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新規契約のように
しおりを挟む「ラケル…明日も会いに行っていいか?」
「はい、かまいませんよ。」
また、明日も来る気ですか。
一体何をしに?
会えるのは嬉しいですが。
そう思うと、またクロード様は私をじっと見た。
「…ラケル…俺と結婚してくれないか?」
「は?今なんと?」
いきなり幻聴が聞こえた気がする。
「彼女のフリの終了の通達では?」
「何の話だ?」
「何の話でしょうか?」
「…どうも話が噛み合ってない気がするんだが…」
「そ、そのようで…」
だって幻聴が聞こえたんですよ?
「ラケル…もう一度言う。結婚してくれ。」
幻聴じゃなかった…何故??
「…あの…私、婚約破棄されるような女ですよ?クロード様のご両親が何と言うか…既成事実でもない限り、お認めにならないんじゃ…」
クロード様ならもっといい縁談が来ると思います!
「既成事実があればいいのか?既成事実が欲しいなら、このまま俺の部屋に連れて行って朝まで帰さないぞ。」
そう言いながら、ソファーがギシッと軋むとクロード様が体を少し起こし、長い腕が伸びてくるように、ソファーとクロード様に挟まれた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!今のは無しです!」
慌てる私に、クロード様は返事が欲しいと真剣な眼差しだった。
「…あの、ご両親はなんと?」
クロード様のがっしりとした胸板を押しながら聞いた。
「両親は気にしない。それにラケルは伯爵令嬢だ。誰も文句はないだろう。」
まあ、執事さんを筆頭に使用人達はウェルカムモードでしたからね。
私が公爵家にふさわしくないなら、執事さんなんか、絶対に歓迎しないでしょうね!
「…クロード様は私ごときでいいのですか?」
「ラケルがいいんだ。」
「本当に?」
「本当だ。結婚して欲しい。…本当なら最初に彼女のフリをして、そのままラケルが良ければ君となら婚約をしたいと、言うつもりにで行ったんだ。」
「…気がつきませんでした。」
「そうだろうな。話の途中で婚約者のフリまでは…と言われたからな!」
クロード様は静かな声だが、力を入れて話していた。
最後まで話を聞いて欲しいとはこういうことかと今さらながら気付いた。
「ラケル、返事は?」
「…私で良ければお願いします…」
クロード様は、私の返事に良かった。とホッとしたように抱き締めてきた。
そして、彼女のフリから新規契約のように、私はクロード様の婚約者になった。
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