たとえば、この恋に終わりがないと言われても──

永江寧々

文字の大きさ
63 / 105

決意

しおりを挟む
 その日の夜、アストリッドは一人で庭に出ていた。
 月明かりの下で薬草たちが静かに揺れている。
 ネフェリ、ルーミア、そして数々のハーブとラフナディール特有の赤い花。
 ザファルを毒から救ったときに使った、大切な植物。

「ルー……?」

 心配そうに飛んできたルィムは昼間からアストリッドの様子がおかしいことを察していたのだろう。
 カトラと離れることを落ち込んでもおかしくはないのに、ルィムは心配を顔に出し、アストリッドに寄り添う。

「ちゃんと考えて決めたことだから大丈夫」

 アストリッドはネフェリの葉を見下ろしながらフィルングとの記憶を辿っていた。
 彼が毒に倒れたとき、必死に看病し、祈り続けた日々。様々な薬草を調べ、解毒薬を作ろうと試行錯誤した時間。
 結果的に祈りは散り、希望は潰え、愛しい人を失ったが、その過程で学んだ多くの知識は確実に身についていた。

「自分にできることはなんだろうって考えていたの。最近は放置してたけどね。甘やかされて生きてきたから何もできない人間に育ってるけど、できることがひとつだけあった」
「ルー?」

 いつもの笑顔というわけにはいかないが、少し自信が垣間見えた。


 翌朝、イヴァが朝食の準備をしていると、アストリッドがハーブをカゴいっぱいに入れて庭から戻ってきた。

「もっといっぱい植えておけばよかったですね」
「多くはないけど作れないわけじゃないから、今はある分で作ってしまいましょう」

 ラフナディールでは毒蛇や毒蜘蛛やサソリによる被害が多く、それによって命を落とす者は少なくないと言っていた。
 だからそれへの対処を商売にすることにしたのだ。

 昨夜、イヴァはこう言った。

『解毒薬を販売するというのはどうですか?』と。

 まるで神の啓示を受けたような衝撃だった。

『アストリッド様は確かに包丁を持たせれば右に出るものはいないぐらい危ないですが、解毒についてはこの国の誰よりもご存知のはず。万能薬と呼ばれるぐらいの解毒薬を作って販売しましょう!』

 医者がいるのに解毒薬?と思ったのだが、イヴァは賢かった。

『医者にかかればそれだけでお金が発生します。薬代はまた別なんですよ』

 誰しもが余裕のある暮らしをしているわけではない。東一の富裕国と言えど、平等ではないのだ。
 毒によっては、毒を受けて医者にかかるまでに死んでしまう可能性がある。常備できる解毒薬があれば助かる命は多いはずと二人は考えた。

「フィルングは学ばなくていいと言ったけど、知りたかったの。彼を苦しめる毒の全てを。だからこっそり本や保管されてる資料を読んで学んだわ」

 ふふっと笑ったアストリッドの表情は昨日よりも柔らかくてイヴァは少し安堵する。

「万能な解毒薬ってあるんですかね?」
「あったらいいんだけどね。私が知ってる毒はあくまでも草花の毒だから生物が持つ毒の知識は少ないの」
「じゃあ、まずはこの地域で最も被害の多いデザートスコーピオンの毒から始めましょう。それと、ラフナディールでは当たり前にいる毒蛇の毒」

 アストリッドは以前、アミーラが持ってきてくれた歴史の本を棚から取り出し、生物の詳細と毒の成分分析と対処法が記されているページを開いた。

「丁寧に書かれているのよ。毒を専門とするエルヴァングもそうだったけど、ラフナディールもすごいの」
「読んでるだけで眠くなりそうです……」

 詰めて書かれている文章は読みにくく、イラストはあるが、不気味。イヴァはできるだけ本を直視しないよう目を細めて視界を絞りながら見ることにした。
  
「でも、材料は庭にある植物だけで対応できますかね?」
「詳しいことはアミーラさんに相談してみようと思うの」
「セラフィスですもんね!」

 その日の夕方、回復したアミーラが起きてきた。

「寝すぎてしまいました。アストリッド様、お元気でしたか?」
「ええ、おかげ様で。アミーラさんこそ、お疲れ様でした」

 イヴァが出したお茶を受け取り、アミーラはその場で一気に飲み干した。
 驚きながらもすぐにおかわりを運んできたそれもまた一気に飲んでしまう。

「アミーラさんにお聞きしたいことがあるんです」
「なんでもどうぞ」

 アストリッドはイヴァと計画している目的について話をした。

「解毒薬を……ですか?」

 アミーラの表情が真剣というより険しくなった。

「素晴らしいお考え……だとは思います。ラフナディールでは昔から毒による被害が深刻な問題になっていますが……解毒薬を売る、ですか……」

 セラフィスとして色々見てきたアミーラだからこそ、その必要性を痛感してはいるが、見るからに乗り気ではない。

「診療所の医者たちがあまりいい顔はしないでしょうね」
「でも、どこかへ出かけるにも解毒薬があったら安心ですよ! 誰でもすぐ病院にかかれるとは限らないんですから!」
「だからですよ」

