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【85.5話】 引退のロランド ※89.5話の続き※
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「痛むか?痛いなら回復のポーションおごるぞ」カウンターに座りなおしたロランドが笑う。
「この程度なら大丈夫よ」言いながらリリアはカウンターにうつ伏せている。
「リリアもがんばったけど、ロランドさんには勝てないだろう」客の声がしている。
やっぱりリリアは負けた。本物リリアは偽物リリアのロランドにその称号を持って行かれた。
ロランドは先ほどの試合等忘れたかのように雑談をしている。
“勝てたな…”リリアは試合を思い返す。
負け惜しみでも、勘違いでもない、確信がある。
防戦一方だったリリアだが、受け流し、ロランドの剣先をかわし続けるうちに、明らかにロランドの動きが落ちてきた。単調になって打ち込んできた一瞬、バランスを崩したロランドの無防備な体勢にリリアは勝機を見た。
が、どうしたものか…
余りにも相手が無防備な隙が出来たせいか、自分の攻撃がロランドの顔を捉えると確信した瞬間、体が一瞬止まってしまった。
なんと表現したものだろうか…
ロランド程の猛者からこれほどのチャンスが生まれるものかという驚き…
それを事実として確定したくない感じ…
無防備過ぎて、ケガさせたくない感じ…
一瞬ためらった途端、バランスを崩しながらもロランドの返す木刀がリリアの脇腹にめり込んだ。この動きはさすがだろう。それで勝負はあった。
「…え?あ… ごめん、ちょっと考え事しちゃった…」上の空だったリリアがロランドに促されて我に返った。
「手抜きはしてないだろうな… 思ったより大きな隙が出て驚いたんだろう。木刀の試合でも殴り慣れないと、ためらうもんだ…」ロランドが静かに笑っている。
「………」リリアは黙っている。
“ロランドも気がついていたのね… まぁ、ロランド程の手練れなら当然か…”
「尻尾も短くなって、バランスも悪くなった。騙しだましやって来てたがなぁ…」呟いている。
「リリアと試合して自信を付けたかったの?それともあたしに負けていたことがそんなにショックなの?まぁ、実際ロランドさんが勝ってるけどねぇ」
「うーん… どっちでも無いが、両方でもあるな。リリアにあっさり勝てるようなら自信になると思ったがな… 実際は何合打ち合わせても決着もせず、最後は同情される程の隙を作った… そんなところだろう…」
「………手羽先ご馳走してもらっていい?と、おかわりね、うっふっふ… あれは同情かな?恐怖じゃない? なんか… あまりにパッカーンと入っちゃいそうな…」リリアは疑問。
「わっはっはっはっは、それは同情と言うもんだろう!」ロランドは快活に笑う。
「…………」リリアは何と言って良いのか…
「おまえとやって良かったよ。俺は今の仕事を最後に引退することに決めた。冒険者は引退する。仕事のあてはある。道場で師範をしてくれと頼まれていてな、子供に剣を教えながら家族と過ごすぜ」
「リリアに負けたことがそんなにショックだった?」リリアが苦笑いする。
「おまえ強… い、かどうかわからんが、弱くはないぞ。俺は前からそう思っていた。フットワーク、ディフェンス、必死に防ぐおまえを捉え切って倒せるやつは、スピードとパワーとテクを持ち、初撃で倒せるやつだ。俺はそう思っている… そして俺にはもうそんな力はないと証明してくれた… 後はお前は試合慣れていないだけだ」
「……… ねぇ、これからは家族と一緒にいるの良いじゃない。引退まで生きていられる人、貴重よ」
「あぁ、俺もそう思う、今まで良く生きてきた」心なしか晴れ晴れした表情だ。
「……… じゃぁ、引退決心に乾杯ね。だし巻きタマゴいただきます」ちゃっかりリリア。
「乾杯だ、好きなもん頼め」ロランドは笑っている。
酔っ払いがテーブルで寝ているのをバーの女の子が起こして回っている。
