たとえば、この恋に終わりがないと言われても──

永江寧々

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同居生活

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 ザファル・アレイファーンにとって、これほど穏やかな朝を迎えたのは何年ぶりのことだろうか。もしかすると初めてかもしれない。
 鳥の声で目を覚まし、億劫そうに身支度を整える必要もなく、山積みの書類に追われることもない日が始まった。
 窓から差し込む柔らかな光を浴びながら、彼はゆっくりと身体を起こした。
 自分が普段寝ているベッドよりも少し狭くはあるが、不思議なほどゆっくり眠れたような気がする。
 時計を確認するとまだ五時半を指しているが、ザファルにとっては眠れたほうだった。
 昨夜眠ったのは確か、深夜一時を超えたぐらいだったから。
 普段のザファルは三時間眠れるかどうかだが、今日は四時間以上眠った。

(不思議だ)

 四時間眠れたことも、疲れが取れているように感じていることもザファルには不可解とも呼べるほどの出来事だった。

 暫くベッドの上でぼーっとしてから備え付けの浴室でシャワーを浴びてから身支度を整え、一階に降りると、既にイヴァが朝食の準備をしており、アストリッドが花瓶の水を替えている。
 彼女たちにとっては当たり前なのだろうこの何気ない日常の光景が、ザファルには新鮮で眩しく映った。

「おはようございます、陛下」
「おはよう」

 アストリッドの穏やかな笑顔に、ザファルの表情も自然と和らぐ。
 一人で食事をすることが当たり前だったザファルにとって、三人で食事をすることは意外と心地のいいものだった。
 朝食は焼きたてのパンに、庭で摘んだハーブを使ったオムレツとサラダ、チーズ、それに季節の果物。普段ザファルが食べている朝食よりもずっと豪華であり、フィルングが『朝起きて二番目に楽しみなのは食事だ』と言っていた理由がわかり、心が満たされる。

「さて、今日は何をしましょうか?」

 イヴァの問いかけに、ザファルは思わず考え込んだ。
 皇帝となる前は皇子として生きてきたため、今ほどではないにしろ多忙だった。一日の予定は常に詰まっており、何をしようと自分で考える時間は与えられなかったのだ。
 その日一日の予定はいつも決まっていたザファルにとって、何もない紙の上に自ら予定を書くのはすぐに思いつくような簡単なことではない。

「もしよろしければ、一緒に庭で水やりをしませんか?」

 アストリッドの提案に、ザファルは意外そうな顔をした。

「水やり……」
「ええ。土に触れるのも、植物を育てるのも、とても良いものですよ」

 そんな経験をしたことがないザファルだったが、アストリッドの優しい誘いを断る理由が彼の中には存在しない。

「やってみよう」

 その言葉に、イヴァが嬉しそうに手を叩いた。

「フィルング陛下もよく水やりをされてましたよね!」
「ええ、そうね。彼は庭師が焦るぐらい花壇の世話をしていたときもあった」
「彼らしいな」

 朝食を終えると三人は庭に出た。
 午前中の柔らかな日差しが花々を照らし、鳥たちがさえずりながら木々の間を飛び回っている。
 ファルージュ皇宮の庭とは規模こそ違うが、丁寧に手入れされた彼女たちの小さな楽園は、独特の温かみがあった。

「まずは水やりから始めましょうか」

 アストリッドがじょうろを手に取り、ザファルにも一つを差し出す。
 慣れない道具を手にしたザファルは使い方は知っていてもどうしたらいいのかわからず、しばらくじょうろを眺めていた。

「一気にかけるのではなく、こうして優しく少しずつかけてください。イヴァが言うには、ふわーっとかけるんだそうです」

 アストリッドが手本を見せるように、花壇の植物にそっと水をかける。
 水滴が葉に当たって小さく跳ね、朝の光でキラキラと輝いた。

「なるほど」

 ザファルが見様見真似で水をかけようとしたとき、突然、彼の隣で水しぶきが散った。
 カトラが先回りして、まるで小さな噴水のように水を弾けさせたのだ。
 カトラの作り出した水のアーチが太陽の光を受けて、虹色に輝いている。
 その美しさにアストリッドが息を呑み、思わず見惚れていた。

