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おかしな夫婦生活 8
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別邸で、レモンを絞りパイ生地のクッキーを焼くと、いい匂いがしてくる。
本邸では、料理長たちがいるから使いにくくて別邸で焼いて、出来上がったパイ生地のクッキーを籠に入れていった。
ウォルト様に持って行こうと別邸を出れば、別邸の出入り口にある木陰でキョロキョロを辺りを見回した。
誰もいない。ずっと待たせているわけでなくて、ホッと胸を撫でおろすと妙な気配がした。
その時に、木陰の木が揺れた。喉を鳴らす声も聞こえる。
おそるおそる、顔を上げれば大きな竜が頭を寄せて来ていた。
「……どうして、竜が?」
思わず、呆然となる。よく見れば、竜の背中には立派な翼が収められている。
「まさか、飛竜?」
そう言えば、ウォルト様は竜騎士団に所属していたはず。竜騎士は飛竜に乗るはずで、自分の飛竜が一頭必ずいる。
飛竜を従えられる騎士だけが、竜騎士になれるのだ。
「ウォルト様の飛竜ですか?」
「グルルゥ……」
喉を鳴らす飛竜が頭を下げる。そっと手を伸ばせば、灰色よりも、美しい銀色の硬い肌を撫でてみた。
……可愛い。大人しい飛竜だと思う。
邸に飛竜がいるなら、王都に行って欲しい。ずっと、ウォルト様は王都で暮らしていたと聞いた。
飛竜なら、一日もかからずに王都に行けるのではないでしょうか。
「飛竜さん……ウォルト様を引き取って下さらないかしら?」
「グルゥ?」
そう言ったって、飛竜がウォルト様を引き取ってくれるわけない。
「ティアナ。ヒューズ」
飛竜を撫でていると、ウォルト様がこちらに向かって来ていた。
「ウォルト様……あの、ウォルト様の飛竜ですか?」
「そうだが……名前は、ヒューズという。帰って来ていたのだな」
「そう言えば、昨日は見ませんでした」
「飛竜は、空を飛ぶものだ。呼べば戻ってくるが、いつもはどこかへ行っているんだよ」
「そうだったのですか……」
私の手を振り払って、ヒューズと呼ばれた飛竜がウォルト様に寄っていく。
そのまま、ウォルト様を連れて飛んで行って欲しい。
ウォルト様が飛竜を撫でて可愛がるという微笑ましい光景なのに、ついそう思ってしまう。
「どうした?」
「よく懐いているなぁと」
「これでも、竜騎士だぞ」
「でも、ウォルト様のことをあまり知らなくて……」
犬猿の仲である資産家のセルシスフィート伯爵家の当主で、竜騎士様で、絶倫だと言うことは知っている。でも、それ以外のことは何も知らないのだ。
「そのために、今日は一緒に過ごすのだ」
「はい。クッキーも出来ましたので、一緒に食べましょう。ロザムンド様に差し入れしたときは、ケーキよりも、こちらの方をよく食べてくださいました」
「では、行こう。池の側にルドルフがお茶を準備している。ああ、それと……」
「はい。何でしょうか?」
「今度城の夜会に呼ばれた。一緒に参加してもらう」
「夜会……?」
「ああ、そうだが……その嫌そうな顔は何だ?」
はっきり言えば、行きたくない。ウォルト様と一緒に行く理由がないのです。
「それは、夫婦の約束ですか?」
「当たり前だ。夜会は、夫婦で行くものだ。ちなみに招待されているのは、アルフェス殿下だ」
アルフェス殿下には、良くしてもらっていた。結婚出来たのも、アルフェス殿下のおかげだ。
でも、縁談をセルシスフィート伯爵家に決めたのもアルフェス殿下だ。
「ティアナ……」
「はい」
うーんと悩んでいると隣で歩いているウォルト様が私の顔を見る。
「その嫌そうな顔はなんだ?」
