82 / 201
密着! 夏休み旅行!
6
しおりを挟む
人権が終わった後も世界は続いていくわけで。何しろゲームではないので。
ハムを咥えていい子に去っていった人間を、私服姿の風気委員長が恐ろしいものを見る目で見ていた。恐ろしいものを見る目というか、本当に恐ろしいというか。
「今のは一体……!?」
「え、っと~アハハ……」
「アレは、一時期話題になっていた人達か! その上見覚えのない生徒まで……」
だんだん他人から言われないとアレが人だったことを忘れてしまう。あまりにも本人(?)たちが犬らしく振る舞うし、獅童くんやら水瀬やらが俺の犬呼ばわりしてくるし。
「あ! 一応言うけど~、自由意志だから~!」
「自由意志であんなことになるものか!」
それはそう。
「いくら犯罪まがいのことを犯したとしても、人権を失わせていい理由にはならんぞ。田中宗介……!」
本当にそうなんですよ。本人たちが放棄してくるだけで。
しゃがみ込んでいる俺を、風紀委員長がぎちりと睨みつける。俺が指示してあんなことをさせていると思っているのだろう。
なんで分かるかって、俺もあんな状態の人間を見たらそう思うからだ。
「うう~ん。でも、あの人たちもなんか楽しんで? やってるし~……」
「楽しいはずがあるか! 人の言いなりになり犬の真似を強要されてるんだぞ」
「別に強要してないって~」
「してなかったらしてなかったでわりと問題だろう!!」
強情な風紀委員長に疑問符が飛ぶ。俺のことそんな悪い人に見えてるのかな……?
確かに人権がない状態が当たり前になると将来困るだろうけど、それに関して委員長がここまで懸念する必要は──
「それならそれで変態プレイを要求されていることになるのだぞ」
「え、だから要求してな」
「お前が」
「……」
…………俺が????
「ほんとだ……」
「うむ」
目から鱗が落ちる。仕方がないから付き合ってるとか、怖いなとは思っていたが、俺が強要されているとは思っていなかった。
確かに、側から見てこれ自由意志で犬の真似してるなら人間役が一番負担じゃん。
「え!? おれ、めちゃくちゃヘンタイみたいにされてる~っ!?」
「まぁ、田中宗介の悪評を考えれば疑問に思うほどのものではないのだが」
「こ、こまる……」
とはいえいまさら強く拒絶しても、みんな行くところなさそうだしな。別にそこまで負担でもないし、旧校舎でなら好きなように生きていてほしい。警備に使ってるし。
「……ウーン、おれが被害者ってイメージがなかった……絵面的におれが親玉っぽいし……?」
「そういうゆるふわっとした考えだからつけ込まれるのだろう!」
「ゆるふわ!?」
えいまさらっとディスった!?
玄関先でわちゃわちゃしていると、俺の上に影かかる。
「何してんだてめーはこんな夜によ」
「瑛一!」
「むっ……会長さまじゃ~ん」
間抜けた、という通り俺の話し方が嫌いらしく、武藤さまが一瞬顔を顰める。次の瞬間には平静通りの顔に戻っていたけれど。
「こいつの頭がピンクのお花畑なのはいつも通りだろォが。なんか文句あんのか」
「えーっ会長さまもそんなこと思っイデ」
べしんと頭を叩かれる。黙ってろってことか。肉体に躾ける前に口に出してほしい。
「む……だが瑛一、その男は──」
「素行の悪さなんか鼻から存じ上げてるっての。それよりこんな夜に、人ン家で長々と立ち話してる方が非常識なんじゃねーの」
「な、なに!?」
ん~?
黙れと言われた(言われてないが)ので口には出さないが、委員長の方は武藤さまに悪感情がある訳ではない。気がする。それより心配しているような。
「それもそうか……では、今日のところは出直させてもらう!」
「おーおー帰れ、二度と来るんじゃねー」
そんで、武藤さまの態度は普通より強い。わかりにくいけど、他の人相手よりイライラしているように見える。イライラというか……恥ずかしいのかも?