 イヴァの訴えは理解できるが、アミーラには解毒薬が流行ったら医者たちがどう動くのか、手に取るようにわかる。

「誰もが解毒薬を持ち歩くようになれば医者にかかる人間は減ります。そうなれば収入は落ちるでしょうし、医者は解毒薬のせいだと恨むかもしれません」
「そんな! 命を救うことより収入ですか!?」
「誰もが神のような心を持っているわけではないのです」

 神官ですら人を欺き裏切るのだから医者にもそういう人間がいることは何もおかしなことではない。二人はそれをよく知っている。
 しかし、アミーラは案自体は良いと思っている。民だけでなく、ラフナディールの観光客も買うだろうから。
 問題は解毒薬が作れるかどうかではなく、売れるかどうかでも、医者たちが動き出すかどうかでもない。
 ザファルだ。
 彼がこの状況をどう見るか。それが問題だ。

「なんとしてでも止めろ」

 想像に容易い。自分でやれと言いたくなるようなことを彼は何度も言ってきた。
 込み上げる溜息を飲み込みながら少しの間、沈黙に浸る。

「私の知識に足りないものをアミーラさんの知識で補っていただきたいのです」
「アドバイスをください!」

 きっとショックを受けるだろうが、仕方ない。決意がなければもう一度動こうとは思わないのだから、これ以上は言ったところで仕方ない。
 止めたければ自分で止めろと心の中でザファルに悪態をつきながら一緒に本を覗き込んだ。

 その日から、アストリッドの新しい挑戦が始まった。
 朝は庭で薬草の世話をし、午後はアミーラと二人で様々な配合を試していった。

 最初の試作品ができたのは、それから一週間後のことだった。

「ルー!」

 ルィムが嬉しそうに飛び回る。
 小瓶に入った淡い緑色の液体が、アストリッドたちの最初の成果だった。

「デザートスコーピオン用の解毒薬」

 アミーラが達成感に満ちた笑顔を見せる。

「まずは効果を確認しましょう」
「どうやって?」
「教会には毒に倒れている人間が多く治療を受けています。日によっては中に入りきらず、外で治療を受けることもあるんです」
「そんなに被害が多いんですか?」
「多くは他国から来た商売人とかですけどね。砂漠を超えるときに刺されることが多いので」
 
 セラフィスは教会にいることも多いだけに話を通すのが早い。
 解毒薬を抱え、アミーラが神父に話をつけてくれた。
 
「もしその解毒薬に確かな効果があるのであれば、助かる命は増えるでしょう」

 この場にいるだけで心が重くなるほど苦しんでいる者が多い。神に祈る場、というよりは神に見守られながら最期の瞬間を待つ場、という印象を受けた。

「つい先週も、デザートスコーピオンに刺された子供が運ばれてきましたが、手の施しようがなく……」
「そんな……」
「この時期、砂漠近くでは毒を持つ生物の被害が増えます。特に夜間の移動をする人たちには深刻な問題です」

 神父の話を聞いて、アストリッドの決意はさらに固まった。

「試してもいいでしょうか?」
「もちろんです!」

 その日、アストリッドたちは夜まで治療を行った。
 毒に苦しむ患者たちに少しずつ解毒薬を飲ませては記録もしていく。解毒薬の適量と時間を知るためだ。
 どの毒に侵されているのかも調べながらの作業は記録係のイヴァの精神を消耗していった。

「ああ、素晴らしい! 神よ、感謝いたします」

 わかったのは、デザートスコーピオンの毒はこの解毒薬で消滅できるということ。
 毒の解除はセラフィスでも神経を使う。それが薬で消せるのであればセラフィスはもっと重症患者に回れるということ。
 まだデザートスコーピオンだけだが、大きな進歩だと三人は喜びに満ちていた。
 その夜、アストリッドは一人で庭に出て、星空を見上げていた。

「フィルング、あなたのおかげで多くの人を救えるかもしれないわ」

 冷たい風がそっと頬を撫でる。いつもなら少し身震いしてしまうそれが今日は不思議と気持ちよく感じた。

「ルー」

 真正面に浮いて見つめてくるルィムにアストリッドが笑顔を見せる。

「大丈夫よ。私、自分の道を見つけられたような気がするの。まだ少しずつだけどね」

 アストリッドの表情には、以前とは違う輝きがあった。
 誰かの隣にいることで得られる幸せではなく、自分自身が価値を創造することで得られる充実感。
 複雑な環境の中で中途半端なままいることで迷惑がかかることを考えようとしなかった自分の愚かさを反省し、未来を見ることにした。

