよ、アントニオ・コールマン」
見開かれた目と氷のように冷たい声に心臓が掴まれているような感覚に陥る。
「そんなに娘が大事なら傷がつかんように家に縛りつけておけばいいだろう。期待させたほうが悪いのか? 期待したほうが悪いのか? 恋をすれば失恋があるのは当然だ。そこにどんな贈り物があろうとな」
「だ、だが、アーリーンは純粋で……」
「言っておくが、お前の娘が俺の孫の心を捉えられなかっただけだ。それを傷つけられたなどとみっともなく喚くな」
トンッと軽く喉を押し離した杖の先が床に着地する。ゲホッゲホッと咽せ返るアントニオが首を押さえて必死にならなくてもいい呼吸を必死に繰り返しながら立ち上がった。
殺されるのではないかと思った。喉を突かれて死ぬ自分がイメージできた。あれは人殺しの目だとアントニオの直感が告げている。
この残虐性を知っているから、だから誰もウォルター・ヘインズには逆らわないのだと確信したアントニオはそのままソファーの後ろに立って距離を取った。
「上手くいかなくて当然。叶わなくて当然。それが人生だと教えてやれ。そのことをお前が今知ったのであれば娘と共に学習しろ」
「和女なんかと……」
今度は距離がある。言われっぱなしでたまるかと言い返そうとしたものの、言葉が止まった。ウォルターの目つきが変わったのだ。
ウォルター・ヘインズが和の国好きなことは有名だが、ここまで傾いているとは思っていなかった。
目だけで人の心臓を掴める男。自慢の巨体を、自分の身体なのに自由に動かせなくなったアントニオの頬を汗が伝う。
「その先を口にすることは俺に喧嘩を売るということになると言っておいてやる」
「ッ! ま、孫に言っておけ!! 二度とアーリーンに近付くなとな!!」
逃げるように去っていくアントニオの大きな背中にウォルターの上機嫌な声がぶつかる。
「お前の娘にも同じことを言っておけ!」
テーブルも壊れなかった。窓も壊れなかった。ソファーが破れなかった。そのことに安堵しながらもテーブルに傷はないかと確認しに入ってきた使用人たちに「お前たちは働き者だな」と声をかけるウォルターは嘘のように晴れやかな笑顔を見せた。
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