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二人きり
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「はいはい、出ます出ま──ぎゃあっ!」
ドンドン、とドアを叩く音にイヴァが玄関に向かうと窓から見えた姿に飛び上がった。
「あわわわわわ! ア、アアアアアアストリッド様! 大変です! お客様です!」
キッチンに居たアストリッドが「どなた?」と声だけかけ、イヴァはそのままキッチンへと飛び込んだ。
「こ、こここここ──」
「突然の訪問、すまない」
鍵もドアも開けなかったイヴァの代わりにアミーラが開けに行き、中へと招き入れるもザファルは玄関で立ち止まった。
「皇帝陛下がいらっしゃいました!」
驚いた顔でヘラをイヴァに渡すとひょこっと顔を覗かせたアストリッドは、こちらに向かって軽く手を上げるザファルを視界に映した。
「いかがなさいました?」
エプロンを外そうとする様子にそのままでいいと伝え、封筒を差し出した。
真っ白な封筒に金の封蝋。この封蝋は見たことがある。アレイファーン家の紋章だ。
それが施された手紙を何故自分に、それも皇帝陛下直々に持ってきたのかがわからず、視線を封筒からザファルに移す。
「……よかったら、読んでほしい」
「え……あ、はっはい」
片手で差し出された封筒を両手で受け取るともう一度ザファルを見上げる。
「これを渡しにいらしたのですか?」
「ああ、そうだ」
皇帝陛下がわざわざ?と目を瞬かせるアストリッドの顔を見下ろすその視線は穴が開きそうなほど強く、思わず視線を逸らしてしまうほど。
「あ、あの──」
「イヴァさん」
「なんでしょう?」
アストリッドの言葉を遮るように少し大きめの声を発したアミーラがキッチンへと向かう。
「あーもうすぐお砂糖がなくなってしまいますね。今日の夕食分がないかもしれません」
「そうですか? まだ三日分はあ──んぐっ!」
ガッと口を押さえられたイヴァは目の前に鬼がいると錯覚するほど鋭い目を向けてくるアミーラに身体が硬直する。
「果物もないですし、今日は買い足さなければならない物がたくさんあるんです。イヴァさん、大変申し訳ないのですが、一緒に行ってもらえませんか?」
声はとても穏やかで優しいが、目の迫力が脅しにかかっている。
イヴァは何も言わず、暴れもせず、何度も小刻みに頷き続けていた。
「アストリッド様、申し訳ありませんが、買い出しに行ってまいります」
「荷物が多いのなら私も一緒に──」
「皇帝陛下がいらしているのに、ですか?」
イヴァを連れてキッチンから出てきたアミーラがキョトンとした顔でアストリッドを見つめる。
この国で一番偉い人間に帰れと言うのか、とでも言いたげな表情に黙り込む。
「王妃は市場へ行くのを楽しみにしているのではないか? 私はこれで失礼──」
「陛下、大変申し訳ないのですが、私たちが買い出しに行っている間、アストリッド様をお守りいただけませんか?」
アストリッドに背を向けてこちらを見るアミーラの目を見れば何が言いたいかわかった。いや、目を見ずとも顔を見ればハッキリと書いてある。「誰のために配慮しているのかわかっているのか?」と。
二人が黙り込んだのを見て、珍しくニコッと笑顔を見せたアミーラはその場で頭を下げてイヴァと共に市場へと向かった。
「……甘い匂いがするな」
「あっ!」
早歩きでキッチンへと戻ったアストリッドは置いてあるヘラを握って鍋と向かい合う。その後ろからザファルが静かに寄ってきた。
「ジャムか?」
「はい」
「市場で売っているだろう」
「そうですが、三人で食べるとすぐになくなってしまうんです。イヴァはたくさん食べる子ですから。あの子は焼きたてのパンに目がなくて」
大口でたくさん食べるイヴァはジャムをたっぷりつけて食べるため、あっという間になくなってしまう。その様子を見ているのが気持ちいいアストリッドは今朝のことを思い出して小さく笑った。
その横顔にザファルが目を細める。
「果物を買って、自分で作ったらあの子が遠慮せずにいっぱい食べられるんじゃないかと思って、二人に手伝ってもらっていたんです」
