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自分だけが
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世間はもうすぐやってくる聖夜祭に浮かれている。
白と赤と緑の飾りがあちこちで見られ、大きな木にはたくさんのオーナメントがついている。
ヘインズ邸も雲のような白い綿で屋敷を飾り、庭にある一番大きな木に豪華な飾り付けを済ませていた。
聖夜祭にはあちこちでパーティーが開かれ、一年で一番大きなパーティーが開かれるためパーティー会場を渡り歩く貴族も少なくない。
ハロルドも聖夜祭の雰囲気が好きだった。年に一度の浮かれ具合は馬鹿馬鹿しいと呆れて見ているが、今年は妻がいる。悪くないと思っていたのだが──
「聖夜祭知らないのか?」
ユズリハは聖夜祭を知らない。和の国にその文化自体がないらしく、世界中で浮かれるそのイベントの日は普通の日常として過ごしていたという。
信じられないと驚くハロルドは計画があっただけにどうしようと迷っていた。
「祝ってくればよい」
「は?」
「誰かと祝う約束があるのではないか? 家族や友人などと」
「お前と過ごす予定だったんだけど?」
「いつもどおりじゃな」
いつもどおりではなくデートをしようと思っていた。せっかくの祝日。学校は休みで出かけ放題。雪でも降ればロマンチックな中を歩けると思っていたのだが、何も知らないのであればユズリハは期待もしていない浮かれもしない。
いつもとは違った気持ちでデートしたかったハロルドとしてはまずい展開になった。
「家族や恋人と過ごす日なんだ」
「そうか。我らは家族。おかしなことではないな」
「でも僕たちの関係って曖昧だとは思わないか? 結婚式を挙げてないのに夫婦だなんて。結婚式をしてこそ夫婦になったと言えるんじゃないか?」
「意外とそういうことを気にするのじゃな」
なぜ女であるユズリハが期待しないんだと眉が寄る。
ユズリハは結婚式はしない、子供が産めないと自分に関することは最初から伝えていた。でもそれは自分との関係が良くなかったからそう言っているのだと思っていた。結婚式は一生に一度だから愛人を作って愛人と挙げればいいと言っていた発言からそう思っていたのだが、ユズリハは違う。
「結婚式などせずとも夫婦じゃ」
「でも書類にサインしただけで夫婦っていうのも味気ないと思わないのか?」
「そういうものじゃろう」
ロマンを求めない女。
なぜ女のユズリハではなく男の自分が結婚式をしたがっているのかがわからないが、ハロルドはもっと恋人らしいこともしたいと思っている。
そのためには夫婦という形で落ち着くのはまだ早い。
「僕たちはまだ夫婦であり婚約者であるんじゃないか?」
「夫婦じゃろう」
「お前はなにかないのか? 聖夜だぞ、聖夜。ヤドリギの下でキスをした恋人たちは結ばれるって話もある」
「我らは既に夫婦。結ばれておるではないか」
「もっとロマンチックな夢はないのか!?」
「…………すまぬが思いつかぬ」
和の国の女は男に尽くすもので主張をしない。男も女に愛を囁くことはしないし、ロマンチックなイベントはほとんどない。
そのためユズリハもロマンチックなことに憧れはなく、ハロルドとは見ている世界が違う。
「もういい! 行ってくる!」
「気をつけてな」
自分ばかりが求めていることが悔しくなり、両手でテーブルを叩いて立ち上がりそのまま出ていった。
和の国では少し進展があった。たくさんキスをしたし、同じ部屋で寝たりもした。
だが、こっちに帰ってきてからは部屋も別々で、ユズリハから特別意識されているようなこともない。
自分ばかりがその先を望んで求めているような気がして苛立ってしまう。
