24 / 26
妹は5歳男児 (マオside)
しおりを挟む思いがけない再会に呆然とするのは俺達の方だった…。
あのエリンが。
仲が良い悪いとかは関係無く、俺との相性は最悪だったらしい、あの妹…。
あの時神の"遣い"は、俺が玲を指して言った"アイツ"を妹と勘違いした。だから妹は俺の世界にはもういないものとばかり思い込んでいた。
「エリン…え、ほんとに…?」
困惑しながら声を震わせる俺に、男の子はやっぱり年齢にそぐわない笑みを浮かべた。
「うん。
あの時はもう会えなかったけど、会えてよかった。
今回は幸せになってくれてるんだね」
「お前こそ…お前も…」
親に隠れて俺の事をそっと気遣ってくれる妹の事を、俺は嫌いじゃなかった。俺達兄妹に格差がつけられていなければ、俺達はきっともっと良い関係で生きられた筈だ。
レオや玲からエリンの事を聞いてから、子供を抱えてどう生きたのかとか、そればかり気になってて。
もうどうやら会えそうにはないけれど、知らない場所でも幸せにやっててくれたらと、思ってた。それが、まさか。
「そうか…うん、よかった…お前も、元気そうで…」
少し涙ぐんでしまう。
まさか、こんな場所で会えるなんて。
「よく、俺だと気づいたな」
まず、それに驚いた。
俺は全く気づかなかった。目の前に立たれていても、俺にはわからなかったと思う。
そう思いながらエリンの姿を観察する。
綺麗な身なりだ。
幼いながらも、服もブランド物みたいだし、顔の色艶も良くて清潔そうだ。
良い家に生まれて大事にされているんだろうな、とわかる。
「そりゃわかるよ。お兄ちゃんは目立つもん」
エリンはそう言って笑う。
目立つ、って。どちらかと言うと埋没する方だと思うけど…。
そう言うと、エリンは う~ん、という表情をして、
「そういう事じゃないんだよな~」
と、笑った。
エリンの言う事は、たまによくわからない事があったけど、そは相変わらずみたいだ。
それはそうと…
「今回は男、なんだな」
幼いけれどしっかり整った容姿は、将来の有望さを感じさせる。エリンは頬を人差し指で掻いて、首を少し傾げながら答えた。
「あ~、えっとね。今回男って言うより…、便宜上この話し方してるけど、私が女性に生まれたのはあの一度だけ。
典型的男型の魂らしいから」
「男型?」
へえ、魂にそんなのがあるのか。知らなかった。
「男寄り、女寄り、中性寄り。色々だよ。人間の時と同じ」
「そうなんだ…」
「ついさっきまで何の記憶もなかったのにお兄ちゃん見つけた瞬間、全部思い出したから流石に混乱しちゃった」
「めっちゃ落ち着いて見えてるけど…」
「まあ、別の人生でも突然思い出す事は何度かあったから、慣れ?」
「そうなんだ…」
俺とエリンが話すのを玲は傍でじっと見ていたが、ぼそりと口を開いた。
「アレフは?」
あ、あ~!あの彼!
戦場に儚く散ったエリンの恋人。
すると聞かれたエリンは、幼児らしからずニヤリと悪い顔で笑った。
「いるよ。幼馴染み。男だけど」
「男なの?!」
つい突っ込んでしまった。
俺と玲なんか毎回男同士に生まれてるんだから今更なのに。
そんな俺に、エリンは初めて年相応の屈託の無い笑顔を見せながら言った。
「今度は何処にも行かせないようにきっちり傍で見張って、早々にモノにするから大丈夫」
「…頑張ってね」
…アレフは…同性は大丈夫なのだろうか…。
…まあ大丈夫か。
「とにかく、お兄ちゃんとレイさんが一緒で安心した。
また会える事があるかはわからないけど、元気でね!」
「ああ、お前も。…健やかに、元気で」
「会えてよかった。元気でね」
エリンの言葉に俺と玲が答えると、エリンは笑って小さな手を振って、歩いていった。
その先には父親と母親、そして俺と同じくらいの姉らしき少女。今のエリンの家族なんだろう。心配そうに見ていたので会釈をしたら、微笑んで返礼された。
そうか、迷子じゃなくて、言葉をかけに来てくれる為に待たせていたのか。
「…良い家族そうでよかった…」
「あの子は何処に行っても大丈夫だよ」
そうだな。
あのお姉ちゃんとは相性が悪くないと良いな。
「大丈夫だろう。
見たところ、あれだけ歳が離れていれば。
それに、ほら」
父親も母親も、姉に笑顔で話しかけている。
その様子には愛情が溢れていて、俺はホッとする。あの姉は俺みたいな事には、きっとならないだろう。
「そうだね」
今度はきっと、何に気を病む事も無く、普通に幸せになって欲しい。
…アレフも、多分。
エリン達家族がゲート方向へ歩いていくのを見送って、俺達はもう一度ツリーを見上げた。
クリスマスには不思議な事が起こるものなのかも知れない。神様のプレゼント的な奇跡なんだろうか。
自分の息子の誕生日だから、大盤振る舞いなのか。
そんな事を思って、玲を見ると、玲も俺を見ていた。そして彼の綺麗な暗緑色の瞳を見た俺は思い出した。
「あ、そうだ」
今夜、大切な事をしなきゃいけなかったのを。
98
あなたにおすすめの小説
目覚めたらヤバそうな男にキスされてたんですが!?
キトー
BL
傭兵として働いていたはずの青年サク。
目覚めるとなぜか廃墟のような城にいた。
そしてかたわらには、伸びっぱなしの黒髪と真っ赤な瞳をもつ男が自分の手を握りしめている。
どうして僕はこんな所に居るんだろう。
それに、どうして僕は、この男にキスをされているんだろうか……
コメディ、ほのぼの、時々シリアスのファンタジーBLです。
【執着が激しい魔王と呼ばれる男×気が弱い巻き込まれた一般人?】
反応いただけるととても喜びます!
匿名希望の方はX(元Twitter)のWaveboxやマシュマロからどうぞ(^^)
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったらしい
325号室の住人
BL
父親代わりの叔父に、緊急事態だと呼び出された俺。
そこで、幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったと知って…
☆全4話 完結しました
R18つけてますが、表現は軽いものとなります。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる