勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【239.5話】 緊急招集の午後 ※(後編)※

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捜索メンバーが続々と現場周辺に集まってきた。
ある者は崖の下に集合、ある者は付近で待機。
「私達はこのまま空から残りの一台を捜索するわ」
リリアの耳に通信が入ってくる。
見上げると何人かがホウキにまたがり旋回を続けている。

現場には二十名以上の冒険者が集まった。
ゴーントレットのギルマス、ルフトハンスは村の本部に残っていたので、今、急いで現場に向かってきているようだ。
その他、残ったゴーントレットのメンバー、ロッペン、パム、フォーレスの三人は現場に揃った。
もし今回の事件でゴーントレットのメンバーが全員絶望だったら、大幅に仲間を失う事になる。

「リリア、お疲れ様」
声を掛けられたのでリリアが振り向くとアリスとペコ。
「アリス…ペコ…」
「見守ってあげましょう」
アリスは呟くとリリアの手を握った。

ロッペンが横転した馬車の扉に手をかけるとパムとフォーレスが構える。
「ハンスから許可は出ている。皆、俺達で仲間を送ってやろう。 いいか…」ロッペンが告げる。
パムもフォーレストもボロボロと涙をこぼしながら武器を手に…
“ギィッ”
ロッペンが慎重に扉を開ける。

「ぐお… うぐぅ…」唸り声がする。
異臭が一際強くなり、ハエが狼煙の様に舞い上がり、扉から変わり果てた仲間達が立ち上がって這い出て来た。
「ロイ、約束通り最後は俺の手で…」
「先に逝かせちゃったね…神殿で待っていねて、マイ」
「すまねぇ、義兄弟、二日間待たせちまって…先に逝った仲間によろしく」
死臭と共に再会した仲間達を討ち果たしている。
「仲間の始末は仲間がするんだよ」
ペコが呟くのをリリアは泣きながら聞いていた。


「やっとフライング・シャークを退治した、捜索を再開」
リリアのイヤリングから通信が聞こえて来た。
リリアが見上げると先ほどまでシャークの群れに襲われて、ドッグファイトをしていた空中捜索部隊がようやく捜索に復帰し始めた。
馬車二台は先ほどから回収作業に入っている。
残りの一台を捜索中。
付近で消息不明になっているはずである。

リリアは弔いをするロッペン達の傍から一足先に離れ、崖沿いに捜索を続けていた。

「… ぅふ…」
リリアの鼻に異臭が漂って来た。
注意深く見ると、大樹の陰に大きく歪んだ馬車が転がっているのが見えた。
ちょうど、崖と木の陰になっていたのか、空中からでも見えにくかったようだ。
「リリア、気をつけろよ」ダカットが背中から注意する。
リリアはコクコクと頷いて、注意深く馬車に接近する。
「ぉ… ぉぃ… ぃ…」
リリアが発見の報告をしようとイヤリングに触れた時、近くで人の声がした。
「生存者?誰か!誰か生きているの?」
リリアが探すと、岩陰に倒れるオブライエンを発見した。
リリアが駆け寄る。

「オビィ、しっかり!リリアよ!皆助けに来たよ!オビィ!!」
リリアが抱きかかえてすぐにポーションを口に含ませた。
「… ぅぅ かぃふく… もぅぃぃ… 誰だ…」
左足と左腕を酷く骨折し、あばらも折れている状況だ。お腹がパンパンに張って、紫色になっている。内臓が…
オビィは苦し気に細かく呼吸をし、曇った目で視線を泳がせながら虫の息で声を絞り出している。

「ロビィ…あなた目が… …! 皆!馬車!馬車を発見したわ。オビィが生きてる。さっきの場所から西の崖沿い、誰か早くきて!」リリアが気づいて報告を入れる。
リリアは素早くポーションを口移しに飲ませようとしたが、もはや飲む力もないようだ。

「リ、リリ…ァ…か… 」
「あなたの今の状況は…」
告げようとするリリアの声をロビィが小さく遮った。
「俺の状況はいい… それより… バレリィお嬢様が岩陰に…」
言われて岩陰の先を見ると窪みに女性がうずくまっている。
怪我と疲労と恐怖で震え、何かを呟き精神崩壊寸前だが、大丈夫の様だ。
リリアは素早く女性に寄り声をかけ、回復と気力のポーションを口に含ますと再びオビィのところに戻った。
「オビィ! オビィ! 駄目よ!もう助けが来てるんだよ!起きて!!お願い!」
助けが来て安心したのか、明らかに弱っている。

「… お嬢様は無事か? …良かった… 引っ越しは延期になるが、まだクエスト完了は可能だな。トロールの群れ襲われ… 中間にいた俺達の馬車が… 馬が暴れ崖から… ション達の馬車は駆け抜け… …そうか…いや、良いんだ… あいつらが無事なら捜索にこんな時間はかかっていない… ゴッサム、ロードンは即死だった… お嬢様は骨折し、大怪我で…ポーションを… 俺もメグも骨折しながらこの二晩お嬢様を守って…」
リリアが聞くまでもない、そこら中に回復剤、狼やマウンテンライオンの死骸…
オビィだって食いちぎられている。
「メグは今朝まで… すまない… 俺ももう動けなく… 野良犬どもに持って行かれちまった…」
「メグも悔いはないよ… ゾンビになるより、自然に還れてよろんでるよ… とんがり帽子とスタッフが残っているよ」
リリアは手を握るとしっかりとロビィを抱えた。

「リリア!オブライエンは?生存者は?」
ホウキ部隊の何人かがランディングしてきた。お嬢様の救出を始める。
「聞こえるでしょ!オビィ!あなた凄いわよ!お嬢様は助かった!今度は自分で引っ越しを終わらせてこそプロでしょ!」リリアは必死に呼びかける。
「リリア… 幻想薬… 楽にしてあげましょうよ…」
マーシャの声だろうか。
「教会で蘇生を希望したが、もう望まねぇ… 仲間と共に… ハンス、どうだ… 俺は絶対クエストは落とさねぇ… もう痛みも無くなってきた…」
オビィは呟きながら青空に手を伸ばした。
集まった冒険者が、ある者は傍で、ある者は空中をホバーしながらその最後を看取る。
「オビィ、お疲れ様」「オビィ、仲間によろしく」「オビィ、俺達もそのうち」
労う声。

「どうだ、やりきったろぅ… 皆、クエストは落としてねぇぜ… 胸をはれ…」
オビィは誇らしげに微笑むと皆に看取られ旅だっていった。


ゴーントレットのギルマス、ルフトハンスが到着したのは、それから少し経ってだった。
リリアは貴族の両親の狼狽える声と、娘の号泣を背中で聞いていた。
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