おだやかDomは一途なSubの腕の中

phyr

文字の大きさ
38 / 47
後編

38.明日があるのに

しおりを挟む
 新規の魔道具や魔法の申請受付は、魔術師団が行っている。しかし夕刻には窓口が閉められてしまうので、壊された試作機の修理時間も考慮すると、レーネが申請に行けるのはどんなに早くても明朝といったところだった。盗んでいった相手の動向は気になるものの、誰かもわからない相手をレーネがどうこうできるものでもない。
 月が高くなるまで集中し、クリフたちの手も借りながら試作機や部品の類いに至るまですべてを寮の部屋に運び込んだあたりで、レーネはくたびれて動けなくなっていた。

「がんばりましたね、レーネさん」
「ん……」

 ベッドに横になっているレーネに微笑み、ティノールトが優しく撫でてくれる。ティノールトのほうがあれこれ片づけてくれていたし、犯人探しにもいろいろ動いて疲れているだろうに、レーネを甘やかして労ってくれて、優しい。

「ティノールトくん」

 ころんと寝返りを打って仰向けになり、ティノールトに手を伸ばす。

Hugぎゅってして

 間髪入れずにティノールトが覆い被さってきて、レーネを抱きしめてくれる。許可を取らずにCommandを使ったのに、拒むどころか満たしてくれるのが、うれしい。
 くつくつと笑い声を漏らして、レーネはわしわしとティノールトの背中を撫でた。

Good boyいい子
「重くないですか……?」
「大丈夫」

 それでも気になったのか、ティノールトはレーネを抱えたまま、器用に体勢を入れ替えた。本気でのしかかられていたら重かったかもしれないが、ティノールトが自分の体を腕で支えてくれていたから、問題なかったのだが。
 どこまでもレーネを大切にしてくれるティノールトに、きちんと応えたい。

「今日も練習、するかい?」

 腰のあたりを抱いているティノールトの腕をするりと撫でると、ティノールトの顔が少し険しくなった。
 嫌がっているわけではない、というのはわかるようになってきたが、言葉で教えてもらわないと、まだ彼の考えを読み取るのは難しい。

「嫌かい」
「……今日は疲れたでしょう? 明日もあるし……」

 嫌なわけではない。レーネを気遣っているだけだ。ふっと微笑んで、レーネは自分からティノールトに口づけた。
 レーネだって、ティノールトを大切にしたい。

「きちんと慣らしておかないと、元に戻っちゃうんだろう? 今日もやったほうがいいんじゃないのかい」
「……でも、レーネさんの体に負担がかかります」

 無理をさせたくない、と背中を撫でられると、つい流されそうにもなってしまう。ティノールトのそばは心地よくて、安心できて、優しくしてくれるから甘えたくなって、際限がなくなりそうだ。
 しかし、そうやって寄りかからせてばかりではなくて、レーネにもあれこれさせてほしい。

「ティノールトくん」

 ティノールトの体温を感じながら大きな手で背中を撫でてもらっていると、寝かしつけられてしまいそうな気さえする。名前を呼んでもう一度唇をついばんで、普段見上げている顔を覗き込む。

「僕は、かよわい女性でもないし無垢な子どもでもない」

 ティノールトがレーネを大切にしてくれることはもちろん嬉しい。体格に恵まれているティノールトから見れば、レーネは小さくて華奢に見えるのかもしれない、というのも想像はできる。実際のところ、レーネは成人男性の中ではほんの少し背が低いほうではあるが、プルーメほどたおやかというわけではない。

「君と同じ男だ」
「……すみません、そんなつもりじゃ」
「うん、君が僕を大切にしてくれてるのはわかってる」

 慌てたようにティノールトが起き上がり、レーネはずり落ちそうになった。すぐにティノールトが抱え直してくれたが、空色の瞳が揺れている。レーネの言葉で、何か不安にさせたらしい。

「君は僕を大切にしてくれる。それはすごく嬉しい」

 人に大切に扱ってもらえるというのは、無条件ではない、とレーネは思っている。小さな親切とか、厚意とか、積み重ねがあって初めて与えられるものだ。
 しかしティノールトは、北の砦に来たばかりのころから、レーネをとても大事にしてくれた。元々の性質もあるのかもしれないが、それはとても珍しいことで、甘えてばかりいてはいけない、と思う。レーネが返せているのは、ティノールトが与えてくれるよりほんのわずかなものでしかないとも思う。

 ティノールトの顔が近づいてきて、口づけが降ってきた。最近ようやく上手に応えられるようになってきた気がするものの、口腔をティノールトの舌にまさぐられると、頭がほわほわしてきておとなしくさせられてしまう。

「誰よりも……大切なんです、レーネさんが」
「……僕も、君のこと、大切なんだ」

 レーネを抱えているティノールトの腕がぴくりと反応して、空色の瞳が少し濃くなった気がした。

「だから、君に喜んでほしいし、君が喜んでくれることをしたい」

 それが色を含んだ行為なのは少し後ろめたいような気もするが、レーネはどうにも人の世話をするより世話をされるほうが得意だし、日常でもできそうな小さなこと以外に、これといったものが思いつかない。体の準備がいるし、あまり日を置かないほうがいいものなら、毎日がんばろうと思うくらいには、ティノールトに応えたい。

「準備は、えっと……もしかして、君が喜ぶことじゃないのかい」
「……いえ、あの、レーネさん……」

 首を傾げたレーネに、ティノールトは視線をさまよわせた。この反応は確か、何か言おうと思っていることはあるがためらっている、みたいなときだ。ティノールトが待ってくれるのと同じように、レーネもじっと言葉を待ってみる。

「……嬉しいん、ですけど……嬉しいんですけど、我慢できる自信がなくて……」
「我慢?」

 何か我慢するようなことがあっただろうか。レーネがものを知らないせいで、ティノールトに我慢させているなら問題だ。
 教えてほしい、とレーネが口を開きかけたところで、ぐい、とティノールトに強く抱き寄せられる。

「……僕、触ったっけ」
「……レーネさんにCommandもらって、褒められて、キスして、大切って言ってもらっただけです」

 ティノールトの膝の上に座っているレーネが気づくくらいだから、ガチガチといっても差し支えないのではないか。楽になりたいだろうと手を伸ばしたら、それも止められてしまう。

「しないのかい」
「今日は、だめ、です」

 ティノールトがものすごく理性を働かせている気がする。過重労働はよくない。

「本当にしたいこと、Say教えて
「……今すぐレーネさんとセックスしたい……」
Good boyいい子だね、よく言えました」
「ずるいですよ、今の……」

 恨めしげに言って抱きしめてくるティノールトを撫でて、レーネはくつくつ笑った。
 欲をぶつけてくれても構わないのに、ティノールトは丁寧に丁寧に、レーネを怖がらせないように段階を踏んでくれる。それがもどかしくて、かわいくて、彼の優しさがわかって嬉しい。

「手でしよう、ティノールトくん。僕も君に気持ちよくしてほしい」
「……ずるい、本当にずるい……」

 ベッドに押し倒されて、レーネに馬乗りになったティノールトが服を脱ぎ始める。たくましい体があらわになっていくのは、見ていてちょっとどきどきする。ローブを脱がされてさらされるレーネの体は、それと比べるとやはり貧相で、華奢と思われても仕方ないのかもしれない。

「……これ、挿れてもいいですか」

 サイドボードから細い棒を取り出したティノールトに、レーネは微笑んで頷いた。

 先ほどから練習といっていたのは、あの棒をレーネの尻へ入れる行為のことだ。ティノールトのモノを入れられるようになるには、レーネの体を開発して太いものも入れられるようにしないといけないらしい。それに元々排泄腔だからきれいにする必要もあって、拡張と浄化の機能を備えた魔道具が売られているそうなのだ。
 ティノールトがどこで買い求めてきたのか、さすがに気が引けて聞いてはいないが、ティノールトを受け入れられるように体をいじられることについては、レーネもやぶさかではなかった。

「力、抜いててくださいね」

 遠征先で足をマッサージしてくれたときと同じオイルを垂らして、ティノールトがそっと棒を入れてくる。違和感はあるが、先端が丸くなっているから痛みはない。ゆっくりと押し進められて、かちりと音がすると今度は棒が膨らんでくる。

「っ、ん」

 少し苦しくて顔をしかめるとティノールトにキスをしかけられて、ごまかされている間に棒が太くなり続ける。
 おかしい。いつもより棒を太くする時間が長い気がする。
 このままでは抜けなくなるのではと恐怖すら感じ始めたころ、ようやく止めてもらえて、レーネは浅い息でティノールトをにらんだ。

「くる、し、ティノ、ルトく、ばか、ぬけな、っちゃう……っ」

 レーネは涙目にすらなっているのに、ティノールトはぐっと口を引き結んだあと、レーネの上に覆いかぶさって硬いモノを押し当ててきた。元気すぎるくらいの勢いに戸惑って、レーネがぐすぐすと鼻を鳴らすと、顔に優しく口づけを降らせてくる。

「……すみません、ちょっと興奮してる……」
「ばかぁ……っ」

 苦しいと訴えても抜くことも細くすることもしてもらえなくて、太いもので貫かれたまま、レーネはティノールトの手で何度も高められた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

痛いほど、抱きしめて

春於
BL
Dom/Subユニバース 東有希人(あずま ゆきと)は、演劇部に所属する高校三年生である。 親からの無償の愛を受けないまま育ち、そんな自分を大切に育ててくれた祖父母との死別を体験した有希人は舞台の上だけが自分の居場所だと思っていた。 しかし、高校三年生の春。普段と変わらぬ生活が始まると思った矢先に高校二年生の樋口叶人(ひぐち かなと)に告白される。その告白は断ったものの、それから毎日のように叶人にお世話され、構われるようになった。 有希人はそれにうんざりしながらも甘受する日々を送っていたが……。 ※重複投稿 全4話完結

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。 ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。 秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。 戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。 ●八架 深都(はちか みと) 20歳、大学2年生 好奇心旺盛な性格 ●秋木 晴士(あきぎ せいじ) 26歳、小説家 重度の不眠症らしいが……? ※性的描写が含まれます 完結いたしました!

【本編完結】黒歴史の初恋から逃げられない

ゆきりんご
BL
同性の幼馴染である美也に「僕とケッコンしよう」と告げた過去を持つ志悠。しかし小学生の時に「男が男を好きになるなんておかしい」と言われ、いじめにあう。美也に迷惑をかけないように距離を置くことにした。高校は別々になるように家から離れたところを選んだが、同じ高校に進学してしまった。それでもどうにか距離を置こうとする志悠だったが、美也の所属するバレーボール部のマネージャーになってしまう。 部員とマネージャーの、すれ違いじれじれラブ。

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

処理中です...