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監禁! 最後の文化祭
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男である俺じゃなくたって、いや、そうでない方が、武藤様のことを幸せにできる。
前時代的で凝り固まった幸せだけれど、そしてそれを普通の幸せと呼ぶことに今時は抵抗を覚えなければならないのだけれど、しかし確かに千年も前からそこにある幸福というものは、俺にはあげられない。
唯一の女の子を見つけて、泣いたり笑ったりしながら、できれば泣いた三倍は笑い合って、家族を作るのが幸福なのだと思う。
少なくとも俺は両親を見てそう思ったし、みつるにもそうなってほしい。姉ちゃんもそうであってほしかった。
余計なお世話だと怒られるかもしれんけど。
「……武藤様も、直系だもんな。ああいうのってちゃんと血継いだ子供じゃないとだめなんだろ?」
「うーん……どうだろう? わたしも血縁だから砂月屋の若女将なんだけど、後継者不足とかも加味した上でだから……」
「そういやそうだった。ユキちゃんってどっちかっつーと生き物係の印象が強い」
「うふふ。わたしにそんなこと言ってくるの、今となっては田中くんくらいだよ?」
そうなのか。ユキちゃんが眉を下げて笑うので、俺も頬をかいた。
ユキちゃんは確かに若女将だけど、それで自分でやりたくて継いでるのも知ってるけど、俺にとっては小学生の同級生でもあるのだし。
何だか少女漫画のイケメンみたいなことをやわらかに言う、お嫁さんって言葉にギュッと詰まった憧れの象徴みたいな女の子は、彼女の夫を愛おしげに眺めた。
「確かに、好きな人には幸せになってほしいよね」
「……うん」
絵本で見るような、完全無欠のハッピーエンド。王子様とお姫様が末長く幸せに過ごすお話。江姫さんが武藤様の鼻をむぎゅりとつまんでなにやら言うと、武藤様は目を吊り上げて睨みつけた。子供のじゃれあいみたいだ。
「わたしたちの知ってる一番の幸せは、きっと御伽話の中で見る普通の家庭を築くことで、子供の頃見たアニメの主人公のおうちみたいな幸せだもん」
そう。前時代的で古い港町には、そう言う信仰みたいなのがまだ根強く残っていた。常識の基盤に、そういう古くからの幸せが根付いているのだ。
上京して色んな形があることを知って、それでも足踏みしてしまうのは、安定した幸せの味を知っているから。
「スイカの一番甘いところを渡すみたいに、人生で一番だと思ってることを、好きな子にはあげたくなっちゃう。だから田中くん、さっきから俺なんかーって顔してるもん」
「……全部お見通しじゃん」
「恋する乙女は強いんだよ?」
一体誰に恋をしているのやら。ユキちゃんだって、俺を見る目の色に熱っぽさが抜けている。
言い当てられた内面に自嘲が漏れる。そうだ、俺はまだ俺なんかと足踏みをしているのだ。
告白すると決めたのに、ユキちゃんの言った通り、武藤様の選ぶ唯一の人は、彼女みたいな可愛い子しか想像できない。
そうでなければいけない、と思っている。
(……エゴの塊だ)
パズルのピースに似ている。
二つとも間違ってなんていないのに、組み合わせるのは間違ってる、みたいなピース。
口端を引き上げた不恰好な俺に、俺の知ってる幸せの象徴みたいな、可憐な女の子はやっぱり笑った。この想いを誰か、同じ価値観の人に認められてしまえば、俺の意思は簡単に死ぬのだろう。
「……初恋もまだな田中くんに、先輩が教えてあげちゃうと──そんなのぜーんぶ関係ないんだよ」
えっ。
「え?」
え。
「スイカの皮だって、塩漬けにすれば美味しいんだから!」
あれっ。そういう話だったっけ?
前時代的で凝り固まった幸せだけれど、そしてそれを普通の幸せと呼ぶことに今時は抵抗を覚えなければならないのだけれど、しかし確かに千年も前からそこにある幸福というものは、俺にはあげられない。
唯一の女の子を見つけて、泣いたり笑ったりしながら、できれば泣いた三倍は笑い合って、家族を作るのが幸福なのだと思う。
少なくとも俺は両親を見てそう思ったし、みつるにもそうなってほしい。姉ちゃんもそうであってほしかった。
余計なお世話だと怒られるかもしれんけど。
「……武藤様も、直系だもんな。ああいうのってちゃんと血継いだ子供じゃないとだめなんだろ?」
「うーん……どうだろう? わたしも血縁だから砂月屋の若女将なんだけど、後継者不足とかも加味した上でだから……」
「そういやそうだった。ユキちゃんってどっちかっつーと生き物係の印象が強い」
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そうなのか。ユキちゃんが眉を下げて笑うので、俺も頬をかいた。
ユキちゃんは確かに若女将だけど、それで自分でやりたくて継いでるのも知ってるけど、俺にとっては小学生の同級生でもあるのだし。
何だか少女漫画のイケメンみたいなことをやわらかに言う、お嫁さんって言葉にギュッと詰まった憧れの象徴みたいな女の子は、彼女の夫を愛おしげに眺めた。
「確かに、好きな人には幸せになってほしいよね」
「……うん」
絵本で見るような、完全無欠のハッピーエンド。王子様とお姫様が末長く幸せに過ごすお話。江姫さんが武藤様の鼻をむぎゅりとつまんでなにやら言うと、武藤様は目を吊り上げて睨みつけた。子供のじゃれあいみたいだ。
「わたしたちの知ってる一番の幸せは、きっと御伽話の中で見る普通の家庭を築くことで、子供の頃見たアニメの主人公のおうちみたいな幸せだもん」
そう。前時代的で古い港町には、そう言う信仰みたいなのがまだ根強く残っていた。常識の基盤に、そういう古くからの幸せが根付いているのだ。
上京して色んな形があることを知って、それでも足踏みしてしまうのは、安定した幸せの味を知っているから。
「スイカの一番甘いところを渡すみたいに、人生で一番だと思ってることを、好きな子にはあげたくなっちゃう。だから田中くん、さっきから俺なんかーって顔してるもん」
「……全部お見通しじゃん」
「恋する乙女は強いんだよ?」
一体誰に恋をしているのやら。ユキちゃんだって、俺を見る目の色に熱っぽさが抜けている。
言い当てられた内面に自嘲が漏れる。そうだ、俺はまだ俺なんかと足踏みをしているのだ。
告白すると決めたのに、ユキちゃんの言った通り、武藤様の選ぶ唯一の人は、彼女みたいな可愛い子しか想像できない。
そうでなければいけない、と思っている。
(……エゴの塊だ)
パズルのピースに似ている。
二つとも間違ってなんていないのに、組み合わせるのは間違ってる、みたいなピース。
口端を引き上げた不恰好な俺に、俺の知ってる幸せの象徴みたいな、可憐な女の子はやっぱり笑った。この想いを誰か、同じ価値観の人に認められてしまえば、俺の意思は簡単に死ぬのだろう。
「……初恋もまだな田中くんに、先輩が教えてあげちゃうと──そんなのぜーんぶ関係ないんだよ」
えっ。
「え?」
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あれっ。そういう話だったっけ?
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