王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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翌日、寝ぼけ眼で下駄箱を開くと、大量の悩み相談の中に見覚えのある封筒が落ちてきた。

「お」

目に優しい薄緑。相変わらず差出主の書かれていない、俺の名前だけが几帳面な文字で記されている。
ひとまず他の封筒たちをまとめ、このために買ったファイルに入れ込んで鞄にしまう。

「そういえばこの人、最初に送ってくれて以降だな」

田中宗介様、と簡素に記された跡をなぞった。簡潔で淡々としていて、そっけないような気すらする文字だけれど、それに万感の思いがこもっているのを俺は知っていた。

ファンだ。ファンの子からの手紙だ。

「いや、自分でファンっていうのキモいか……?」

でも嬉しいよな。懐に手紙を入れて、ルンルンと浮き足立って教室に向かう。道中副会長とばったり遭遇した。

「おや」
「うお、副会長~?」

理知的な銀縁眼鏡をきらりと光らせ、表面上は穏やかに副会長が笑いかけてくる。周囲には人がいない。俺が今日はめちゃくちゃ早くきたからだ。何なら学校一番乗りだと思ったのだけれど。

「おはようございます、田中宗介くん。今日は早いようですが」
「最近、他の子が委員会手伝ってくれててね~。時間出来てるんだ~」
「他の子……とは。では元来、園芸委員会で手伝いは見込めなかったと?」

あっまずい他の子がサボってると思われてる。修学旅行の時でもほどほどに喋ったが、だからこそ二人の時に何の話をしていいのかがわからなくなる。

「そういうことじゃないよ! フツーに、寮になったから人手が増えた、ってだけ~! 生徒会としても、園芸がセラピーになる可能性もあるから構わないでしょ?」

そう言い含めれば、納得してくれたようでそれ以上の追求はなかった。俺はほっと息を吐く。
しかし、曲がり角で遭遇したためかすり抜けるタイミングを逃した。
ウウーーッッ副会長めちゃくちゃ有名人だし綺麗な人だから緊張するな……俺の背は結構高いから、副会長ってデフォで上目遣いなんだよ。ときめいてしまうね。

「……貴方はどうして、他人にそうも心を砕くのでしょうか」
「えっ?」

えっ今副会長の口から出たとは思えん言葉が出てきたんだけど。他人に心を砕く? 俺が?? 副会長って俺の評価それだったの????

別に砕いた覚えないけど……

「その手紙だって、所詮はただ自分の悩みを整理するためだけに出しているにすぎないでしょう? 探偵の真似事をしているとお聞きしましたが、そうまでする理由は?」

そうして指し示されたのは、俺が肩にかけた鞄。正確にいうと、その中身だろう。

探偵の真似事といえば、悩み相談の話か。
そうまでする理由、理由ねぇ。

「特にない……」
「は?」

ヒェーーーッッめっちゃ睨んでくる怖!!
ないもんは仕方ないだろ、考えなしだからこんな、向いてないチャラ男なんかを貫いてるんだぞ!!

「確かに、おれに相談して自己解決する人って多いよ、大半だと思う~。でも~、本当に悩んでる人がいて~、おれが解決できるなら、するべきだと思わな~い?」
「思いませんね。くだらないノブレスオブリージュです」
「ノブレスオブリージュに貴賎はなくない……?」

副会長は合理主義だから、俺の言動が訳わからんのだろう。まぁ俺も訳わからんからおそろなんだけども。
元々この噂の広がりだっておかしなものだ。俺はみんなが期待してくれているような頼りがいのある人間ではないし、嘘ついてばっかの小心者だし。

「おれは……でも、寄り添ってくれる誰かが欲しい気持ちは、分かるから~……」

そのくらいならいつでもできる。何しろ俺は常に人恋しく寂しがり屋さんなので。可愛くないうさぎ。そういえばうさぎは寂しくても死なないらしい。じゃあうさぎではない。

うさぎですらない謎の弱い生き物になった俺に、副会長は珍しく表情を動かして呆れ顔を作った。
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