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家族3
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「オアシスが命の水と呼ばれていた頃、その水を汲むために大勢の男が命を懸けた。ハキームの友もその一人だった。慣れている道であろうと砂嵐に遭えば、そこは途端に未知の場と化す。来た方角を見失えば戻ることもできず、行く方角を見失えば進むこともできなくなる。夜は星に導いてもらえるが、昼は残酷なまでに何も見えない。そうして砂漠に倒れた者は星の数よりいるだろう」
そう遠くない昔の話だとザファルから聞いたことを思い出したアストリッドはハキームを見てからザファルを見た。
自然と向けられた顔と目が合い、ザファルは静かに頷きだけ返す。
「ハキームは運が良かった。砂嵐に遭うこともなく、毎日毎日オアシスに辿り着くことができた。彼にとっては幸か不幸かはわからんが」
「幸運でしたよ」
穏やかな声での返事にエリュシアが頷き、続きを紡ぐ。
「ある日、いつものようにオアシスに到着したハキームは何を思ったか、自分が持っていたボトルに水を汲んで北に向かい始めた。炎に包まれているかのような灼熱の中を歩き続け、アーン・ハディールに到着した。その場で祈りを捧げてから中に入った彼は、泉の場所がわかっているかのように進み、これまた運良く辿り着いた。枯れ果てた泉にな」
「私が見たあの美しい泉のことですか?」
「そうだ。あの水はハキームがオアシスを何万往復もして貯めた水だ」
「また大袈裟なことを。千回程度ですよ」
「ふふっ、そういうことにしておこう」
まったく、と呆れながらも笑うハキームの表情は優しい。彼もエリュシアと同じで、当時のことを鮮明に思い出しているのだろう。
「千回通ったところで泉が満杯になることはなかったが、私は彼の行動がとても気に入ったんだ。水を入れたからと言って何を願うわけでもない。ただ水を入れては去っていき、また翌日同じことをする。何年もその繰り返し。何かひとつでも願いを口にすればいいものを、何も願わず祈らない彼に我慢できずに私のほうから姿を現した」
「あれには腰を抜かすほど驚きましたな」
二人で似たような笑みを浮かべる様子は見ていて微笑ましく、アストリッドもつられて笑顔になる。
「あの泉は精霊の遊び場のようなものでな。そこに水が戻ってきたことに精霊たちは喜んでいた。そのことに感謝の意を表して精霊の加護を授けると言ったのだが、断られた。私には初めての経験だったな」
「精霊の加護など自分には過ぎたるものだと思ったのです。私が勝手にやったことに褒美は受け取れません」
「王である私の申し出を断る無礼な人間だと思ったが、そこが気に入った。だから私は彼に少しばかり力を与えることにした。精霊ではなく私のな」
「まさか……」
ハキームが強かったのはそのせいかと、思い当たる節に今度はザファルとバシールが顔を見合わせた。
誰が何をやってもハキームには勝てない。あの自己中心的なマルダーンですらハキームには甘かったことにようやく合点がいったのだ。
「私には必要ないと申し上げたのですが、エリュシア様は人の話を聞かないお方ですので」
「お前は私を楽しませてくれた存在だ。早く死なれては困るからな」
「エリュシア様のご加護のおかげで私はここで働くことができました」
「精霊王の加護……」
アストリッドには納得だった。
ルィムが星の精霊になったとき、エリュシアが言った言葉はそのままハキームに適用される。
精霊王の加護というとてつもなく巨大な恩恵を受けながらもハキームは自分の欲に生きる人生を送らなかった。
皇帝に仕える使用人として生きることを選び、力をひけらかすことなく今もこうして穏やかに生きている。
エリュシアにはそれがわかっていたから自分の加護を授けた。
素晴らしいことだと微笑むアストリッドの横でザファルは相変わらず怪訝な表情でハキームを見ている。
「ハキーム……お前はいつからここで働いているんだ?」
「今年で八十五年になります」
何故今まで聞いたことがなかったのかと自分で疑問に思ったが、それが吹き飛ぶほどの衝撃に絶句する。
「待って! ハキームって何歳!?」
バシールのイヴァ並の大きな声にもハキームは笑顔のまま答えた。
「八十を過ぎた辺りから数えるのをやめましたので」