「今度、尻尾が切れた時のお話聞かせてよ」
「…リリアにしたことなかったか?… 今度な…」
「この程度なら大丈夫よ」言いながらリリアはカウンターにうつ伏せている。
「リリアもがんばったけど、ロランドさんには勝てないだろう」客の声がしている。
やっぱりリリアは負けた。本物リリアは偽物リリアのロランドにその称号を持って行かれた。
ロランドは先ほどの試合等忘れたかのように雑談をしている。
“勝てたな…”リリアは試合を思い返す。
負け惜しみでも、勘違いでもない、確信がある。
防戦一方だったリリアだが、受け流し、ロランドの剣先をかわし続けるうちに、明らかにロランドの動きが落ちてきた。単調になって打ち込んできた一瞬、バランスを崩したロランドの無防備な体勢にリリアは勝機を見た。
が、どうしたものか…
余りにも相手が無防備な隙が出来たせいか、自分の攻撃がロランドの顔を捉えると確信した瞬間、体が一瞬止まってしまった。
なんと表現したものだろうか…
ロランド程の猛者からこれほどのチャンスが生まれるものかという驚き…
それを事実として確定したくない感じ…
無防備過ぎて、ケガさせたくない感じ…
一瞬ためらった途端、バランスを崩しながらもロランドの返す木刀がリリアの脇腹にめり込んだ。この動きはさすがだろう。それで勝負はあった。
「…え?あ… ごめん、ちょっと考え事しちゃった…」上の空だったリリアがロランドに促されて我に返った。
「手抜きはしてないだろうな… 思ったより大きな隙が出て驚いたんだろう。木刀の試合でも殴り慣れないと、ためらうもんだ…」ロランドが静かに笑っている。
「………」リリアは黙っている。
“ロランドも気がついていたのね… まぁ、ロランド程の手練れなら当然か…”
「尻尾も短くなって、バランスも悪くなった。騙しだましやって来てたがなぁ…」呟いている。
「リリアと試合して自信を付けたかったの?それともあたしに負けていたことがそんなにショックなの?まぁ、実際ロランドさんが勝ってるけどねぇ」
「うーん… どっちでも無いが、両方でもあるな。リリアにあっさり勝てるようなら自信になると思ったがな… 実際は何合打ち合わせても決着もせず、最後は同情される程の隙を作った… そんなところだろう…」
「………手羽先ご馳走してもらっていい?と、おかわりね、うっふっふ… あれは同情かな?恐怖じゃない? なんか… あまりにパッカーンと入っちゃいそうな…」リリアは疑問。
「わっはっはっはっは、それは同情と言うもんだろう!」ロランドは快活に笑う。
「…………」リリアは何と言って良いのか…
「おまえとやって良かったよ。俺は今の仕事を最後に引退することに決めた。冒険者は引退する。仕事のあてはある。道場で師範をしてくれと頼まれていてな、子供に剣を教えながら家族と過ごすぜ」
「リリアに負けたことがそんなにショックだった?」リリアが苦笑いする。
「おまえ強… い、かどうかわからんが、弱くはないぞ。俺は前からそう思っていた。フットワーク、ディフェンス、必死に防ぐおまえを捉え切って倒せるやつは、スピードとパワーとテクを持ち、初撃で倒せるやつだ。俺はそう思っている… そして俺にはもうそんな力はないと証明してくれた… 後はお前は試合慣れていないだけだ」
「……… ねぇ、これからは家族と一緒にいるの良いじゃない。引退まで生きていられる人、貴重よ」
「あぁ、俺もそう思う、今まで良く生きてきた」心なしか晴れ晴れした表情だ。
「……… じゃぁ、引退決心に乾杯ね。だし巻きタマゴいただきます」ちゃっかりリリア。
「乾杯だ、好きなもん頼め」ロランドは笑っている。
酔っ払いがテーブルで寝ているのをバーの女の子が起こして回っている。
「今度、尻尾が切れた時のお話聞かせてよ」
「…リリアにしたことなかったか?… 今度な…」
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