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間話 新歓鬼ごっこ
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えっ今、俺に何が起こった?
逃げようと思って意気揚々と校舎に入って、階段を駆け上がって、制限時間はまだまだで、それで──
「む! 田中宗介か、いくら急いでいるとはいえ、周囲の確認もせず走るとは。怪我をするだろう!」
「へ、あ……すんません……?」
「うむ! 怪我がなくて良かった!」
ぽんぽんと肩を払われて、制服についていた土埃を取ってもらった。周囲を見渡すと人が居らず、薄暗い廊下に校舎窓から光が差し込んでいる。
(まさか俺今、風紀委員長とペアになった?)
いやまさか。風紀委員長、めちゃくちゃ平静だし。だいたい制限時間まで逃げ続けるつもりだったのに、こんな間抜けを晒すわけがない。第一偶然で学校の人気者と密着旅行なんてそれなんて創作物──
「しかし、旅行のペアがお前とはな! 俺と組んだからには、弛んだ生活は許さんぞ! よろしく頼む!」
間抜けは見つかったようだな──
ヤバい。ミーハーな俺がめちゃくちゃ喜んでいると同時に、堕落し切った自分がマジでヤバいぞと警鐘を鳴らしている。だって俺この生活の中何回洗濯物畳んだよ。
「……あ、あはは~。光栄だよ~、お手柔らかに、ね~?」
「む? そう緊張せずとも、朝早くから委員会活動に勤しんでいると聞いているぞ!」
イブキ派の子達だな……?
ここ最近はイブキ派の生徒たちも旧校舎で寝起きするようになっていて、俺が植物の世話をしていると手伝ってくれるようになった。まだまだなところも多いが、人が多いぶん大変楽になった。
趣味で朝から来ているだけなので早起きはやめないが、それに対して尊敬の眼差しを送られることも多くなり……
「お前のことは胡散臭くだらしない奴だと思っていたが、功績は評価している! 特に生徒たちを取りまとめる手腕は、同じ委員長として尊敬に値するものだからな」
「いやいや大したことしてないからマジで……」
「謙遜か!?」
そんな諸々があって、こうして風紀委員長から再評価されているのだろう。身に余る光栄~~! どんだけ身に余るかっていうと小学生の時に間違って履いた姉のサンダルくらい。
しかし武藤様とはまた違った意志の強い、純粋な瞳に見つめられるとそうそう拒絶もできない。何より俺の虚飾に塗れたちっぽけなプライドがそれを許さなかった。コミュ障メンタル~!!
「ま……まぁ、なに~? どうせなら、楽しい旅行にしようね~……?」
「うむ!」
「オワ眩し」
そうして風紀委員長は颯爽とどこかに姿を消した。ペアが決まったので報告にでも行くつもりだろう。俺はなんかどっと疲れたので、その場で座り込む。
武藤様は作り込んだ綺麗な笑顔だけれど、風紀委員長は逆だ。少し不恰好だが、真っ直ぐな本心からの笑顔。基本的に嘘をつく人ではなく実直で、生真面目で苛烈だが素直だ。
「なんか悪いことしてる気分……」
はぁー。まさかあの厳格な風紀委員長と組むことになるとはな。一挙手一投足に注意されそう。怖すぎる。
「……そこで何してんだてめー」
「うわぁっ!?」
「あ?」
座り込んだ後ろから声がかかる。ひっくり返って後ろを向くと、武藤様が困惑したように俺を見つめていた。うおー立ち姿すら美しい。
「武藤様! いや別に……なんでも……」
「外でその呼び方やめろむず痒い!」
いいじゃん別に親衛隊は呼んでるしさーオタク格差ですかー!? と思わんでもないが、仕方がない。推しがあってのオタクである。
会長さま、と呼び名を改めれば、ちょっと微妙そうな顔をしながら隣にしゃがんでくれる。
「……チビにはそんな呼び方しねーだろ」
「獅童くん? あれは例外……あれっ、むと会長さま白組なんだ」
「ア? ああ」
武藤さまの腕に巻かれたパネルでは黒背景に白の文字が踊っている。まだ捕まっていない証左でもある。頑張ってほしい。
「白組かわいそうだな~……風紀委員長も会長もチャンスないとか、振り分け不当じゃない?」
「くじなんだから文句言うな。んじゃてめーは白組なんか?」
「紅組だけど」
「何なんだよ」
俺一人の存在で釣り合うわけないだろ、紅白がよ。
まぁでも獅童くんいるしな、誰かに素顔見られたら喜ばれるんじゃないか。そんなことを考えていたら、ぴとりと頬に武藤さまの手が触れた。
「? なに──」
「もう捕まってんのかよ」
つまらなさそうに吐き捨てられる。
「え。ああうん……なに、一緒にいたかった?」
「違ぇよ。普段同室だから……何かと便利だと思っただけだ」
それはそうか。ちょっと期待しちゃった──期待って何だもう。
武藤様は興味をなくしたように立ち上がり、元来た道を辿ってどこかに行ってしまった。隠れに来たと思ったんだけど、違ったのかな。
逃げようと思って意気揚々と校舎に入って、階段を駆け上がって、制限時間はまだまだで、それで──
「む! 田中宗介か、いくら急いでいるとはいえ、周囲の確認もせず走るとは。怪我をするだろう!」
「へ、あ……すんません……?」
「うむ! 怪我がなくて良かった!」
ぽんぽんと肩を払われて、制服についていた土埃を取ってもらった。周囲を見渡すと人が居らず、薄暗い廊下に校舎窓から光が差し込んでいる。
(まさか俺今、風紀委員長とペアになった?)
いやまさか。風紀委員長、めちゃくちゃ平静だし。だいたい制限時間まで逃げ続けるつもりだったのに、こんな間抜けを晒すわけがない。第一偶然で学校の人気者と密着旅行なんてそれなんて創作物──
「しかし、旅行のペアがお前とはな! 俺と組んだからには、弛んだ生活は許さんぞ! よろしく頼む!」
間抜けは見つかったようだな──
ヤバい。ミーハーな俺がめちゃくちゃ喜んでいると同時に、堕落し切った自分がマジでヤバいぞと警鐘を鳴らしている。だって俺この生活の中何回洗濯物畳んだよ。
「……あ、あはは~。光栄だよ~、お手柔らかに、ね~?」
「む? そう緊張せずとも、朝早くから委員会活動に勤しんでいると聞いているぞ!」
イブキ派の子達だな……?
ここ最近はイブキ派の生徒たちも旧校舎で寝起きするようになっていて、俺が植物の世話をしていると手伝ってくれるようになった。まだまだなところも多いが、人が多いぶん大変楽になった。
趣味で朝から来ているだけなので早起きはやめないが、それに対して尊敬の眼差しを送られることも多くなり……
「お前のことは胡散臭くだらしない奴だと思っていたが、功績は評価している! 特に生徒たちを取りまとめる手腕は、同じ委員長として尊敬に値するものだからな」
「いやいや大したことしてないからマジで……」
「謙遜か!?」
そんな諸々があって、こうして風紀委員長から再評価されているのだろう。身に余る光栄~~! どんだけ身に余るかっていうと小学生の時に間違って履いた姉のサンダルくらい。
しかし武藤様とはまた違った意志の強い、純粋な瞳に見つめられるとそうそう拒絶もできない。何より俺の虚飾に塗れたちっぽけなプライドがそれを許さなかった。コミュ障メンタル~!!
「ま……まぁ、なに~? どうせなら、楽しい旅行にしようね~……?」
「うむ!」
「オワ眩し」
そうして風紀委員長は颯爽とどこかに姿を消した。ペアが決まったので報告にでも行くつもりだろう。俺はなんかどっと疲れたので、その場で座り込む。
武藤様は作り込んだ綺麗な笑顔だけれど、風紀委員長は逆だ。少し不恰好だが、真っ直ぐな本心からの笑顔。基本的に嘘をつく人ではなく実直で、生真面目で苛烈だが素直だ。
「なんか悪いことしてる気分……」
はぁー。まさかあの厳格な風紀委員長と組むことになるとはな。一挙手一投足に注意されそう。怖すぎる。
「……そこで何してんだてめー」
「うわぁっ!?」
「あ?」
座り込んだ後ろから声がかかる。ひっくり返って後ろを向くと、武藤様が困惑したように俺を見つめていた。うおー立ち姿すら美しい。
「武藤様! いや別に……なんでも……」
「外でその呼び方やめろむず痒い!」
いいじゃん別に親衛隊は呼んでるしさーオタク格差ですかー!? と思わんでもないが、仕方がない。推しがあってのオタクである。
会長さま、と呼び名を改めれば、ちょっと微妙そうな顔をしながら隣にしゃがんでくれる。
「……チビにはそんな呼び方しねーだろ」
「獅童くん? あれは例外……あれっ、むと会長さま白組なんだ」
「ア? ああ」
武藤さまの腕に巻かれたパネルでは黒背景に白の文字が踊っている。まだ捕まっていない証左でもある。頑張ってほしい。
「白組かわいそうだな~……風紀委員長も会長もチャンスないとか、振り分け不当じゃない?」
「くじなんだから文句言うな。んじゃてめーは白組なんか?」
「紅組だけど」
「何なんだよ」
俺一人の存在で釣り合うわけないだろ、紅白がよ。
まぁでも獅童くんいるしな、誰かに素顔見られたら喜ばれるんじゃないか。そんなことを考えていたら、ぴとりと頬に武藤さまの手が触れた。
「? なに──」
「もう捕まってんのかよ」
つまらなさそうに吐き捨てられる。
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