勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【131話】 そこそこ良い隊長さん

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「わぁ!いやぁ!来ないで!いやぁぁぁぁ!」気を失っていたリリアが突然叫び声を上げ始めた。
「先輩、俺っす!ブラックす!もう大丈夫っす!誰か!リリア先輩が起きました!」
ブラックはとりあえず、気を静める魔法をリリアにかけて周りに声をかける。女性冒険者が数名かけつけてリリアを落ち着かせる。
「リリア、カトリナよ。あなた助かったのよ、落ち着いて」
「リリア、これの飲んで!寝れるから!… そう、落ち着いて… ゆっくり…」
「ブラック、ぼうっとしてないで向こう行っててよ!」
「…… むぅ… ぅぅ…」
素早くポーションを飲まされてリリアは再びゆっくりと眠りに落ちていく…


リリア達は全員救出された。乱戦の中、通信の封鎖を解いたリリアの叫び声を聞いたガルト達が戦場に戻った。また、行方不明になっていたローズ達も沢の付近を村に向かっていたようだ。通信を聞き奇跡的にリリア達の乱戦に出合わせ大奮闘してくれた。
漁りどもは大勢不利になると潰走していったようだ。所詮気がくるった集団であり、戦闘のプロではない。しかし、ガルトとローズ達の加勢が無ければリリアとペコは助かっていなかっただろう。
長髪のローズは戦場に駆け込み、踊るようなステップで剣を振るう姿はまさに“戦場のバラ”に相応しい光景だったようだ。
武器は全て取り返したようだが、リリアとペコは全てをむしり取られ哀れな姿…
「リリア、ペコ、すまない、私としたことが… もう大丈夫だ。一緒に帰ろう」傷つき憔悴しているが、凛としたローザ。
「ローザ… 遅いじゃん… 二呼吸前に来なさいよ…」ペコはここで気絶。
リリアはとっくに気絶中だった。

脱落したオフェリア、ココアと数名はそれぞれ合流してガルト班に救われ、アリスもローザ班に合流して脱出したようだ。重軽傷者、行動不能者を出したものの全員生還。奇跡的。


「…… 母さん?…」
リリアは滲むような視界に女性を認めた。暖かいベッド、どこかの室内。
「………… …!… オフェリア?」声を上げた。
焦点が定まってくると、ベッドの傍らで椅子に腰かけているのはオフェリアだと分かってきた。
「…… リリア、気が付いた?大丈夫?」
オフェリアが事情を少し説明してくれた。どうやら、丸二日以上寝ていたようだ。時々起きては叫び、叫んでは寝かしつけられを繰り返したらしい。リリアが声をかけた時、オフェリアはウトウトしていたよう。お疲れ模様。
「落ち着いているみたいね、トイレ大丈夫?皆に知らせてくる。それから食事ももってくるから」オフェリアが立ち上がる。
「…… ペコは?」リリアが恐る恐る聞く。
「ペコは昨日から元気よ」サラっと言ってのけると部屋から出ていった。
部屋は明るい、午後の日差しのようだ。


しばらくするとオフェリアが食事を手に戻って来た。ペコも部屋に戻って来た。ボランティア達の連休は昨日までで、今日は大怪我した数名を残し活動に出ているという。
「あまりにも危険だから無理せず、シェリフ達と範囲を限ってやってるわ」説明を受ける。

「勇者がいつまでも寝てらんないわよ。しっかり食べて寝て元気になりなよ。痩せて胸がしぼんでるじゃん」ペコが言う。
寝起きのせいか空腹感はなかったが、食事を目の前にしたら急にハングリー精神に点火したようだ。胃袋が咆哮を上げ始める。ジャガイモを擦ったスープが美味しそう。
「… ごふッ!!」
口に運ぶと味と食感の快感だったが、突然の食事に胃が驚いて喉元から拒否された。リリアは一度思いっきり吐き出した。
「リリア、まずはゆっくり食べないと」「鼻からイモとネギが出てるよ」注意される。

リリアとペコは気絶状態で救出され、村まで連れて帰られたようだ。全員連休を使って怪我の回復とリフレッシュ。ペコは一日たって目覚め、リリアは二日以上昏睡していた。怪我人を出したが全員無事。村の都合で無理が重なった事故で今日から緩めに活動再開。
「あたし…」リリアが尋ねる。
「全裸で泡吹いてたらしいけど大丈夫よ。武器類は全部とってある。装備は買いそろえるしかないわね。もともとシャツと皮装備だから大して痛い出費でもないでしょ」ペコ。
「ペコ、その服は?」リリアが質問する。ペコは法衣服を着ている。
「これ?着替えを持って来てるよ。2週間もあるんだから着替えくらい持ってくるでしょ。ほら、少しこれはデザインが違う」

オフェリアの説明によると、村から今回の報告が出され昨日の夕方、王国の保安課の人が来て本部を設置したそうだ。
“保安課?ローゼンさん来てるのかな?”リリアは一瞬期待したがローゼンは国民安全生活指導室の代理であり、別の課らしい。
あまり冒険者を一ヶ所に集めることは推奨されていないが、特別にボランティアを増やして、早急にこの一帯の治安回復に努める方針。


「人が増えるなら寝てらんないわね。いっぱい食べて、休んで英気を養うから。明日から現場復帰よ!こう見えても隊長だからね。おやすみ!」リリアがベッドに潜りなおす。
「… いや…私、ペコ、ココアと数名、あなたも帰都よ、リリア」オフェリアの説明。
「え!聞いてないよ!誰よ勝手に決めて!あたししくじったから隊長首なの?」リリアは跳ね起きた。
「保安の髭はやした人が決めたのよ。昨日の夕刻をもってリリアは隊長から外れてるの」オフェリア。
「あんた、見栄っ張りね。勇者とか隊長とか肩書にこだわるの?どうでもいい事じゃん。明日の朝から一緒にルーダ・コートに帰るんだよ」ペコ。
「こだわってないわよ!こだわってないけど… 何か失敗して外されたみたいで嫌!これ以上税金泥棒呼ばわりされたくないよ!おかしい!どんな髭はやしたやつか見てくる!ついでに十本くらい髭抜いてくる!」リリアが言い出した。
「ちょっと、これ以上面倒かけないでよ!誰もリリアが隊長として失格なんて思ってないから!思ったより危険だから偉いのが出てきただけでしょう!もともと誰もあんたの手駒でもないんだから」
「村の事情で今回は無理があったから、誰もリリアのせいで怪我したとも、リリアが役不足とも思ってないわよ。むしろ、真面目さ責任感は評判よかったよ」
ペコとオフェリアにたしなめられるリリア。

リリアの中では冒険者のまとめ役は勇者っぽい事であり、少しは勇者と認められるのに密かにはりきっていたのだが…
納得いかないが… 仕方がない… 今は怒鳴りこむ気も出てこない…
まぁ、怒鳴りこまない方が良いが…


夕刻
活動していた全員が戻って来たら、ボランティア全員が今回帰るメンバーにお疲れ様パーティーを開いてくれた。フェアウェルパーティー。
「おつかれ!リリア、おまえが隊長でやりやすかったぞ」
「接近戦の技術をどうにかしろ、しっかり休め」
「リリア、今回は迷惑かけてわね。またルーダ・コートでよろしくね」
「思ったよりまともな隊長ぶりだったな。弓以外を練習しておけ」
「指示は良く出せてたわね、戦場じゃ空気だったけどね」
「リリアが隊長だったのか!何やってもエアだな。良い意味で邪魔されず活動出来たな」
設置本部には呼ばれもせず、引き継ぎも全くなかったが、皆にはそれなりに褒められ励まされた。冒険者同士ならこれは結構褒められている方だ。
「先輩!俺は残るんで、一週間後にギルドで会うっす!先輩の分までがんばるっす」
ブラックとアリスは最後まで残る。
「リリア、お疲れ様。私はパウロに戻ってるから、またそのうち」
オフェリアは明日、パウロ・コートの街に帰る。


次の日の朝、リリアとペコは怪我を理由に馬車でルーダ・コートに出発。
リリアは本部にはとうとう呼ばれず。朝のミーティングの傍ら村長とちょっと挨拶した程度。
「アリスは一週間後ね。リリア、一緒に仕事する?」
馬車に揺られるペコが言う。
リリアは弓を抱えて早くも寝ている。
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