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襲撃
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夕日が窓から差し込む中、アストリッドは調合台の前で解毒薬の材料を丁寧に刻んでいた。
イヴァが市場から帰ってくるまでにもう一瓶作っておきたかった。最近、解毒薬の評判が良く、注文が増えているのだ。
「ルー」
ルィムが心配そうに声をかけてきた。アストリッドの手元が少し危なっかしく見えたのだろう。
「大丈夫よ、慣れたから」
微笑みながら答えつつ、アストリッドは先ほど読んだザファルの手紙のことを思い出していた。
彼らしい素直な内容だった。特に「痩せている様子でしたらお帰りいただく」という部分に対する反応が可愛らしくて、思わず頬が緩んでしまう。
「一週間後に来るんですって。カトラも一緒だからあなたも嬉しい?」
喜ぶかと思っていたルィムが何かに気付いたようにドアの方向を見ている。
「ルィム?」
まさかザファルが来たのだろうかと考えた直後、ドンドンッと、乱暴にドアが叩かれた。
イヴァの帰りにしては早すぎるし、何より叩き方が違う。男の力で叩かれているのがわかる。
アストリッドは手を止めて、警戒しながらドアの方を見た。
「どなたですか?」
「開けろ」
その声を聞いた瞬間、アストリッドの血が凍った。
この声はザファルではなく、ザファルの兄、ザイードの声だ。外に火の気配を感じる。
「ルィム」
小さく呼びかけると、ルィムは即座にアストリッドの肩に止まった。その小さな体に緊張が走っているのがわかる。
「開けないなら壊すぞ」
ザイードの声は低く、脅迫的だった。アストリッドは微かに震える手でドアの鍵を外した。開けなければ、本当に壊されてしまうだろうから。
ドアが開くと、ザイードが大股で入ってきた。彼の肩には火の精霊ルガシュが仁王立ちしており、その炎のような髪が部屋の温度を上げているようだった。
「ようやく会えたな、アストリッド」
アストリッドの名を呼びながらもザイードの視線はルィムに向いている。その眼は獲物を狙う捕食者に近く、アストリッドは本能的に一歩後ずさった。
「何の御用でしょうか」
「客人が来たらまずは茶でもてなすって常識も知らねぇのか?」
「お望みですか?」
「いや。お前の出す茶は薄くてマズいってバシールが言ってたからな」
「……そうですか」
美味しいと言って飲んでいたあれは演技だったのかと唇を噛むが、今はバシールの嘘よりも目の前にあるこの威圧感をどうにかしなければと緊張から拳を握る。
「解毒薬、人気らしいなぁ」
「解毒薬をお望みですか?」
「俺を軟弱な愚弟と一緒にするんじゃねぇよ。俺に毒は効かねぇ。お前の夫とも違うからな」
「ルー……!!」
アストリッドの瞳に瞬時に怒りがこもった。同時にルィムも怒り、普段は見せない表情で唸り声を上げながら睨みつける。
「ああ、可愛い風が吹いてんなぁ」
「何用がないなら今すぐお帰りください」
「用ならある。そいつを俺に寄越せ」
狙いがルィムであることは彼の視線から気付いていた。だからアストリッドは徐々に玄関から外へと後ずさっていく。
「そいつを渡せば何もしやしねぇ。俺はな、ルガシュにオトモダチを作ってやりてぇだけなんだよ」
「火と風の相性が悪いことはあなたも知っているはずです」
アストリッドは震え声ながらもきっぱりと答えた。
「ルィムは私の宝物です。あなたに譲渡はできません」
「宝物?」
ザイードは嘲笑を浮かべた。
「笑わせてくれる。精霊は道具であり、使うものだ。便利って意味では確かに宝物かもなぁ」
「違います」
アストリッドの声に力がこもり、ゆっくりと詰めてくるザイードと同じ速度で距離を空ける。
「ルィムは私を守り、支えてくれる大切な存在です。道具なんかじゃありません」
「随分と可愛がってるじゃないか」
ザイードが立ち止まるとアストリッドも足を止める。
ここは住宅街だが、家はそれほど多くはない。それでも時刻は夕方。大勢の人間が行き交う場所だ。
「ここはラフナディールだ。アレイファーン家の長男である俺が欲しいと言ったら渡すのが筋であり礼儀だ。わかるか?」
「あなたがルィムを私から奪ったとしてもルィムの力はあなたでは操れません」
「操れるさ。方法なら知ってる」
ザイードの目が危険に光ったその時、ルガシュがザイードの肩から飛び立った。火の精霊は二人の間に浮かび上がると、両手に炎を纏わせた。
途端に、周囲の温度が急激に上がり、驚いた住民たちが外に出てくる。
「何をするつもりですか!」
「被害を出したくなけりゃ、そいつを寄越せ」
「あなたはこの国の皇子でしょう! 民を苦しめるつもりですか!?」
「お前が渡せば誰も苦しまずに済むんだよ」
アストリッドが叫ぼうとザイードの態度は変わらない。この状況を愉快だとでも思っているのかのように不気味な笑みを浮かべ、ルガシュは彼の感情に合わせて炎を大きくしていく。
「ザ、ザイード様おやめください!! このようなことはザファル陛下がお許しになりません!」
「あ゙あ゙!? 俺の行動にはな、誰の許可もいらねぇんだよ!!」
「ヒィッ!」
ザイードが彼の家に手を向けた瞬間、ルガシュの両手にあった火が家に向かって飛んでいった。
衝突するやいなや火は瞬く間に燃え上がり、壁から屋根へとコーティングのように包み込んでいく。
慌てて水をかけようともルガシュはまるで泥団子を投げて遊ぶ子供のように楽しげに火を投げ続けた。
「ルー!!!!」
ルィムが吠えるように叫ぶと面白そうに笑ったのはザイードよりもルガシュだ。
「どうした? 吹き消してやれよ。燃えていくぞ」
ザイードも面白そうに笑った。風が吹けば火の勢いが増すだけだとわかっていて挑発をする。ルィムも自分の力をわかっているだけに悔しそうにルガシュを睨みつける。
「この国にいてもお前の力はなんの役にも立たんが、俺なら役立ててやれる。来い」
ルガシュの両手に再び炎が現れる。先ほどよりも一層激しい。
周囲の温度は上がり続け、あっという間に汗が滲むほどの暑さへと変わる。
だが、ルィムは怯まなかった。
「ルー!」
「ルィム、ダメ。何もしないで」
勝てる相手ではない。ルィムは戦闘経験などほとんどない。風の谷にもエルヴァングにも敵はおらず、風と同じように穏やかに生きてきた。
ルガシュは違う。ザイードが暴れるのに合わせて暴れてきたのだろう。攻撃することに躊躇がない。
人々が怯え、慌てて逃げ出す様子にルィムは我慢の限界だと向って行こうとするのをアストリッドが制止する。
「あなたじゃ勝てない」
「ルー……!」
ルィムもわかっている。ここで風を起こせば飛び火するかもしれない。それだけは避けなければならない。だが、何もしなければルガシュは好き勝手に暴れるかもしれない。そして、またアストリッドが悪者になるかもしれないと焦っていた。
「ああ、隣の家じゃあ意味ねぇか。精霊が守るべきは隣人じゃなく──」
「ルッ!? ルー!!」
「ルィム!!」
ルガシュの炎がアストリッドに放たれたのを見てルィムは瞬時に壁を作った。水じゃない風の壁。意味がないどころか火に加勢することになる。
風と火が勢いよくぶつかったことで熱波が生じ、雲を揺らす。
「ルィムやめなさい!!」
ルィムは素直な妖精だが、今だけはアストリッドの言うことは聞けない。自分が守らなければルガシュの悪意にアストリッドが傷つけられる。
彼女を守ることが、今の自分にできる唯一のことだとルィムは使命感だけで動いていた。
「ほう……なかなかやるじゃないか」
ザイードは感心したような声を出しながら愉快そうな笑みを崩さない。夫を、ザファルを愚弄した彼を風の中で切り刻んでやりたい気持ちでいっぱいだった。だが、彼が愛した風でそんなことはしたくない。
悔しさからアストリッドの瞳に涙が滲む。
「守れるもんなら守りきってみろ。風如きが火に勝てるってんならなァ!」
ルガシュの炎が一段と激しくなった。風では火を消すことはできない。むしろ、風は火を大きくしてしまう。
ルィムの小さな体が、炎の熱に苦しそうに震え始めた。
イヴァが市場から帰ってくるまでにもう一瓶作っておきたかった。最近、解毒薬の評判が良く、注文が増えているのだ。
「ルー」
ルィムが心配そうに声をかけてきた。アストリッドの手元が少し危なっかしく見えたのだろう。
「大丈夫よ、慣れたから」
微笑みながら答えつつ、アストリッドは先ほど読んだザファルの手紙のことを思い出していた。
彼らしい素直な内容だった。特に「痩せている様子でしたらお帰りいただく」という部分に対する反応が可愛らしくて、思わず頬が緩んでしまう。
「一週間後に来るんですって。カトラも一緒だからあなたも嬉しい?」
喜ぶかと思っていたルィムが何かに気付いたようにドアの方向を見ている。
「ルィム?」
まさかザファルが来たのだろうかと考えた直後、ドンドンッと、乱暴にドアが叩かれた。
イヴァの帰りにしては早すぎるし、何より叩き方が違う。男の力で叩かれているのがわかる。
アストリッドは手を止めて、警戒しながらドアの方を見た。
「どなたですか?」
「開けろ」
その声を聞いた瞬間、アストリッドの血が凍った。
この声はザファルではなく、ザファルの兄、ザイードの声だ。外に火の気配を感じる。
「ルィム」
小さく呼びかけると、ルィムは即座にアストリッドの肩に止まった。その小さな体に緊張が走っているのがわかる。
「開けないなら壊すぞ」
ザイードの声は低く、脅迫的だった。アストリッドは微かに震える手でドアの鍵を外した。開けなければ、本当に壊されてしまうだろうから。
ドアが開くと、ザイードが大股で入ってきた。彼の肩には火の精霊ルガシュが仁王立ちしており、その炎のような髪が部屋の温度を上げているようだった。
「ようやく会えたな、アストリッド」
アストリッドの名を呼びながらもザイードの視線はルィムに向いている。その眼は獲物を狙う捕食者に近く、アストリッドは本能的に一歩後ずさった。
「何の御用でしょうか」
「客人が来たらまずは茶でもてなすって常識も知らねぇのか?」
「お望みですか?」
「いや。お前の出す茶は薄くてマズいってバシールが言ってたからな」
「……そうですか」
美味しいと言って飲んでいたあれは演技だったのかと唇を噛むが、今はバシールの嘘よりも目の前にあるこの威圧感をどうにかしなければと緊張から拳を握る。
「解毒薬、人気らしいなぁ」
「解毒薬をお望みですか?」
「俺を軟弱な愚弟と一緒にするんじゃねぇよ。俺に毒は効かねぇ。お前の夫とも違うからな」
「ルー……!!」
アストリッドの瞳に瞬時に怒りがこもった。同時にルィムも怒り、普段は見せない表情で唸り声を上げながら睨みつける。
「ああ、可愛い風が吹いてんなぁ」
「何用がないなら今すぐお帰りください」
「用ならある。そいつを俺に寄越せ」
狙いがルィムであることは彼の視線から気付いていた。だからアストリッドは徐々に玄関から外へと後ずさっていく。
「そいつを渡せば何もしやしねぇ。俺はな、ルガシュにオトモダチを作ってやりてぇだけなんだよ」
「火と風の相性が悪いことはあなたも知っているはずです」
アストリッドは震え声ながらもきっぱりと答えた。
「ルィムは私の宝物です。あなたに譲渡はできません」
「宝物?」
ザイードは嘲笑を浮かべた。
「笑わせてくれる。精霊は道具であり、使うものだ。便利って意味では確かに宝物かもなぁ」
「違います」
アストリッドの声に力がこもり、ゆっくりと詰めてくるザイードと同じ速度で距離を空ける。
「ルィムは私を守り、支えてくれる大切な存在です。道具なんかじゃありません」
「随分と可愛がってるじゃないか」
ザイードが立ち止まるとアストリッドも足を止める。
ここは住宅街だが、家はそれほど多くはない。それでも時刻は夕方。大勢の人間が行き交う場所だ。
「ここはラフナディールだ。アレイファーン家の長男である俺が欲しいと言ったら渡すのが筋であり礼儀だ。わかるか?」
