陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

文字の大きさ
13 / 44

⑬シド様とお茶を

しおりを挟む



「ねぇ、シド様、お茶にしない?」

わたくしは離宮の中を見回っていたシド様に声を掛ける。

「レイラ嬢、俺は仕事をしてるんですけど。毎日レイラ嬢とお茶なんてしてたら陛下に羨ましがられるじゃないですか。」

シド様が溜息をつきながら言う。

「あら、いいじゃない。ここは宮廷の中にある離宮よ。今までも大丈夫だったし、そんなに危険は無いのだから、シド様もつまらないでしょう?」

「そんなにしょっちゅう俺の出番があっても困るんですけどね。」

シド様はそう言いながらも用意したお茶を飲みに来てくれる。

「今日もミカは忙しそうよね。」

わたくしはシド様の前で陛下の事をミカと呼ぶ。
シド様が来てくれるようになって直ぐに、わたくしがまた、口を滑らせてしまったの。
その時の理由を聞いたシド様の反応が、
「陛下がミカエル!アハハ、ぴったりじゃないですか!」と、とても褒めてくれたのに、ミカがシド様を小突いて、「お前は絶対呼ぶなよ。」と釘を刺されていた。

「そうですね、内乱で人が少なくなった上、陛下には信頼できる部下が少ないですからね、七年間この国から離れていたリスクは陛下が一番分かっていることなんでしょうけど。」

シド様の言葉に納得する。
そうよね。いくら七年間連絡を取りあっていたとはいえ、離れた場所からでは信頼できる人はなかなか作れないし、誰が敵になるか分からない身内の争いなので、本当にごく一部の人しかミカが生きている事を知らなかったのだもの・・・
ミカが忙しい理由が分かったわ。

「内乱の事後処理もあるし、兵士の特訓にも参加しているようですし、レイラ嬢との婚姻のためにもいろいろ頑張っているようですしね。」

シド様がお茶を飲みながら言う。

「わたくしの結婚はミカが落ち着いてからでいいのに・・・」

わたくしはミカが忙しすぎて身体を壊すんじゃないかと心配になる。

「陛下は早く結婚したいんじゃないですかね。」

わたくしの言葉に、シド様が答える。

「どうして?」

「陛下は早くレイラ嬢とラブラブしたいんですよ。」

シド様のストレートな言葉に、わたくしは顔が熱くなる。

「そうかしら・・・今もラブラブだと思うのだけど・・・ミカが身体を壊さないか心配だわ。」

「陛下はもっとラブラブになりたいんですよ。」

シド様がニヤニヤと笑いながら言う。

「やっぱり、わたくしとの結婚は厳しいのかしら。」

「結婚自体はそれほどむつかしくないと思いますけど・・・問題は違うところでしょ。」

シド様が何か知ってるような話し方をされる。

「シド様何か知ってるの?」

わたくしの言葉に、シド様がきょとんとした顔になる。可愛いお顔なので、目を大きくすると本当にお可愛らしい。

「レイラ嬢、今陛下が何を必死にやってるのか知らないの?」

「え?」

「いや、知らないのなら、陛下がレイラ嬢には知られたくない事だと思うので話しませんけど。」

そう言ってシド様は口をつぐんでしまった。
えー?何?どうしてミカはわたくしに話してくれないの?
今度ミカが来たら聞いてみようかしら。


「シド、お前は何でそんな所で悠雅にお茶してるんだ?」

タイミングよくミカが現れました。
ちょっとご機嫌斜めなご様子です。

「ミカ、わたくしがお誘いしたのよ。休憩も必要でしょう?」

「そうだね、レイラ嬢は相変わらず優しいね。」

ミカがわたくしの言葉に、にっこり笑う。

「でも、シドと仲良くお茶するなんて・・・俺もレイラ嬢と毎日お茶したいのに・・・」

ミカがちょっと不貞腐れて言う。たまに見せる子犬ミカが現れました。可愛い。

「陛下が俺をこの仕事に任命したんじゃないですか。」

シド様が答えると、ミカは何故かシド様を睨みつける。

「ミカ、お仕事頑張ってくれてるのに、ごめんなさい。でも、シド様が来てくれて、わたくしも楽しいのよ?」

「そうですか。」

ミカがさらに落ち込んだようになる。
あれ?わたくし何か間違えたかしら。
そうだわ、ミカに聞こうと思ってたのよ。

「ミカ、わたくしとの結婚が前に進まない理由って何ですの?」

その言葉に、ミカがまたシド様を睨みつける。

「陛下!俺なんも言ってません!」

慌ててシド様が言い訳する。
それを聞いてミカはわたくしを見る。

「レイラ嬢、何も心配することは無いよ。まぁ、俺とレイラ嬢の結婚を渋ってる奴の説得にちょっと時間がかかってるけど・・・待たせてごめん。もう少し待っていてくれないか?」

「そうなの?わたくしの事はいいから、無理しないでね。」

なんだかミカに誤魔化されたような気がするけれど、ミカを信じて待っていればいいのよね。









しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

処理中です...