王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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激動! 体育祭!

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生徒会テントにまだ喧嘩したそうな獅童くんをしばいて連れて行くと、武藤さまがこちらに寄って来た。こちらというか、獅童くんに。

「大月……悪い」
「はぁ? 何謝っとるんや。俺はセンパイの指示に従っとるだけやで。謝罪ならセンパイにせんかいボケ」
「ノンストップで煽るな。こっちこそごめんね会長さま気が立ってるみたいで……」

息つく暇もなく食い気味で煽り出したので、思わず押し留める。最近本当に獰猛になって来たな。だんだんしばいて止めるのも慣れて来てしまった。
病院帰りの小型犬(ド怒りタイプ)みたいになってる。多分うさぎくんが嫌いだったんだろうな。一番嫌いそうな人種だからな……

「うさぎのヤツとはメッセ交換したけどな、そういう話やないやろ」
「コミュ力」

あの状況で仲良くなれる二人がすごいよ。闘って積み上げた友情とかいうやつなのかな……

ともかく、獅童くんをせいっとソファに投げ置く。会長さまのソファもう好き勝手に使ってるけど許して欲しい。

「で、獅童くんはおやすみです! 次競技何が来るかわかんないから、別の人呼びたいんだよね」
「何でですかセンパイ! 全部俺がやったりますよ!」
「今無茶することによってこの三本勝負に負けた場合、俺にもたらされる不利益を鑑みて意地張りたいならやればいいよ」
「休んます!」
「よし」

獅童くんがゴロンと横になった。回復体位だ。それって疲労にも効果あるもんなのかな? 適当なこと言えないから黙っておくけど。

ふぅ、とため息をつく。元気が良いのは良いことだが、血気盛んなのはよろしくない。
さて誰を出すかな、と顎をさする俺に、武藤さまがそっと近付いてくる。うわ何その態度どしたの何でそんな今日しおらしいの。

似たような身長なので武藤さまがちょっとしょぼくれてると自然に上目遣いになる。
あ、あざてぇ~~~~ッッッッ助けて、憧れの俺様生徒会長にしおらしげに上目遣いされてる顔良ッッッッ

「……田中。てめ、お前にも、迷惑かける……」
「迷惑とか思ってないよ~。気にすんなって! 負けるかもしんないんだしさ、勝手に立場賭けてごめんね逆に」
「いや……」

目に見えてしょぼくれている……。武藤さまとしては、俺の狙いもまぁ分かっているのだろう。

園芸委員会の独断とすることにより、この勝負に敗北しても生徒たちから泥を被るのが俺だけになる。だから他の役員から増援を出せないのだ。

ただそれで落ち込んでもらっては、確かに可愛らしいけど困るのだ。特に今は、もっと絶対的でいてくれないと。

「イブキって何か、正々堂々としてて素敵かも」「わかる、なんかかっこいいよね」「こら! 聞こえちゃうだろ」

ほらね。
武藤さまが出張らず俺とイブキの対決になるので、どうしてもイブキのカリスマに負けてしまうのだ。その上で生徒会側の士気も下がっているとなると。

「うーん……」
「どうしたんすか?」
「いや……イブキ、蹴落とせないかなって。今ちょっと、次勝ったとしても勢力広げて近いうちに来そう」

しょぼくれている武藤さまを片手で背中を叩き慰めつつ、頭を悩ませる。役員全員揃っているけれど、あくまで会議は俺たち主軸なので入ってこれない。副会長たちのところに連れて行ってリリース。なんか良い匂いして筋肉ガチガチで髪さらっさらだったな。

「会長、申し訳ないのはわかりますが邪魔しないように」
「ごめんねっ、田中クン……どっちも……」「会長大人しくしててっ!」
「フ、全く人の話を聞かないヤツめ!」
「瑛一! しっかり立たないか!」

武藤さまの扱いほんと雑だな役員は。曖昧な笑いで返し、獅童くんの様子を見る。自分に行かせてください顔をしているが、同じ人を連続で出場させたらさらに株が下がっちゃうからな。後普通に体心配。

「うーん……」
「あ、じゃあ次俺行くわ」
「水瀬! 水瀬お前何してるの?」
「てゅむてゅむ。全然おわんなくてさ」

謀反されてる身でソシャゲをするな。まぁでも確かに水瀬はどっちでも良いだろうな、上は。そもそもなんか色んな都合のいいポジションをふわふわしてる要領のいいヤツだし、こういう奴が生き残るのだ。

水瀬はよっこいせ、といつも通り軽い感じで立ち上がった。少しずつ日が傾いてきている。生徒会テントに落ちた日陰に、水瀬の体操着姿が何となく解けるようで少し焦る。

「出るってお前……別に良いだろ、園芸委員会とはいえ、お前要領いいんだから……どう転んでも……」
「馬鹿だな、委員じゃなくてダチとして言ってんだわ」

へら、と水瀬がいつも通り笑ってる。飄々と、とんでもないことでも何でもないようにいうのでいつも驚かされていた。
今回はそのとんでもないこと、の方な気がする。嫌な予感がした。

「カンペキに勝ちたいんだろ? ほら宗介、耳貸せ」
「……」

呼ばれたから近付いた。水瀬は俺にあることを耳打ちして──

聞いた瞬間、俺の手は水瀬の胸ぐらに伸びていた。

「お前っ!」
「怒んなって。確実だろ。相手は俺のこと知ってるはずだ、何回か接触して確認もしたからな」
「だからって、俺がそれを許すと思うか!?」

相変わらず飄々と、とんでもないことを言う。

「許せよ委員長。生徒会の危機だぜ」
「お前は友達だろうが!!」
「その友達が良いって言ってんだろ!」

胸ぐらを掴んだ手を逆に掴まれる。水瀬が怒鳴ったのは去年ぶりだった。ここまで感情の乗った声を聞いたのは、去年大喧嘩した日ぶりで。
俺はコミュ障なので友達が好きだ。だから怒らせた日はずっと覚えてる。結局喧嘩して喧嘩して、水瀬が譲らなかった。俺が折れたんだ。

「頼むよ、宗介。……役に立ちたいんだ」

多分今回もそう。
一発くらいぶん殴ってやれば良い。水瀬を拘束して寝かせておけばこんなこと言わない。
でも。

「……分かったよ……」

そう言ってしまうのはやはり、普段わがままを言われないからなのだろう。一度決めたら頑固なのだから。

「そんな顔すんなよ。せめて上手く使ってくれよ?」
「マジで後でお前一発ぶん殴るから覚悟しとけよほんとに。あとで膝突き合わせて話すぞカス」
「ブチギレじゃん」

相変わらずヘラヘラと笑い、水瀬はグラウンドの方に歩いて行った。

はぁー喧嘩しちゃった。でも本当に許せない、水瀬も腹立つけど諸悪の根源はイブキである。あいつ二度と顔上げられんようにするからな。でも俺も最低なんだよ……殴ってくれ……

「ほれ」
「っデェ! 今じゃない!」
「わがままプリンセスかよ」

普段より少し強めに俺を叩いた水瀬は、またへらりと笑う。


──水瀬は負けた。種目はアーチェリーで、敗因はターゲットパニック。

弓道においては早気と呼ばれるもので……水瀬の場合、心理的要因から生じる運動障害イップスとして、彼がアーチェリーを辞めた原因だった。
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