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ハロルド視点
しおりを挟む怒鳴っていた父上が水を飲んでいる間に、ラケルとの婚約破棄の書面とメイベルとの婚約の書面を出して、父上に見せると、婚約破棄が本当だとまた怒りを露にした。
しかし、俺には切り札がある!
ラケルはあのクロード・アラステアと浮気していたのだ!
慰謝料を取れるはずだ!
その慰謝料さえ取れば、メイベルのプレゼント代はチャラになるはず!
クロード・アラステアと婚約した話はないから、ただの浮気のはずだ!
「父上、ラケルは浮気をしていたのです!すぐに慰謝料を取ってみせましょう!」
「浮気の証拠は?ラケルはそんな娘ではなかったぞ!」
「男といるのを見ました!オートクチュールもラケルが無理矢理、男にねだったのでしょう!その時にメイベルに見せつけたせいで、こんなことに…!」
これでラケルのせいで婚約破棄したとなるはずだ!
「…それ、おかしくないですか?ラケル様らしくないですよね?父上と領地に行く前はラケル様に男の影はなかったですよ。大体、百歩譲ってラケル様がねだったとして、何故兄上がメイベル様に大量にプレゼントする理由になるのですか?ラケル様は関係ないのでは?」
また、アーヴィンが口を挟んできた。
昔から一言多い奴だ!
「とにかく!ジェレマイア伯爵邸に行くぞ!」
くそぅ!ラケルのせいで!
いざとなったら、この婚約破棄の書面は処分してやる!
そうすれば、婚約破棄自体なかったと言い張れるはずだ!
ラケルと結婚さえすれば父上も、少しは落ち着いてくれるはずだ!
きっと、婚約破棄の書面の処分は目を瞑って下さるはず!
「…兄上…おかしなことをしないで下さいよ。話がややこしくなりますから…」
「うるさい!!!」
そして、押し込まれるように馬車に乗り、睨み付けている父上とアーヴィンの三人でジェレマイア伯爵家へと向かった。
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