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⑬シド様とお茶を
しおりを挟む「ねぇ、シド様、お茶にしない?」
わたくしは離宮の中を見回っていたシド様に声を掛ける。
「レイラ嬢、俺は仕事をしてるんですけど。毎日レイラ嬢とお茶なんてしてたら陛下に羨ましがられるじゃないですか。」
シド様が溜息をつきながら言う。
「あら、いいじゃない。ここは宮廷の中にある離宮よ。今までも大丈夫だったし、そんなに危険は無いのだから、シド様もつまらないでしょう?」
「そんなにしょっちゅう俺の出番があっても困るんですけどね。」
シド様はそう言いながらも用意したお茶を飲みに来てくれる。
「今日もミカは忙しそうよね。」
わたくしはシド様の前で陛下の事をミカと呼ぶ。
シド様が来てくれるようになって直ぐに、わたくしがまた、口を滑らせてしまったの。
その時の理由を聞いたシド様の反応が、
「陛下がミカエル!アハハ、ぴったりじゃないですか!」と、とても褒めてくれたのに、ミカがシド様を小突いて、「お前は絶対呼ぶなよ。」と釘を刺されていた。
「そうですね、内乱で人が少なくなった上、陛下には信頼できる部下が少ないですからね、七年間この国から離れていたリスクは陛下が一番分かっていることなんでしょうけど。」
シド様の言葉に納得する。
そうよね。いくら七年間連絡を取りあっていたとはいえ、離れた場所からでは信頼できる人はなかなか作れないし、誰が敵になるか分からない身内の争いなので、本当にごく一部の人しかミカが生きている事を知らなかったのだもの・・・
ミカが忙しい理由が分かったわ。
「内乱の事後処理もあるし、兵士の特訓にも参加しているようですし、レイラ嬢との婚姻のためにもいろいろ頑張っているようですしね。」
シド様がお茶を飲みながら言う。
「わたくしの結婚はミカが落ち着いてからでいいのに・・・」
わたくしはミカが忙しすぎて身体を壊すんじゃないかと心配になる。
「陛下は早く結婚したいんじゃないですかね。」
わたくしの言葉に、シド様が答える。
「どうして?」
「陛下は早くレイラ嬢とラブラブしたいんですよ。」
シド様のストレートな言葉に、わたくしは顔が熱くなる。
「そうかしら・・・今もラブラブだと思うのだけど・・・ミカが身体を壊さないか心配だわ。」
「陛下はもっとラブラブになりたいんですよ。」
シド様がニヤニヤと笑いながら言う。
「やっぱり、わたくしとの結婚は厳しいのかしら。」
「結婚自体はそれほどむつかしくないと思いますけど・・・問題は違うところでしょ。」
シド様が何か知ってるような話し方をされる。
「シド様何か知ってるの?」
わたくしの言葉に、シド様がきょとんとした顔になる。可愛いお顔なので、目を大きくすると本当にお可愛らしい。
「レイラ嬢、今陛下が何を必死にやってるのか知らないの?」
「え?」
「いや、知らないのなら、陛下がレイラ嬢には知られたくない事だと思うので話しませんけど。」
そう言ってシド様は口をつぐんでしまった。
えー?何?どうしてミカはわたくしに話してくれないの?
今度ミカが来たら聞いてみようかしら。
「シド、お前は何でそんな所で悠雅にお茶してるんだ?」
タイミングよくミカが現れました。
ちょっとご機嫌斜めなご様子です。
「ミカ、わたくしがお誘いしたのよ。休憩も必要でしょう?」
「そうだね、レイラ嬢は相変わらず優しいね。」
ミカがわたくしの言葉に、にっこり笑う。
「でも、シドと仲良くお茶するなんて・・・俺もレイラ嬢と毎日お茶したいのに・・・」
ミカがちょっと不貞腐れて言う。たまに見せる子犬ミカが現れました。可愛い。
「陛下が俺をこの仕事に任命したんじゃないですか。」
シド様が答えると、ミカは何故かシド様を睨みつける。
「ミカ、お仕事頑張ってくれてるのに、ごめんなさい。でも、シド様が来てくれて、わたくしも楽しいのよ?」
「そうですか。」
ミカがさらに落ち込んだようになる。
あれ?わたくし何か間違えたかしら。
そうだわ、ミカに聞こうと思ってたのよ。
「ミカ、わたくしとの結婚が前に進まない理由って何ですの?」
その言葉に、ミカがまたシド様を睨みつける。
「陛下!俺なんも言ってません!」
慌ててシド様が言い訳する。
それを聞いてミカはわたくしを見る。
「レイラ嬢、何も心配することは無いよ。まぁ、俺とレイラ嬢の結婚を渋ってる奴の説得にちょっと時間がかかってるけど・・・待たせてごめん。もう少し待っていてくれないか?」
「そうなの?わたくしの事はいいから、無理しないでね。」
なんだかミカに誤魔化されたような気がするけれど、ミカを信じて待っていればいいのよね。
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