勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【149話】 最悪な帰ギルド

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「あれ?リリたん?戻るの早かったピョン。ってホウキのダカットさんも一緒ピョン?故郷に戻ってないピョン?」
ちょうどお昼時、リリア達がバー・ルーダの風の扉を開けて旅から戻って来た。
リリア、ブラック、ホウキのダカットとアメルネスカ、ハイネルが一緒だ。
ちょうど、食事を作っていたラビとカウンターでおしゃべりをしていたネーコ。二人ともリリアの早い帰り、そして編成メンバーを見て不思議がる。ダカットを故郷に返す旅に出たリリアが仲間を増やして戻ってきたのだ。不思議は当然。
「まぁ、あの… 色々あってね。説明がややこしい。それよりもお昼を作ってるならついでに人数分追加。皆昨日からほとんど何も食べてないよ。食べながら説明よ」
リリアは言うと見知らぬ仲間たちの手を取って店の中に招き入れカウンターに座らせた。
「リリたん、全員お風呂も入った方が良いニャン」ネーコが苦笑いをする。


リリアの言う色々をざっと書くとこんな感じだ。
アメルネスカ、ハイネル達と村の外れで合流した後は野宿をし、道を少し外れながら移動してきた。次の日の夕方は大きな村に着いたので、ここでアメルネスカとハイネルに旅行者装備を整えてあげて外見上、逃亡奴隷だとはわからないようにした。
いちよう誤魔化したが、付近の村等に奴隷商の仲間が見張っていなとも限らない、商人ギルド同士のつながりもあるかも知れない、リリア達は食事を購入すると村外れで人目を避けて野宿して移動してきた。この約三日間、一日一食ドカ食い野宿旅をしながらたった今バー・ルーダの風にたどり着いたところだ。

「… 大変だったピョン。とにかく食べて落ち着くピョン」
リリアの説明を聞いてラビが声をかける。こんな時ラビは優しい。残り物炒めとオムライスを皆に作ってくれる。
ネーコは途中からすっかり黙ってオムライスを食べている。
ブラックも無言でパクパクと食事を口に運ぶ。
「野宿で全然寝れていないし、胸が1カップ小さくなった気がするし、髪の毛ボサボサだし… あまり物出してくれたら残飯処理の様に食べるわよ」
リリアは噛みもせずオムライスをほおばっている。
「… エルフさん、狐耳の少女さん。いっぱいあるから遠慮せず食べるピョン」ラビが食事をすすめる。

「ただいま、最近は果物の値段が下がってきましたね」
扉がベルの音を立ててコトロが買い物から戻ってきた。
「リリア?ブラックもずいぶんと戻るの早かったですね。そちらのホウキの魔女さんはお友達ですか?姉妹さんですか? 魔女の恰好をしたエルフさんですか。そちらは狐耳さん… 姉妹ではないのですね。そのホウキはダカットさんじゃないですか?…… いったいどうなっているんですか?」コトロは不思議がってはいるが、愛想よく機嫌が良いようだ。
「ちょっと待ってね。今その話をラビとネーコにしてたんだよ。リリアちゃんってば忙しいの。まずはここ三日分くらいの食事を一気に補充して、次の三日分くらいの食事を食いだめよ」リリアが説明する… 説明してないけど…


