13 / 36
第一章 フェンリル
夜会
しおりを挟む夜会当日。
フェリクス様の用意したドレスで参加することになる。
まさか、初めての夜会がフェンヴィルムになるとは思わなかった。
フェリクス様は、一週間ぶりに魔物狩りから帰還して、そのまま夜会へとの参加になる。本当に忙しい方だ。
でも、どうせならフェン様は置いていってくださって欲しかった。一週間も会えないと淋しい。
そう思いながら、夜会へと向かっていた。
「ダンスは大丈夫ですか? フィリ―ネ様」
「ずっと練習していたし、頑張るわ。ジルも夜会で好きに楽しんでくださいね」
「そうします。フィリ―ネ様は、陛下の側にいると報告を受けましたから……私は近づくなということらしいですわ」
会場に向かいながらドレスアップしたジルがツンとして言う。でも、最近はフェリクス様の不況を買わないようにか少しだけ態度が緩和した気もする。でも、嫌われているままだということもわかる。
夜会につくとすぐにジルと引き離されて、フェリクス様のもとへと連れられて行った。
彼は私を待っていてくれたようで、「おいで」と言って手を出してくれた。
そして、陛下とのダンスは一番最初にすることになるが、緊張しかない。
ディティーリア国では、離宮の軟禁生活でダンスの練習などなんのためにするのだろうと疑問しかなかったけど……まさか、ここで役に立つとは思わなかった。
フェリクス様に手を取られて、会場の中央に出る。音楽は落ち着いた曲が流れている。
(大丈夫……ここに来てからも練習したし……)
「リーネ」
真っ直ぐに前を向いていると、フェリクス様が私の名前を呼び見上げる。
そして、ダンスが始まる。
人とダンスなどしたことない私は、不安から足に視線を落としてしまっていた。
(リーネ。顔を下げるな)
(次は右だ。足を……そう……)
心の声が通じているせいか、フェリクス様が私の頭に直接話しかけてくる。少しでも私の足が遅れないように、優しくてそれでいて力強い声が響いている。それが不安な気持ちを和らげた。
顔を上げると、上手くリードしてくれるフェリクス様と目が合い、彼の助けを借りながら足を合わせていた。
(……上手くできていた)
(フェリクス様のおかげです。ありがとうございます)
(言うだけでダンスはできるものではない。リーネがずっと練習をしていたからだ。謙遜することはない)
中央から下がりながらフェリクス様との会話を頭の中でする。そのせいか、お互いに見つめあいながら陛下の席へと戻った。
「フィリーネ様。お上手です」
フェリクス様の席に戻り彼の傍らに立っていると、正装したヴァルト様が私を誉めてくれている。
その場にもう一人男性がやって来た。
「フィリーネ王女。私とも一曲いただけますかな?」
私を誘ってきた人はフェリクス様よりも少し年上の方だ。薄い水色の長い髪を一つに束ねている。この方が歩くと周りが一線を引くように道を開けていた。
(でも、先ほどのはフェリクス様のおかげで上手くいったのに、この方の手をとっていいのだろうか)
悩みながら、胸元で両手を自分自身で絡めると、その手をフェリクス様が掴んだ。
「兄上。本日はリーネの披露目です。お誘いは遠慮願います」
「私ともダメなのか?」
「リーネは、俺の側にいて欲しいのですよ」
二人の間に挟まれて困惑する。でも、フェリクス様の心の声は(行く必要はない)と呼びかけていた。
フェリクス様の兄上は確かアイザック様だった。本当ならばアイザック様が第一殿下だったから、彼が陛下になる予定だったが、この国ではフェンリル様の幻獣士が陛下になるという。王妃教育でこの国のことをいろいろ教えてもらいそう習った。
アイザック様は「では仕方ない」とはにかみながら諦めて去ってしまった。
(幻獣士に、なにかあるのでしょうか? フェン様はこの国を守っているらしいですし……)
アイザック様が去ってくれて、ダンスをしないで済みホッとすると、また頭の中にフェリクス様が話しかけてきた。
(しばらくしたら一緒に下がろう)と……。
26
あなたにおすすめの小説
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
婚約破棄されたので隣国で働きます ~追放侯爵令嬢、才覚だけで王妃候補に成り上がる~
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王宮改革は、英雄の一声では成し遂げられない。
王太子に招かれ、王宮顧問として改革に携わることになった
ルビー・エルヴェール。
彼女が選んだ道は、力で押し切る改革でも、敵を断罪する粛清でもなかった。
評価制度の刷新、情報公開、説明責任、緊急時の判断、責任の分配――
一つひとつの制度は正しくても、人の恐れや保身が、改革を歪めていく。
噂に揺れ、信頼が試され、
「正しさ」と「速さ」、
「個人の覚悟」と「組織の持続性」が、幾度も衝突する。
それでもルビーは、問い続ける。
――制度は、誰のためにあるのか。
――信頼とは、守るものか、耐えるものか。
――改革者は、いつ去るべきなのか。
やがて彼女は、自らが築いた制度が
自分なしでも動き始めたことを確かめ、静かに王宮を去る。
残されたのは、名前の残らない改革。
英雄のいない成功。
だが確かに「生き続ける仕組み」。
これは、
誰かが称えられるための物語ではない。
考えることを許し、責任を分かち合う――
その文化を残すための、40話の改革譚。
静かで、重く、そして誠実な
“大人のための王宮改革ファンタジー”。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる