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激動! 体育祭!
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グラウンドの中央に移動してしまった犬神さまを追いかけて走る。足が速い。さすがは犬神さまである、何をするにしても完璧というかなんというか。
「センパイ! センパイ、俺一位とりますけんね、見とってくださいね!」
「いや、今そういう奴じゃないから! 田中さま、すみません騒がしくて」
中央の方ではもう二年生がスタンバイしていた。整列の練習も含んでいるのだろう、トラックの中で体育座りをしていた獅童くんがブンブンと腕を振り、島田くんに諌められていた。
「いいよいいよ~。二人とも頑張ってねぇ~」
「たっ、田中さまに応援されるなんて……! 僕一位とりますね!!」
「そういう競技やないちさっき言うてなかったか?」
「あはは、安全第一で~」
小柄な二人なので、体操服の半袖短パンは見ようによってはやけに幼く見える。擦り傷ひとつない膝小僧が眩しい。獅童くんに関しては驚異的な治癒力で傷が消えてるだけなんだろうけど。
二年列の後ろの方から、東郷くんと市谷くんが並んでこっちを見ていた。
「そこの二人は一緒なんだ~、仲良しだね~」
「いやー、なんで東郷くんみたいな筋肉ゴリラと俺が組まなきゃいけないのかまだ分かんないですね」
「ぐっぱで分かれたからだろうがよ、自分の不運を恨みやがれ……誰が不運だ!」
「忙しい子だね~」
相変わらずやいのやいの言っている。世話を焼くごとにどうやら島田くんも二年のいつメン扱いされるようになったらしい。まぁ体格的にも怪我がなさそうで良いのではないかと思うが。
一年の邪魔にならないよう白線から離れ、犬神さまを探す。ヤジを飛ばしにきた三年で人はわりと多いが、犬神さまは背が高いのですぐに見つかった。頭ひとつ分抜けているのだ。
「──犬神さま! もー、びっくりしたよ~置いてくんだも~ん」
「……」
喧騒をかき分け、大きい背中を呼び止める。ひょこっと顔を覗き込めば、何やらやけに驚いた様子だった。
え、何、俺また何かやっちゃいました?
「な、なぁに? めっちゃびっくりしてるけど~……」
「……苦手だろう……」
「何が……!?」
優しげな垂れ目が、じっとこちらを見つめる。そんな目で見られてと、俺がいつ何を苦手がったって。
と、思い至る。
「もしかして、おれが犬神さまのこと苦手だと思ってる……?」
軽く首を傾げられる。正解らしい。俺が犬神さまのことを苦手だと思っていて、それを態度に出すから、気を使って離れたということなのだろうか。
──優し!!!!
優しすぎる。慈愛の神なの? 前世聖母とか女神とかだった??
この人を傷つけた俺、マジで死ね~~!?!?
「うあ~~、ごめんねぇ~! 気ぃ使わせちゃって」
「? 勝手にしたこと……」
「だとしても! 実際、おれの態度のこと気にしてたんでしょ~? ごめんね~……」
犬神さまはどうやら嘘を言わない。信頼していると言ったからには信頼しているのだろうし、そんな相手に冷たくされたら傷つくのだ。
少なくとも俺だったら毎日シクシク泣くしなんで嫌われちゃったのかを延々と考える。考えないようにしてても風呂とかでふと思い出す。
「えっとね、おれは犬神さまに、会長さまのことで警戒されてると思ってて~……最近のおれ、特に不穏なことばっかしてたじゃん?」
「……? ……なにもしてない……」
「あ、うん、そうなんだけど。そう思えないような言動ばっかしてたっていうか」
「????」
周囲は二人三脚のペアを組んだ三年生でごった返しており、誰かにぶつかったりぶつかられたりしながら話す。足元がよろけ、犬神さまに支えれた。熱い胸板と大きな手は力強く、なんか良い匂いがする。
「ご、ごめん。えっと」
「構わない」
見上げると、思っていたより至近距離で目が合った。少し細められ、続きを促されてることに気がつく。
「……そんで、だから……変な振る舞いしたら、生徒会敵に回しちゃうかな~って、怖かっただけで……犬神さまが嫌いとかでは、なくて……」
しどろもどろな上になんか小っ恥ずかしい。くそ、人に素直に好意を伝えられないコミュ障とかなんも良いとこないぞ。しかも相手は俺が傷つけた相手だ。気張れ俺! 男だろ!
犬神さまは俺の腰に手を回したまま、じっと俺の目を見て──
「……そうか」
ふわ、と笑った。
その瞬間花は咲き乱れ小鳥は歌い太陽が顔を出し、犬神親衛隊の皆さまは絵の才能に目覚めた。写真では美しさを表せないと思ったらしい。全くの同意である。
その笑顔、まるで大輪の花が咲きこぼれるような儚さと可憐さと愛おしさが兼ね備えられており。
「よかった」
追撃に優しく低い声で囁かれたものだから、腰が砕けるかと思った。危なかった、常日頃武藤さまと同居していなかったら今この瞬間ガチ恋勢が誕生していたかもしれない。
だってちょっと“視”ちゃったもん、ヴィジョンを。三年生の卒業式に告白して結婚して父母に挨拶し子供を産んで幸せな家族を作る未来。俺男なのに。
犬神親衛隊の人たちは後ろで倒れ伏していた。わかるよ。推しが急に乙女ゲームみたいなことしてんだもんな。俺も倒れるかと思ったよ。
「う、うんうんよかったーおれも誤解解けて! じゃっこれからベストフレンドってことで! 友達ってことで! ね!!」
思わず口走った身の程知らずのセリフだったが、犬神さまはこれにもまたかすかに笑い、こくりと頷いてくれた。
え!? 俺今友達できたの!?!?
十七年間ほとんどできなかった友達が!? 今増えたの!?!?
(え、あ、や、やった~~~~~~!!!!)
脳内カーニバルを開催するが、友達ができてはしゃいでいる姿を他人に見られるわけにはいかない。なぜなら俺は浮き名を流すチャラ男なのだから。誰とでも寝る根無草の男が友達できた程度で浮かれるなんてそんなそんな。
「あれっ、センパイ機嫌よかですね!」
隠せてなさすぎる。
見事一位を取ってきた獅童くんに笑って言われた言葉に恥ずかしくなるも、浮かれはノンストップである。
ちなみに二人三脚はめちゃくちゃ相性が良かった。全然ころばないし。協調性の鬼?
「センパイ! センパイ、俺一位とりますけんね、見とってくださいね!」
「いや、今そういう奴じゃないから! 田中さま、すみません騒がしくて」
中央の方ではもう二年生がスタンバイしていた。整列の練習も含んでいるのだろう、トラックの中で体育座りをしていた獅童くんがブンブンと腕を振り、島田くんに諌められていた。
「いいよいいよ~。二人とも頑張ってねぇ~」
「たっ、田中さまに応援されるなんて……! 僕一位とりますね!!」
「そういう競技やないちさっき言うてなかったか?」
「あはは、安全第一で~」
小柄な二人なので、体操服の半袖短パンは見ようによってはやけに幼く見える。擦り傷ひとつない膝小僧が眩しい。獅童くんに関しては驚異的な治癒力で傷が消えてるだけなんだろうけど。
二年列の後ろの方から、東郷くんと市谷くんが並んでこっちを見ていた。
「そこの二人は一緒なんだ~、仲良しだね~」
「いやー、なんで東郷くんみたいな筋肉ゴリラと俺が組まなきゃいけないのかまだ分かんないですね」
「ぐっぱで分かれたからだろうがよ、自分の不運を恨みやがれ……誰が不運だ!」
「忙しい子だね~」
相変わらずやいのやいの言っている。世話を焼くごとにどうやら島田くんも二年のいつメン扱いされるようになったらしい。まぁ体格的にも怪我がなさそうで良いのではないかと思うが。
一年の邪魔にならないよう白線から離れ、犬神さまを探す。ヤジを飛ばしにきた三年で人はわりと多いが、犬神さまは背が高いのですぐに見つかった。頭ひとつ分抜けているのだ。
「──犬神さま! もー、びっくりしたよ~置いてくんだも~ん」
「……」
喧騒をかき分け、大きい背中を呼び止める。ひょこっと顔を覗き込めば、何やらやけに驚いた様子だった。
え、何、俺また何かやっちゃいました?
