王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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三十分後。
お化け屋敷から出てきた俺たちは、めちゃくちゃ顔を顰めている水瀬を慰めていた。

「まさか一切ジャンプスケアなし、意味がわかると怖い因習系だとはなぁ……」
「中、広々……ダンボールもない……」
「めちゃくちゃリアルな牢獄の一室が再現されてたね。いや、俺もゾッとしたよ」

そう。文化祭のお化け屋敷とかいう条件で、意味がわかると怖い謎解き系ホラーをかまされたのである。凄い。

提灯を持って中に入ると、なんの説明もなく鉄格子で仕切られた部屋が作ってあった。
出口と入り口はどちらも鉄格子の外、鉄格子は扉が壊されて? おり、奥には黒く乾いた液体が染み込んでいる。

微かなアンモニア臭と、腐った卵のような臭い。鉄格子の外側にはいろんな専門書か何かが本棚に収められている。そこで書かれた本だろう、見たことも聞いたこともない名前や題名が印象的だった。

『うわ、くっさいな。窓開けられないか?』

水瀬がそう言い始めたので、ちょっと外の空気吸わせてもらおうと窓に手をかけたが、開かない。内側から鍵を開けているのに。
そこでまぁお化け屋敷として楽しもうと探索してみたのだが、出るわ出るわ最悪の何らかが。

『あっみてよ日誌! 何々、へぇーもうすぐお祭りなんだって。でも祭りの道具が足りない、用意していたはずのお手伝いさんが流した? って』
『この住民名簿、子供と年寄り、多い……』
『専門書か? これ。みたことないな……万能薬の作り方、壺の中に素材を入れて発酵……? 黒塗りになってて読めねぇな。壺ってこれか? うわ!! くっさ!!』

この辺りでもうちょっと察したよな。
植物の知識がある人間にしかわからないのだが、水瀬の持ってきた専門書に書いてある、万能薬の素材。
その一つとして描かれた葉に違和感を覚える。

付随している特徴や見分け方を鑑みると、どう考えても麻薬に使われるものだったので。

『少なくとも、この場所で人が過ごしてたってことだけど……ここ、トイレないよな?』
『……人間』
『仕舞い込まれたこの道具、最近まで使われた形跡があるな……ガキを産むための道具だぞ。こんな場所で? いや待て。儀式の道具を? ……』

その水瀬の呟きに俺とこうちゃんも流石に察して、最悪因習教室を今出てきたというわけだ。水瀬は嫌そうな顔をしている。また何らかの真相に足を踏み入れてしまったのだろう。

──いや、本気すぎる。

「察しの悪さは時折宝になることがあるよね。俺は今そう感じた。この追い詰められている水瀬を見て」
「怖」
「そりゃお前みたいな因習村出身人でんちゅにはわからんだろうがな」

だから俺の地元は因習村ではないって。あんな悍ましい場所と一緒にすんな。距離が近いだけだ不思議との。

「ああいうの本当に気分悪くなるんだよ。読んだか? 村長とやらの日記。最後に書いてあった文字」
「ん? いや、他の本とか読んでてあんまり」
「“男児が産まれた、救世主だ!”だぞ。住民名簿に成人男性が少ないのって、」

オワーーーッ!!!!!!!!!
変なことを気づかせないでほしかった。とても嫌な気持ちになる。
因習村の再現度高すぎるだろ。経験者か?
本気のお化け屋敷に、受付の人に提灯を返還しに行く。よく見たらこの人、普通の着物だしなんか壺持ってるな。村の人ってことですか、そうですか…………

「アッひろし先輩!! お化け屋敷見てくれたんすか!?!?」

ウワッさっきの陽キャ!!
水瀬に尻尾振るようによってくる後輩に、顔を顰めていた水瀬が爽やかな笑顔を向ける。
うわ、凄いこれ。万華鏡みたいだった。

「おお、見た見た。面白かったぞ~」
「シャス!! いやー嬉しっす、あれシナリオ書いたの俺なんすよ」

陽キャ!?!?!?!?!?

「あと本とか用意してて……あっ俺趣味で怪奇小説書いてるんすけど、馴染みの印刷会社に発注して本作ったんすよ。
わかりやすく血痕を使うって案もあったんすけど、個人的に探索謎解き系だと鮮血って逆にチープさが増す気がして……時間が経ってる証拠にならないじゃないすか」

めちゃくちゃ喋る陽キャ。凄いなこいつ。変態的なこだわりを持っているタイプのホラー好きだ。
一年生はこういう出し物系は慣れていなくて遅れをとることが多いが、こんな逸材が隠れてたとはな。逆に去年のAクラスが使ってたチープな看板が似合わなくなってきた。

もう何もかもが終わった因習村って感じがしてたもんな、あの空間。じっくり探索できるのも凄い。

「ちなみにあの場所を探索したっていうていで書いた薄い小説本と地図を隣で売ってるんすよ。隣図書委員会だったんで」
「うわーーワクワクするね~それ!」
「うお田中先輩! 分かりますか! アレからウチに出会ってもよし、ウチを経験したあと本に出会ってもよしって感じっす!!」

ワクワクというかドキドキする。小説の登場人物になったみたいだ。にゅっと急に生えてきた俺を水瀬は呆れた顔で見ていたが、追及することはなかった。水瀬はこういうのあんま好きじゃないもんな。

さらに聞けば、万能薬の専門書や住民名簿は売っていないそう。なくなった場所の物があるのはおかしいだろうということらしい。
持ち出す本のチョイスにえげつないこだわりがあるな、良いことだ。

こういう変態的なこだわりが出来るので王道高校の来客は後を絶たないのだ。

「さすが因習村出身者、食いつくな」
「因習村じゃないって」
「田中先輩ってそういえば地元どこなんすか? 俺田中先輩こういうのわかる人じゃないと思ってたんすけど」

それに関しては俺も君みたいな陽キャ運動部がここまでのこだわりを持ってるとは思ってなかったが??

困惑しながら地元の名前を告げれば、水明祭の、と納得された。砂月屋じゃなくて水明祭で納得するあたり、好きなんだなこういうの。

「いっすね! あのあたり、めちゃくちゃ神秘が身近なんすよね。代わりにあそこ出身者ってみんな神秘に慣れきってて、俺は許せねっすよ!!」
「あはは。まぁ、普通はわからない線引きとかはあるもんねぇ~」
「その線引きが俺は知りたいんすよ~!! でもああいうのは地元民の肌感じゃないとわかんないのが良いところで……」

地団駄を踏む一年生に苦笑する。たまにオカルト好きの観光客がそう言っているのを聞くのだが、そんなことを言われても俺からすると何でわかんないんだろうとなる物なのだ。
潮風で海の存在を感じ取るように、超えてはいけない場所は肌感でわかる。

「まぁーでも因習ではないっすよね。失礼っすよ水瀬先輩!!」
「うわ、お前宗介の味方かよ~」
「俺は全ての怪奇の味方っす!」

良い子だ。しかしこの一年すごい個性だな。三年が卒業した後でも何だか安泰そうで安心した。

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