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救出
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「タ、タウロス神官……」
「私を見るな! こんなものは全てでっち上げた! 大体あれはなんだ!? あれこそ幻術だ! そうだろう!?」
誰もタウロスの言葉に頷きはしなかった。ここにザファルが来ている時点でフィルングは全て見透かしていたということ。
これ以外の証拠も彼は持っているかもしれない。それが彼が所属するセフィラ聖堂会にでもバレればタウロスは神官としての地位を失う可能性がある。
今ここで切り抜けられれば再起はできる。
タウロスは必死だった。
「陛下のあのお姿を見て……あの言葉を嘘だと、誰が信じるんだ!!」
「俺たちを騙しやがって!!」
「悪魔はお前たちだ!!」
「アストリッド様がフィルング様を殺すはずがないだろ!! ふざけるんじゃねぇ!!」
アストリッドに向けられていた民の怒りは今や貴族とタウロスへのものとなり、木片と石が投げられる。それから身を守るように衛兵たちが前に出て盾を構える。
「逃げるな! 卑怯者!!」
「お前たちは国から出ていけ!!」
「逃すな!! 追え!!」
逃げようとする貴族たちを民が囲む。腹を空かせた肉食獣に囲まれたような状態に貴族たちは「知らなかったんだ!」と必死に弁明を続けるも、向けられる怒りの温度に変化はなく、むしろ、まだ言い逃れしようとするその姿勢に怒りは更に強くなる。
「タウロス様、こちらから──うわっ!!」
タウロスだけでもと逃そうとする衛兵は盾を吹き飛ばすほどの突風に尻餅をついた。
そして突如目の前に竜巻のような渦が発生したかと思えば、それが消えると同時に人が現れた。
「ちょっと待ってくれねぇか?」
熊のような大柄の男に驚いたのはタウロスだけでなくアストリッドも同じ。
「お父様……」
最後に会ったのは谷を出る十年前。それ以来、一度も会っていない。もう二度と会うことはないと思っていた相手。
「ヴァルグ様だ」
「嘘だろ……なんで……」
「アストリッド様を助けに来たに決まってんだろ!」
民も同じで、十年前のフィルングたちの結婚式で見たのが最初で最後。
風の谷の掟を知っているエルヴァングの民は風の谷の族長が現れたことに驚きを隠せないでいた。
「だからこんな国に嫁ぐのはやめろと言ったんだ。腐敗しきった国の王妃なんざ、甘ちゃんのお前に務まるわけがねぇって」
「お父様、私は──」
「守られてたから王妃をやれてただけだ。なんの力もねぇお前が一国を背負うってのは夢物語で、大義すぎたんだよ」
返す言葉もない。
守られなければ何もできない子供と同じ。二十七歳にしてようやく気付いた厳しい現実。
手を縛っていた縄が突然切れたことによってバランスを崩すも、それをザファルが支えた。
「大丈夫か?」
「ザファル皇子……いえ、皇帝陛下。ありがとうございます」
きつく縛られていたせいで力が入らないが、風を支えに歩けはする。
自分の足で立とうとするアストリッドを抱えようと伸ばした手をザファルは引っ込めた。
「お前さん、ザファルとか言ったか?」
「はい」
「その馬鹿娘を連れて風の谷に向かってくれ」
「あなたは何を?」
「タウロスって神官と話があんだわ」
「わ、私にはない!」
「お前にはなくても俺にはあるんだよ」
ザファルのは首に刃を突きつけられている感覚だったが、ヴァルグのは違う。既に首に噛みつかれている感覚だった。何もされてはいないのに、息苦しくなって、動けない。
「行け」
アストリッドを抱き上げたザファルの前に民が両手を広げて立ちはだかった。
「ま、待ってくれ! アストリッド様を連れて行くのか!?」
「そうだ。どけ」
「王妃を連れて行かないでくれ!」
「この国にはアストリッド様が必要だ!」
ザファルの表情が一気に険しいものへと変化する。
「手のひら返しもここまで来ると清々しいな、エルヴァングの民よ」
瞳と同調する声に大袈裟なまでにビクッと肩を跳ねさせるも、まだ対峙したまま。
「神官どもの虚偽を信じ、王妃に石を投げ、魔女と罵られながら火刑に処される姿を見届けようとしていたのはお前たちだろう」
「騙されていたんだ! 俺たちには真相を知る術がない! 神官が嘘をつくなんて思わないじゃないか! 王妃をハメようとするなんて誰も思わない!」
