夢の続きを、あなたと

小田恒子

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第2章

諦めた思い 3

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 同じ店舗の人たちは、私の経歴を知っているおかげで、快く私を本部に送り出してくれたけれど、他店舗の女性たちの目はそうではないことも承知の上だ。

 いろいろな雑貨に囲まれた職場。
 店舗配属は私にとって嬉しい環境だったけど、その雑貨の買い付けを任される部署への異動は、願ってもないことだった。

 しかしバイヤー部門へ異動になったとはいえ、この部署には女性がだれ一人おらず、しばらくの間は雑務などのデスクワークばかりで、まともな仕事さえさせてもらえなかった。
 
 本当にやりたい仕事は職人だけど、あの時、私は夢を諦めた。
 この仕事に就いて、自分の思い描いていた夢に近付けたわけではないけれど、自分の好きなものに関われるんだと思い、ひたすら我慢した。

 ほかのバイヤーから押し付けられるデスクワークから、ようやくバイヤーとして曽我さんについて取引先を一緒に回るようになったのは、ここへ異動して半年後のことだった。

 デスクワークのおかげで、取引先の内容は頭の中にしっかりと叩きこまれている。
 
 後に、曽我さんは私に全取引先のデータを把握させたかったから、ほかのバイヤーたちの雑務も全て私にやらせていたと言っていた。しかし、その意図を知るまでは、引き抜きしたくせに私には直接買い付けをやらせてもらえないんだと諦めモードだった。

 曽我さんと一緒に回っている間は、取引先も好意的だったけれど、いざ独り立ちしてみると……

 取引相手は、こだわりの職人だけあり一癖も二癖もあるような相手が多い。
 アポを取り付けるだけでも一苦労なのに、いざ商談に入ろうものなら、「上の人を連れてきて。あんただけじゃ話にならん」と、相手にしてくれないのだ。

 やはり私のことを「どうせ結婚や妊娠でもすればすぐに辞めてしまう」と、偏見があるのだろう。
 私が「女だから」という理由で取引を切られたら溜まったものではない。
 だからこそ、曽我さんに無理を言って新規開拓に回らせてもらったのだけど、これがなかなかうまくいかなくて、心が折れそうだ。

 いつも曽我さんに助けてもらって商談を成功させて取引に繋げているけれど、正直言って、そろそろこの仕事も潮時なんじゃないかと思い始めていた。

 私は現在二十九歳。
 将来のことを考えたら、職人たちが私に偏見を向けるのも納得できる年齢だ。
 今の年から婚活をして、結婚、妊娠とトントン拍子にことが運んだとして、仕事を続けていくかどうかも不安があるのだろう。

 核家族が進んでいる現代で、もし子どもが生まれた時の預け先のことや、子どもが小さいうちは病気ももらいやすい。きっとそれらのことを彼らは危惧してのことなのだ。

 こう言っては何だけど、職人たちは私の父親や祖父と年齢の近い人たちがほとんどだ。
 その世代の人たちの奥さんは、専業主婦が多い。

 今でこそ、育児に手のかからなくなった女性たちがアルバイトやパートなどで社会復帰されているけれど、育児中の女性に大事な仕事を任せられないという思いが強いのだろう。
 
 今日みたいに、雄馬のような若手の職人が育つ現場は稀だ。
 私も職人の道に就いていたら……

 たらればのことを考えても時間の無駄だ。私は頭を振ると、ノートパソコンの画面をパタンと倒し、机の上を綺麗に片付けると席を立ち、フロアを後にした。
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