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監禁! 最後の文化祭
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その後もそこそこに占いは盛況だった。
まぁ、タロットを使うことなんてほとんどなかったんだけども。
「たまにSNSで見る餃子作り機を買おうかと思っていて、どうでしょうか」
「タロット曰く自分で作った方が効率はいいそうですねー」
「なるほどわかりました、買います!」
「なんで?」
「ケンタ君がサンタさんいないってゆってた~!!」
「タロット曰く信じていない子の目には見えないからだそうです。毎年サンタさんは来る?」
「くる……」
「居るじゃないですか」
「新弾が強すぎて環境一色になる気がする。もうやめた方がいいんですかね」
「タロット曰く基本的に不毛なのでやめれるものならやめた方がいいですね、新弾そんな強いんですか」
「これなんですけど」
「つっよ。もう終わるんこの界隈」
「遊び来ましたセンパーイ! オワなんか人気になっとる」
「えっ嘘誰あの子」「可憐だ……」「占い師さんあの子との将来を!」「おい抜け駆けすんな!」「生徒? 男??」「男の娘ってやつか」「もう男でいいや」
「姿を見せた瞬間サークラするのやめな~」
などなど。勤務時間の一時間が終わる頃には、俺はすっかり疲労困憊になっていた。
捲るポーズにしか使ってないタロットをしまい、またやってきた別の人へと交代する。
「うわっなんでこんな盛況なんだ。てかほんのりニンニク臭くね?」
「退魔のアレだから気にせんで~」
あー疲れた。肩が凝った。もうやりたくないな占い師。簡単なことを言い当てれば言い当てるほど尊敬されるので、こういう職業が途絶えない理由はちょっとわかった。この世にはどんな嘘でも騙される人がいるんだなぁ……。
人が結構並んでいる暗幕の垂れた教室を出ると、廊下内は明るく目がチカチカとする。くらっとした頭を振りながら、周囲を探した。三年の教室はしんとしている。写真展が二個くらいあった。
「二人ともいないな……」
まぁ、歩いてれば会うだろう。ハブられてたらやだな。三人で遊びに行くと二人が固まるあの法則ね。まぁ俺は三人で人と遊びに行くほど仲良くなれなかったコミュ障の残骸なんだが……
三年生はそれぞれ展示にやる気がなく、全体的に望洋としている。他クラスの写真展示にも行ったが、当たり前だがそこの思い出や青春が写っているだけでやけに他人感が強い。
Cクラスも扉を閉じて仕舞えば中は見えない。廊下は静かなものだった。
「あ、下……」
どこからか声が聞こえてきて、ガラス越しに外を覗けば、昇降口の方が見えた。そこではずらっと屋台が並んでいて、生徒だか外部の人だかわからない声ががやがやと聞こえる。
そそっかしい鳥が慌てて会話をするような、草木が微風に騒めくような、そういう和やかさを静かな廊下が演出していた。きっとあの渦中にいれば、和やかさなんて程遠いのだろうけれど。
「へぇー、ここも写真館やってんだ」
雑に黒板に描かれた映えスポットを見つけて、他クラスの教室に入る。受付も誰もいない。
薄暗がりの教室に優しく昼の光が差し込んできていて、埃が小さな妖精のように踊っている。
遠くの屋台が音楽を掛けたり何かを焼いたり作ったり、そういう喧騒が酷く遠く感じられた。
「あ、体育祭……」
このクラスはどうやらクラス独自ではなく、学校全体の写真を展示しているらしい。絶対写真部に行った方がいいもの見られるけど、あの人たち基本的に美しい自然の一風景とかしか撮らないからな。生徒の様子とかは多分写ってないだろうな。
大きな模造紙にペタペタと貼り付けただけの写真。模造紙の一番上を見ると、濃い緑色のマーカーで何かが書いてあった。
(三年間の記憶……)
そうか、三年間か。
もうそんな時期なのか。
文化祭が終われば、あとはなんだ。もう卒業式しか残っていない。一年生の頃はあんなにも怒涛で膨大だった行事を、俺はもうすっかり終わらせている。
知っていたはずのそれに、何故か強く衝撃を受けた。心臓が揺れて、何を思うでもなくもったいない、と口をついて出た。
「ずっと今日のままがいい……」
今までそんなこと考えたことなかった。毎日が無感情に過ぎていって、俺はそれで充分だったから、ああでも今年はなんか、楽しかったな。
また一年、同じ人と同じようにやり直したいな。
一年前はきっと思いつくこともなかった言葉だろう。ずっと、早く過ぎ去ればいいのにと思っていたに違いない。虚無だったし、ちょっと辛かったから。
立ち尽くしている俺の耳に、入り口の扉が開く音が届く。重そうに軋んだ音を立てて、知っている顔がヒョイとこちらを見た。
「真道?」
「師匠」
腕章をつけた無骨な眼鏡の男が、秋の昼に照らされてパチリと目を瞬かせた。
まぁ、タロットを使うことなんてほとんどなかったんだけども。
「たまにSNSで見る餃子作り機を買おうかと思っていて、どうでしょうか」
「タロット曰く自分で作った方が効率はいいそうですねー」
「なるほどわかりました、買います!」
「なんで?」
「ケンタ君がサンタさんいないってゆってた~!!」
「タロット曰く信じていない子の目には見えないからだそうです。毎年サンタさんは来る?」
「くる……」
「居るじゃないですか」
「新弾が強すぎて環境一色になる気がする。もうやめた方がいいんですかね」
「タロット曰く基本的に不毛なのでやめれるものならやめた方がいいですね、新弾そんな強いんですか」
「これなんですけど」
「つっよ。もう終わるんこの界隈」
「遊び来ましたセンパーイ! オワなんか人気になっとる」
「えっ嘘誰あの子」「可憐だ……」「占い師さんあの子との将来を!」「おい抜け駆けすんな!」「生徒? 男??」「男の娘ってやつか」「もう男でいいや」
「姿を見せた瞬間サークラするのやめな~」
などなど。勤務時間の一時間が終わる頃には、俺はすっかり疲労困憊になっていた。
捲るポーズにしか使ってないタロットをしまい、またやってきた別の人へと交代する。
「うわっなんでこんな盛況なんだ。てかほんのりニンニク臭くね?」
「退魔のアレだから気にせんで~」
あー疲れた。肩が凝った。もうやりたくないな占い師。簡単なことを言い当てれば言い当てるほど尊敬されるので、こういう職業が途絶えない理由はちょっとわかった。この世にはどんな嘘でも騙される人がいるんだなぁ……。
人が結構並んでいる暗幕の垂れた教室を出ると、廊下内は明るく目がチカチカとする。くらっとした頭を振りながら、周囲を探した。三年の教室はしんとしている。写真展が二個くらいあった。
「二人ともいないな……」
まぁ、歩いてれば会うだろう。ハブられてたらやだな。三人で遊びに行くと二人が固まるあの法則ね。まぁ俺は三人で人と遊びに行くほど仲良くなれなかったコミュ障の残骸なんだが……
三年生はそれぞれ展示にやる気がなく、全体的に望洋としている。他クラスの写真展示にも行ったが、当たり前だがそこの思い出や青春が写っているだけでやけに他人感が強い。
Cクラスも扉を閉じて仕舞えば中は見えない。廊下は静かなものだった。
「あ、下……」
どこからか声が聞こえてきて、ガラス越しに外を覗けば、昇降口の方が見えた。そこではずらっと屋台が並んでいて、生徒だか外部の人だかわからない声ががやがやと聞こえる。
そそっかしい鳥が慌てて会話をするような、草木が微風に騒めくような、そういう和やかさを静かな廊下が演出していた。きっとあの渦中にいれば、和やかさなんて程遠いのだろうけれど。
「へぇー、ここも写真館やってんだ」
雑に黒板に描かれた映えスポットを見つけて、他クラスの教室に入る。受付も誰もいない。
薄暗がりの教室に優しく昼の光が差し込んできていて、埃が小さな妖精のように踊っている。
遠くの屋台が音楽を掛けたり何かを焼いたり作ったり、そういう喧騒が酷く遠く感じられた。
「あ、体育祭……」
このクラスはどうやらクラス独自ではなく、学校全体の写真を展示しているらしい。絶対写真部に行った方がいいもの見られるけど、あの人たち基本的に美しい自然の一風景とかしか撮らないからな。生徒の様子とかは多分写ってないだろうな。
大きな模造紙にペタペタと貼り付けただけの写真。模造紙の一番上を見ると、濃い緑色のマーカーで何かが書いてあった。
(三年間の記憶……)
そうか、三年間か。
もうそんな時期なのか。
文化祭が終われば、あとはなんだ。もう卒業式しか残っていない。一年生の頃はあんなにも怒涛で膨大だった行事を、俺はもうすっかり終わらせている。
知っていたはずのそれに、何故か強く衝撃を受けた。心臓が揺れて、何を思うでもなくもったいない、と口をついて出た。
「ずっと今日のままがいい……」
今までそんなこと考えたことなかった。毎日が無感情に過ぎていって、俺はそれで充分だったから、ああでも今年はなんか、楽しかったな。
また一年、同じ人と同じようにやり直したいな。
一年前はきっと思いつくこともなかった言葉だろう。ずっと、早く過ぎ去ればいいのにと思っていたに違いない。虚無だったし、ちょっと辛かったから。
立ち尽くしている俺の耳に、入り口の扉が開く音が届く。重そうに軋んだ音を立てて、知っている顔がヒョイとこちらを見た。
「真道?」
「師匠」
腕章をつけた無骨な眼鏡の男が、秋の昼に照らされてパチリと目を瞬かせた。
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