「……手伝う? 切って鍋に入れるだけだろう?」
不思議そうに問うザファルの言葉は至極当然の疑問だが、アストリッドにとっては恥ずかしいものでもあった。
「包丁を握ったことがなくて……」
果物の切り方すら知らなかった身としては包丁の握り方から教えてもらう必要があった。
「風の精霊なら切れるのではないか?」
「果物を切ってとお願いすることはできません」
「風の精霊は高潔なのか」
「いえ、優しい子ですが、私が頼みたくないんです。自分でできるようになれば済むだけの話なので」
沸々と煮立つジャムを焦がさないようにゆっくりとかき混ぜる。家中に広がる甘い匂いは暫くは取れないだろうが、イヴァは幸せだと言っていた。この匂いだけでパンが食べられる、と。
「……アストリッド、ジャムをパンに塗る以外の使い方を知っているか?」
「紅茶に入れたりします」
「紅茶以外にも使い道はあるのだ」
興味あると言いたげに見上げてくるアストリッドを見るとその頬や髪に手が伸びそうになるのを誤魔化すように食器棚に入っているグラスを取った。
「火を止めよう」
アストリッドが動くより先に風の精霊がフーッとろうそくを吹き消すようにコンロの火を消した。
まだ少しジャムが残っている瓶と深めの皿を持って、ソファーへと移動する。
「まず氷を作る」
「氷を──」
テーブルの上に置かれた皿に手を翳すと水で満たされる。皿の縁に乗っている精霊が小さな手をパンッと叩くと水は一瞬で氷へと変わった。
初めて見る現象に目を見開いたアストリッドにザファルは再び目を細める。
「……お前は気が利く子だ」
アストリッドの精霊が氷を風で切った。指示されていないのに独自の判断で動くことにザファルは少し驚きながらも精霊を褒めた。
グラスに入りやすいサイズの正方形に整えられた氷をグラスに入れ、そこにジャムを落とす。
「何を入れるのですか?」
「発泡水だ」
「発泡水?」
風の精霊もわくわくした様子でグラスに顔を近付けて見つめている。
アストリッドが視線を向け、ザファルがグラスをコンッと指先で叩いた瞬間、グラスの中に水が湧いたように満たされた。
「魔法、みたいですね」
「精霊を連れているあなたが言うのか」
それはそうだが、と滲ませた苦笑はグラスを差し出されたことで消える。
「何か浮いてるような……」
「気泡だ。飲んでみるといい」
いただきますと口を付けて一口飲んだアストリッドは驚きに大きく目を見開き、固まった。
予想通りの反応にザファルの口元が布の下で緩む。
「な、なんですかこれは……!」
「水に気泡を閉じ込めたものだ。冷えた水の中のほうが残りやすい。あなたが驚いた舌の上の感覚は気泡が弾けたものらしい」
水の精霊を見ると氷の上に腰掛けて足を組んでいる。お姉さんのように見えるその姿がとても愛らしく思えた。
「あら、ありがとう」
風の精霊が器用にグラスの中の水に小さな渦を発生させ、ジャムと混ぜ合わせてくれた。
きれいに混ざったグラスの中にある気泡の存在を不思議そうに見つめるアストリッドは何度も瞬きを繰り返す。
「あなたの精霊は自ら動くのだな」
「ええ、お願いせずとも動いてくれることが多いです。悪戯っ子でもありますけど」
「そうなのか?」
「フィルングが風が欲しいと言うと突風を吹かせて転ばせたり、仕事をサボって昼寝をしていた彼の顔をインクで塗って遊んだりしたりしたことも多々あります」
「フィルングはそのことにすぐ気付くのか?」
「いいえ。何も気付かずに廊下を歩いては使用人に笑われていました」
「ああ、想像できる」
それに気付いたところで怒ることはなかったのだろうことまでザファルには想像できた。
鏡や窓に映る自分を見たあと、きっと大笑いしたのだろうと想像すると込み上げる笑いに目を伏せる。
「でも、仲良しでもあったんですよ」
「ほう?」
「夫の目に彼が映ることはありませんでしたが、存在は感じると言っていました。それで、時には精霊に花の蜜を集める手伝いをしてもらっていました」
「精霊が花の蜜を集めるのか?」
「はい。それも、とても器用に」
風の精霊が腰に手を当て、「えっへん」と威張っていた。それを見た水の精霊が隣に並び、同じポーズをする。
その愛らしい並びにアストリッドが微笑んだ。
ドンドン、とドアを叩く音にイヴァが玄関に向かうと窓から見えた姿に飛び上がった。
「あわわわわわ! ア、アアアアアアストリッド様! 大変です! お客様です!」
キッチンに居たアストリッドが「どなた?」と声だけかけ、イヴァはそのままキッチンへと飛び込んだ。
「こ、こここここ──」
「突然の訪問、すまない」
鍵もドアも開けなかったイヴァの代わりにアミーラが開けに行き、中へと招き入れるもザファルは玄関で立ち止まった。
「皇帝陛下がいらっしゃいました!」
驚いた顔でヘラをイヴァに渡すとひょこっと顔を覗かせたアストリッドは、こちらに向かって軽く手を上げるザファルを視界に映した。
「いかがなさいました?」
エプロンを外そうとする様子にそのままでいいと伝え、封筒を差し出した。
真っ白な封筒に金の封蝋。この封蝋は見たことがある。アレイファーン家の紋章だ。
それが施された手紙を何故自分に、それも皇帝陛下直々に持ってきたのかがわからず、視線を封筒からザファルに移す。
「……よかったら、読んでほしい」
「え……あ、はっはい」
片手で差し出された封筒を両手で受け取るともう一度ザファルを見上げる。
「これを渡しにいらしたのですか?」
「ああ、そうだ」
皇帝陛下がわざわざ?と目を瞬かせるアストリッドの顔を見下ろすその視線は穴が開きそうなほど強く、思わず視線を逸らしてしまうほど。
「あ、あの──」
「イヴァさん」
「なんでしょう?」
アストリッドの言葉を遮るように少し大きめの声を発したアミーラがキッチンへと向かう。
「あーもうすぐお砂糖がなくなってしまいますね。今日の夕食分がないかもしれません」
「そうですか? まだ三日分はあ──んぐっ!」
ガッと口を押さえられたイヴァは目の前に鬼がいると錯覚するほど鋭い目を向けてくるアミーラに身体が硬直する。
「果物もないですし、今日は買い足さなければならない物がたくさんあるんです。イヴァさん、大変申し訳ないのですが、一緒に行ってもらえませんか?」
声はとても穏やかで優しいが、目の迫力が脅しにかかっている。
イヴァは何も言わず、暴れもせず、何度も小刻みに頷き続けていた。
「アストリッド様、申し訳ありませんが、買い出しに行ってまいります」
「荷物が多いのなら私も一緒に──」
「皇帝陛下がいらしているのに、ですか?」
イヴァを連れてキッチンから出てきたアミーラがキョトンとした顔でアストリッドを見つめる。
この国で一番偉い人間に帰れと言うのか、とでも言いたげな表情に黙り込む。
「王妃は市場へ行くのを楽しみにしているのではないか? 私はこれで失礼──」
「陛下、大変申し訳ないのですが、私たちが買い出しに行っている間、アストリッド様をお守りいただけませんか?」
アストリッドに背を向けてこちらを見るアミーラの目を見れば何が言いたいかわかった。いや、目を見ずとも顔を見ればハッキリと書いてある。「誰のために配慮しているのかわかっているのか?」と。
二人が黙り込んだのを見て、珍しくニコッと笑顔を見せたアミーラはその場で頭を下げてイヴァと共に市場へと向かった。
「……甘い匂いがするな」
「あっ!」
早歩きでキッチンへと戻ったアストリッドは置いてあるヘラを握って鍋と向かい合う。その後ろからザファルが静かに寄ってきた。
「ジャムか?」
「はい」
「市場で売っているだろう」
「そうですが、三人で食べるとすぐになくなってしまうんです。イヴァはたくさん食べる子ですから。あの子は焼きたてのパンに目がなくて」
大口でたくさん食べるイヴァはジャムをたっぷりつけて食べるため、あっという間になくなってしまう。その様子を見ているのが気持ちいいアストリッドは今朝のことを思い出して小さく笑った。
その横顔にザファルが目を細める。
「果物を買って、自分で作ったらあの子が遠慮せずにいっぱい食べられるんじゃないかと思って、二人に手伝ってもらっていたんです」
「……手伝う? 切って鍋に入れるだけだろう?」
不思議そうに問うザファルの言葉は至極当然の疑問だが、アストリッドにとっては恥ずかしいものでもあった。
