時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

屋月 トム伽

文字の大きさ
146 / 148
最終章 アリシア脱獄編

闇と刻はまどろむ 9

しおりを挟む
「…オズワルド様!?オズワルド様!!」

瞼を閉じたまま立っているオズワルド様に、必死で呼び掛けるとゆっくりと瞼が開いた。

「…リディア…?」
「オズワルド様!…っ良かった…!」

オズワルド様の胸に飛び込むように抱きつき、しっかりと背中を握りしめた。

「…リディア?俺は…?」

しかし、こんなことをしている場合じゃない!

「オズワルド様!アリシアです!後ろからアリシアが来ますよ!」

刻の精霊の言った通り、本当に数分しか戻れなかった。
戻った先には、ライア様が倒れているヒース様をまだ癒し中でアリシアも起き上がってない。
テレンスという人を倒し、私達がヒース様の所に来た時間まで戻ったのだ。

それでも、オズワルド様は生きている。
それが全てだ。

「まさか…時間が?」

不思議な感覚に包まれているオズワルド様は、抱きついている私をじっと見ていた。

「オズワルド様!早くしないとまたアリシアに刺されます!」

そして、オズワルド様の胸に顔を埋めたまま、絞り出すような声で言った。

「…お願い…一人にしないで…」
「悪かった…」

そんな私の抱きよせ、オズワルド様も絞り出すような声で言った。

そして、アリシアがゆらりと起き上がった。

「リディア…そのまま見るな」
「…はい」

オズワルド様は、そのまま残った僅かな魔力でアリシアを闇に捕らえ包んでいた。

「キャアァ!?イヤァーッ!?何!?」

アリシアの恐怖の声が聞こえる。

「…オズワルド様?」
「アリシアがリディアにかけようとして返された呪いの魔法を増幅させている…」

オズワルド様はもう魔力がほとんどないからな、とそう言い段々とアリシアは静かになった。

静かになったアリシアを包んでいた闇がフッと消えるとアリシアがゴトンと落ちてきた。
隠し持っていた短剣も一緒に落ちてきた。

「…オズワルド様…アリシアは…?」
「闇の中で呪いを増幅させたから、自分の呪いに蝕まれてもう死んだ」

やっと終わった。
アリシアはもういない。
私もオズワルド様もなんとか無事だ。

「…リディア…どうやって?」
「…刻の精霊です。私が刻の精霊に願いました」
「…リディアとまどろむように闇に落ちている夢を見た。落ちている闇の先には光があって…」
「私もです…一緒にまた時間が戻ったんです…」

力強く抱きしめてきるオズワルド様は温かい。
あの段々と冷たくなる様はない。

「オズワルド様…大好きですよ」
「俺もだ…」

しばし、オズワルド様と抱擁している横でヒース様も目を覚ましていた。

そんな中、私のムカムカの吐き気は頂点に達した。

「オズワルド様…」
「どうした?」
「吐きそう…!」

そして、私は瓦礫の隅に小走りで行き嘔吐した。


「どうしたんだ?疲れたのか?」
「そうかもしれません。アリシアに追いかけられて必死で走っていましたから…」

背中を擦られて気分の悪い私とオズワルド様は、迎えが来るまで座り込んでいた。

「それにしても、刻の精霊はやっぱりリディアの近くにいたんだな…」
「はい…でも、オズワルド様が心配だったのもあると思いますよ?」
「なにか言われたのか?」
「はい…確か、私がいなくなればブラッドフォードの子も絶える、とか、カレン様が悲しむとか…」
「ブラッドフォードは俺だろ?何でリディアがいなくなったら絶えるんだ?」

言われて見ればそうだ。
あの時はオズワルド様のことで頭がいっぱいで気にもしなかった。

「おかしいですね…言い間違いでしょうか?」
「リディア…月のものは?」
「毎晩人の身体を疲れるまで寝させないで、きてないのを知っているでしょう」

毎晩毎晩、飽きずに抱くくせに今さら何を言っているのか。

「おい!」
「何ですか?」
「…それは懐妊しているんじゃないのか!?」
「…いつ?」
「今だ!」

えぇ!?いつから!?
確かに月のものはきてない!

「何で気付かないんだ!?」
「おかしいですね…」
「おかしいのはお前だ!」

怖い顔で心配しないで欲しい。

そして、転移魔法で応援が来た。
やって来たのはヒース様の兄上のヘクター様達だった。

ヘクター様は大丈夫か?と辺りを見ながらやって来た。

「ヘクター様!」
「オズワルドか?無事か?ヒースはどうした?」
「ヒースなら向こうで転がっています!それよりリディアが懐妊しています。すぐに転移魔法で帰らせてもらいたい!」
「懐妊?…それは構わんが…」

チラリとヘクター様が私を見て、また大丈夫か?と聞いてきた。

「すみません、大げさな人で…」
「何が大げさだ!」

オズワルド様は、ヘクター様の前なのに横抱きに抱えて歩き出した。
歩けますよ、というのに降ろしてくれない。

「オズワルド様…他にも怪我人がいますから」
「やかましい!」

いつものように涼しい顔だが、オズワルド様は懐妊に焦っているみたいだった。
それに、心配する様はちょっと迫力がある。

そして、城に帰るなり、オズワルド様は医者はどこだ!と騒ぎ私の懐妊はあっという間に知れ渡り、オズワルド様は治癒もせずに私を部屋へと連れて行った。






しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

処理中です...