風紀委員長が爆速で帰ったのを見届けて、武藤様は扉を勢いよく閉めて鍵をかけ、さらに塩も撒く。普通の塩がないので食用岩塩をゴリゴリ削っていた。いいのかそれは。
「てか武藤様」
「んだよ」
「反抗期?」
ハァ!? と苛立った声が上がり、思いきり睨みつけられる。ここ最近なんだか近くで顔を見る機会が多く、照れ隠しだと直感的に思った。
「……テメーの私生活を隠してやった俺に感謝は」
「え? ……ああ! さっきのそういう! オワーッありがとうございます」
「んっとにゆるふわ脳だって喧伝してやろうかテメ~……」
それはやめて。武藤様に言われたら威厳がマジでなくなっちゃう。
うーん、武藤様、可愛いところもやっぱあるんだな。
「おい」
「なんでもないでーす」
こんなこと思ってるって知られたらめちゃくちゃ怒ると思うので、言わないけども。
ハムを咥えていい子に去っていった人間を、私服姿の風気委員長が恐ろしいものを見る目で見ていた。恐ろしいものを見る目というか、本当に恐ろしいというか。
「今のは一体……!?」
「え、っと~アハハ……」
「アレは、一時期話題になっていた人達か! その上見覚えのない生徒まで……」
だんだん他人から言われないとアレが人だったことを忘れてしまう。あまりにも本人(?)たちが犬らしく振る舞うし、獅童くんやら水瀬やらが俺の犬呼ばわりしてくるし。
「あ! 一応言うけど~、自由意志だから~!」
「自由意志であんなことになるものか!」
それはそう。
「いくら犯罪まがいのことを犯したとしても、人権を失わせていい理由にはならんぞ。田中宗介……!」
本当にそうなんですよ。本人たちが放棄してくるだけで。
しゃがみ込んでいる俺を、風紀委員長がぎちりと睨みつける。俺が指示してあんなことをさせていると思っているのだろう。
なんで分かるかって、俺もあんな状態の人間を見たらそう思うからだ。
「うう~ん。でも、あの人たちもなんか楽しんで? やってるし~……」
「楽しいはずがあるか! 人の言いなりになり犬の真似を強要されてるんだぞ」
「別に強要してないって~」
「してなかったらしてなかったでわりと問題だろう!!」
強情な風紀委員長に疑問符が飛ぶ。俺のことそんな悪い人に見えてるのかな……?
確かに人権がない状態が当たり前になると将来困るだろうけど、それに関して委員長がここまで懸念する必要は──
「それならそれで変態プレイを要求されていることになるのだぞ」
「え、だから要求してな」
「お前が」
「……」
…………俺が????
「ほんとだ……」
「うむ」
目から鱗が落ちる。仕方がないから付き合ってるとか、怖いなとは思っていたが、俺が強要されているとは思っていなかった。
確かに、側から見てこれ自由意志で犬の真似してるなら人間役が一番負担じゃん。
「え!? おれ、めちゃくちゃヘンタイみたいにされてる~っ!?」
「まぁ、田中宗介の悪評を考えれば疑問に思うほどのものではないのだが」
「こ、こまる……」
とはいえいまさら強く拒絶しても、みんな行くところなさそうだしな。別にそこまで負担でもないし、旧校舎でなら好きなように生きていてほしい。警備に使ってるし。
「……ウーン、おれが被害者ってイメージがなかった……絵面的におれが親玉っぽいし……?」
「そういうゆるふわっとした考えだからつけ込まれるのだろう!」
「ゆるふわ!?」
えいまさらっとディスった!?
玄関先でわちゃわちゃしていると、俺の上に影かかる。
「何してんだてめーはこんな夜によ」
「瑛一!」
「むっ……会長さまじゃ~ん」
間抜けた、という通り俺の話し方が嫌いらしく、武藤さまが一瞬顔を顰める。次の瞬間には平静通りの顔に戻っていたけれど。
「こいつの頭がピンクのお花畑なのはいつも通りだろォが。なんか文句あんのか」
「えーっ会長さまもそんなこと思っイデ」
べしんと頭を叩かれる。黙ってろってことか。肉体に躾ける前に口に出してほしい。
「む……だが瑛一、その男は──」
「素行の悪さなんか鼻から存じ上げてるっての。それよりこんな夜に、人ン家で長々と立ち話してる方が非常識なんじゃねーの」
「な、なに!?」
ん~?
黙れと言われた(言われてないが)ので口には出さないが、委員長の方は武藤さまに悪感情がある訳ではない。気がする。それより心配しているような。
「それもそうか……では、今日のところは出直させてもらう!」
「おーおー帰れ、二度と来るんじゃねー」
そんで、武藤さまの態度は普通より強い。わかりにくいけど、他の人相手よりイライラしているように見える。イライラというか……恥ずかしいのかも?
風紀委員長が爆速で帰ったのを見届けて、武藤様は扉を勢いよく閉めて鍵をかけ、さらに塩も撒く。普通の塩がないので食用岩塩をゴリゴリ削っていた。いいのかそれは。
「てか武藤様」
「んだよ」
「反抗期?」
ハァ!? と苛立った声が上がり、思いきり睨みつけられる。ここ最近なんだか近くで顔を見る機会が多く、照れ隠しだと直感的に思った。
「……テメーの私生活を隠してやった俺に感謝は」
「え? ……ああ! さっきのそういう! オワーッありがとうございます」
「んっとにゆるふわ脳だって喧伝してやろうかテメ~……」
それはやめて。武藤様に言われたら威厳がマジでなくなっちゃう。
うーん、武藤様、可愛いところもやっぱあるんだな。
「おい」
「なんでもないでーす」
こんなこと思ってるって知られたらめちゃくちゃ怒ると思うので、言わないけども。
196
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる