王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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密着! 夏休み旅行!

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人権が終わった後も世界は続いていくわけで。何しろゲームではないので。
ハムを咥えていい子に去っていった人間を、私服姿の風気委員長が恐ろしいものを見る目で見ていた。恐ろしいものを見る目というか、本当に恐ろしいというか。

「今のは一体……!?」
「え、っと~アハハ……」
「アレは、一時期話題になっていた人達か! その上見覚えのない生徒まで……」

だんだん他人から言われないとアレが人だったことを忘れてしまう。あまりにも本人(?)たちが犬らしく振る舞うし、獅童くんやら水瀬やらが俺の犬呼ばわりしてくるし。

「あ! 一応言うけど~、自由意志だから~!」
「自由意志であんなことになるものか!」

それはそう。

「いくら犯罪まがいのことを犯したとしても、人権を失わせていい理由にはならんぞ。田中宗介……!」

本当にそうなんですよ。本人たちが放棄してくるだけで。
しゃがみ込んでいる俺を、風紀委員長がぎちりと睨みつける。俺が指示してあんなことをさせていると思っているのだろう。
なんで分かるかって、俺もあんな状態の人間を見たらそう思うからだ。

「うう~ん。でも、あの人たちもなんか楽しんで? やってるし~……」
「楽しいはずがあるか! 人の言いなりになり犬の真似を強要されてるんだぞ」
「別に強要してないって~」
「してなかったらしてなかったでわりと問題だろう!!」

強情な風紀委員長に疑問符が飛ぶ。俺のことそんな悪い人に見えてるのかな……?
確かに人権がない状態が当たり前になると将来困るだろうけど、それに関して委員長がここまで懸念する必要は──

「それならそれで変態プレイを要求されていることになるのだぞ」
「え、だから要求してな」
「お前が」
「……」

…………俺が????

「ほんとだ……」
「うむ」

目から鱗が落ちる。仕方がないから付き合ってるとか、怖いなとは思っていたが、俺が強要されているとは思っていなかった。
確かに、側から見てこれ自由意志で犬の真似してるなら人間役が一番負担じゃん。

「え!? おれ、めちゃくちゃヘンタイみたいにされてる~っ!?」
「まぁ、田中宗介の悪評を考えれば疑問に思うほどのものではないのだが」
「こ、こまる……」

とはいえいまさら強く拒絶しても、みんな行くところなさそうだしな。別にそこまで負担でもないし、旧校舎でなら好きなように生きていてほしい。警備に使ってるし。

「……ウーン、おれが被害者ってイメージがなかった……絵面的におれが親玉っぽいし……?」
「そういうゆるふわっとした考えだからつけ込まれるのだろう!」
「ゆるふわ!?」

えいまさらっとディスった!?
玄関先でわちゃわちゃしていると、俺の上に影かかる。

「何してんだてめーはこんな夜によ」
「瑛一!」
「むっ……会長さまじゃ~ん」

間抜けた、という通り俺の話し方が嫌いらしく、武藤さまが一瞬顔を顰める。次の瞬間には平静通りの顔に戻っていたけれど。

「こいつの頭がピンクのお花畑なのはいつも通りだろォが。なんか文句あんのか」
「えーっ会長さまもそんなこと思っイデ」

べしんと頭を叩かれる。黙ってろってことか。肉体に躾ける前に口に出してほしい。

「む……だが瑛一、その男は──」
「素行の悪さなんか鼻から存じ上げてるっての。それよりこんな夜に、人ン家で長々と立ち話してる方が非常識なんじゃねーの」
「な、なに!?」

ん~?
黙れと言われた(言われてないが)ので口には出さないが、委員長の方は武藤さまに悪感情がある訳ではない。気がする。それより心配しているような。

「それもそうか……では、今日のところは出直させてもらう!」
「おーおー帰れ、二度と来るんじゃねー」

そんで、武藤さまの態度は普通より強い。わかりにくいけど、他の人相手よりイライラしているように見える。イライラというか……恥ずかしいのかも?

風紀委員長が爆速で帰ったのを見届けて、武藤様は扉を勢いよく閉めて鍵をかけ、さらに塩も撒く。普通の塩がないので食用岩塩をゴリゴリ削っていた。いいのかそれは。

「てか武藤様」
「んだよ」
「反抗期?」

ハァ!? と苛立った声が上がり、思いきり睨みつけられる。ここ最近なんだか近くで顔を見る機会が多く、照れ隠しだと直感的に思った。

「……テメーの私生活を隠してやった俺に感謝は」
「え? ……ああ! さっきのそういう! オワーッありがとうございます」
「んっとにゆるふわ脳だって喧伝してやろうかテメ~……」

それはやめて。武藤様に言われたら威厳がマジでなくなっちゃう。
うーん、武藤様、可愛いところもやっぱあるんだな。

「おい」
「なんでもないでーす」

こんなこと思ってるって知られたらめちゃくちゃ怒ると思うので、言わないけども。
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