「運命の番」だと胸を張って言えるまで

黎明まりあ

文字の大きさ
56 / 138
第4章 王宮生活<大祭準備編>

55、苦闘の供物管理<後>

しおりを挟む
 やはり王族として顔が知られているクローネと一緒だったからか、僕が危惧きぐしていた教会本部の受付で止められるようなことはなく、僕たちはあっさりと中へ入ることが出来た。

 そしてその日は、やはり僕にとって幸運な日だったようだ。
 僕たちがいた受付近くを、偶然通りかかったロイさんがいち早く僕たちに気づいてくれたおかげで、僕たちはロイさんを呼び出してもらうこともなく、すぐに本人と会えたのであった。
 さらにロイさんから、僕の相談にのってもらえる了承を 得たところで、この後用事があるクローネは自宮へ帰ることになった。

「クローネ、たくさん力になってくれて、本当にありがとう」

 僕は感謝を込めて、クローネにひざをついて礼を取った。

「そこまで礼を言われること、私はしておりませんので、お気になさらず。
 それと、レンヤード様のほうが私よりくらいが上なので、私に対して礼を取る必要はございません。
 早くお立ちください」

 あわててクローネは僕に駆け寄ってきて、僕が立つのを手伝ってくれる。
 同時にクローネは、僕の腕を支えながら、こうも忠告してくれた。

「長い間、シルヴィス様は妃を迎えることはなかったので、妃の立場において、ローサ様は今まで王妃様にいで、ナンバー2の立場にいらっしゃいました。
 高位こうい貴族出身のローサ様は、所謂いわゆる気位きぐらいが高く、常に称賛しょうさんされることをこのみます。

 レンヤード様が直接、ローサ様に何かをした訳ではございません。
 ですが茶会でローサ様は、これから自身より上の立場に立つレンヤード様を、こころよく思っていないように、見受けられました。
 あくまでも噂ですが、ローサ様の不興ふきょうを買った侍女は、ひどい扱いを受ける、と耳にしたことがあります。
 レンヤード様、今後もローサ様には、十分、お気をつけくださいませ」

 思ってもみなかったクローネの真摯しんしな忠告に、僕は驚いてクローネを見つめた。
 目覚めて以来、セリム様たち以外の温かな対応に、再び僕の心は熱くなる。

 クローネに何かお礼がしたい!

 そう思った僕は、唐突とうとつにクローネに話しかけた。

「クローネ、手を借りてもいい?」
「はっ……はい、どうぞ」

 クローネの手はまだ僕の腕を支えたままだったので、その手をそのまま、僕の額に当てる。
 僕の突然の言動にクローネはあまりにも驚いたようで、そのまま固まったように動かなくなってしまった。
 その時クローネが見せた無防備むぼうびな表情が、僕にはとても可愛く思えて、思わず僕はクスリと小さく笑ってしまう。
 それから僕は、静かに息をき、呼吸をととのえた。

 うん、どうやら、やれそうだ

「クローネに祝福を」

 僕がそう言葉をつむぐと、僕とクローネが大きな暖かい光に包まれるような、不思議な感覚におちいる。
 気がつくとあたりのざわめきは消え、シーンとした静寂せいじゃくだけが残り……僕とクローネは大勢の神官様たちに取り囲まれていた。

「レン……レンヤード様……こっ、これは……」

 僕のすぐ横にいたロイさんが、呆然とした様子でつぶやく。

 しまった!
 ここ、まだ、教会本部の廊下だった!

「ごっ……ごめん、クローネ、こんな廊下で。
 クローネの心づかいが嬉しくて、何か僕もお返ししたくなって……つい……」

 意図しない注目を浴びさせてしまったことを、僕は急いでクローネに謝る。
 そんな僕にクローネは、驚きの表情から一転して、すごく幸せそうな空気をまとうと、逆に僕に対して正式な礼をした。

「私に祝福を与えてくださり、大変感謝いたします、レンヤード様」
「クローネこそ、そんなことしなくていいよ」

 急いで僕もクローネの礼をこうとしたところ、なぜか僕以上に慌てたロイさんから、近くの部屋へ入るよう誘導されてしまう。

「レンヤード様、ここは目立ちますから、こちらへ。
 何を見ておる!
 皆も解散せよ!」

 ロイさんから背中を押されて強制移動させられている僕を、クローネは礼を解かずにずっと見送ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

処理中です...