「包丁を握ったことがなくて……」
果物の切り方すら知らなかった身としては包丁の握り方から教えてもらう必要があった。
「風の精霊なら切れるのではないか?」
「果物を切ってとお願いすることはできません」
「風の精霊は高潔なのか」
「いえ、優しい子ですが、私が頼みたくないんです。自分でできるようになれば済むだけの話なので」
沸々と煮立つジャムを焦がさないようにゆっくりとかき混ぜる。家中に広がる甘い匂いは暫くは取れないだろうが、イヴァは幸せだと言っていた。この匂いだけでパンが食べられる、と。
「……アストリッド、ジャムをパンに塗る以外の使い方を知っているか?」
「紅茶に入れたりします」
「紅茶以外にも使い道はあるのだ」
興味あると言いたげに見上げてくるアストリッドを見るとその頬や髪に手が伸びそうになるのを誤魔化すように食器棚に入っているグラスを取った。
「火を止めよう」
アストリッドが動くより先に風の精霊がフーッとろうそくを吹き消すようにコンロの火を消した。
まだ少しジャムが残っている瓶と深めの皿を持って、ソファーへと移動する。
「まず氷を作る」
「氷を──」
テーブルの上に置かれた皿に手を翳すと水で満たされる。皿の縁に乗っている精霊が小さな手をパンッと叩くと水は一瞬で氷へと変わった。
初めて見る現象に目を見開いたアストリッドにザファルは再び目を細める。
「……お前は気が利く子だ」
アストリッドの精霊が氷を風で切った。指示されていないのに独自の判断で動くことにザファルは少し驚きながらも精霊を褒めた。
グラスに入りやすいサイズの正方形に整えられた氷をグラスに入れ、そこにジャムを落とす。
「何を入れるのですか?」
「発泡水だ」
「発泡水?」
風の精霊もわくわくした様子でグラスに顔を近付けて見つめている。
アストリッドが視線を向け、ザファルがグラスをコンッと指先で叩いた瞬間、グラスの中に水が湧いたように満たされた。
「魔法、みたいですね」
「精霊を連れているあなたが言うのか」
それはそうだが、と滲ませた苦笑はグラスを差し出されたことで消える。
「何か浮いてるような……」
「気泡だ。飲んでみるといい」
いただきますと口を付けて一口飲んだアストリッドは驚きに大きく目を見開き、固まった。
予想通りの反応にザファルの口元が布の下で緩む。
「な、なんですかこれは……!」
「水に気泡を閉じ込めたものだ。冷えた水の中のほうが残りやすい。あなたが驚いた舌の上の感覚は気泡が弾けたものらしい」
水の精霊を見ると氷の上に腰掛けて足を組んでいる。お姉さんのように見えるその姿がとても愛らしく思えた。
「あら、ありがとう」
風の精霊が器用にグラスの中の水に小さな渦を発生させ、ジャムと混ぜ合わせてくれた。
きれいに混ざったグラスの中にある気泡の存在を不思議そうに見つめるアストリッドは何度も瞬きを繰り返す。
「あなたの精霊は自ら動くのだな」
「ええ、お願いせずとも動いてくれることが多いです。悪戯っ子でもありますけど」
「そうなのか?」
「フィルングが風が欲しいと言うと突風を吹かせて転ばせたり、仕事をサボって昼寝をしていた彼の顔をインクで塗って遊んだりしたりしたことも多々あります」
「フィルングはそのことにすぐ気付くのか?」
「いいえ。何も気付かずに廊下を歩いては使用人に笑われていました」
「ああ、想像できる」
それに気付いたところで怒ることはなかったのだろうことまでザファルには想像できた。
鏡や窓に映る自分を見たあと、きっと大笑いしたのだろうと想像すると込み上げる笑いに目を伏せる。
「でも、仲良しでもあったんですよ」
「ほう?」
「夫の目に彼が映ることはありませんでしたが、存在は感じると言っていました。それで、時には精霊に花の蜜を集める手伝いをしてもらっていました」
「精霊が花の蜜を集めるのか?」
「はい。それも、とても器用に」
風の精霊が腰に手を当て、「えっへん」と威張っていた。それを見た水の精霊が隣に並び、同じポーズをする。
その愛らしい並びにアストリッドが微笑んだ。
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