ユズリハはマイペースすぎるのだ。ハロルドのように固定された物事を時間どおりにこなすこともなく、好きなだけ本を読んで、暇になったら散歩に出掛けて、外で親しい相手と話しては夫の帰りを待って食事をする。風呂に入る時間も寝る時間もバラバラ。
それこそ日付が変わっても眠らないことがある。
帰ってきた日に一緒に寝ようと誘ったのだが、生活リズムが違うから同じ部屋で寝ると気を使うと言われて断られた。
ユズリハは和の国の女らしく、自分から何か求めることはしない。それがハロルドにはもどかしい。
こうして怒って出ていくことがいかに幼稚であるか。自覚はあるのについやってしまう。こうすることで相手に怒っているんだと伝えようとしている。
子供の頃、祖父に押し付けられる教育が嫌で泣いて怒ったことがある。そのとき祖父に『自分の機嫌は自分で取れ』と言い放たれた。それが悲しくてまた泣いたが、今ならわかる。
自分の望みが相手の望みになることは少ない。別の国で生まれ育った者同士、想い合えたことだけでも奇跡なのに自分のように期待しろと強要するほうがおかしいのだ。
「あーあ……」
馬車の揺れを感じながら大きな溜息と共に自分への呆れを吐き出す。
想い人同士、目が合えば自然と目を閉じて顔を寄せ、キスをする。それが当たり前だと思っていた。
でもユズリハはそうじゃない。目が合ってもキスをするとは思っていないのだ。
上手くいかないもどかしさを誰かに吐露してしまいたいのにハロルドには友達がいない。相談できる相手がいないのがまた辛かった。
「ハロルド、学校でも聖夜祭するらしいぜ。和女連れてこいよ」
どれだけ経ってもからかいは減らない。根気強いと褒めたくなるレベルで同じ人間が声をかけてくる。
授業が終わって帰り支度をしているといつもこの男のせいで余計な時間をくう。
「行かない。お前たちに妻を披露するつもりはないし、それにその日は妻とデートなんだ」
「聖夜祭の日に和女とデートかよ! 悲惨だな!」
「デートする相手がいないことより悲惨なことなんかないだろ」
婚約者がいないことを突かれると悔しそうに黙り込む。
内心で舌を出しながらわざとらしく溜息をつく。
「アーリーン、お前は行くんだろ?」
「ええ」
「アーリーンも来るってよ」
今更アーリーンに未練でもあると思っているのだろうか。男がニヤつきながらハロルドの机をトントンと叩くもハロルドは「あっそ」としか返さなかった。
アーリーンが来るなら余計に行きたくない。ユズリハに聖夜祭にパーティーがあってアーリーンも来るみたいだから行くと言えば笑顔で送り出すのだろうが、そんなことはしたくない。
嫉妬した顔を見たくないわけではないが、そのために傷つけるような真似は絶対にしたくない。そんなことをする女ではないとわかっているが、もし仮に仕返しでもされたら立ち直れない。
ユズリハに花束を渡した男が触れることを想像するだけでも吐きそうなほどの嫌悪が込み上げるのだから。
「お前アーリーンのこと好きだったんだろ?」
「ここでそれを答えさせることに人生の意義を感じてるのか?」
「は? そんなわけないだろ」
「じゃあ答えてやる義理はない」
「答えられないってことは図星だろ!」
アーリーンに金でも握らされているのかと思うほどアーリーンの話題を絡めて突っかかってくる。
いつもそうだ。この男だけがアーリーンの名前を出す。
アーリーンがユズリハに当たり散らしたあの日からアーリーンとは口も利いていなければ目も合わせていない。時折、アーリーンから向けられる視線には気付いているが絶対に目は合わせない。
もう一ミリたりとも想いはないのだ。
「僕は和女の妻を愛してる。他の女性のことはどーでもいい」
どうでもいいを投げやりな感じで言うと男が眉を寄せる。
アーリーンに少しでも気持ちが残っていれば妻を愛しているなど言うはずがない。言ってしまえば訪れるかもしれないチャンスがなくなってしまうことは馬鹿にでもわかる。
和女が婚約者だと笑い者にされて必死に弁解していたハロルドはもういない。何をからかわれても平気な顔で反論するだけ。だから日に日にからかう者は少なくなっていた。
「俺、前にハロルドの婚約者っぽい女見かけたけど、意外とブスじゃなかったぜ」
一人の発言に教室内がザワつく。ハロルドも驚いた顔で見るも内心は驚きよりも焦りが強い。
自分以外がユズリハの魅力に気付くのは避けたい。もし他の男に興味を持たれることがあってはならない。友人のフリをして家を訪ねられたらユズリハは笑顔で受け入れてしまうだろう。
「変な服着てたけどな」
「和女にオシャレがわかるわけないだろ」
「でも思ってたよりブスじゃない。護衛がついてたから話しかけなかったけど、普通に屋台のおっさんと話してたわ。こっちの言葉喋れんのな?」
興味を持つなと内心で舌打ちを向けながらもぶっきらぼうに返す。
「嫁いでくるぐらいだからな。妻は賢い女だし」
「へー」
その『へー』に込められた意味がなんなのか気になってしまう。
聖夜祭に外でクラスメイトに会うことだけは避けたい。家でまったり過ごすべきか? それではいつもと同じになってしまう。せっかく外はロマンチックなムードに溢れているのだから外に出てデートがしたい。でも彼らに会いたくない。
ハロルドの中で必死の葛藤が続く。
「デートのついでにパーティーに顔出せばいいだろ」
「絶対に嫌だ。僕の妻は見せ物じゃないんだ」
「誘ってみろよ。行きたいって言うかもよ?」
「パーティーの文化がないから苦手なんだ」
「ふーん」
和女をからかいもしない人間が一番厄介で、一度姿を見た人間は更に厄介。
興味を持っているのではないかと疑ってしまうハロルドの視線は常にその男に向けられ『ふーん』が何を思って発したのかが気になる。
「じゃあ僕はこれで。聖夜祭で素敵な女性が見つかるといいね。君のような差別主義者でもいいって同類の素敵な女性がいれば、だけど」
「うるせぇ!」
なんでもないフリをして爽やかな笑顔を浮かべながら鞄を持って去っていくハロルドは内心穏やかではない。
聖夜祭のパーティーになんて絶対に連れていくもんかと早足で馬車へと向かった。
白と赤と緑の飾りがあちこちで見られ、大きな木にはたくさんのオーナメントがついている。
ヘインズ邸も雲のような白い綿で屋敷を飾り、庭にある一番大きな木に豪華な飾り付けを済ませていた。
聖夜祭にはあちこちでパーティーが開かれ、一年で一番大きなパーティーが開かれるためパーティー会場を渡り歩く貴族も少なくない。
ハロルドも聖夜祭の雰囲気が好きだった。年に一度の浮かれ具合は馬鹿馬鹿しいと呆れて見ているが、今年は妻がいる。悪くないと思っていたのだが──
「聖夜祭知らないのか?」
ユズリハは聖夜祭を知らない。和の国にその文化自体がないらしく、世界中で浮かれるそのイベントの日は普通の日常として過ごしていたという。
信じられないと驚くハロルドは計画があっただけにどうしようと迷っていた。
「祝ってくればよい」
「は?」
「誰かと祝う約束があるのではないか? 家族や友人などと」
「お前と過ごす予定だったんだけど?」
「いつもどおりじゃな」
いつもどおりではなくデートをしようと思っていた。せっかくの祝日。学校は休みで出かけ放題。雪でも降ればロマンチックな中を歩けると思っていたのだが、何も知らないのであればユズリハは期待もしていない浮かれもしない。
いつもとは違った気持ちでデートしたかったハロルドとしてはまずい展開になった。
「家族や恋人と過ごす日なんだ」
「そうか。我らは家族。おかしなことではないな」
「でも僕たちの関係って曖昧だとは思わないか? 結婚式を挙げてないのに夫婦だなんて。結婚式をしてこそ夫婦になったと言えるんじゃないか?」
「意外とそういうことを気にするのじゃな」
なぜ女であるユズリハが期待しないんだと眉が寄る。
ユズリハは結婚式はしない、子供が産めないと自分に関することは最初から伝えていた。でもそれは自分との関係が良くなかったからそう言っているのだと思っていた。結婚式は一生に一度だから愛人を作って愛人と挙げればいいと言っていた発言からそう思っていたのだが、ユズリハは違う。
「結婚式などせずとも夫婦じゃ」
「でも書類にサインしただけで夫婦っていうのも味気ないと思わないのか?」
「そういうものじゃろう」
ロマンを求めない女。
なぜ女のユズリハではなく男の自分が結婚式をしたがっているのかがわからないが、ハロルドはもっと恋人らしいこともしたいと思っている。
そのためには夫婦という形で落ち着くのはまだ早い。
「僕たちはまだ夫婦であり婚約者であるんじゃないか?」
「夫婦じゃろう」
「お前はなにかないのか? 聖夜だぞ、聖夜。ヤドリギの下でキスをした恋人たちは結ばれるって話もある」
「我らは既に夫婦。結ばれておるではないか」
「もっとロマンチックな夢はないのか!?」
「…………すまぬが思いつかぬ」
和の国の女は男に尽くすもので主張をしない。男も女に愛を囁くことはしないし、ロマンチックなイベントはほとんどない。
そのためユズリハもロマンチックなことに憧れはなく、ハロルドとは見ている世界が違う。
「もういい! 行ってくる!」
「気をつけてな」
自分ばかりが求めていることが悔しくなり、両手でテーブルを叩いて立ち上がりそのまま出ていった。
和の国では少し進展があった。たくさんキスをしたし、同じ部屋で寝たりもした。
だが、こっちに帰ってきてからは部屋も別々で、ユズリハから特別意識されているようなこともない。
自分ばかりがその先を望んで求めているような気がして苛立ってしまう。
ユズリハはマイペースすぎるのだ。ハロルドのように固定された物事を時間どおりにこなすこともなく、好きなだけ本を読んで、暇になったら散歩に出掛けて、外で親しい相手と話しては夫の帰りを待って食事をする。風呂に入る時間も寝る時間もバラバラ。
それこそ日付が変わっても眠らないことがある。
帰ってきた日に一緒に寝ようと誘ったのだが、生活リズムが違うから同じ部屋で寝ると気を使うと言われて断られた。
ユズリハは和の国の女らしく、自分から何か求めることはしない。それがハロルドにはもどかしい。
こうして怒って出ていくことがいかに幼稚であるか。自覚はあるのについやってしまう。こうすることで相手に怒っているんだと伝えようとしている。
子供の頃、祖父に押し付けられる教育が嫌で泣いて怒ったことがある。そのとき祖父に『自分の機嫌は自分で取れ』と言い放たれた。それが悲しくてまた泣いたが、今ならわかる。
自分の望みが相手の望みになることは少ない。別の国で生まれ育った者同士、想い合えたことだけでも奇跡なのに自分のように期待しろと強要するほうがおかしいのだ。
「あーあ……」
馬車の揺れを感じながら大きな溜息と共に自分への呆れを吐き出す。
想い人同士、目が合えば自然と目を閉じて顔を寄せ、キスをする。それが当たり前だと思っていた。
でもユズリハはそうじゃない。目が合ってもキスをするとは思っていないのだ。
上手くいかないもどかしさを誰かに吐露してしまいたいのにハロルドには友達がいない。相談できる相手がいないのがまた辛かった。
「ハロルド、学校でも聖夜祭するらしいぜ。和女連れてこいよ」
どれだけ経ってもからかいは減らない。根気強いと褒めたくなるレベルで同じ人間が声をかけてくる。
授業が終わって帰り支度をしているといつもこの男のせいで余計な時間をくう。
「行かない。お前たちに妻を披露するつもりはないし、それにその日は妻とデートなんだ」
「聖夜祭の日に和女とデートかよ! 悲惨だな!」
「デートする相手がいないことより悲惨なことなんかないだろ」
婚約者がいないことを突かれると悔しそうに黙り込む。
内心で舌を出しながらわざとらしく溜息をつく。