「百八だ」
代わりにマルダーンが答え、それには笑みを崩さなかったハキームが「知っていたのか」と少し驚いた顔を見せた。
「だろ?」
すぐに微笑みへと戻し、頭を下げるように頷いたハキームをバシールは化け物でも見るような目で見ている。
「彼が気まぐれにも水を運ばなければ私はここに精霊を戻しはしなかった」
ハキームにとっては罪滅ぼしの気持ちもあった。
兵士たちは街にまでやってきて必死の形相で「精霊を見なかったか!?」と聞き続けていた。その光景は今思い出しても異常なもので、精霊が消えた理由はわからなかったが、当時の皇帝は国民を苦しめてでも自分たちが裕福であることに必死だったため、そのせいだろうとは思っていた。
許してほしかったわけじゃない。ただ、何かしたかった。ラフナディールの国民として何ができるか考えたとき、水を運ぶことだと思った。
『泉が枯れた!』
それがどういう意味かはわからなかったが、強く記憶に残っていたからの行動だった。
あの美しいオアシスの水を運んで、泉を戻そうと考えたのだ。
「私はあそこを精霊の水飲み場だと思っていたんですよ」
キョトンとした顔をするエリュシアにとってそれは初耳だったのだろう。そしてとても嬉しい発言でもあった。
「ああ、お前は本当に可愛いな」
「エリュシア様、おやめください」
「なんって可愛いんだ」
水飲み場だと思ったから一生懸命水を運んでいた。見ることもできない精霊のために。それがとても嬉しかったのだ。
ハキームの頭を撫で、頬に手を添えるエリュシアの慈愛に満ちた表情は見惚れるほど美しく、バシールは既に心奪われていた。
「アンタはうちのバカ息子に望むことはないのか?」
「お前のバカ息子のことはお前に任せる。親の教育不足としてお前を罰することもできるが」
「それはハキームに免じて許してくれ」
「おやおや、この老いぼれを盾に使うおつもりですかな?」
「生い先短い老人に使い道を見出してるんだ。悪いか?」
「父上、なんということを──」
言葉が過ぎると言おうとしたが、ハキームが声をあげて笑ったことでザファルの言葉が止まる。
「はっはっはっはっはっはっ! やはりあなたは面白いお方だ!」
これほどまでに笑ったハキームを見たことがある者はこの宮にはいないだろう。マルダーンでさえ笑みを浮かべながらも驚きが隠せていない。しかし、面白いものを見ているという感情が滲み出たこれまた珍しい表情にザファルは戸惑いっぱなしだった。
「あなたにお仕えしたことが私の人生の誉でございます」
「私が加護を与えたことよりもか?」
「それは感謝しておりますが、私は必要ないと申し上げた物。誉ではございません」
アストリッドやザファルたちにとって、彼らの会話はどこか別次元のように感じていた。
精霊王と先代皇帝の間で話すのが老執事。しかも会話の主導権を持っているのがその執事であることが不思議でならない。
だが、不思議と楽しそうに見えた。まるで旧友たちが集まって昔話に花を咲かせているような、そんな感じに。
「では、私はそろそろ自分の世界に戻ることにしよう。ルガシュの対応も私なしでは決めかねているだろうからな」
「迷惑かけたな」
「お互い様だ」
ふと、エリュシアがカトラを見た。
「カトラ、一つの感情に囚われ過ぎてはいけない。相手を滅ぼそうとして自分が滅びることになる。それを忘れないように」
頭を下げるカトラを横目で見ながら、ザファルは自分が言われている気分になった。
「ルィム、お前のその力を必要としている者が大勢いる。良い使い方をするんだよ」
「ルー!」
ルィムの明るい声に笑顔を返すとエリュシアは光とともに消えた。
その直後、誰もが息を吐き出し、一分ほど黙り込んでいた。
「ザファル、バシール」
真っ先に口を開いたのはマルダーンだった。
振り返った息子たちに向けて簡潔に言葉を発する。
「覚悟はいいか?」
何のことだ、とは聞かなかった。聞き返す必要はない。ザイードのことしかないのだから。
二人は黙って頷き、それを見たマルダーンは「よしっ」と膝を叩いて立ち上がり、まだ床で失神している息子を肩に担いで部屋を出ていった。
「エリュシアちゃん、マジで美人だったね」
「あなた様はそればかりですな、バシール様。皆様にまたボコボコにされますぞ?」
「ねぇねぇ、ハキーム」
「会いには行きませんよ」
「なんで!? ハキームが会いに行ったら絶対喜ぶって!」
「お父上は私を盾にし、あなた様は私を餌にするのですか?」
「使える者は親でも使えって教わったし」
「おやおや、ご立派な教育を受けたようですな」
「だからさ、いいじゃん! ね? 一緒に行こ?」
アストリッドへの想いはどこへやら、眼中にもないように目の前を通り過ぎ、出ていくハキームを追いかけてバシールも一緒に部屋を出ていった。
そう遠くない昔の話だとザファルから聞いたことを思い出したアストリッドはハキームを見てからザファルを見た。
自然と向けられた顔と目が合い、ザファルは静かに頷きだけ返す。
「ハキームは運が良かった。砂嵐に遭うこともなく、毎日毎日オアシスに辿り着くことができた。彼にとっては幸か不幸かはわからんが」
「幸運でしたよ」
穏やかな声での返事にエリュシアが頷き、続きを紡ぐ。
「ある日、いつものようにオアシスに到着したハキームは何を思ったか、自分が持っていたボトルに水を汲んで北に向かい始めた。炎に包まれているかのような灼熱の中を歩き続け、アーン・ハディールに到着した。その場で祈りを捧げてから中に入った彼は、泉の場所がわかっているかのように進み、これまた運良く辿り着いた。枯れ果てた泉にな」
「私が見たあの美しい泉のことですか?」
「そうだ。あの水はハキームがオアシスを何万往復もして貯めた水だ」
「また大袈裟なことを。千回程度ですよ」
「ふふっ、そういうことにしておこう」
まったく、と呆れながらも笑うハキームの表情は優しい。彼もエリュシアと同じで、当時のことを鮮明に思い出しているのだろう。
「千回通ったところで泉が満杯になることはなかったが、私は彼の行動がとても気に入ったんだ。水を入れたからと言って何を願うわけでもない。ただ水を入れては去っていき、また翌日同じことをする。何年もその繰り返し。何かひとつでも願いを口にすればいいものを、何も願わず祈らない彼に我慢できずに私のほうから姿を現した」
「あれには腰を抜かすほど驚きましたな」
二人で似たような笑みを浮かべる様子は見ていて微笑ましく、アストリッドもつられて笑顔になる。
「あの泉は精霊の遊び場のようなものでな。そこに水が戻ってきたことに精霊たちは喜んでいた。そのことに感謝の意を表して精霊の加護を授けると言ったのだが、断られた。私には初めての経験だったな」
「精霊の加護など自分には過ぎたるものだと思ったのです。私が勝手にやったことに褒美は受け取れません」
「王である私の申し出を断る無礼な人間だと思ったが、そこが気に入った。だから私は彼に少しばかり力を与えることにした。精霊ではなく私のな」
「まさか……」
ハキームが強かったのはそのせいかと、思い当たる節に今度はザファルとバシールが顔を見合わせた。
誰が何をやってもハキームには勝てない。あの自己中心的なマルダーンですらハキームには甘かったことにようやく合点がいったのだ。
「私には必要ないと申し上げたのですが、エリュシア様は人の話を聞かないお方ですので」
「お前は私を楽しませてくれた存在だ。早く死なれては困るからな」
「エリュシア様のご加護のおかげで私はここで働くことができました」
「精霊王の加護……」
アストリッドには納得だった。
ルィムが星の精霊になったとき、エリュシアが言った言葉はそのままハキームに適用される。
精霊王の加護というとてつもなく巨大な恩恵を受けながらもハキームは自分の欲に生きる人生を送らなかった。
皇帝に仕える使用人として生きることを選び、力をひけらかすことなく今もこうして穏やかに生きている。
エリュシアにはそれがわかっていたから自分の加護を授けた。
素晴らしいことだと微笑むアストリッドの横でザファルは相変わらず怪訝な表情でハキームを見ている。
「ハキーム……お前はいつからここで働いているんだ?」
「今年で八十五年になります」
何故今まで聞いたことがなかったのかと自分で疑問に思ったが、それが吹き飛ぶほどの衝撃に絶句する。
「待って! ハキームって何歳!?」
バシールのイヴァ並の大きな声にもハキームは笑顔のまま答えた。
「八十を過ぎた辺りから数えるのをやめましたので」
「百八だ」
代わりにマルダーンが答え、それには笑みを崩さなかったハキームが「知っていたのか」と少し驚いた顔を見せた。
「だろ?」
すぐに微笑みへと戻し、頭を下げるように頷いたハキームをバシールは化け物でも見るような目で見ている。
「彼が気まぐれにも水を運ばなければ私はここに精霊を戻しはしなかった」