で、落ち着いたリリアは色々を説明。
「えぇ!!奴隷ですか??奴隷商の奴隷の逃亡を手伝って連れて来たのですか!」
説明半ば、リリアが奴隷を連れて来たと聞いて驚きの声をコトロは上げた。
ネーコは先ほどから黙ってコーヒーを飲んでいる。ラビはやたらとキャベツの千切りをいっぱい作っている。
「出てってください!!さぁ早く!もう話は聞きません!出てって!全員出て行って!ギルドに戻ってこないで!!」コトロが真っ赤になって怒っている。リリアと喧嘩することは多々あるがこんなコトロ初めて見た。
「ちょ、そんな言い方ないじゃない。困ってるんだよ。少しくらい話を聞いてよ。人助けだよ、勇者なんだから助けられるなら…」
怒られるとは思っていたリリアだが、これほど取り付く島もない程とは思っていなかった。
「そんなことで済む問題じゃないのですよ!!出て行ってください。ルーダの風を潰す気ですか!ネーコやラビの生活はどうなるのですか!ギルマスとして命令します、早く出て行って!出てけって!」
「いやいや、待って、確かに奴隷だけど二人ともそんな罪ではないみたいだし、何とか隠し通したら何とかなるよ。そもそも奴隷制度自体が… 何も今追い出す事ないじゃない!」コトロが初めて見せる剣幕にリリアも驚いている。
「知らないから!!奴隷だけじゃないです!リリアもブラックもダカットも全員今すぐ出ていって!!早く!!さぁ出て行って!! 出て行かないないならリリアは強制退ギルド、懲戒免ギルドですよ!衛兵呼びますよ!」コトロは泣きながら怒鳴っている。
「衛兵?懲戒免ギルド?? コトロがそんなに杓子定規でわからず屋だと思わなかったよ!見損なったわ!その辺の連中と何もかわらないじゃない!あたし、ルーダの風もコトロの事もすごく好きだったのよ、相談にも乗ってくれないなんて!何が強制退ギルドよ!そんなのでたらめよ!」
ネーコはさっきから空のコーヒーカップを一定間隔で口に運んでいる。
ラビの千切りキャベツは既に何日分か出来上がって、なお仕込み中だ。
ブラックは黙って空になったお皿を見つめている。
「でたらめなものですか!強制退ギルド条件、規定第6条と52条、7条の1項から3項、68条の3項に該当です。早く出ていって!本当に免ギルドにしますよ!衛兵呼びますよ!」
「バカな事言わないでよ!ネーコ!ラビ!亜人同士でしょ。奴隷と言えど亜人同士。コトロに言ってやってよ!」
「……… リリたん… それは…」
「… 何よ、二人とも!普段は人間は!とか、もっと亜人は!とか言ってるくせに。何でこんな時は黙ってるの?コトロに首にされるのが怖いの?ネーコ何黙ってるのよ!ラビは泣いているの?? 何よ!普段立派なこと言って。いざとなったらさっぱりじゃない」
「リリアがこんなに勘違いしたバカ勇者だと思わなかった!せめて見逃しますから人呼ばれる前に出て行ってください!」
「何よ!普段立派なこと言って、いざとなったらビビりじゃない」
「リリアの偽善にはもう愛想が尽きました、もう二度と戻ってこないでください」
「ぅわ!コトたん!リリたん!やめて!二人が喧嘩する事ないピョン!落ち着くピョン!ラビは再就職できるピョン!落ち着くピョン」
「二人ともやめるニャン!リリたん間違ってるニャン。コトたんの言う通りニャン。ネーコはルーダの風にいたいニャン。リリたんお願いニャン。外で何とか解決して戻ってくるニャン!」
リリアがギルド・ルーダの風に所属して以来の大乱闘に発展してしまった。


「先輩!!!… 行きましょう!ここにいても迷惑かけるだけっす。行きましょう」
ブラックが叫んで立ち上がった。一瞬で辺りが静まり返る。
「はぁ?ふざけないで!聞いていたでしょ。少しくらいギルドで助けてくれてもいいじゃない。ブラックだってそう思うでしょ」リリアがブラックに詰め寄る。
「…… ご飯もご馳走になって、元気も出たっす。先輩、行きましょう…」ブラックが言う。
「…… わかったよ。部屋に予備のポーションと薬草あるから取って来るよ…」
リリアはいったん部屋に上がって準備をすると、アメルネスカ達を準備させてバーを出る。
「… あのね、あたしここがとっても気に入ってたの。でも勘違いだった。もう二度と戻ってこないわ。部屋の物は処分しちゃって… 大したものないけど… さようなら、皆様に神のご加護がありますように」リリアが泣きながら言う。
「リリアがこんなに愚かだと思わなかったです。勘違いはあなたよ。二度と戻ってこないで。私達何も見てないから… 何も知らないから…」コトロも座り込んで泣いている。
「リリたん、とにかく問題解決して戻って来たらいいニャン」
「リリたん、皆持ってるピョン」


とにかくリリア達は再び路上に出た。
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