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十日前
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夜に降る雨は骨まで凍らせるほど冷たく感じた。
王都の外れ、王家の墓所は雨を含んだ黒土がぬかるみ、灯籠の炎さえ今は水底に閉じ込められたように頼りなく揺れている。
そこに一人、王妃アストリッドが膝をついていた。
掘り返したばかりの土はまだ柔らかく、掌に乗せればまだ彼がそこにいることを思い出させる。
彼女はそこに指を沈める──まるで土の奥に眠る夫フィルングをもう一度この腕に抱こうとするかのように。
「……フィルング」
声は雨粒のひとつと紛れ、闇に吸われた。
澄んだ花を思わせるかつての声音は泣き続けたせいで掠れている。
肩にかけた黒いヴェールは雨を吸って重く、鎖のように感じた。
「アストリッド様、お身体が冷えきってしまいますよ……」
葬儀が終わって五時間、アストリッドはこの場所から動こうとしなかった。誰が声をかけても首を振るだけ。
自らの胸をぎゅっと抱きしめ、喉の奥で悲鳴にも似た息を噛み殺す。
泣き叫びたい衝動はある。だが、もう声が出ない。だから今はただ、沈黙のまま自らを抱きしめる。
雨の匂いに混じり、鉄の匂いがした。
墓標に寄り添う白バラが折れ、その茎から微かに滲む青臭い匂いが、なぜか血の香を想起させる。
エルヴァングの王家の男たちは短命だ。
それを示す無言の証が、墓所を埋め尽くす石碑の列だった。父王、祖父王、さらにその前──享年は皆、不自然に若い。
懐かしい温室で、互いの指を絡めつつ語った夜を思い出す。
『これは呪いなんだよ。臆病という名の呪い。私の代でその呪いを絶たなければならない。わかってくれるね?』
彼はそう言った。そして二十七歳で倒れ、逝ってしまった。
ふいに、背後で衣擦れの音がした。
短い足取り、わずかな溜息。アストリッドは振り返らずとも、来訪者の白い法衣を想像できた。
国王の葬儀の日だというのに、神官の装いは変わらない。
「王妃陛下、お聞きしたいことがございます」
神官は錫杖の水晶に雨粒を光らせている。それは祈りの道具であるはずが、今は裁きの槍先のように見えた。
悲しみに暮れる人間に対し、労いの言葉一つかけない神官を睨んだのは、アストリッドの傍に立ち続けている侍女のイヴァだ。
「このようなときに、無神経にも何をお尋ねになると?」
イヴァの威嚇に神官は嘲笑に近い笑みを浮かべ、聖人の面を保ったまま口を開いた。
「ご懐妊されているかどうかの確認をしたいのです」
雨脚が音を失ったかのように感じた。耳鳴りが鼓膜を打ち、視界の彩度が落ちる。
誰のための優先事項か、そんなことは言うまでもない。
夫を弔う夜に、世継ぎの有無を問われた屈辱が胸を焼く。だが、怒りの火花を表に出す余裕はなく、アストリッドはただ硬直するばかりだった。
神官は待つ。答えを引き出すのではなく、沈黙の綻びを楽しむように。
やがて、アストリッドが震える唇を開きかけたとき、もう一つの影が割り込んだ。
「お引き取りください! 無礼ですよ!!」
侍女のイヴァがアストリッドに背を向けて立ちはだかった。
若いその声に怒りを滲ませ、今にも見えて燃え上がりそうだった。
神官はその様子に眉一つ動かさずに視線を流した。
「我々は王国の未来を案じているまで――」
「陛下の亡骸が冷え切らぬうちから未来未来と! 神に仕える者が人に寄り添うことも忘れて──何が未来ですか!」
イヴァの叫びが雨を裂くように響く。遠くの灯籠が揺らぐも、神官はため息を漏らし、錫杖を雨の地面に突いた。水晶が鈍い音を立てる。
「王妃様が答えられぬのなら、王家の未来を議するため、評議会にて裁定を下すほかありますまい。王亡き今、この国が求めるのは“寄り添い”ではなく“継承”──それこそが神の望まれる道です」
「あなたは──!」
「あなたも王妃であるならおわかりでしょう。あなたが果たさなければならなかった唯一の使命を、神が与えてくださるはずだった尊き命を無視したあなたに、このまま王妃を続ける資格があるかどうかを評議会が判断を下さなければならないのです」
「自分が何を言っているのかわかっているのですか!?」
冷たく言い放たれた言葉がアストリッドの心を抉る。
神官は踵を返し、ローブの裾を濡らして闇に溶けていく。
響いていた足音が消えた瞬間、堰が切れた。
アストリッドはすぐさま抱きしめるイヴァの胸で嗚咽を漏らす。
雨は強まり、荒い土が二人の膝を包む。
イヴァは震える手で何度も王妃の背を撫で続けた。
「アストリッド様、あの男の言葉に耳を貸してはいけません。彼は悪魔に心を捧げた男です。神官に相応しくありません」
イヴァはいつも王妃の味方だった。どんなときも笑顔で寄り添い続けてくれた。
ゆっくりと立ち上がらせ、肩を支えながら進んでいく。
「イヴァ……」
部屋へと戻って風呂に入り、身体を温めたアストリッドが横たわるベッドの側にイヴァはいた。
伸びてきた手を両手でしっかりと握りしめ、疲れきった顔を見つめる。
「はい」
「今日は……一緒に眠ってくれる?」
「もちろんです」
一人は耐えられない。
ずっと隣にあった温もりが、これから永遠に感じられないなど、アストリッドには耐えられない。
深い深い悲しみと絶望の中にいるアストリッドを一人にする気はなく、イヴァはゆっくりとベッドに上がってアストリッドの横に寝転んだ。
「ごめんなさい、イヴァ」
「ありがとう、と言ってください。いつものように」
嬉しいことがあるとイヴァはいつもアストリッドにハグをした。アストリッドは喜んでくれたし、ハグを返してくれた。
だから彼女の身体のサイズはよく知っている。
今、彼女は痩せ細っている。もともと頼りない身体ではあったが、今はそれよりも更に頼りない。
「今は何も考えずにお眠りください」
アストリッドはずっと眠れていない。不眠症のように眠れず、寝ても十分ほどで起きてしまうの繰り返し。
疲れ果てたせいでもいい。今はとにかく眠ってほしかった。心配になるほど深く、ぐっすりと何日も眠ってもかまわないから。
幼児を寝かせるように一定のリズムでアストリッドの背を叩くイヴァ自身、今夜は眠れそうになかった。
遠く、城郭の鐘が二つ重く鳴り響く。
その音に混ざった声が低く広がっていた。
「王は本当に毒で死んだのか?」
「あれだけ毒への耐性がある身体を蝕むほどの猛毒とは?」
「王妃の里は風の谷とか。あそこは呪術師が多いと聞く」
「呪いによる死を事故死に見せかけたのではないか?」
「アストリッドが嫁いできて間もなく前王も死んだのだぞ」
男たちの姿は影は闇に紛れ、声だけが残る。
「世継ぎもおらぬ今、王妃を処せば、王位は王妹レアナ経由で婿のヴァリム=カストールの手に転がり込む」
「義弟殿は早く戴冠を望んでおる。レアナ様も“王家の血は絶やさせない”と息巻いておるしのぅ」
「神官長には金貨を二袋。明朝、“神託”が下る手筈だ」
「王の侍医の舌は銀貨二枚で永遠に縛れる。王の死因を“王妃による故意の事故死”と書かせればよい」
「あとは、十日間──噂の火を絶やさぬことだ」
「民が石を投げれば評議会も逆らえまい」
暗闇の中で顔を見合わせた男たちがゆっくりとその場を離れていく。
アストリッドの処刑まであと十日──
王都の外れ、王家の墓所は雨を含んだ黒土がぬかるみ、灯籠の炎さえ今は水底に閉じ込められたように頼りなく揺れている。
そこに一人、王妃アストリッドが膝をついていた。
掘り返したばかりの土はまだ柔らかく、掌に乗せればまだ彼がそこにいることを思い出させる。
彼女はそこに指を沈める──まるで土の奥に眠る夫フィルングをもう一度この腕に抱こうとするかのように。
「……フィルング」
声は雨粒のひとつと紛れ、闇に吸われた。
澄んだ花を思わせるかつての声音は泣き続けたせいで掠れている。
肩にかけた黒いヴェールは雨を吸って重く、鎖のように感じた。
「アストリッド様、お身体が冷えきってしまいますよ……」
葬儀が終わって五時間、アストリッドはこの場所から動こうとしなかった。誰が声をかけても首を振るだけ。
自らの胸をぎゅっと抱きしめ、喉の奥で悲鳴にも似た息を噛み殺す。
泣き叫びたい衝動はある。だが、もう声が出ない。だから今はただ、沈黙のまま自らを抱きしめる。
雨の匂いに混じり、鉄の匂いがした。
墓標に寄り添う白バラが折れ、その茎から微かに滲む青臭い匂いが、なぜか血の香を想起させる。
エルヴァングの王家の男たちは短命だ。
それを示す無言の証が、墓所を埋め尽くす石碑の列だった。父王、祖父王、さらにその前──享年は皆、不自然に若い。