ハキームにとっては罪滅ぼしの気持ちもあった。
兵士たちは街にまでやってきて必死の形相で「精霊を見なかったか!?」と聞き続けていた。その光景は今思い出しても異常なもので、精霊が消えた理由はわからなかったが、当時の皇帝は国民を苦しめてでも自分たちが裕福であることに必死だったため、そのせいだろうとは思っていた。
許してほしかったわけじゃない。ただ、何かしたかった。ラフナディールの国民として何ができるか考えたとき、水を運ぶことだと思った。
『泉が枯れた!』
それがどういう意味かはわからなかったが、強く記憶に残っていたからの行動だった。
あの美しいオアシスの水を運んで、泉を戻そうと考えたのだ。
「私はあそこを精霊の水飲み場だと思っていたんですよ」
キョトンとした顔をするエリュシアにとってそれは初耳だったのだろう。そしてとても嬉しい発言でもあった。
「ああ、お前は本当に可愛いな」
「エリュシア様、おやめください」
「なんって可愛いんだ」
水飲み場だと思ったから一生懸命水を運んでいた。見ることもできない精霊のために。それがとても嬉しかったのだ。
ハキームの頭を撫で、頬に手を添えるエリュシアの慈愛に満ちた表情は見惚れるほど美しく、バシールは既に心奪われていた。
「アンタはうちのバカ息子に望むことはないのか?」
「お前のバカ息子のことはお前に任せる。親の教育不足としてお前を罰することもできるが」
「それはハキームに免じて許してくれ」
「おやおや、この老いぼれを盾に使うおつもりですかな?」
「生い先短い老人に使い道を見出してるんだ。悪いか?」
「父上、なんということを──」
言葉が過ぎると言おうとしたが、ハキームが声をあげて笑ったことでザファルの言葉が止まる。
「はっはっはっはっはっはっ! やはりあなたは面白いお方だ!」
これほどまでに笑ったハキームを見たことがある者はこの宮にはいないだろう。マルダーンでさえ笑みを浮かべながらも驚きが隠せていない。しかし、面白いものを見ているという感情が滲み出たこれまた珍しい表情にザファルは戸惑いっぱなしだった。
「あなたにお仕えしたことが私の人生の誉でございます」
「私が加護を与えたことよりもか?」
「それは感謝しておりますが、私は必要ないと申し上げた物。誉ではございません」
アストリッドやザファルたちにとって、彼らの会話はどこか別次元のように感じていた。
精霊王と先代皇帝の間で話すのが老執事。しかも会話の主導権を持っているのがその執事であることが不思議でならない。
だが、不思議と楽しそうに見えた。まるで旧友たちが集まって昔話に花を咲かせているような、そんな感じに。
「では、私はそろそろ自分の世界に戻ることにしよう。ルガシュの対応も私なしでは決めかねているだろうからな」
「迷惑かけたな」
「お互い様だ」
ふと、エリュシアがカトラを見た。
「カトラ、一つの感情に囚われ過ぎてはいけない。相手を滅ぼそうとして自分が滅びることになる。それを忘れないように」
頭を下げるカトラを横目で見ながら、ザファルは自分が言われている気分になった。
「ルィム、お前のその力を必要としている者が大勢いる。良い使い方をするんだよ」
「ルー!」
ルィムの明るい声に笑顔を返すとエリュシアは光とともに消えた。
その直後、誰もが息を吐き出し、一分ほど黙り込んでいた。
「ザファル、バシール」
真っ先に口を開いたのはマルダーンだった。
振り返った息子たちに向けて簡潔に言葉を発する。
「覚悟はいいか?」
何のことだ、とは聞かなかった。聞き返す必要はない。ザイードのことしかないのだから。
二人は黙って頷き、それを見たマルダーンは「よしっ」と膝を叩いて立ち上がり、まだ床で失神している息子を肩に担いで部屋を出ていった。
「エリュシアちゃん、マジで美人だったね」
「あなた様はそればかりですな、バシール様。皆様にまたボコボコにされますぞ?」
「ねぇねぇ、ハキーム」
「会いには行きませんよ」
「なんで!? ハキームが会いに行ったら絶対喜ぶって!」
「お父上は私を盾にし、あなた様は私を餌にするのですか?」
「使える者は親でも使えって教わったし」
「おやおや、ご立派な教育を受けたようですな」
「だからさ、いいじゃん! ね? 一緒に行こ?」
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