「私たちには、私たちにしかできないことがある。そうでしょう?」

 ルィムが嬉しそうに頷く。

「ルー!」

 いずれは自分たちだけの場所を見つけることを目標としたい。
 不安はある。自分にはそれしかできないという劣等感もある。だが、それでも前には進まなければならない。
 愛する人を失った悲しみを知る者として、誰かの愛する人を奪うような存在になってはいけない。
 冷たい空気の中、ルィムが起こした風が花の香りを運んでくる。 
 それを胸いっぱいに吸い込みながらもう一度、星空を見上げた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄されたので、自由に生きたら王太子が失脚しましたあ

鍛高譚
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢 ロザリー・フォン・アーデン は、王太子 エドワード・カミル・レグノード の婚約者として誰もが認める完璧な貴族令嬢だった。 しかしある日、王太子は突如 “聖女” を名乗る平民の少女 セシリア・ブランシュ に夢中になり、ロザリーに無情な婚約破棄を言い渡す。 「これは神の導きだ! 私の本当の運命の相手はセシリアなんだ!」 「ロザリー様、あなたは王太子妃にふさわしくありませんわ」 ──ふたりの言葉を前に、ロザリーは静かに微笑んだ。 「……そうですか。では、私も自由に生きさせていただきますわね?」 だが、これがロザリーの “ざまぁ” 逆転劇の幕開けだった! 神託と称して王太子を操る “聖女” の正体は、なんと偽者!? さらに王室財政を私物化する 汚職貴族との黒い繋がり も発覚!? 次々と暴かれる陰謀の数々に、王宮は大混乱。 そして、すべての証拠が王の手に渡ったとき──王太子 エドワードは王太子の地位を剥奪され、偽の聖女と共に国外追放 となる! 「ロザリー様を捨てた王太子は大馬鹿者だ!」 「やっぱり王妃にふさわしかったのはロザリー様だったのよ!」 社交界ではロザリーへの称賛が止まらない。 そしてそんな彼女のもとに、なんと隣国の 若き王クラウス・アレクサンドル から正式な求婚が──!? 「私はあなたの聡明さと誇り高き心に惹かれました。私の王妃になっていただけませんか?」 かつての婚約破棄が嘘のように、今度は 本物の愛と自由を手にするチャンス が巡ってくる。 しかし、ロザリーはすぐに頷かない。 「私はもう、誰かに振り回されるだけの人生は選びません」 王妃となる道を選ぶのか、それとも公爵家の令嬢として新たな未来を切り開くのか──?

引きこもり聖女は祈らない

鷹 綾
恋愛
内容紹介 聖女ポーラ・スターは、引きこもっていた。 人と話すことができず、部屋から出ることもできず、 彼女の意思表示は、扉に貼られる小さなメモだけだった。 「西の街道でがけ崩れが起きます」 「今日は、クラムチャウダーが食べたいです」 祈らず、姿も見せず、奇跡を誇示することもない聖女。 その存在は次第に「役立たず」と見なされ、 王太子リチャードから一方的に婚約を破棄され、聖女の地位も解かれる。 ──だが、その日を境に、王国は壊れ始めた。 天候不順、嵐、洪水、冷害。 新たに任命された聖女は奇跡を演じるが、世界は救われない。 誰もが気づかぬまま、 「何もしない聖女」が、実はすべてを支えていた事実だけが残されていた。 扉の向こうで静かに生きる少女と、 毎日声をかけ続ける精神科医フォージャー。 失われていく王国と、取り戻されていく一人の人生。 これは、 祈らない聖女が選んだ、 誰にも支配されない静かな結末の物語。 『引きこもり聖女は祈らない』 ざまぁは声高でなく、 救いは奇跡ではなく、 その扉の向こうに、確かにあった。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