「嫌そうでは……あの、お義父様か私はあまり姿を現わさないようにと、言われていたのです。ですから、夜会にセルシスフィート伯爵夫人として行かない方がいいのではないでしょうか?」
「父上が?」
「はい、いずれ離縁する予定でしたからね」
でも、セルシスフィート伯爵はウォルト様になって、離縁の延長を求められているから、今はいいのだろうか。
そう思うと、ウォルト様の足が止まり、肩に手を回されたと思った瞬間、ウォルト様が腰を折り、私にキスをして来た。
「……夜会は絶対に一緒に行ってもらう。夫婦として仲睦まじくいて欲しいと、決めたはずだ」
「……わかりました。でも、私の要望も聞いてください」
ウォルト様の顔が目の前あり、恥ずかしくて顔をぶっきらぼうに反らした。お義父様の話題で、ウォルト様の表情が怒っているせいかもしれない。
でも、動悸がする。……きっと、この整ったウォルト様の顔のせいだ。
そう思いたい。
「要望があるのか?」
「あります」
「まぁ、聞いてやらんこともないが……」
「では、今夜はお許しください。毎晩は困ります」
「後継ぎが必要なのだろう」
「……ウォルト様の言っていることは、少し支離滅裂な気がします。離縁しないなら、焦って子作りする必要はないと思うのです……」
口に出すと、少しだけ違和感に気づいた。そうだ。焦って子作りする必要はなかったのだ。
でも、いつ離縁の話になるかわからないから、後継ぎができるだけ早く必要で……でも、アリス様とウォルト様は結婚する気がないのだ。
何と返答するか気になり、ウォルト様を見上げると、彼は口元を押さえて横を向いてしまっている。
「ウォルト様? どうしました?」
「……いずれ言う」
「そうですか……でも、今夜は閨もなく休みましょう」
「夜も二人で過ごしたい」
「では、本を読みますか。それなら、いいですよ」
「そうする」
「では、クッキーを食べましょう。美味しいですよ」
そう言って、ウォルト様との一日を過ごしていた。
本邸では、料理長たちがいるから使いにくくて別邸で焼いて、出来上がったパイ生地のクッキーを籠に入れていった。
ウォルト様に持って行こうと別邸を出れば、別邸の出入り口にある木陰でキョロキョロを辺りを見回した。
誰もいない。ずっと待たせているわけでなくて、ホッと胸を撫でおろすと妙な気配がした。
その時に、木陰の木が揺れた。喉を鳴らす声も聞こえる。
おそるおそる、顔を上げれば大きな竜が頭を寄せて来ていた。
「……どうして、竜が?」
思わず、呆然となる。よく見れば、竜の背中には立派な翼が収められている。
「まさか、飛竜?」
そう言えば、ウォルト様は竜騎士団に所属していたはず。竜騎士は飛竜に乗るはずで、自分の飛竜が一頭必ずいる。
飛竜を従えられる騎士だけが、竜騎士になれるのだ。
「ウォルト様の飛竜ですか?」
「グルルゥ……」
喉を鳴らす飛竜が頭を下げる。そっと手を伸ばせば、灰色よりも、美しい銀色の硬い肌を撫でてみた。
……可愛い。大人しい飛竜だと思う。
邸に飛竜がいるなら、王都に行って欲しい。ずっと、ウォルト様は王都で暮らしていたと聞いた。
飛竜なら、一日もかからずに王都に行けるのではないでしょうか。
「飛竜さん……ウォルト様を引き取って下さらないかしら?」
「グルゥ?」
そう言ったって、飛竜がウォルト様を引き取ってくれるわけない。
「ティアナ。ヒューズ」
飛竜を撫でていると、ウォルト様がこちらに向かって来ていた。
「ウォルト様……あの、ウォルト様の飛竜ですか?」
「そうだが……名前は、ヒューズという。帰って来ていたのだな」
「そう言えば、昨日は見ませんでした」
「飛竜は、空を飛ぶものだ。呼べば戻ってくるが、いつもはどこかへ行っているんだよ」