懐かしい温室で、互いの指を絡めつつ語った夜を思い出す。
『これは呪いなんだよ。臆病という名の呪い。私の代でその呪いを絶たなければならない。わかってくれるね?』
彼はそう言った。そして二十七歳で倒れ、逝ってしまった。
ふいに、背後で衣擦れの音がした。
短い足取り、わずかな溜息。アストリッドは振り返らずとも、来訪者の白い法衣を想像できた。
国王の葬儀の日だというのに、神官の装いは変わらない。
「王妃陛下、お聞きしたいことがございます」
神官は錫杖の水晶に雨粒を光らせている。それは祈りの道具であるはずが、今は裁きの槍先のように見えた。
悲しみに暮れる人間に対し、労いの言葉一つかけない神官を睨んだのは、アストリッドの傍に立ち続けている侍女のイヴァだ。
「このようなときに、無神経にも何をお尋ねになると?」
イヴァの威嚇に神官は嘲笑に近い笑みを浮かべ、聖人の面を保ったまま口を開いた。
「ご懐妊されているかどうかの確認をしたいのです」
雨脚が音を失ったかのように感じた。耳鳴りが鼓膜を打ち、視界の彩度が落ちる。
誰のための優先事項か、そんなことは言うまでもない。
夫を弔う夜に、世継ぎの有無を問われた屈辱が胸を焼く。だが、怒りの火花を表に出す余裕はなく、アストリッドはただ硬直するばかりだった。
神官は待つ。答えを引き出すのではなく、沈黙の綻びを楽しむように。
やがて、アストリッドが震える唇を開きかけたとき、もう一つの影が割り込んだ。
「お引き取りください! 無礼ですよ!!」
侍女のイヴァがアストリッドに背を向けて立ちはだかった。
若いその声に怒りを滲ませ、今にも見えて燃え上がりそうだった。
神官はその様子に眉一つ動かさずに視線を流した。
「我々は王国の未来を案じているまで――」
「陛下の亡骸が冷え切らぬうちから未来未来と! 神に仕える者が人に寄り添うことも忘れて──何が未来ですか!」
イヴァの叫びが雨を裂くように響く。遠くの灯籠が揺らぐも、神官はため息を漏らし、錫杖を雨の地面に突いた。水晶が鈍い音を立てる。
「王妃様が答えられぬのなら、王家の未来を議するため、評議会にて裁定を下すほかありますまい。王亡き今、この国が求めるのは“寄り添い”ではなく“継承”──それこそが神の望まれる道です」
「あなたは──!」
「あなたも王妃であるならおわかりでしょう。あなたが果たさなければならなかった唯一の使命を、神が与えてくださるはずだった尊き命を無視したあなたに、このまま王妃を続ける資格があるかどうかを評議会が判断を下さなければならないのです」
「自分が何を言っているのかわかっているのですか!?」
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神官は踵を返し、ローブの裾を濡らして闇に溶けていく。
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アストリッドはすぐさま抱きしめるイヴァの胸で嗚咽を漏らす。
雨は強まり、荒い土が二人の膝を包む。
イヴァは震える手で何度も王妃の背を撫で続けた。
「アストリッド様、あの男の言葉に耳を貸してはいけません。彼は悪魔に心を捧げた男です。神官に相応しくありません」
イヴァはいつも王妃の味方だった。どんなときも笑顔で寄り添い続けてくれた。
ゆっくりと立ち上がらせ、肩を支えながら進んでいく。
「イヴァ……」
部屋へと戻って風呂に入り、身体を温めたアストリッドが横たわるベッドの側にイヴァはいた。
伸びてきた手を両手でしっかりと握りしめ、疲れきった顔を見つめる。
「はい」
「今日は……一緒に眠ってくれる?」
「もちろんです」
一人は耐えられない。
ずっと隣にあった温もりが、これから永遠に感じられないなど、アストリッドには耐えられない。
深い深い悲しみと絶望の中にいるアストリッドを一人にする気はなく、イヴァはゆっくりとベッドに上がってアストリッドの横に寝転んだ。
「ごめんなさい、イヴァ」
「ありがとう、と言ってください。いつものように」
嬉しいことがあるとイヴァはいつもアストリッドにハグをした。アストリッドは喜んでくれたし、ハグを返してくれた。
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