「あなたがルィムを私から奪ったとしてもルィムの力はあなたでは操れません」
「操れるさ。方法なら知ってる」
ザイードの目が危険に光ったその時、ルガシュがザイードの肩から飛び立った。火の精霊は二人の間に浮かび上がると、両手に炎を纏わせた。
途端に、周囲の温度が急激に上がり、驚いた住民たちが外に出てくる。
「何をするつもりですか!」
「被害を出したくなけりゃ、そいつを寄越せ」
「あなたはこの国の皇子でしょう! 民を苦しめるつもりですか!?」
「お前が渡せば誰も苦しまずに済むんだよ」
アストリッドが叫ぼうとザイードの態度は変わらない。この状況を愉快だとでも思っているのかのように不気味な笑みを浮かべ、ルガシュは彼の感情に合わせて炎を大きくしていく。
「ザ、ザイード様おやめください!! このようなことはザファル陛下がお許しになりません!」
「あ゙あ゙!? 俺の行動にはな、誰の許可もいらねぇんだよ!!」
「ヒィッ!」
ザイードが彼の家に手を向けた瞬間、ルガシュの両手にあった火が家に向かって飛んでいった。
衝突するやいなや火は瞬く間に燃え上がり、壁から屋根へとコーティングのように包み込んでいく。
慌てて水をかけようともルガシュはまるで泥団子を投げて遊ぶ子供のように楽しげに火を投げ続けた。
「ルー!!!!」
ルィムが吠えるように叫ぶと面白そうに笑ったのはザイードよりもルガシュだ。
「どうした? 吹き消してやれよ。燃えていくぞ」
ザイードも面白そうに笑った。風が吹けば火の勢いが増すだけだとわかっていて挑発をする。ルィムも自分の力をわかっているだけに悔しそうにルガシュを睨みつける。
「この国にいてもお前の力はなんの役にも立たんが、俺なら役立ててやれる。来い」
ルガシュの両手に再び炎が現れる。先ほどよりも一層激しい。
周囲の温度は上がり続け、あっという間に汗が滲むほどの暑さへと変わる。
だが、ルィムは怯まなかった。
「ルー!」
「ルィム、ダメ。何もしないで」
勝てる相手ではない。ルィムは戦闘経験などほとんどない。風の谷にもエルヴァングにも敵はおらず、風と同じように穏やかに生きてきた。
ルガシュは違う。ザイードが暴れるのに合わせて暴れてきたのだろう。攻撃することに躊躇がない。
人々が怯え、慌てて逃げ出す様子にルィムは我慢の限界だと向って行こうとするのをアストリッドが制止する。
「あなたじゃ勝てない」
「ルー……!」
ルィムもわかっている。ここで風を起こせば飛び火するかもしれない。それだけは避けなければならない。だが、何もしなければルガシュは好き勝手に暴れるかもしれない。そして、またアストリッドが悪者になるかもしれないと焦っていた。
「ああ、隣の家じゃあ意味ねぇか。精霊が守るべきは隣人じゃなく──」
「ルッ!? ルー!!」
「ルィム!!」
ルガシュの炎がアストリッドに放たれたのを見てルィムは瞬時に壁を作った。水じゃない風の壁。意味がないどころか火に加勢することになる。
風と火が勢いよくぶつかったことで熱波が生じ、雲を揺らす。
「ルィムやめなさい!!」
ルィムは素直な妖精だが、今だけはアストリッドの言うことは聞けない。自分が守らなければルガシュの悪意にアストリッドが傷つけられる。
彼女を守ることが、今の自分にできる唯一のことだとルィムは使命感だけで動いていた。
「ほう……なかなかやるじゃないか」
ザイードは感心したような声を出しながら愉快そうな笑みを崩さない。夫を、ザファルを愚弄した彼を風の中で切り刻んでやりたい気持ちでいっぱいだった。だが、彼が愛した風でそんなことはしたくない。
悔しさからアストリッドの瞳に涙が滲む。
「守れるもんなら守りきってみろ。風如きが火に勝てるってんならなァ!」
ルガシュの炎が一段と激しくなった。風では火を消すことはできない。むしろ、風は火を大きくしてしまう。
ルィムの小さな体が、炎の熱に苦しそうに震え始めた。
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