「アーリーン、お前は行くんだろ?」
「ええ」
「アーリーンも来るってよ」
今更アーリーンに未練でもあると思っているのだろうか。男がニヤつきながらハロルドの机をトントンと叩くもハロルドは「あっそ」としか返さなかった。
アーリーンが来るなら余計に行きたくない。ユズリハに聖夜祭にパーティーがあってアーリーンも来るみたいだから行くと言えば笑顔で送り出すのだろうが、そんなことはしたくない。
嫉妬した顔を見たくないわけではないが、そのために傷つけるような真似は絶対にしたくない。そんなことをする女ではないとわかっているが、もし仮に仕返しでもされたら立ち直れない。
ユズリハに花束を渡した男が触れることを想像するだけでも吐きそうなほどの嫌悪が込み上げるのだから。
「お前アーリーンのこと好きだったんだろ?」
「ここでそれを答えさせることに人生の意義を感じてるのか?」
「は? そんなわけないだろ」
「じゃあ答えてやる義理はない」
「答えられないってことは図星だろ!」
アーリーンに金でも握らされているのかと思うほどアーリーンの話題を絡めて突っかかってくる。
いつもそうだ。この男だけがアーリーンの名前を出す。
アーリーンがユズリハに当たり散らしたあの日からアーリーンとは口も利いていなければ目も合わせていない。時折、アーリーンから向けられる視線には気付いているが絶対に目は合わせない。
もう一ミリたりとも想いはないのだ。
「僕は和女の妻を愛してる。他の女性のことはどーでもいい」
どうでもいいを投げやりな感じで言うと男が眉を寄せる。
アーリーンに少しでも気持ちが残っていれば妻を愛しているなど言うはずがない。言ってしまえば訪れるかもしれないチャンスがなくなってしまうことは馬鹿にでもわかる。
和女が婚約者だと笑い者にされて必死に弁解していたハロルドはもういない。何をからかわれても平気な顔で反論するだけ。だから日に日にからかう者は少なくなっていた。
「俺、前にハロルドの婚約者っぽい女見かけたけど、意外とブスじゃなかったぜ」
一人の発言に教室内がザワつく。ハロルドも驚いた顔で見るも内心は驚きよりも焦りが強い。
自分以外がユズリハの魅力に気付くのは避けたい。もし他の男に興味を持たれることがあってはならない。友人のフリをして家を訪ねられたらユズリハは笑顔で受け入れてしまうだろう。
「変な服着てたけどな」
「和女にオシャレがわかるわけないだろ」
「でも思ってたよりブスじゃない。護衛がついてたから話しかけなかったけど、普通に屋台のおっさんと話してたわ。こっちの言葉喋れんのな?」
興味を持つなと内心で舌打ちを向けながらもぶっきらぼうに返す。
「嫁いでくるぐらいだからな。妻は賢い女だし」
「へー」
その『へー』に込められた意味がなんなのか気になってしまう。
聖夜祭に外でクラスメイトに会うことだけは避けたい。家でまったり過ごすべきか? それではいつもと同じになってしまう。せっかく外はロマンチックなムードに溢れているのだから外に出てデートがしたい。でも彼らに会いたくない。
ハロルドの中で必死の葛藤が続く。
「デートのついでにパーティーに顔出せばいいだろ」
「絶対に嫌だ。僕の妻は見せ物じゃないんだ」
「誘ってみろよ。行きたいって言うかもよ?」
「パーティーの文化がないから苦手なんだ」
「ふーん」
和女をからかいもしない人間が一番厄介で、一度姿を見た人間は更に厄介。
興味を持っているのではないかと疑ってしまうハロルドの視線は常にその男に向けられ『ふーん』が何を思って発したのかが気になる。
「じゃあ僕はこれで。聖夜祭で素敵な女性が見つかるといいね。君のような差別主義者でもいいって同類の素敵な女性がいれば、だけど」
「うるせぇ!」
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