「キレイ……」

 うっとりと呟くアストリッドを見て、カトラが得意げに胸を張る。
 まるで「どうだ、私の方が上手だろう」と言わんばかりの表情にザファルの目が不愉快そうに細められる。

「水やりで勝ち誇るとは、存外、幼稚なのだな」

 小声で呟くと、カトラがクルリと振り返って、精霊文字で何かを書いた。
 その文字を読んだザファルの頬がピクリと引きつる。

「私がお前に負けるわけがないだろう」

 二人のやり取りを見ていたアストリッドが、小さく笑みを浮かべる。
 カトラが文字で書き、ザファルが言葉で返すその様子は友達同士のやりとりのようだった。

「ルルルー!」

 今度はルィムが飛んできて、風を起こした。
 優しいそよ風が花壇全体を撫でていくと咲き誇る花々が揺れ、甘い香りが漂ってくる。
 その瞬間、アストリッドの表情がふっと遠くなった。
 花の香りに包まれて、愛しい人との記憶が蘇ったのだ。
 自分の命を蝕むかもしれない花々をフィルングは愛していた。何故そんなふうに愛せるのか理解できなかったが、今になってようやく理解できた気がした。
 その毒も含めた美しさを彼は愛していたのだと。

「彼は、きっと自分の人生がそう長くないとわかっていたから、自由を楽しんでいたのかもしれません」

 アストリッドの静かな声が静かに溢れる。
 彼女の横顔には懐かしさと少しの寂しさが混じっていた。

「彼には確かな覚悟があったが、だからと諦めてはいなかった。逃げたいのに逃げられない運命を受け入れながら、短いかもしれない未来を見つめ、愛しき者を心から愛し、その命を全うする人だった」

 二人の間に穏やかな沈黙が流れる。
 亡き友への想いを共有する時間は、ザファルにとっても心地いいもの。

「陛下、こちらもお願いします!」

 イヴァの明るい声が、二人を現実に引き戻す。
 彼女は別の花壇で、せっせと雑草を抜いていた。

「ああ、今行く」

 ザファルが歩み寄ると、イヴァが嬉しそうに微笑んだ。

「陛下も雑草取り、やってみませんか?」
「雑草取り」

 砂漠の砂は触っても花壇の土は触ったことがない。皇帝がやる仕事ではないという考えではなく、花壇そのものに興味がなかった。

「こういう小さな草が雑草です。抜いてあげると、お花がもっと元気に育つんですよ」
「ハーブではないと言いきれるのか?」
「私は庭師よりもプロなんですよ?」
「そうなのか?」
「嘘です」

 からかわれたとわかっても不思議と気分を害することはなかった。この屈託のない笑顔が気分を害させないのだ。
 イヴァの説明を聞きながら、ザファルは小さな雑草に手を伸ばした。
 土に触れるのも初めてで、その感触に少し驚く。硬いと思っていた土は意外にもふわりと柔らかい。

「勢いよく抜くのではなく、ゆっくり根っこから抜くのがコツです」

 アストリッドも隣に座り込んで二人の様子を見守る。
 三人が並んで庭仕事をする光景は、まるで本当の家族のようだった。
 花壇を端から端まで手入れを終える頃、昼食の時間が近付いていることに気付き、三人は庭仕事を終えて家の中に戻った。
 手を洗う二人の後ろで、ザファルは自分の手のひらを見つめていた。
 少しだけ土で汚れた手が、何故か愛おしく思えた。

「お疲れ様でした、陛下」
「ああ、ありがとう」

 イヴァが昼食の準備を始める間、ザファルとアストリッドはリビングで休憩していた。

「初めての庭仕事はいかがでしたか?」
「仕事というほどのものではないが、想像より悪くなかった。水のやり方や雑草の有無をあそこまで気にするとは驚きだったが」

 ザファルの素直な感想に自分も同じ気持ちだったと初めて花壇に種を植えた日のことを思い出して頷く。

「土に触れただけだが、不思議と心が落ち着いていたように思う」

 皇帝に指名されてからずっと、常に気を張って生きてきた。皇帝という肩書きの重さに耐えなければならなかったからだ。
 だが、ここでは違う。ありのままの自分でいられるような心地良さがあった。陛下と呼ばれることは変わらないのに、二人が気を張らないのが一番の理由だとわかっている。
 
「昼食ができましたよー!」

 イヴァの元気な声に従うように食卓に向かい、三人で席に着く。

「早いな」
「イヴァは朝にお昼の分まで準備してしまうんです。お腹が空いた状態で食事の準備をしたら死んでしまうと言って」
「あの子らしいな」


 庭で摘んだばかりのハーブを使ったヨーグルトソースのサラダと手作りの豆スープ、焼きたてのパン、串に刺して焼いたスパイス漬けの鶏肉、豆のコロッケ、果物、砂糖控えめ味薄めのお茶。
 三食の中で昼を一番贅沢に食べるというラフナディールの習慣に合わせた愛情のこもった料理の数々。

「美味い」

 ザファルの感想にイヴァが口元をニヤつかせる。

「えへへへへへへっ、嬉しいです!」
「料理が得意なんだな」
「使用人のときはそうでもなかったんですけど、ここで暮らすようになって毎日していますからね! アミーラさんにたくさん教えてもらったんです」
「お前の料理を食べた男は全員胃袋を掴まれるだろうな」
「罪な女なんですよ、私」
「そうだな」

 軽やかに話をする二人の様子を見ているだけでアストリッドは幸せな気持ちになった。
 お喋りなイヴァはいつも一人で機関銃のように喋り続ける。アミーラは基本的に口数が少ない女性であるため返事が多い。ザファルもそうだが、アミーラのように考えての返事ではない分、イヴァが楽しそうだった。
 会話が途切れることなく三人で喋りながら昼食を食べたあと、午後は三人でゆっくりと過ごすことにした。
 アストリッドはソファーで読書をし、イヴァは鼻歌混じりに洗ったシーツを干し、ザファルは庭師を呼び寄せて花壇を増設する相談をしていた。
 何かに追われることがない平凡な一日。だが、ザファルにとってはかけがえのない時間だった。

 夕方になると、部屋が夕陽でオレンジ色に染まる。
 本を閉じたアストリッドが外に出るとイヴァとザファルも追うように外に出た。

「綺麗ですね」
「ああ」

 アストリッドの言葉に、ザファルも頷く。
 こうして何気ない美しさを共有できることが彼には新鮮だった。

「明日も一緒に庭いじりをしませんか?」

 アストリッドの提案に、ザファルは即座に頷いた。

「そうしよう」

 その答えにイヴァは何も言わなかったが、顔は誰よりも明るい笑顔を見せた。

 夕食も昼食時と変わらない賑やかで和やかに過ごした。
 ずっと三人で一緒にいたのに、今日あった小さな出来事を話し合い、笑い合う。何故こんなことで笑えるのかがザファルにはわからなかったが、自然と笑みが溢れた。
 そんな当たり前の幸せがザファルの心を少しずつ満たしていく。

「おやすみなさいです、陛下!」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」

 夜、二階の廊下でそれぞれ手を振り、部屋に入っていく。
 ザファルは自分の部屋の窓際に立ち、外を見つめながら今日一日を振り返っていた。
 皇帝として過ごしてきた日々とは全く違う、穏やかで温かい一日。

 窓の外では、ルィムとカトラが仲良く飛び回っている。
 二人の精霊の姿を見ていると、自分も同じような幸せを掴めるのかもしれないとそんな淡い希望が心の奥に芽生えてしまう。
 不謹慎かもしれない。彼女の心の奥にはまだ悲しみの波がひいては押し寄せているというのに、自分は二人の幸せな未来を夢見ている。考えずにはいられないのだ。
 想いは日に日に増している。
 明日もまた、この穏やかな時間が続く。
 一人の人間としての幸せを手に入れられているような時間が与えてくれる幸せを静かに噛み締めていた。
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