婚約破棄されました(効率の悪い労働でした) ― 働いてない? 舞踏会は、充分重労働ですわ! ―

ふわふわ
恋愛
「働いていない?――いいえ、舞踏会も社交も重労働ですわ!」 前世で“働きすぎて壊れた”記憶を持ったまま、 異世界の公爵令嬢ルナ・ルクスとして転生したヒロイン。 生まれながらにして働く必要のない身分。 理想のスローライフが始まる――はずだった。 しかし現実は、 舞踏会、社交、芸術鑑賞、気配り、微笑み、評価、期待。 貴族社会は、想像以上の超・ブラック企業だった。 「ノブレス・オブリージュ?  それ、長時間無償労働の言い換えですわよね?」 働かないために、あえて“何もしない”を選ぶルナ。 倹約を拒み、金を回し、 孤児院さえも「未来への投資」と割り切って運営する。 やがて王都は混乱し、 なぜか彼女の領地だけが安定していく――。 称賛され、基準にされ、 善意を押し付けられ、 正義を振りかざされ、 人格まで語られる。 それでもルナは、動かない。 「期待されなくなった瞬間が、いちばん自由ですわ」 誰とも戦わず、誰も論破せず、 ただ“巻き込まれない”ことを貫いた先に待つのは、 何も起きない、静かで満たされた日常。 これは―― 世界を救わない。 誰かに尽くさない。 それでも確かに幸せな、 働かない公爵令嬢の勝利の物語。 「何も起きない毎日こそ、私が選び取った結末ですわ」

【完結】これは紛うことなき政略結婚である

七瀬菜々
恋愛
 没落寸前の貧乏侯爵家の令嬢アンリエッタ・ペリゴールは、スラム街出身の豪商クロード・ウェルズリーと結婚した。  金はないが血筋だけは立派な女と、金はあるが賤しい血筋の男。  互いに金と爵位のためだけに結婚した二人はきっと、恋も愛も介在しない冷めきった結婚生活を送ることになるのだろう。  アンリエッタはそう思っていた。  けれど、いざ新婚生活を始めてみると、何だか想像していたよりもずっと甘い気がして……!?   *この物語は、今まで顔を合わせれば喧嘩ばかりだった二人が夫婦となり、紆余曲折ありながらも愛と絆を深めていくただのハイテンションラブコメ………になる予定です。   ーーーーーーーーーー *主要な登場人物* ○アンリエッタ・ペリゴール いろんな不幸が重なり落ちぶれた、貧乏侯爵家の一人娘。意地っ張りでプライドの高いツンデレヒロイン。 ○クロード・ウェルズリー 一代で莫大な富を築き上げた豪商。生まれは卑しいが、顔がよく金持ち。恋愛に関しては不器用な男。 ○ニコル アンリエッタの侍女。 アンリエッタにとっては母であり、姉であり、友である大切な存在。 ○ミゲル クロードの秘書。 優しそうに見えて辛辣で容赦がない性格。常にひと言多い。

「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。
恋愛
幼い頃の無邪気な一言。 「お兄様みたいな人が好き」――その言葉を信じ続け、彼はずっと優しく隣にいてくれた。 エリナにとってレオンは、安心できる幼馴染。 いつも柔らかく笑い、困ったときには「無理しなくていい」と支えてくれる存在だった。 けれど、他の誰かの影が差し込んだ瞬間、彼の奥に潜む本音が溢れ出す。 「俺は譲らないよ。誰にも渡さない」 優しいだけじゃない。 安心と独占欲――その落差に揺さぶられて、エリナの胸は恋に気づいていく。 安心できる人が、唯一の人になるまで。 甘く切ない幼馴染ラブストーリー。

伯爵令嬢の前途多難な婚活──王太子殿下を突き飛ばしたら、なぜか仲良くなりました

森島菫
恋愛
シャーロット・フォード伯爵令嬢。 社交界に滅多に姿を見せず、性格も趣味も交遊関係も謎に包まれた人物──と言えばミステリアスな女性に聞こえるが、そんな彼女が社交界に出ない理由はただ一つ。 男性恐怖症である。 「そのままだと、何かと困るでしょう?」 「それはそうなんだけどおおおお」 伯爵家で今日も繰り返される、母と娘の掛け合い。いつもなら適当な理由をつけて参席を断るのだが、今回ばかりはそうもいかない。なぜなら「未婚の男女は全員出席必須」のパーティーがあるからだ。 両親は、愛娘シャーロットの結婚を非常に心配していた。そんな中で届いたこのパーティーの招待状。伯爵家の存続の危機を救ってもらうべく、彼らは気乗りしない娘を何とか説得してパーティーに向かわせた。 しかし当日、シャーロットはとんでもない事態を引き起こすことになる。 「王太子殿下を、突き飛ばしてしまったのよ」 「「はぁっ!?」」 男性恐怖症のシャーロットが限界になると発動する行動──相手を突き飛ばしてしまうこと──が、よりにもよってこの国の王太子に降りかかったのである。 不敬罪必死のこの事態に、誰もが覚悟を決めた。 ところが、事態は思わぬ方向へ転がっていき──。 これは、社交を避けてきた伯爵令嬢が腹を括り、結婚を目指して試行錯誤する話。 恋愛あり、改革あり、試練あり!内容盛りだくさんな伯爵令嬢の婚活を、お楽しみあれ。

処理中です...