相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん

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野崎家にて

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 台風がだいぶ近づいてきている。
 外は強風、まだ雨こそ降り始めていないが、昼にも関わらず町中に人の姿はない。
 もちろん畑にも。

 レムネアは今、野崎家に居た。
 野崎家の居間の窓から、風で大きくしなる庭の木々を見ている。

 畑は大丈夫なのだろうか。
 育った木ですらこんなに風で葉を飛ばしているのだ。今ごろ畑はどうなってしまっているだろう。ケースケさまが風対策でビニールを被せていたけれど、それくらいで持つのだろうか。

 ――そこまで考えて、彼女は思考を止めた。
 啓介の家を飛び出してしまった自分に、今さらそんな心配をする資格があるとも思えなかった彼女なのだ。

 責任を追及して欲しかったくせに、全てを放り出して啓介の元から去ってしまった。
 いったい自分はなにをしたいのだろう。
 頭の中がグチャグチャになってしまっているレムネアに、自らの行動を言語化することは至難だった。

 ただただ、自分が情けない。
 暗くて熱を伴った激情が、彼女の心を苛んでいた。

「――そうじゃなぁ、相当な損失になるじゃろうよ。こんな大きな台風はわしも初めての経験じゃて」

 ふすまの向こう、廊下で野崎爺が電話をしていた。
 どうやら地元の同業と台風被害についての話をしているようだ。
 やはり台風への対処に四苦八苦しているのがわかる。この世界でも『台風』は農作物に大きな被害を出すものなのだと、レムネアは理解した。

 彼女がしばらくの間、聞くともなく野崎爺の声に耳を傾けていると、その声が突然荒げられた。

「なんじゃと、園芸施設共済に入ってない!?」

 怒ったような声、野崎爺のこんな声は初めて聞くレムネアだった。
 どうしたのだろう、驚いて思わず廊下の方を向いてしまう。

「以前入っていると言っておったではないか。え、抜けた!? ふむ……ふむ……、むう、馬鹿者が、一時の金を惜しみおって。それでいま頭を抱えていたら、元も子もないじゃろうに」

 怒っているが、どこかやるせなさを感じる声だった。
 仕方ないことなのだろうと、相手の気持ちも理解をしている声。

「……わかった、ウチからもどうにか出来る範囲で援助はする。次から保険を惜しまないようにな」

 疲れた顔で居間に戻ってきた野崎爺に、レムネアはポットからお湯を注いでお茶を出した。

「ご苦労さまです野崎さん。喉でも潤してください」
「おおレムネアちゃん、すまんな」

 テーブルに置かれた茶の前に座り、野崎爺は胡坐をかいた。
 レムネアが気を遣った声を出す。

「なんだか大変そうなお話だったみたいですね」
「聞こえてしまってたか。気持ち良くもない話を耳に入れてしまって申し訳ないの」
「あの……台風というものは、農業を営む上でそんなに大変なものなのでしょうか」
「大変といえば、大変じゃがな。それでもこの辺なら毎年来るものじゃから、普通ならば織り込み済みの脅威といった程度かのぅ。じゃが……」

 野崎爺は困り顔の笑いを閃かせ。

「今回の台風は、少し事情が違う。過去に類を見ないほど大型のまま、ここまでやってきそうなんじゃよ」

 過去最大級の台風。
 それは野崎爺ですらかつて経験したことがないレベルのものだと言う。

「作物の被害はもちろん、家屋への影響も心配じゃて。この辺り一帯が停電になるかもしれんし、上水河川の氾濫すら懸念される。なにしろ前例のない台風じゃからな、なにが起こるか想像もつかん」
「そこまで……」
「もしかしたら避難勧告が出るかもしれん。この地域の避難場所は、高台にある小学校の体育館に指定されておるが……さてどうなることやら」

 レムネアの顔が、少し青い。

「ケ、ケースケさまは大丈夫なのでしょうか?」
「畑への対策は、昨日のうちにやるだけのことはやった、と連絡があったよ。だがこの規模の台風となってくると心配じゃな」

 レムネアは不安そうな顔を隠そうともせずに眉間にシワを寄せた。
 目線を落として語る野崎爺の声が彼女の心底に冷たいものを落としていく。

「ケースケくんも無茶をしてなければいいのだが。彼のことだ、この強風の中、今もまだ一人で畑の見回りをしてるかもしれん」
「そん……な」

 唇を震わせるレムネアの顔を、チラと見る野崎爺。

「レムネアちゃんも心配じゃろう? どうだろう、いったん家に戻るかね?」
「私……私は……、いえ」

 レムネアは俯いた。
 心配そうにしていた顔が、一瞬で自分を苛む表情に切り替わる。

「私には、そんな資格がありませんから」

 ケースケさまに認められているつもりだった。
 ケースケさまの横に立っているつもりだった。
 だけど実際のところ、自分はそこまで頼りにされていたわけではないのだ。

 と、――少なくともレムネア本人はそう思ってしまった。
 啓介は彼なりの理屈を以って、失敗した彼女のことを叱らなかったのだけれども、失敗した自分を叱ってくれなかった啓介に、彼女は絶望したのだ。

 自分は、対等なパートナー足りえてなかった、と。

「……そうか。それじゃあいい、まだまだゆっくりとしていきなさい」
「すみません」
「気にするもんじゃない。こういうときに甘えて貰えるのは、わしらも嬉しいんじゃ」

 ニカッと笑って野崎爺はお茶を飲み干した。
 ふすまをチラと見る。そこには細く隙間が空いていて、まんまるな目が心配そうにこちらを覗いていた。

「さてわしは家の台風対策をもう少ししておくよ。美津音、入ってきなさい。わしと交代じゃ」

 ふすまの向こうから覗く目が、ピョコンと跳ねた。

「は、はい……おじい、ちゃん」

 出ていく野崎爺の代わりに、美津音が居間に入ってきたのだった。

 ◇◆◇◆

「…………」
「…………」

 無言。
 部屋に入ってきた美津音ちゃんは、自分でお茶を注いで、お茶菓子に煎餅を用意してきた。だけどそれに手を付けるでもなく、無言のまま俯き加減だ。
 レムネアもまた、暗い表情のまま俯いている。

 びゅおお、びゅおお、と。
 外に吹く風の音が一層強くなっていた。時折り、雨音も混ざり始めている。
 台風が本格的になってきたのだろう。

 どれくらいの時間が経ったのかわからない。
 カッチコッチ、と鳴る居間の時計が三回音を立てた。ボーン、ボーン、ボーン。

 午後の三時だ。
 だが外は、まだ三時とも思えないくらい薄暗い。

「……あの」

 と小さな声を出したのは美津音だった。

「レムネアお姉ちゃん……、ケースケお兄さんと、喧嘩……しちゃったの?」
「え?」

 喧嘩?
 違うよ、とレムネアは即座に否定した。

 喧嘩ではない。
 私が一人で失敗をして、一方的にケースケさまの言葉にショックを受けただけだ。

「なんでそんなことを聞くの?」
「だって……、二人とも、あんなに……仲が良かったのに、レムネアお姉ちゃんがウチに来て、悲しそうな顔をしてる、……から」
「そ、そんなことないよ美津音ちゃん。ほら、私は元気だから」

 笑いの顔を作って、美津音が持ってきた煎餅をバリッと齧る。
 いけないな、とレムネアは思った。小さな子に、心配を掛けてしまっている。

「……不満は、口にした方が、いい。大事なことは、言葉にしなくちゃ、……ダメ」
「美津音ちゃん?」
「ちゃんと言葉で伝えないと、『こみゅにけーしょんえらー』が起こるから」

 なんか難しい言葉を使っている美津音に、レムネアは目をパチクリした。
 どういうことだろう。

「これね、ナギサちゃんが……よく言うことなの。思ってることは、しっかり相手に伝えないとダメだよ、って。言わなくてもわかって貰えるなんて考えるのは『ごーまん』なんだって」
「傲慢……」
「うん、えっとね……、ずうずうしいってことだって、ナギサちゃんは言ってた」
「美津音ちゃんは、私が図々しいと、そう仰るのですね?」
「違うの! そうじゃなくて、えっと……」

 上手く言えないとでも言うように、美津音は困った顔で、頭を振る。

「レムネアお姉ちゃんは、ケースケお兄さんに、ちゃんと言いたいことを言えてるかな? って聞きたくて」

 言葉にはした。
 だけど私は、とレムネアはあのときを回想する。
 むしろ「言葉にしてしまった」と思っている。あんなこと、言いたくなかった。

『一緒に抱えたかった、責任を追及して欲しかった』

 庇われたことがショックだった。
 一人前に扱われなかったことがショックだった。

 ここでも、と。
 この世界でも、と思ってしまった。

「どうです……か、レムネアお姉ちゃん」
「言葉には、しました」
「うん。……それでね」

 美津音は小さな手を伸ばして、レムネアの手をぎゅっと握った。

「自分の言葉を聞いた、相手の言葉も……ちゃんと聞きましたか?」
「え?」
「相手の言葉……気持ちも、ちゃんと聞きましたか?」
「それは……」

 聞いていない。
 すぐに飛び出してしまった。

「聞いて、いません……」

 素直にそう答え、レムネアはシュンとする。
 美津音はまるでお姉さんのように、レムネアを諭した。

「それは……いけま、せんね。言葉を投げたあとは、返球を待たない……と。それが、言葉を投げた人の責任なんだよって、ナギサちゃんは言ってました」

 そうか。
 とレムネアは気がついた。私はケースケさまの言葉をちゃんと聞いていなかったんだ。聞かずに一方的に飛び出してしまった。言葉をぶつけるだけぶつけて、勝手に走り去ってしまった。

「思ったことをちゃんと言葉で伝えて、その思いに対する……相手の、考えを聞く。そうやって……二人でたくさんお話して、頭を捻って、……それが『仲良く』していくコツってナギサちゃんが言ってました。これを怠けると、どんなに仲が良く見えても、……表面上でしかない、って」
「ナギサちゃん……、難しいことを言いますね」
「うん。私もよくわからなかったから、つまりどういうこと? って聞いたの。そしたら」

 美津音は人差し指を立てて。

「手抜かずしっかりお話をすること。それが相手を好きだ、ってことなんだって」

 笑いながら続ける。

「リッコちゃんがナギサちゃんの大事な麩菓子を勝手に食べたときに、そんなこと言いながらリッコちゃんに理由を聞いてました」
「勝手に食べちゃったの?」
「は……い、勝手に」

 レムネアの表情が少し緩む。

「その話し合いは……最後どうなったのかな」
「ナギサちゃんが、リッコちゃんを……殴ってました」

 レムネアは思わずクスリと笑った。そのシーンが目に浮かんでしまったのだ。

「話を聞いた結果、擦り合わせた結果、許さないのは……全然アリだって。でもまず聞くのが大事だ、って」

 笑ってくれたレムネアに、美津音は心の中で胸を撫で下ろした。

「だから……レムネアお姉ちゃんも、ケースケお兄さんの話を聞いてあげて……ください」
「ありがとう美津音ちゃん。わかった、私は少し一方的でした……」
「私、レムネアお姉ちゃんの……そういうところ、大好きです。子供の話を、真面目に聞いてくれるところとか、自分が間違ってそうだったら、すぐに反省するところとか。素直なところが、大好きです」

 美津音はにっこり微笑んだ。

「ケースケお兄さんも、レムネアお姉ちゃんのこと、大好きだと思います。だけど……ケースケお兄さん、ちょっと鈍感なところ……ありそうだから」

 コポコポコポ、と自分の湯飲みにお茶を注ぎつつ。

「無神経なこと……言っちゃうことがあるとも、思うの。だからね、ちゃんとお兄さんに言い訳させてあげて欲しいな、って……」
「はい……!」

 二人は笑った。
 とそのときだった。外でサイレンが響いたのは。

 ウー、ウー、ウー、と危機感を煽る音が耳に届く。
 そのあとに、アナウンスの声が続いた。

『接近中の大型台風は、勢いを弱めることなくさらに勢力を強めながら近づいてきています。このままだと上流河川の決壊もありえるとの判断が下り、住民の皆様に避難勧告が発令されました。これから消防団の指示に従い――』

 あまりにも大型な台風。
 レムネアたちは家を出て、少し離れた高台の小学校に避難することになったのだった。
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