「な、なぁに? めっちゃびっくりしてるけど~……」
「……苦手だろう……」
「何が……!?」
優しげな垂れ目が、じっとこちらを見つめる。そんな目で見られてと、俺がいつ何を苦手がったって。
と、思い至る。
「もしかして、おれが犬神さまのこと苦手だと思ってる……?」
軽く首を傾げられる。正解らしい。俺が犬神さまのことを苦手だと思っていて、それを態度に出すから、気を使って離れたということなのだろうか。
──優し!!!!
優しすぎる。慈愛の神なの? 前世聖母とか女神とかだった??
この人を傷つけた俺、マジで死ね~~!?!?
「うあ~~、ごめんねぇ~! 気ぃ使わせちゃって」
「? 勝手にしたこと……」
「だとしても! 実際、おれの態度のこと気にしてたんでしょ~? ごめんね~……」
犬神さまはどうやら嘘を言わない。信頼していると言ったからには信頼しているのだろうし、そんな相手に冷たくされたら傷つくのだ。
少なくとも俺だったら毎日シクシク泣くしなんで嫌われちゃったのかを延々と考える。考えないようにしてても風呂とかでふと思い出す。
「えっとね、おれは犬神さまに、会長さまのことで警戒されてると思ってて~……最近のおれ、特に不穏なことばっかしてたじゃん?」
「……? ……なにもしてない……」
「あ、うん、そうなんだけど。そう思えないような言動ばっかしてたっていうか」
「????」
周囲は二人三脚のペアを組んだ三年生でごった返しており、誰かにぶつかったりぶつかられたりしながら話す。足元がよろけ、犬神さまに支えれた。熱い胸板と大きな手は力強く、なんか良い匂いがする。
「ご、ごめん。えっと」
「構わない」
見上げると、思っていたより至近距離で目が合った。少し細められ、続きを促されてることに気がつく。
「……そんで、だから……変な振る舞いしたら、生徒会敵に回しちゃうかな~って、怖かっただけで……犬神さまが嫌いとかでは、なくて……」
しどろもどろな上になんか小っ恥ずかしい。くそ、人に素直に好意を伝えられないコミュ障とかなんも良いとこないぞ。しかも相手は俺が傷つけた相手だ。気張れ俺! 男だろ!
犬神さまは俺の腰に手を回したまま、じっと俺の目を見て──
「……そうか」
ふわ、と笑った。
その瞬間花は咲き乱れ小鳥は歌い太陽が顔を出し、犬神親衛隊の皆さまは絵の才能に目覚めた。写真では美しさを表せないと思ったらしい。全くの同意である。
その笑顔、まるで大輪の花が咲きこぼれるような儚さと可憐さと愛おしさが兼ね備えられており。
「よかった」
追撃に優しく低い声で囁かれたものだから、腰が砕けるかと思った。危なかった、常日頃武藤さまと同居していなかったら今この瞬間ガチ恋勢が誕生していたかもしれない。
だってちょっと“視”ちゃったもん、ヴィジョンを。三年生の卒業式に告白して結婚して父母に挨拶し子供を産んで幸せな家族を作る未来。俺男なのに。
犬神親衛隊の人たちは後ろで倒れ伏していた。わかるよ。推しが急に乙女ゲームみたいなことしてんだもんな。俺も倒れるかと思ったよ。
「う、うんうんよかったーおれも誤解解けて! じゃっこれからベストフレンドってことで! 友達ってことで! ね!!」
思わず口走った身の程知らずのセリフだったが、犬神さまはこれにもまたかすかに笑い、こくりと頷いてくれた。
え!? 俺今友達できたの!?!?
十七年間ほとんどできなかった友達が!? 今増えたの!?!?
(え、あ、や、やった~~~~~~!!!!)
脳内カーニバルを開催するが、友達ができてはしゃいでいる姿を他人に見られるわけにはいかない。なぜなら俺は浮き名を流すチャラ男なのだから。誰とでも寝る根無草の男が友達できた程度で浮かれるなんてそんなそんな。
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