王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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そんなわけで近くのベンチに獅童くんを置き、戻ってくる。若干駄々を捏ねられたが駄菓子のおまけについてくるおもちゃをあげたら静まった。俺のお気に入りである。一個しかないので大事にしてほしい。

「えぐ。あかちゃんなの?」
「赤ちゃんではないですね~」

獅童くんのビジュにメロメロになっている花音さんが勝手にときめいていた。喫茶での対応に慣れており、どうも敬語が抜けない。
萌さんは不満そうだが。

「花音さんたちはしばらくクレープ作ってるんですか? 大変ですね」
「元々そのつもりで来たんよ。いぶっち以外にキッチン出来んのがウチくらいでね~。手伝って欲しいけど、そーちんはホールやもんな」
「喫茶アネラ手薄すぎる」

ほぼ全てがバイトで成り立ってる。
元々本人が成り立たなくても困ってないからだろうか、結構運営が雑だ。
しかもイブキなんて一番新入りだしな。最近はキッチンをイブキに任せきりである。寮で大量にご飯を作っているからか手際が良すぎるのでめちゃくちゃ頼りになるのだ。

「ちなみにあたしは経理。家柄的に得意なんで」
「事務までバイトだったんですね、あそこ」
「ほぼ人情と善性で成り立ってるぜ。あたし偉くね」
「萌さん凄いですね。就職困んなさそう」

PC系の検定と商業簿記も取っているそうだ。流石にすげ~。その資格あったら事務系の就職先で無双できるじゃん。
素直に感服を込めて褒め称えると、珍しく感情露わにドヤ顔をしていた。萌さんは基本テンション感が変わらないので。

「そーちんは就職困ってんの? たまに言うよね~」
「んー……まぁ~若干。いくつか内定はいただいたんですが、その……」

激しい就職活動のおかげもあって、いくつか縁のあった企業もあった。それまでに百社くらい落とされてるので喜びもひとしおだ。が。

「就職四季報とか見ると、離職率が高くて平均勤続年数が短く……よく考えると募集要項にも具体性がないと言うか……採用人数も相当多く……」
「えぐ~! ブラック企業の典型例!!」
「こんな名門きといてンなブラックに就職するんか宗介、大変なことになるぞ!!」
「そうだよー学歴が下手に高いと嫌がらせされることもあるんだから……しかもそんな前時代的なブラック企業……」

なんでこの人たちこんな社会の闇に詳しいんだ。進学組だよな?
そう、どう考えてもブラック企業だった。確実に使い捨てにされる。スタートダッシュをミスると人間とはこうなるのである。
しかしどうしようもないので就職するしかない。

もう自営業とかにしよかな。俺、使い捨ての道具より役に立てない自信しかないし。
てかこのメンタルの弱さで人間社会で生きていける気がしない。社不である。

内定もらった企業全部賃金体系わけわからんのも怖い。どうなってるんだ? これは

「まぁそういうわけで、若干困ってます。雑巾になってしまうよ……」
「が……がんばれ。マジでやばそうだったらあたしんとこ来な」
「物理的に殺されてしまいます俺が」

でも本当に困ったら連絡しよう。
アネラで雇ってもらえる話も出ているのだが、ホールとしてほとんど役に立っていない俺が義理で置いてもらうのも申し訳ない。
鬼のようにバイトしていた時期もあるし、別に働けないわけではないのだろうが。いやぁでも一生働くならせめて良いところが良かったな。

「……おい」
「どしたの?」

声をかけられて振り返ると、武藤様が何やら複雑そうな顔をしていた。
悲しそうというか不満そうというか、怒ってるような寂しいような、少なくとも俺の語彙力で言い表せるほど簡単なものではない。負の感情であるのは分かった。

「武藤で雇うっつった……」
「ああ~……言ってたね。でもちょっと分不相応だし、別に俺の努力でその地位を得たわけじゃないしな」

嘘である。分を弁えるという言葉をドブに投げ捨てないと内定なんてもらえない。俺はもうその辺を捨てプライドを投げ捨て靴を舐める勢いで辛酸を舐めてきている。

俺のようなコミュ障にとって就活の努力は当然するものであって、それが報われようと報われなかろうとどうでもいい。
もう!! 就職さえ出来れば!! それで!! 靴舐めます!!

──では何故武藤様の誘いをかわしているのかというと、ひとえにそれは恋からだった。

(恋人(仮)から雇用主と社員って、流石に遠すぎるだろ……! そこまで依存したら嫌われちまう。自立してるとこ見せないと)

そういうことだ。馬鹿なことをしている。だが男に恋した時点で馬鹿なのでまぁ許して欲しい。死ぬほど働いて金は稼ぐし家にも入れるので。
自分の限界までいいとこに行くので。

「あ? だからこの俺様が用意してやるっつってるだろ。別にてめーが不相応だとは思ってない。変なとこに当たるくらいなら来ればいい」
「いや良いって。そういうの知ってる? コネ入社だよ。俺恨まれたくないし」
「その分実力見せりゃ良いだろ」
「見せるもんがないんだってば」

何をそんなに俺を高く評価しているのか。この話題になると何故か食い下がる武藤様をかわすのは心が痛いし骨が折れるが──バキバキである──これに関しては恋心の暴走ということで。ダメか。まぁダメでも俺には関係ないので……。

「ひえ~、だしにされたんだけどあたし」
「萌かわいそ~。よしよし、二人ともクレープあげるからもうどっかいって~糖分過多で営業妨害です!」
「普段は引き止めるくせに……あ、お金払いますよ」
「いくらだ」

いつの間にかできていたクレープをポンポンと渡される。俺は昨日と同じで、武藤様はキャラメルだった。相変わらずずっしりとしている。

「あ、それひまさんが差し入れだってよ。会ったら渡しといてって言われてたの忘れてたわ」
「いや、俺は働いてねぇんだが……」
「彼氏割ってことで! そーちんにはいっつも助かってっし! ほれほれ早く回りな~! ウチのおすすめはお化け屋敷!」
「あの胸糞お化け屋敷、本も持ってます」
「もう行ったんかい」

今日ちょうど持ってきたし、武藤様にも見せてあげようかな。しっしっと追い出されたのを素直に受け入れ、フードコートから出た。

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