「運命の番」だと胸を張って言えるまで

黎明まりあ

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第4章 王宮生活<大祭準備編>

44、正式なお茶会<前>

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 ひときわ華やかな装飾そうしょくほどこされた扉が侍女たちの手によって開けると、そこはまるで別世界だった。
 太陽こうが真っ白いかべに反射され、金で縁取ふちどられた上品な調度品ちょうどひんを優美に照らし出す。
 いたる所にさり気なく、しかし部屋のぬしのセンスの良さを表すかのように、季節の花々が絶妙な配置でかざられていた。
 真ん中に大輪の花がえがかれているクリーム色の絨毯じゅうたんに、薄い青緑の生地に可憐かれんな小花が金の糸で刺繍ししゅうされた、きゃくの曲線が美しい椅子が、円形のテーブルを囲むようにして配置されている。

 僕が普段生活している宮は、使用されている素材などは王族という立場上、最高級かつ上品なものだったが、シルヴィス様が軍職という職業がらか、シンプルなものが多く、全体的にスッキリとした印象であった。
 そのため、レイラ様に続いて部屋に足を踏み入れた僕は、2、3歩進むと、見たこともない部屋の絢爛けんらんさに、思わず足が止まってしまう。
 レイラ様だけが、そのまま躊躇ちゅうちょなく中へ進まれ、テーブルセットを背にしてたたずんでいた、それぞれ雰囲気が違う3人の美女の前で立ち止まった。

 前王はいろこのみ、それゆえ多くの妃や王子がいた。
 現王が王太子になるまでは、王子たちだけでなく、その母親である妃たちまでも巻き込んだ苛烈かれつな後継者争いが繰り広げられたことは、国民にもよく知られていることだ。
 その結果として、王子たちだけでなく妃の数も、大幅に減らすことになったことも。

 現王の母上様は前王妃であり、妃という立場にしては珍しく、第二妃であったレイラ様とは仲が良かったらしい。
 だからであろうか、前王妃が現王の幼少期に病で亡くなられた時、レイラ様が現王の後見人となり、シルヴィス様と一緒に育てられたと聞いている。
 そういう背景もあり、レイラ様は事実上、王太后たいごうであり、この部屋の誰よりも高貴な身分にあたる。
 そのため、3人の美女のうち、真ん中に立っていたひときわ豪華な衣装を身につけた女性が、レイラ様に挨拶をするため、一歩前に出て礼を取った。

「レイラ様、ようこそお越しになられました。
 やはりお1人で……」

 一旦いったん、そこで女性は言葉を止めると、いまだ出入口付近にとどまっていた僕に視線を向け……続けてこう申された。

「失礼いたしました。
 もしかして、そちらにいるのは、シルヴィス妃のレンヤードで?」

 レイラ様は女性に問われて、入口付近にいた僕を手まねきしてくれた。
 僕はハッとして、まるで夢から覚めたかのように目を何回かまばたかせると、急いでレイラ様の後ろに向かい、貴人きじんのお2人に対し、敬意と謝罪のため、ひざまずいて礼を取った。

「そうだ、事情を聞いたところ、レンヤードは長らく体調不良で伏せっていたため、シルヴィスが帰還するまでは、表立って動くことを控えさせると、シルヴィスが事前に決めていたようだ。
 なので、シルヴィスが戦地におもむさい、シルヴィス宮宛ての書状は、全てシルヴィスの執務室宛てに届くように手配しておった。
 だからそなたの送った招待状は、レンヤード本人の手元に渡っておらず、本人は私がたずねるまで、この茶会のことは、全く知らなかったのだ。
 申し訳ないが、今回はそういう事情があるため、わたくしめんじて、レンヤードを許してやってくれないだろうか?」

 レイラ様が言い終わると同時に、僕はさらに深くこうべを垂れ、自らも謝罪の言葉を述べる。

「ご招待いただいたのに、本日まで気が付かなかったこと、大変申し訳ございませんでした」

 すると突如とつじょとして、僕の頭上で、女性の柔らかな笑い声が響いた。

「まぁ、そういう事情だった訳ですね。
 わたくしも王に命じられて、慣例かんれいしたがい招待の手紙を出しましたが、シルヴィスが不在の中、それ以上の状況を把握はあく出来ませんでした。
 それに、目覚めたレンヤードのためにわたくしの1番信頼のおける侍女のリリーを貸し出しましたが、今回のグーノー神祭は、例年より大規模に行うため、恥ずかしながら私の手が回らず、レンヤードがこころよ承諾しょうだくしてくれたのもあって、リリーを呼び戻してしまいましたの。
 こちらこそ、申し訳なかったですわ。
 さぁ、いつまでもそうしていないで、立ってちょうだい、レンヤード」

 王妃の許しを受け、僕は恐る恐る立ち上がると、顔を正面に向けた。

「初めまして。
 私は王妃のカメリーア。
 改めまして、ようこそ私の茶会へ、レンヤード。
 歓迎するわ」

 部屋の絢爛けんらんさに負けない、うるわしい美女がニッコリと笑った。
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