「そうだったのですか……」
私の手を振り払って、ヒューズと呼ばれた飛竜がウォルト様に寄っていく。
そのまま、ウォルト様を連れて飛んで行って欲しい。
ウォルト様が飛竜を撫でて可愛がるという微笑ましい光景なのに、ついそう思ってしまう。
「どうした?」
「よく懐いているなぁと」
「これでも、竜騎士だぞ」
「でも、ウォルト様のことをあまり知らなくて……」
犬猿の仲である資産家のセルシスフィート伯爵家の当主で、竜騎士様で、絶倫だと言うことは知っている。でも、それ以外のことは何も知らないのだ。
「そのために、今日は一緒に過ごすのだ」
「はい。クッキーも出来ましたので、一緒に食べましょう。ロザムンド様に差し入れしたときは、ケーキよりも、こちらの方をよく食べてくださいました」
「では、行こう。池の側にルドルフがお茶を準備している。ああ、それと……」
「はい。何でしょうか?」
「今度城の夜会に呼ばれた。一緒に参加してもらう」
「夜会……?」
「ああ、そうだが……その嫌そうな顔は何だ?」
はっきり言えば、行きたくない。ウォルト様と一緒に行く理由がないのです。
「それは、夫婦の約束ですか?」
「当たり前だ。夜会は、夫婦で行くものだ。ちなみに招待されているのは、アルフェス殿下だ」
アルフェス殿下には、良くしてもらっていた。結婚出来たのも、アルフェス殿下のおかげだ。
でも、縁談をセルシスフィート伯爵家に決めたのもアルフェス殿下だ。
「ティアナ……」
「はい」
うーんと悩んでいると隣で歩いているウォルト様が私の顔を見る。
「その嫌そうな顔はなんだ?」
「嫌そうでは……あの、お義父様か私はあまり姿を現わさないようにと、言われていたのです。ですから、夜会にセルシスフィート伯爵夫人として行かない方がいいのではないでしょうか?」
「父上が?」
「はい、いずれ離縁する予定でしたからね」
でも、セルシスフィート伯爵はウォルト様になって、離縁の延長を求められているから、今はいいのだろうか。
そう思うと、ウォルト様の足が止まり、肩に手を回されたと思った瞬間、ウォルト様が腰を折り、私にキスをして来た。
「……夜会は絶対に一緒に行ってもらう。夫婦として仲睦まじくいて欲しいと、決めたはずだ」
「……わかりました。でも、私の要望も聞いてください」
ウォルト様の顔が目の前あり、恥ずかしくて顔をぶっきらぼうに反らした。お義父様の話題で、ウォルト様の表情が怒っているせいかもしれない。
でも、動悸がする。……きっと、この整ったウォルト様の顔のせいだ。
そう思いたい。
「要望があるのか?」
「あります」
「まぁ、聞いてやらんこともないが……」
「では、今夜はお許しください。毎晩は困ります」
「後継ぎが必要なのだろう」
「……ウォルト様の言っていることは、少し支離滅裂な気がします。離縁しないなら、焦って子作りする必要はないと思うのです……」
口に出すと、少しだけ違和感に気づいた。そうだ。焦って子作りする必要はなかったのだ。
でも、いつ離縁の話になるかわからないから、後継ぎができるだけ早く必要で……でも、アリス様とウォルト様は結婚する気がないのだ。
何と返答するか気になり、ウォルト様を見上げると、彼は口元を押さえて横を向いてしまっている。
「ウォルト様? どうしました?」
「……いずれ言う」
「そうですか……でも、今夜は閨もなく休みましょう」
「夜も二人で過ごしたい」
「では、本を読みますか。それなら、いいですよ」
「そうする」
「では、クッキーを食べましょう。美味しいですよ」
そう言って、ウォルト様との一日を過ごしていた。
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