「そうよ! 私たちだって王妃様が王を殺したなんて信じられなかったのよ!」
「ならば最後まで疑い続けるべきだったな」
「アストリッド様! 行かないでください!」
ザファルは話にならないとアストリッド本人に訴えかけようとする民の前に手を翳すと大雨のような水が大量に降り注いだことで民が呆然とする。
泉がひっくり返ったのではないかと思うほどの水量は民を黙らせるには充分だった。
「愛していた者たちに信じてもらえず、非難され、処刑を望まれて傷つかない者がいるのか? 母は子に愛を無償で与えなければならないのか? 謝れば全てなかったことになると思っているのか? 自分たちは知らなかったと喚けば許してもらえるとでも?」
「で、でも私たちは本当に──」
「王妃とはお前たちにとって都合の良い存在ではない。裏切ったのは彼女ではなくお前たちだ」
「私たちの母よ!」
「悪魔だと罵っておきながらか?」
「そ、それは──」
「悪魔なのはお前たちだと知れ」
それを最後にザファルは民がどんな言葉をかけてこようとも足を止めず、自分の馬に戻ってアストリッドを乗せて走り出す。
「皇帝陛下、お願いがあります!」
馬に揺られながら声を張るアストリッドにザファルは静かに声を返す。
「どうした?」
「侍女のイヴァという娘を探したいんです! あの子だけは守らなければ──!」
「わかった。探させよう」
ザファルの返事に迷いはなかった。
後ろを走っていた部下に命じると二名がエルヴァングの城へと走っていく。
「イヴァ……どうか無事でいて……」
広場からイヴァの声が聞こえることはなかった。姿を探してみたけれど、見つからなかった。
どこか別の場所に幽閉されているのかもしれないと危惧している。
彼らは何をするかわからない。偽装工作がバレた彼らにとって証人となるイヴァの存在は邪魔でしかないだろう。ならば暴露する前に処分してしまえと考えるのが彼だとアストリッドは思った。
「……少し、力を貸して……」
「ん?」
馬には乗ったことがないため詳しくないが、歩様がガタついているのはわかる。疲れているのかもしれない。
既に身体から栄養が抜けているアストリッドにとって風がどこまで動くのかわからないが、呟きながら馬の身体を撫でた。
「な、なんだ!? どうしたんだ!?」
後ろを走っていたザファルの部下たちが突然元気を取り戻したようにスピードを上げる馬に驚き、声を上げる。
蹄と砂の間に薄い旋風が発生していることには誰も気付いていない。
過酷なレースのように走り続けてきた馬たちが疲労を感じていないかのように走り始めたことにも驚きを隠せなかった。
「王妃、水を。少しでもいい。飲んでくれ」
「ありがとうございます」
差し出された水筒につける唇も乾ききって皮が捲れている。とても王妃として生きてきた女の唇とは思えないほどひどい状態だ。
「ミント……?」
「ミントとレモンの砂糖漬けが入っている」
「美味しい……」
これで瞬く間に回復というわけにはいかない。水もイヴァに促されるまで飲まなかったアストリッドの身体は飢餓状態。
ただ、甘酸っぱいこれが少しアストリッドを癒してくれる。
ザファルにとって安心できる材料はまだない。今はただ、一刻も早く休める場所に辿り着く必要がある。
馬がスピードを上げてくれるのは幸いだと真っ直ぐに風の谷を目指した。
横目に彼らを見送ったヴァルグは腕を組み、仁王立ちになってタウロスの前に立った。
「フィルングとは婚前に交わした契約が多くてなァ。亡くなったあと、権利はフィルングの血縁者ではなく、風の谷が持つことも契約の一つだ」
「契約!? わ、私は聞いていない!」
「たかが神官のお前に話す必要なんざねぇだろうさ」
「わ、私は神官だぞ!」
「そうだな。今回の所業をセフィラ聖堂会とやらに伝えればお前は追放だろうなァ」
神官にとって協会から追い出されるということは死にも等しい。協会は絶対に神を欺くような行為は許さない。嘘さえも許さない協会が不正者を許すはずがないのだ。
それなりの地位を手に入れたタウロスにとって報告だけは避けなければならないこと。
「時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり話そうぜ、今回の冤罪事件について、俺と、それから民の皆様とよォ」
ニッと歯を見せて笑うヴァルグに震えるしかないタウロスは風に押されるまま椅子に腰掛けた。ゆっくりと背中を押す優しい風だが、タウロスはこのまま風に呑まれて殺されるんじゃないかと怯えてすらいた。
「私を見るな! こんなものは全てでっち上げた! 大体あれはなんだ!? あれこそ幻術だ! そうだろう!?」
誰もタウロスの言葉に頷きはしなかった。ここにザファルが来ている時点でフィルングは全て見透かしていたということ。
これ以外の証拠も彼は持っているかもしれない。それが彼が所属するセフィラ聖堂会にでもバレればタウロスは神官としての地位を失う可能性がある。
今ここで切り抜けられれば再起はできる。
タウロスは必死だった。
「陛下のあのお姿を見て……あの言葉を嘘だと、誰が信じるんだ!!」
「俺たちを騙しやがって!!」
「悪魔はお前たちだ!!」
「アストリッド様がフィルング様を殺すはずがないだろ!! ふざけるんじゃねぇ!!」
アストリッドに向けられていた民の怒りは今や貴族とタウロスへのものとなり、木片と石が投げられる。それから身を守るように衛兵たちが前に出て盾を構える。
「逃げるな! 卑怯者!!」
「お前たちは国から出ていけ!!」
「逃すな!! 追え!!」
逃げようとする貴族たちを民が囲む。腹を空かせた肉食獣に囲まれたような状態に貴族たちは「知らなかったんだ!」と必死に弁明を続けるも、向けられる怒りの温度に変化はなく、むしろ、まだ言い逃れしようとするその姿勢に怒りは更に強くなる。
「タウロス様、こちらから──うわっ!!」
タウロスだけでもと逃そうとする衛兵は盾を吹き飛ばすほどの突風に尻餅をついた。
そして突如目の前に竜巻のような渦が発生したかと思えば、それが消えると同時に人が現れた。
「ちょっと待ってくれねぇか?」
熊のような大柄の男に驚いたのはタウロスだけでなくアストリッドも同じ。
「お父様……」
最後に会ったのは谷を出る十年前。それ以来、一度も会っていない。もう二度と会うことはないと思っていた相手。
「ヴァルグ様だ」
「嘘だろ……なんで……」
「アストリッド様を助けに来たに決まってんだろ!」
民も同じで、十年前のフィルングたちの結婚式で見たのが最初で最後。
風の谷の掟を知っているエルヴァングの民は風の谷の族長が現れたことに驚きを隠せないでいた。
「だからこんな国に嫁ぐのはやめろと言ったんだ。腐敗しきった国の王妃なんざ、甘ちゃんのお前に務まるわけがねぇって」
「お父様、私は──」
「守られてたから王妃をやれてただけだ。なんの力もねぇお前が一国を背負うってのは夢物語で、大義すぎたんだよ」
返す言葉もない。
守られなければ何もできない子供と同じ。二十七歳にしてようやく気付いた厳しい現実。
手を縛っていた縄が突然切れたことによってバランスを崩すも、それをザファルが支えた。
「大丈夫か?」
「ザファル皇子……いえ、皇帝陛下。ありがとうございます」
きつく縛られていたせいで力が入らないが、風を支えに歩けはする。
自分の足で立とうとするアストリッドを抱えようと伸ばした手をザファルは引っ込めた。
「お前さん、ザファルとか言ったか?」
「はい」
「その馬鹿娘を連れて風の谷に向かってくれ」
「あなたは何を?」
「タウロスって神官と話があんだわ」
「わ、私にはない!」
「お前にはなくても俺にはあるんだよ」
ザファルのは首に刃を突きつけられている感覚だったが、ヴァルグのは違う。既に首に噛みつかれている感覚だった。何もされてはいないのに、息苦しくなって、動けない。
「行け」
アストリッドを抱き上げたザファルの前に民が両手を広げて立ちはだかった。
「ま、待ってくれ! アストリッド様を連れて行くのか!?」
「そうだ。どけ」
「王妃を連れて行かないでくれ!」
「この国にはアストリッド様が必要だ!」
ザファルの表情が一気に険しいものへと変化する。
「手のひら返しもここまで来ると清々しいな、エルヴァングの民よ」
瞳と同調する声に大袈裟なまでにビクッと肩を跳ねさせるも、まだ対峙したまま。
「神官どもの虚偽を信じ、王妃に石を投げ、魔女と罵られながら火刑に処される姿を見届けようとしていたのはお前たちだろう」
「騙されていたんだ! 俺たちには真相を知る術がない! 神官が嘘をつくなんて思わないじゃないか! 王妃をハメようとするなんて誰も思わない!」
「そうよ! 私たちだって王妃様が王を殺したなんて信じられなかったのよ!」
「ならば最後まで疑い続けるべきだったな」
「アストリッド様! 行かないでください!」
ザファルは話にならないとアストリッド本人に訴えかけようとする民の前に手を翳すと大雨のような水が大量に降り注いだことで民が呆然とする。
泉がひっくり返ったのではないかと思うほどの水量は民を黙らせるには充分だった。
「愛していた者たちに信じてもらえず、非難され、処刑を望まれて傷つかない者がいるのか? 母は子に愛を無償で与えなければならないのか? 謝れば全てなかったことになると思っているのか? 自分たちは知らなかったと喚けば許してもらえるとでも?」
「で、でも私たちは本当に──」
「王妃とはお前たちにとって都合の良い存在ではない。裏切ったのは彼女ではなくお前たちだ」
「私たちの母よ!」
「悪魔だと罵っておきながらか?」
「そ、それは──」
「悪魔なのはお前たちだと知れ」
それを最後にザファルは民がどんな言葉をかけてこようとも足を止めず、自分の馬に戻ってアストリッドを乗せて走り出す。
「皇帝陛下、お願いがあります!」
馬に揺られながら声を張るアストリッドにザファルは静かに声を返す。
「どうした?」
「侍女のイヴァという娘を探したいんです! あの子だけは守らなければ──!」
「わかった。探させよう」
ザファルの返事に迷いはなかった。
後ろを走っていた部下に命じると二名がエルヴァングの城へと走っていく。
「イヴァ……どうか無事でいて……」
広場からイヴァの声が聞こえることはなかった。姿を探してみたけれど、見つからなかった。
どこか別の場所に幽閉されているのかもしれないと危惧している。
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「……少し、力を貸して……」
「ん?」
馬には乗ったことがないため詳しくないが、歩様がガタついているのはわかる。疲れているのかもしれない。
既に身体から栄養が抜けているアストリッドにとって風がどこまで動くのかわからないが、呟きながら馬の身体を撫でた。
「な、なんだ!? どうしたんだ!?」
後ろを走っていたザファルの部下たちが突然元気を取り戻したようにスピードを上げる馬に驚き、声を上げる。
蹄と砂の間に薄い旋風が発生していることには誰も気付いていない。
過酷なレースのように走り続けてきた馬たちが疲労を感じていないかのように走り始めたことにも驚きを隠せなかった。
「王妃、水を。少しでもいい。飲んでくれ」
「ありがとうございます」
差し出された水筒につける唇も乾ききって皮が捲れている。とても王妃として生きてきた女の唇とは思えないほどひどい状態だ。
「ミント……?」
「ミントとレモンの砂糖漬けが入っている」
「美味しい……」
これで瞬く間に回復というわけにはいかない。水もイヴァに促されるまで飲まなかったアストリッドの身体は飢餓状態。
ただ、甘酸っぱいこれが少しアストリッドを癒してくれる。
ザファルにとって安心できる材料はまだない。今はただ、一刻も早く休める場所に辿り着く必要がある。
馬がスピードを上げてくれるのは幸いだと真っ直ぐに風の谷を目指した。
横目に彼らを見送ったヴァルグは腕を組み、仁王立ちになってタウロスの前に立った。
「フィルングとは婚前に交わした契約が多くてなァ。亡くなったあと、権利はフィルングの血縁者ではなく、風の谷が持つことも契約の一つだ」
「契約!? わ、私は聞いていない!」
「たかが神官のお前に話す必要なんざねぇだろうさ」
「わ、私は神官だぞ!」
「そうだな。今回の所業をセフィラ聖堂会とやらに伝えればお前は追放だろうなァ」
神官にとって協会から追い出されるということは死にも等しい。協会は絶対に神を欺くような行為は許さない。嘘さえも許さない協会が不正者を許すはずがないのだ。
それなりの地位を手に入れたタウロスにとって報告だけは避けなければならないこと。
「時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり話そうぜ、今回の冤罪事件について、俺と、それから民の皆様とよォ」
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