168 / 201
監禁! 最後の文化祭
39
しおりを挟む
大浮かれしている俺を置いて行こうとした水瀬達に追いついて、俺は鼻高々と武藤様に褒められた話をする。
「子供想いだって。武藤様、子供好きなんかなぁ。いやぁこれは俺のこと好きになってくれるかも」
「会長、が? ……ローストチキンはガーリック味が一番」
「ほら見ろよこの輪投げで最終的に取った虹色のよくわからん輪っかが連なってるやつ。めっちゃ長い」
「ローストチキンに関しては何本食うんだって話だしそれレインボースプリングな。うわでっか」
俺を置いて行った輪投げで得たおもちゃ、でっか。
縁日とかで買えるやつだ。レインボースプリングという。
未だにどうやって遊ぶか定かではなく、その割に子供の頃やけに好きだった思い出が大抵の人間にはあるのではないか。
「伸ばしたら二メートルくらいある。こんな長かったっけ?」
「見たのが子供の頃、不明瞭」
「子供の頃って何もかもがデカかったよなキッ○カットとか」
「キット○ットは実際に小さくなってるぜ」
「「!?!?」」
そうなの!?!? 水瀬の発言に俺とコウちゃんが同時に驚いた。マァムの方は知っていたが。チョコレート高くなってんのかな。まぁ今どき高級チョコとかあるしな……この間贈答用で買ったチョコ、一枚で八百円だった。
レインボースプリングをしゃかしゃかとさせて遊んでいる水瀬とクソデカチキンを貪るこうちゃんを抱え、俺たちは二年教室へと向かった。
まぁめぼしい一年教室は見てきたし、昼のシフトが入る前に顔を出しておきたかった。
「Aクラスだとあそこかな? ……おお、呼び込みのメイドだ」
「違法」
「はは。客のキャッチは禁止されてるんだよな、本来だと。まぁここは治外法権な訳だが」
それは常にそうである。常に治外法権。
「あっ♡田中様、きてくださったんですね♡」
「ん~? あーうん、約束してたから~……」
誰だっけ……
あーいや、覚えてる。去年園芸委員会に入ってきた子だ。その場のテンションでメッセージ交換したんだよな。でもそれ以降一回も話してない。そういう人がごまんといる。
園芸委員会も来なかったし、逆に覚えてるのが奇跡ということでね、だめですか。
「約束? 誰と約束してるんです? なつくんかな、はなちゃんかな」
いや全然知らん……
Aクラスに所属するだけある可愛らしい外見。栗色の髪をハーフアップにしたその子は少年と呼べるほど小柄で可憐で、庇護欲を刺激される見た目をしている。マスクで隠れている部分もAクラスなのだから整っているだろう。
とても男子高校生とは思えなかった。しかも二年生だしな。
「あ、あの、約束した子が見当たらなかったら、ボクと……」
「おー、モテてるなぁ宗介」
「通行の邪魔」
「ッ、水瀬ひろし……に犬神様!?」
「何で俺は呼び捨てなんだ? コラ後輩」
ちなみに俺の親衛隊から水瀬はほんのりと恨まれている。ずっしりと両肩に手を掛けて体重までかけてくる二人に文句を言いつつ、へらりと薄笑いは崩さない。
「そういうわけだから。案内してくれる~?」
「あっは、はい。でも田中様、ボク……」
物欲しそうな目で見られても、あまり人の通る往来でファンサするのもな。地元の人に見られるのが最悪の極み乙女だがそうでなくとも知り合い、ひいては知らん人に見られて調子乗ってんなと思われるだけで心折れる。拡散とかされたらもう舌噛むしかない。
俺は鞄をガサゴソと漁り、Aクラスに案内してくれたその子を呼び止めた。
「チップ……は、難しいから……。
まぁ、喉気をつけてね~? 合唱、やってたでしょ~?」
「ひゃ、覚えててくれたんですか……っ!」
水瀬が俺に寄りかかったまま胡乱な目を向けてくる。
(覚えてたのかよ)
(いや……)
覚えてない。これは俺の悲しき処世術だが、覚えていない相手は観察してプロフィールを把握する傾向にある。
店内をさっと見た限りマスクを着けている人は少なく、多分調理場に回っているのだろう。
キャッチに出るほど顔に自信があるのに、マスク。どうしてもつけなければいけない理由があると考えるべきだ。
可愛らしいフリフリのメイド服にもあっているかわいい猫型マスクだが、風邪をひいてそうな声ではなかった。
(後頭部につけてたの見たか? シリコン製のマスク用フック。あれを使うのは普段マスクをつけるやつだけだ。耳が爛れるのを防止するためだからな)
(それで、喉の保湿を怠ってない相手だと思ったわけか)
シリコン製の、百均で買える耐久性の高いシンプルなマスク用フック。俺も風邪引いた時に購入を検討してたことはあるが、それ以外にも使い勝手の悪い見た目重視のフックもあった。
声の通りも良かったので、あれは真剣に声楽をやっている人間の姿だ。
と感じ、偶然持ってたのど飴を渡したというわけだ。
俺の推理を披露すれば、水瀬は憐れんだような顔をした。
「お前の推理力、普通にすごいと思う反面人の顔を覚えられないのが欠点すぎるな」
「素直に褒めろや~~い」
こいつは一旦貶さないと他人を褒められないのか? この捻くれ者めっっ!
「子供想いだって。武藤様、子供好きなんかなぁ。いやぁこれは俺のこと好きになってくれるかも」
「会長、が? ……ローストチキンはガーリック味が一番」
「ほら見ろよこの輪投げで最終的に取った虹色のよくわからん輪っかが連なってるやつ。めっちゃ長い」
「ローストチキンに関しては何本食うんだって話だしそれレインボースプリングな。うわでっか」
俺を置いて行った輪投げで得たおもちゃ、でっか。
縁日とかで買えるやつだ。レインボースプリングという。
未だにどうやって遊ぶか定かではなく、その割に子供の頃やけに好きだった思い出が大抵の人間にはあるのではないか。
「伸ばしたら二メートルくらいある。こんな長かったっけ?」
「見たのが子供の頃、不明瞭」
「子供の頃って何もかもがデカかったよなキッ○カットとか」
「キット○ットは実際に小さくなってるぜ」
「「!?!?」」
そうなの!?!? 水瀬の発言に俺とコウちゃんが同時に驚いた。マァムの方は知っていたが。チョコレート高くなってんのかな。まぁ今どき高級チョコとかあるしな……この間贈答用で買ったチョコ、一枚で八百円だった。
レインボースプリングをしゃかしゃかとさせて遊んでいる水瀬とクソデカチキンを貪るこうちゃんを抱え、俺たちは二年教室へと向かった。
まぁめぼしい一年教室は見てきたし、昼のシフトが入る前に顔を出しておきたかった。
「Aクラスだとあそこかな? ……おお、呼び込みのメイドだ」
「違法」
「はは。客のキャッチは禁止されてるんだよな、本来だと。まぁここは治外法権な訳だが」
それは常にそうである。常に治外法権。
「あっ♡田中様、きてくださったんですね♡」
「ん~? あーうん、約束してたから~……」
誰だっけ……
あーいや、覚えてる。去年園芸委員会に入ってきた子だ。その場のテンションでメッセージ交換したんだよな。でもそれ以降一回も話してない。そういう人がごまんといる。
園芸委員会も来なかったし、逆に覚えてるのが奇跡ということでね、だめですか。
「約束? 誰と約束してるんです? なつくんかな、はなちゃんかな」
いや全然知らん……
Aクラスに所属するだけある可愛らしい外見。栗色の髪をハーフアップにしたその子は少年と呼べるほど小柄で可憐で、庇護欲を刺激される見た目をしている。マスクで隠れている部分もAクラスなのだから整っているだろう。
とても男子高校生とは思えなかった。しかも二年生だしな。
「あ、あの、約束した子が見当たらなかったら、ボクと……」
「おー、モテてるなぁ宗介」
「通行の邪魔」
「ッ、水瀬ひろし……に犬神様!?」
「何で俺は呼び捨てなんだ? コラ後輩」
ちなみに俺の親衛隊から水瀬はほんのりと恨まれている。ずっしりと両肩に手を掛けて体重までかけてくる二人に文句を言いつつ、へらりと薄笑いは崩さない。
「そういうわけだから。案内してくれる~?」
「あっは、はい。でも田中様、ボク……」
物欲しそうな目で見られても、あまり人の通る往来でファンサするのもな。地元の人に見られるのが最悪の極み乙女だがそうでなくとも知り合い、ひいては知らん人に見られて調子乗ってんなと思われるだけで心折れる。拡散とかされたらもう舌噛むしかない。
俺は鞄をガサゴソと漁り、Aクラスに案内してくれたその子を呼び止めた。
「チップ……は、難しいから……。
まぁ、喉気をつけてね~? 合唱、やってたでしょ~?」
「ひゃ、覚えててくれたんですか……っ!」
水瀬が俺に寄りかかったまま胡乱な目を向けてくる。
(覚えてたのかよ)
(いや……)
覚えてない。これは俺の悲しき処世術だが、覚えていない相手は観察してプロフィールを把握する傾向にある。
店内をさっと見た限りマスクを着けている人は少なく、多分調理場に回っているのだろう。
キャッチに出るほど顔に自信があるのに、マスク。どうしてもつけなければいけない理由があると考えるべきだ。
可愛らしいフリフリのメイド服にもあっているかわいい猫型マスクだが、風邪をひいてそうな声ではなかった。
(後頭部につけてたの見たか? シリコン製のマスク用フック。あれを使うのは普段マスクをつけるやつだけだ。耳が爛れるのを防止するためだからな)
(それで、喉の保湿を怠ってない相手だと思ったわけか)
シリコン製の、百均で買える耐久性の高いシンプルなマスク用フック。俺も風邪引いた時に購入を検討してたことはあるが、それ以外にも使い勝手の悪い見た目重視のフックもあった。
声の通りも良かったので、あれは真剣に声楽をやっている人間の姿だ。
と感じ、偶然持ってたのど飴を渡したというわけだ。
俺の推理を披露すれば、水瀬は憐れんだような顔をした。
「お前の推理力、普通にすごいと思う反面人の顔を覚えられないのが欠点すぎるな」
「素直に褒めろや~~い」
こいつは一旦貶さないと他人を褒められないのか? この捻くれ者めっっ!
86
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる