148 / 201
監禁! 最後の文化祭
19
しおりを挟む
今日はやけに食わされたなと腹をさすりながら旧校舎に戻ると、何やら騒がしい。俺がいるから、というわけでもないらしく。騒ぎの中心は食堂らしい。旧校舎一階、一番広い室内にひょこっと顔を出すと美味しそうなスープの匂いがやけに漂っていた。
「ん、どうした?」
「おおー! 大将か! 丁度えい!!」
夕食の時間だからか生徒は食堂に集まっていて、しかし何か食べることもなくもちゃもちゃ固まっている。厨房の方から慌てたようにイブキがやってきた。
「聞いてくれんか、最近悪戯ながか色んなものが盗まれたりひっくり返されちょって」
「ひっくり返されてるぅ? 大鍋が?」
「そうじゃ、ほれ」
イブキに呼ばれるがまま厨房内に顔を出せば、確かに酷いことになっていた。美味しそうな鶏の匂いからすれば、鶏ガラでスープでも作ろうとしていたのだろう。新メニューの考案か何かだろうか?
「冷たい鶏がらスープが作りたくてな、冷ましちょいてら間にこがなザマや……」
「なるほど……まぁ、イタズラするとしたら熱いスープはひっくり返さんわな」
べっちょりと地面に捨て置かれた鶏肉は汚れて食べれもしないだろう。……と、その光景に少し違和感を覚える。
「……まぁいいか。それで、最近いたずらがあったってのは? 俺は聞いてないぜ」
「わざわざ大将に報告するほどでもない思うちょったがじゃ。すまん」
「いいよ、いつでも聞いてくれ。どうせ暇だし尽力する」
じっくり作っていたらしいスープが台無しにされて、イブキがガックリと落ち込んでいる。流石にかわいそうだ、俺も鶏がらスープ食いたかった。
他に被害はないのかと聞けば、鍋以外に特にないらしい。今作っているメニューは大量のピリ辛フライドチキン、ビリヤニ、炊飯器の中の白米、爽やかな酸味の柑橘ミルキーシャーベット。
どういう栄養管理だとは思うが、最近みかんが大量に送られてきた生徒がいたので仕方がないのである。
「鶏がらスープだけか……他に嫌がらせされた人は?」
「うさぎ知ってるの!」
「うおーっびっくりした~ッ!」
それこそウサギのように入り口からぴょっこんと跳ねてきたうさぎくん。
「や、うさぎくん。うさぎくんは被害に遭ってない~?」
「だいじょーぶ……とは言えないけど、結構軽めなの。どっちかというと酷いのはトイレとか、ランドリーとか……」
「そりゃまた随分……」
「案内するの!」
どうやらトイレは掃除をしてもしても糞尿が散らかされる状況、ランドリーでは洗濯物を置いておいたら盗まれている──特に下着が多いらしい──という状況だ。
それ以外にも個室から盗まれていることもあり、信頼関係で成り立っている旧校舎寮が全体的にピリついているという。
旧校舎二階のランドリーに案内してもらい、様子を見回す。今日もどうやら悪戯犯が入ったらしく、衣類が散らばっていた。すっかり怯えてしまったうさぎくんを背に庇い、しゃがみ込んで見回す。一応写真も撮っておいた。
「言ってくれたらよかったのに~」
「だ、だって……せっかくうさぎたちを招いてくれたのに、こんなことする人がいるって知られたら呆れられちゃうと思ったの……」
「別に構わんよ~。外部から侵入した人がいるってことではないんだね?」
てか、俺が招いたんじゃなくて君達がここに住んでるんだよ。君たちの学舎がここなんだ、と振り返れば、うさぎくんの大きな瞳がうりゅりゅと揺れる。
「ご、ごめんなさい──っ!」
「え、なになに」
今のは励まされる流れのやつではない!?
慌てている俺に、うさぎくんがボロボロと大粒の涙をこぼしながらごめんなさいと再度謝る。
感情豊かな子だなと思うが、俺から見捨てられれば居場所がないと思っているのだろう。それはそう。
だからこそ簡単には見捨てないが。
「植物っ、うさぎたち、大事な植物さんっ、わぁぁあん!!」
「どうしたのほんとに!」
わんわんと泣くうさぎくんを宥めすかしながら、中庭に案内してもらう。旧校舎二号館にある中庭には確か生垣の真ん中に噴水が置いてある空間だったはずだが……
「なるほど」
グスグスと鼻を啜るうさぎくんの頭を撫で、俺は中庭の惨状にそっと眉間を押さえた。
枝が折れ、土は掘り返され液体肥料が打ち捨てられている。綺麗に咲いた花は散り、見るも無惨な姿になっていた。
「うさぎたち、もうこんな目に遭わないと思ってて、でも、ごめんなさいなの、身内の不始末なの……」
やけに怯えているなと思えば、イブキ派──報われなかった子達はこういう嫌がらせを常日頃から受けていたのか。
まぁたしかに、正体不明の誰かにこんなことをされていたら俺も眠れなくなっちゃうかもしれない。
しかしまぁ、なるほどなぁ。
「だから早く言えって言ったのに……」
「ほえ?」
「犯人特定した。確認なんだけど、被害の出なかった部屋を教えてもらっていい?」
「…………ええ!?!?」
全く、呆れ返るほど簡単な話である。うさぎくんからいくつか確認事項を聞き終え、俺はある仕掛けに取り掛かった。
「ん、どうした?」
「おおー! 大将か! 丁度えい!!」
夕食の時間だからか生徒は食堂に集まっていて、しかし何か食べることもなくもちゃもちゃ固まっている。厨房の方から慌てたようにイブキがやってきた。
「聞いてくれんか、最近悪戯ながか色んなものが盗まれたりひっくり返されちょって」
「ひっくり返されてるぅ? 大鍋が?」
「そうじゃ、ほれ」
イブキに呼ばれるがまま厨房内に顔を出せば、確かに酷いことになっていた。美味しそうな鶏の匂いからすれば、鶏ガラでスープでも作ろうとしていたのだろう。新メニューの考案か何かだろうか?
「冷たい鶏がらスープが作りたくてな、冷ましちょいてら間にこがなザマや……」
「なるほど……まぁ、イタズラするとしたら熱いスープはひっくり返さんわな」
べっちょりと地面に捨て置かれた鶏肉は汚れて食べれもしないだろう。……と、その光景に少し違和感を覚える。
「……まぁいいか。それで、最近いたずらがあったってのは? 俺は聞いてないぜ」
「わざわざ大将に報告するほどでもない思うちょったがじゃ。すまん」
「いいよ、いつでも聞いてくれ。どうせ暇だし尽力する」
じっくり作っていたらしいスープが台無しにされて、イブキがガックリと落ち込んでいる。流石にかわいそうだ、俺も鶏がらスープ食いたかった。
他に被害はないのかと聞けば、鍋以外に特にないらしい。今作っているメニューは大量のピリ辛フライドチキン、ビリヤニ、炊飯器の中の白米、爽やかな酸味の柑橘ミルキーシャーベット。
どういう栄養管理だとは思うが、最近みかんが大量に送られてきた生徒がいたので仕方がないのである。
「鶏がらスープだけか……他に嫌がらせされた人は?」
「うさぎ知ってるの!」
「うおーっびっくりした~ッ!」
それこそウサギのように入り口からぴょっこんと跳ねてきたうさぎくん。
「や、うさぎくん。うさぎくんは被害に遭ってない~?」
「だいじょーぶ……とは言えないけど、結構軽めなの。どっちかというと酷いのはトイレとか、ランドリーとか……」
「そりゃまた随分……」
「案内するの!」
どうやらトイレは掃除をしてもしても糞尿が散らかされる状況、ランドリーでは洗濯物を置いておいたら盗まれている──特に下着が多いらしい──という状況だ。
それ以外にも個室から盗まれていることもあり、信頼関係で成り立っている旧校舎寮が全体的にピリついているという。
旧校舎二階のランドリーに案内してもらい、様子を見回す。今日もどうやら悪戯犯が入ったらしく、衣類が散らばっていた。すっかり怯えてしまったうさぎくんを背に庇い、しゃがみ込んで見回す。一応写真も撮っておいた。
「言ってくれたらよかったのに~」
「だ、だって……せっかくうさぎたちを招いてくれたのに、こんなことする人がいるって知られたら呆れられちゃうと思ったの……」
「別に構わんよ~。外部から侵入した人がいるってことではないんだね?」
てか、俺が招いたんじゃなくて君達がここに住んでるんだよ。君たちの学舎がここなんだ、と振り返れば、うさぎくんの大きな瞳がうりゅりゅと揺れる。
「ご、ごめんなさい──っ!」
「え、なになに」
今のは励まされる流れのやつではない!?
慌てている俺に、うさぎくんがボロボロと大粒の涙をこぼしながらごめんなさいと再度謝る。
感情豊かな子だなと思うが、俺から見捨てられれば居場所がないと思っているのだろう。それはそう。
だからこそ簡単には見捨てないが。
「植物っ、うさぎたち、大事な植物さんっ、わぁぁあん!!」
「どうしたのほんとに!」
わんわんと泣くうさぎくんを宥めすかしながら、中庭に案内してもらう。旧校舎二号館にある中庭には確か生垣の真ん中に噴水が置いてある空間だったはずだが……
「なるほど」
グスグスと鼻を啜るうさぎくんの頭を撫で、俺は中庭の惨状にそっと眉間を押さえた。
枝が折れ、土は掘り返され液体肥料が打ち捨てられている。綺麗に咲いた花は散り、見るも無惨な姿になっていた。
「うさぎたち、もうこんな目に遭わないと思ってて、でも、ごめんなさいなの、身内の不始末なの……」
やけに怯えているなと思えば、イブキ派──報われなかった子達はこういう嫌がらせを常日頃から受けていたのか。
まぁたしかに、正体不明の誰かにこんなことをされていたら俺も眠れなくなっちゃうかもしれない。
しかしまぁ、なるほどなぁ。
「だから早く言えって言ったのに……」
「ほえ?」
「犯人特定した。確認なんだけど、被害の出なかった部屋を教えてもらっていい?」
「…………ええ!?!?」
全く、呆れ返るほど簡単な話である。うさぎくんからいくつか確認事項を聞き終え、俺はある仕掛けに取り掛かった。
91
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる