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第5章 王宮生活<大祭編>
73、涙の謝罪<前>
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皆の視線が諸侯らの声に向けられると、ローサは満足した笑みを浮かべ、再び自分の口元を扇で隠しながらこう言った。
「犯人探しも大事ですが、今は一旦、レンヤード様の髪色を持つ男性が怪しいということで、取り敢えず置いておきましょうか?
儀式開始時刻が迫ってますし、こちらで何かが起こったことを知った諸侯らを、宥めることが先決ですわ。
どのみち諸侯らに手渡す予定だった供物はすぐには用意できないのですから。
そうですよね?レンヤード様!」
「そっ……そうだ……すまない」
俯いたまま答えた僕に対して、ローサはクスクス笑った。
なぜだ?
この場で不自然な笑い声に釣られて、僕はやっと顔を上げてみたが、その頃にはローサの笑い声は止み、代わりに深く大きなため息を、僕に向かって吐き出されただけだった。
「仕方ありませんね。
こうなったら、前任者としての私の責任も少しばかりありますので……私が諸侯らの不満を収めますわ」
「でも、どうやって?」
思わず声に出た僕の疑問に、ローサはさも呆れたといった表情と、尖った声色で答える。
「まぁ、レンヤード様、こういった場合する事はただ1つ、謝罪ですわ。
しゃ・ざ・い!
全く、前代未聞の事件ですわ……諸侯らに渡す穀物の苗がないなんて!
今すぐに代わりとなる供物はなく、これと言った手立てもない。
そうなると潔く事情を話して、謝るしかないのです!」
そうローサは一気に捲し立てると、侍女たちに踏み躙られた苗を再び供物台に乗せ、持つように言いつけた。
そして、まだこの状況についていけない僕の手を乱暴に掴み、諸侯らの前に引っ張って行こうとする。
「お待ちください、ローサ様。
レンヤード様に……」
慌ててロイがローサを止めようとするが、ローサはロイをギロリと睨むと、低い声でこう言い放った。
「副神官長、では私とレンヤード様に代わって、あなたが謝罪する?
もっともあなたが謝罪するというなら、この件は教会側の責となるのだけど、それで本当にいいのかしら?」
「そっ、それは……」
ロイがそれ以上言葉を重ねる前に、僕がすぐさま遮る。
「ロイ、それはダメだ!
供物の管理は王族が担当だ!
教会を巻き込む気はない。
分かった、謝罪は私がする。
だから、ローサ、手を離してくれ。
私は、逃げも隠れもしない」
僕がそう言うと、ローサは僕の手を憎々しげに、すぐさまパッと払った。
「では、早く行きますわよ!
急がないと、儀式が始まってしまうわ」
ローサはそう言うと、列席している諸侯たちの最前列に向かって、さっさと歩き出す。
僕も慌ててローサの後に続こうとすると、ロイから声をかけられた。
「分かりました、レンヤード様。
では、せめてお側にいさせてください」
本当は、足が震えるほど怖い
だけど王族であるが故に、行かなければならない
そんな今の僕にとってロイの申し出は、大変心強いものだった。
「ありがとう、ロイ」
僕はロイにお礼を言うと、ローサに追いつくよう駆け出す。
すぐにローサに追いつくと、僕は息を整えながら心の準備もした。
祭壇の袖から出る一歩前でローサは一度足を止め、すぐ後ろにいる僕をチラッと振り返り確認してきた。
「覚悟はできまして?
レンヤード様?」
「あぁ」
僕が迷いなく返事したのを見届けるとローサは、ほぼ全席埋まった諸侯らの前へ怯む事なく歩いていく。
あっ、出てきたぞ!
ローサ様、ご説明を!
後ろにいるのは、シルヴィス妃か?
何があったのだ?
誰か教えてくれ!
段々と声が大きくなる一方の諸侯らに対して、祭壇前の中央でローサは立ち止まり一喝した。
「静かに!
これより説明いたします」
ローサのひと声に諸侯らはいっせいに口を閉じ、前に並んだ僕たちをじっと見つめる。
すごい圧だ
まだ、ただ立っているだけの僕だったが、心臓の鼓動がうるさいくらいに鳴り響いていた。
「犯人探しも大事ですが、今は一旦、レンヤード様の髪色を持つ男性が怪しいということで、取り敢えず置いておきましょうか?
儀式開始時刻が迫ってますし、こちらで何かが起こったことを知った諸侯らを、宥めることが先決ですわ。
どのみち諸侯らに手渡す予定だった供物はすぐには用意できないのですから。
そうですよね?レンヤード様!」
「そっ……そうだ……すまない」
俯いたまま答えた僕に対して、ローサはクスクス笑った。
なぜだ?
この場で不自然な笑い声に釣られて、僕はやっと顔を上げてみたが、その頃にはローサの笑い声は止み、代わりに深く大きなため息を、僕に向かって吐き出されただけだった。
「仕方ありませんね。
こうなったら、前任者としての私の責任も少しばかりありますので……私が諸侯らの不満を収めますわ」
「でも、どうやって?」
思わず声に出た僕の疑問に、ローサはさも呆れたといった表情と、尖った声色で答える。
「まぁ、レンヤード様、こういった場合する事はただ1つ、謝罪ですわ。
しゃ・ざ・い!
全く、前代未聞の事件ですわ……諸侯らに渡す穀物の苗がないなんて!
今すぐに代わりとなる供物はなく、これと言った手立てもない。
そうなると潔く事情を話して、謝るしかないのです!」
そうローサは一気に捲し立てると、侍女たちに踏み躙られた苗を再び供物台に乗せ、持つように言いつけた。
そして、まだこの状況についていけない僕の手を乱暴に掴み、諸侯らの前に引っ張って行こうとする。
「お待ちください、ローサ様。
レンヤード様に……」
慌ててロイがローサを止めようとするが、ローサはロイをギロリと睨むと、低い声でこう言い放った。
「副神官長、では私とレンヤード様に代わって、あなたが謝罪する?
もっともあなたが謝罪するというなら、この件は教会側の責となるのだけど、それで本当にいいのかしら?」
「そっ、それは……」
ロイがそれ以上言葉を重ねる前に、僕がすぐさま遮る。
「ロイ、それはダメだ!
供物の管理は王族が担当だ!
教会を巻き込む気はない。
分かった、謝罪は私がする。
だから、ローサ、手を離してくれ。
私は、逃げも隠れもしない」
僕がそう言うと、ローサは僕の手を憎々しげに、すぐさまパッと払った。
「では、早く行きますわよ!
急がないと、儀式が始まってしまうわ」
ローサはそう言うと、列席している諸侯たちの最前列に向かって、さっさと歩き出す。
僕も慌ててローサの後に続こうとすると、ロイから声をかけられた。
「分かりました、レンヤード様。
では、せめてお側にいさせてください」
本当は、足が震えるほど怖い
だけど王族であるが故に、行かなければならない
そんな今の僕にとってロイの申し出は、大変心強いものだった。
「ありがとう、ロイ」
僕はロイにお礼を言うと、ローサに追いつくよう駆け出す。
すぐにローサに追いつくと、僕は息を整えながら心の準備もした。
祭壇の袖から出る一歩前でローサは一度足を止め、すぐ後ろにいる僕をチラッと振り返り確認してきた。
「覚悟はできまして?
レンヤード様?」
「あぁ」
僕が迷いなく返事したのを見届けるとローサは、ほぼ全席埋まった諸侯らの前へ怯む事なく歩いていく。
あっ、出てきたぞ!
ローサ様、ご説明を!
後ろにいるのは、シルヴィス妃か?
何があったのだ?
誰か教えてくれ!
段々と声が大きくなる一方の諸侯らに対して、祭壇前の中央でローサは立ち止まり一喝した。
「静かに!
これより説明いたします」
ローサのひと声に諸侯らはいっせいに口を閉じ、前に並んだ僕たちをじっと見つめる。
すごい圧だ
まだ、ただ立っているだけの僕だったが、心臓の鼓動がうるさいくらいに鳴り響いていた。
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