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冷たい旦那様が離してくれない 6
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気まずい、会話もない昼食と同じように晩餐も終わり、別邸のベッドの上でぐったりとうつ伏せに倒れていた。
今の感想は、疲れたとしか言いようがない。
シーツも、いつの間にか綺麗なものに代えられており、食事の間にルドルフがメイドに指示でもしたのだろうと思う。
ウォルト様は、本邸でアリス様と一緒に食後のお茶を飲んでいる。彼が帰宅したのに、一日中私といたせいで、お怒りだったらしい。
私は疲れたと言って先に別邸に帰り、この状態だった。
でも、ウォルト様には可愛い態度だったアリス様を思い出せば、ウォルト様の帰還を待っていたのだろうと思う。
……というか、アリス様にウォルト様を引き取ってもらえばいいのではないでしょうか。
ロザムンド様は、あっという間に一人でいなくなってしまったし、セルシスフィート伯爵家の別荘など私が知るわけがない。追いかけられないのですよ。
薄情なお義母様です。
とにかく、今夜はウォルト様が来ないことを願うしかない。アリス様もいるのだから、来ないとは思うけど……。
そう思うと、部屋の扉が開けられた。嫌な予感しかなくて、ベッドから身体一つ起こせないでいた。
「ティアナ。もう眠ったのか?」
起きたくない。このまま、寝たふりをしてそのまま本邸で休んで欲しい。
そう思う私と裏腹に、ウォルト様がベッドに近づいてきて腰掛ける。
それでも、寝たふりをしている私。
「ティアナ……」
ウォルト様に耳元で甘く名前を囁かれると、私の身体が少しだけ揺れた。それを、ウォルト様は決して見逃さなかった。
「……起きているのだろう? それとも、このまましたくて待っていたのか? 後ろからが好みなら、このまま始めるか?」
冷たい物言いで、背中に唇を這わしながら私のナイトドレスを肩から下ろそうとするウォルト様に、身体がびくりと震える。絶対にこの男はする気だ。青ざめて、寝たふりを止めるしかなかった。
「……ち、違いますよ。疲れているんです」
「ふーん……遊びすぎではないのか?」
「今日一日、遊ぶ暇などありませんでしたよ……」
仕事場の書庫にまで追いかけてきて、この人は何を言っているのだろうかと、突っ込みたい。
身体を起こそうとすると、それよりも先にウォルト様に組み敷かれる。見下ろされると、冷たい灰色の瞳がさらに感情のないものに見えた。
そして、そっと唇を重ねられる。これだけでも、恥ずかしくて赤ら顔になるのに、ウォルト様はさらに抱き寄せてくる。小柄な私の身体は軽々とウォルト様の腕の中に囚われてしまう。
「ウォルト様……今夜は、本邸で休まれた方が……」
「結婚の決まり事で、一緒に住むことだと決めたはずだが?」
「そ、そうですけど……今夜も、同衾する必要は……」
抱き寄せられた身体を、抵抗するようにウォルト様を押しのけようとしながら言う。赤くなった顔は見せられなくて、目も合わせられない。
「……結婚の決まり事をもう一つ増やすか」
「……あの……」
戸惑う私を腕に抱きとめたままで、表情一つ変えないウォルト様が呟く。
「結婚の決まり事に、毎晩相手をすることを増やすのはどうだ?」
「毎晩!?」
絶対に無理。死んでしまう。身体がもたないのです。
誰かにウォルト様を引き取ってもらおうと考えていたばかりです。ロザムンド様が逃げてしまったから、代わりにアリス様にウォルト様を引き取ってもらおうと考えていたところです。なぜこの親子は自分の意志を怖い顔で実行するのですか。
「どうした? 了承できない理由でもあるのか?」
「いえ……まったく心が通わないなぁと思ってですね……」
「そうしたのは、ティアナだ」
「私……ですか?」
思い当たることはある。今も、アリス様にウォルト様を引き取ってもらいたいと考えていたのだから……。
「……ティアナ。返事がないなら、決まりだ」
そう言って、首筋にウォルト様がキスをする。
「ひゃっ……で、でも、毎晩は無理です!!」
「そんなことはない」
「そんなことあります!!」
「理由は? くだらないことを言えば、怒るぞ」
「か、身体がもたないのです!!」
「は? そんなはずはない。それに、身体がもたないなら、休めばいいことだ」
「だって……私、昨晩が……」
初めてだった。それなのに、この冷たい旦那様に何度も抱かれた。
「……」
目尻が潤む。ウォルト様は無言で、横を向いた。微かにウォルト様の緊張が読み取れると、彼の顔から冷や汗が少しだけ流れた。
「……一応確認しておくが……もしかして、昨夜が初めてなのか?」
「と、当然です!! 私は、ウォルト様と結婚しているんです。契約結婚とわかってますけど……」
「契約結婚……」
「そ、そうです」
ほんの少し緩んだ空気が、また切れそうな冷たい空気になると、ウォルト様がベッドに私を押し付けた。上から覆いかぶさったウォルト様が唇を塞ぐ。
「やはり、相手はしてもらう。拒否は、ないはずだ。結婚も続けてもらう」
「……んんっ。……っ、き、期間延長ですか」
「そうだな。……離縁しない」
「でも、毎晩は……」
「疲れるなら、こちらでフォローしよう……どうしても、同衾できない時は諦めるが……今夜は大丈夫だろう」
ちくりと、首筋から鎖骨へと、ウォルト様が痕を付けていっていた。
今の感想は、疲れたとしか言いようがない。
シーツも、いつの間にか綺麗なものに代えられており、食事の間にルドルフがメイドに指示でもしたのだろうと思う。
ウォルト様は、本邸でアリス様と一緒に食後のお茶を飲んでいる。彼が帰宅したのに、一日中私といたせいで、お怒りだったらしい。
私は疲れたと言って先に別邸に帰り、この状態だった。
でも、ウォルト様には可愛い態度だったアリス様を思い出せば、ウォルト様の帰還を待っていたのだろうと思う。
……というか、アリス様にウォルト様を引き取ってもらえばいいのではないでしょうか。
ロザムンド様は、あっという間に一人でいなくなってしまったし、セルシスフィート伯爵家の別荘など私が知るわけがない。追いかけられないのですよ。
薄情なお義母様です。
とにかく、今夜はウォルト様が来ないことを願うしかない。アリス様もいるのだから、来ないとは思うけど……。
そう思うと、部屋の扉が開けられた。嫌な予感しかなくて、ベッドから身体一つ起こせないでいた。
「ティアナ。もう眠ったのか?」
起きたくない。このまま、寝たふりをしてそのまま本邸で休んで欲しい。
そう思う私と裏腹に、ウォルト様がベッドに近づいてきて腰掛ける。
それでも、寝たふりをしている私。
「ティアナ……」
ウォルト様に耳元で甘く名前を囁かれると、私の身体が少しだけ揺れた。それを、ウォルト様は決して見逃さなかった。
「……起きているのだろう? それとも、このまましたくて待っていたのか? 後ろからが好みなら、このまま始めるか?」
冷たい物言いで、背中に唇を這わしながら私のナイトドレスを肩から下ろそうとするウォルト様に、身体がびくりと震える。絶対にこの男はする気だ。青ざめて、寝たふりを止めるしかなかった。
「……ち、違いますよ。疲れているんです」
「ふーん……遊びすぎではないのか?」
「今日一日、遊ぶ暇などありませんでしたよ……」
仕事場の書庫にまで追いかけてきて、この人は何を言っているのだろうかと、突っ込みたい。
身体を起こそうとすると、それよりも先にウォルト様に組み敷かれる。見下ろされると、冷たい灰色の瞳がさらに感情のないものに見えた。
そして、そっと唇を重ねられる。これだけでも、恥ずかしくて赤ら顔になるのに、ウォルト様はさらに抱き寄せてくる。小柄な私の身体は軽々とウォルト様の腕の中に囚われてしまう。
「ウォルト様……今夜は、本邸で休まれた方が……」
「結婚の決まり事で、一緒に住むことだと決めたはずだが?」
「そ、そうですけど……今夜も、同衾する必要は……」
抱き寄せられた身体を、抵抗するようにウォルト様を押しのけようとしながら言う。赤くなった顔は見せられなくて、目も合わせられない。
「……結婚の決まり事をもう一つ増やすか」
「……あの……」
戸惑う私を腕に抱きとめたままで、表情一つ変えないウォルト様が呟く。
「結婚の決まり事に、毎晩相手をすることを増やすのはどうだ?」
「毎晩!?」
絶対に無理。死んでしまう。身体がもたないのです。
誰かにウォルト様を引き取ってもらおうと考えていたばかりです。ロザムンド様が逃げてしまったから、代わりにアリス様にウォルト様を引き取ってもらおうと考えていたところです。なぜこの親子は自分の意志を怖い顔で実行するのですか。
「どうした? 了承できない理由でもあるのか?」
「いえ……まったく心が通わないなぁと思ってですね……」
「そうしたのは、ティアナだ」
「私……ですか?」
思い当たることはある。今も、アリス様にウォルト様を引き取ってもらいたいと考えていたのだから……。
「……ティアナ。返事がないなら、決まりだ」
そう言って、首筋にウォルト様がキスをする。
「ひゃっ……で、でも、毎晩は無理です!!」
「そんなことはない」
「そんなことあります!!」
「理由は? くだらないことを言えば、怒るぞ」
「か、身体がもたないのです!!」
「は? そんなはずはない。それに、身体がもたないなら、休めばいいことだ」
「だって……私、昨晩が……」
初めてだった。それなのに、この冷たい旦那様に何度も抱かれた。
「……」
目尻が潤む。ウォルト様は無言で、横を向いた。微かにウォルト様の緊張が読み取れると、彼の顔から冷や汗が少しだけ流れた。
「……一応確認しておくが……もしかして、昨夜が初めてなのか?」
「と、当然です!! 私は、ウォルト様と結婚しているんです。契約結婚とわかってますけど……」
「契約結婚……」
「そ、そうです」
ほんの少し緩んだ空気が、また切れそうな冷たい空気になると、ウォルト様がベッドに私を押し付けた。上から覆いかぶさったウォルト様が唇を塞ぐ。
「やはり、相手はしてもらう。拒否は、ないはずだ。結婚も続けてもらう」
「……んんっ。……っ、き、期間延長ですか」
「そうだな。……離縁しない」
「でも、毎晩は……」
「疲れるなら、こちらでフォローしよう……どうしても、同衾できない時は諦めるが……今夜は大丈夫だろう」
ちくりと、首筋から鎖骨へと、ウォルト様が痕を付けていっていた。
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