9 / 30
開拓の始まり
しおりを挟む
鋼黒竜ヴェガドを追い出してから、二ヶ月が経った。
あれから一度、冒険者ギルドの力を借りて大規模な魔物狩りを実施した。
ヴェガドを追い出すことで、魔物を呼びよせるという『大黒魔石』問題は解決したのだし、この狩りを経て魔物はだいぶ減るはずだ。
なので俺は、一度触れを出したのだった。
『この狩りの後は魔物が減る、だから商人を呼び込むために街道整備をする人員を募集する』
と。
しかしそのとき、領民は笑って信じなかった。『いくらギリアムさまが仰ることでも、そりゃあちょっと』、眉唾だと言わんばかりに肩を竦めていた。
だがこのところ、少し彼らはザワついている。
『あれ? 本当に魔物を見掛けなくなってないか?』
そうだな、あれから二ヶ月なんだ。
そろそろ実感を伴って理解するはずだ。魔物が減ったということを。
「レン草の収穫時期なのに畑が荒らされないんだよ!」
「なんか森の葉がキラキラしてるんだ!」
「町外れの水留め場に、最近普通の動物が顔を出すんだよね」
領民たちのざわつきが、我が屋敷にも伝わってきた。
ふふふ、そうだろう? 皆さん気づいてくれましたか、よしよし。
もちろん、もうドラゴンが畑に現れたりもしない。
収穫がスムーズに行われ、例年の倍近い量のレン草がとれたことに領民は大はしゃぎだ。加えて森から魔物が減ったことで、普通に動物を狩ることが出来るようなったと喜んでいる。こうなるとこの町で起こることは、決まっている。
祭りだ。
三日三晩の大祭り。
俺もミューゼア嬢を連れて、祭りの夜を楽しむことにした。
大量に収穫された作物と、森で狩られた動物の肉で、これまでの祭りとは比較にならないくらいの食べ物が並んでいる。
領民たちは騒ぎ、歌い、中央広場で火を灯し、夜中まで踊り狂った。
「皆さん、すごく喜んでますね」
「そりゃあなー。この土地は、長らく魔物に脅かされてきましたので。あはは」
俺もエールがうまい。
「よかった……。頑張った甲斐がありました」
「そうですね。これで皆も分かったはずだよ、ライゼル領は大きく変わっていけるんだってさ」
目立たないところで飲んでいたつもりだったのだが、領民は目聡く俺のことを見つけてくる。彼らは口々に、俺への礼を言葉にした。
『これもそれも、ギリアムさまのお陰です』
『これから毎日レン草をお届けしますよ』
『今日森で獲れた鹿の肉です。一皿いかがですか?』
皆、浮かれてるなぁ。
でも俺にはわかってる、すぐに次の問題が浮上してくることが。
予想通り一週間もすると、今度は収穫しすぎた作物の扱いに困る彼らが居た。
保存できるものは保存するとしても、そこまで長く持たないものも多いのだ。あー勿体ない、勿体ない。
そして、我が屋敷に訪問客が訪れたのである。
この町の小さな商会をまとめる若き長、レグノア・フリューゲントだ。
応接間に通されたレグノアは、俺とミューゼア嬢に丁寧な挨拶をしたのち、ソファーへと座った。スラっとした長身に眼鏡、黒髪オールバックの青年だ。
「これはレグノアさん、今日はどのようなご用件でしょう」
俺がにこやかに笑うと、彼は苦笑いをして居心地が悪そうに応える。
「なんとも意地の悪い、ギリアムさま。用件はもうお判りでしょうに」
「急激に収穫量の増えた作物や肉などを持て余している、というお話でしょうか」
「その通りでございます」
レグノアは頭を下げる。彼もまた、俺が告知した『街道整備の話』を笑って聞き流していた一人だった。
「我が不明をお詫び申し上げます。まさか本当にこの地から魔物が減るとは思っておりませんでしたので」
仕方ない。なにせ昔の昔その昔から、ここは魔物に溢れていた。
この土地を最初に開拓したご先祖さまが魔物を一万匹倒した、などと言う逸話が残ってるほどに過酷な環境だったわけである。信じられなくて当然だったと思う。
特に信じてもらうための努力もしなかったしな、そこは時間が解決してくれると思ってた。実際皆はそれを実感し、祭りまでしたほどだ。
だけど、その先を考えている者は少なかったようで。
「レグノアさんにもお分かり頂けたように、これからは増えた収穫を金に換えていく為の『交易』に目を向ないと」
「まさしく。ギリアムさまが仰る通り」
俺はレグノアに笑いかけ、顔を上げて貰った。これでやっと開拓の話を進められる。
横に座るミューゼア嬢に目配せをして、会話を変わって貰った。交渉事は、女性に頼むのがだいたい良い。
「実は先日、ギリアムさまは『魔物が集まる原因』だった鋼黒竜ヴェガドを、あの森から追い出したのです」
「えええ!? ギリアムさま、あの鋼黒竜を森から追い出したのですか!?」
「あ、うん。邪魔だったから」
「邪魔だったから、で成せる業ではありません! なにそんな平然な顔で、貴方は。まったく!」
そういや、ギルドにもこのことは報告してなかったっけ。
すっかり終わった話と認識してしまっていたので、忘れてた。
「だから森も平和になっていたというわけですな。ううむ」
レグノアは考え込む。
ミューゼア嬢はこちらを一瞬確認の後、話を進めますとばかりに小さく頷いた。頼んだ、全面的にお任せだぜ。
「お分かり頂けましたかレグノアさま。魔物も減り鋼黒竜も居なくなったあの森は、このライゼルにとって資源の宝庫となることでしょう。将来的なその開拓も見据えたら、まず他領との交易ルートを開くことがどれだけ重要か」
「はい。それがまさに、いま私がここに座っている理由」
レグノアが胸に手を当てて、ひとまず畏まった。
「ギリアムさま、ミューゼアさま。我がフリューゲント商会に、街道の整備をお任せ願えませんか」
「いいよ」
俺は軽く答えた。
「いえ、難しい案件かとは思いますが是非とも検討を――って、ええ!? 即決!?」
「もともとそこには異存はないんだ。条件はミューゼア嬢と煮詰めて貰う方向で」
「あ、はい」
ちょうど昨晩、セバスとミューゼア嬢を交えて相談はしてたんだ。
この町の商会は小さい物が一つあるだけ。つまりは今ここにいる彼の、フリューゲント商会のみなわけで。
そこに案件を持っていくこと自体は問題がない。
あとはどこまで彼らにお金を出させることが出来るか、という話になってくる。この町における商売の窓口役を任せる代わりに、ぶっちゃけ全額負担させたい。
公共事業としてウチから出金することも考えたんだけど、どうせ俺たちだけでは捌ききれない仕事量になるのは目に見えてる。ならば利権を餌に、フリューゲント商会を動かす方が無駄もないというものだった。
「なるほど、我が商会が窓口役に……」
「代わりに街道の整備に掛かる金銭の負担を。悪いお話ではないと思いますが」
「ふうむ。負担と仰られると、ミューゼアさまのお考えでは、いかほどを?」
色々と話をしてるなぁ。
こういうのを任せてしまえるのは、本当にありがたい。ミューゼア嬢は頼りになるな。
「そうですねレグノアさま……これくらいは最低限」
「それは厳しい!」
「未来への投資とお考えいただければ、と」
「その未来とは、ライゼルの未来でしょうか?」
「ライゼルとフリューゲント商会、共にある未来の為ですわ」
細かい金銭勘定は、俺じゃあ時間が掛かる。
そんなのはセバスやミューゼア嬢に任せてしまうのがいい。
ミューゼア嬢とレグノアの交渉を、横から無責任な気持ちで眺めるだけの俺だった。
しばらく二人のやりとりは続いたが、どうやらバランスを取ることに成功したようだ。少し悔しそうな顔をしながらも、そこそこは満足げな表情という、表現しずらい顔をしたレグノアがミューゼア嬢と握手をした。
「まいりましたな、ミューゼアさまは良い商人でもおありだ。絶妙なラインをついてくる。このような交渉術は、どちらで?」
「第一学園では何故か喧嘩の仲裁などを仕切る経験が多くありまして。そのときに学びました」
「ほほう、さすが都の第一学園きっての才媛と称えられたお方。おみそれいたしました」
こうしてミューゼア嬢と良い感じに話をまとめて帰ったレグノアだったが、二週間後にまた屋敷へとやってきた。困り顔で頭を抱えて。
「人手が集まらない?」
「そうなのです、ミューゼアさま」
街道整備のための人員が集まらないのだそう。
ライゼルの町は山のように出来た初夏の野菜を収穫している時期だ、間が悪かったらしい。
「なるほど……。ではレグノアさま、多少の賃金上昇は受け入れる形で、他領から人を集めるというのは?」
「もちろんそれも試みましたが……」
ライゼルから魔物が減ったということを信じて貰えず、半端ではない賃金を要求されることになってしまったらしい。
「確かに他領の方々では実感もないでしょうから、理解して貰うのが難しいというのもわかります」
「わかって頂けますか、ミューゼアさま。それに、他領から人を集める場合は宿泊所も作らないといけませんから」
「さらに相場よりお賃金自体が高いとなると、予算のメドすら立たないという感じですか」
「はい」
二人は共に腕を組んだ。
なるほどね、確かにこの時期はウチだと人手が足りない。他領の奴らがライゼルの変化を理解できるとも思わない。
安い、とは言わずとも適正な賃金で雇うことのできる、有能な働き手かぁ。
「困りましたね……。ギリアムさま、なにか良い案はありませんか?」
「あるよ」
「そうですか、そうそう良い案など――え?」
「あるよミューゼア嬢、悪くない案が」
「ええっ!?」
ミューゼア嬢が少し飛び上がるように驚いた。相変わらずオーバーな人だ。
「あるのですか!?」
と、これは同時に驚き顔を見せたレグノアの声。こっちは一見冷静そうに見えて、身を乗り出してきている。うーん食いついてるな。あるとも、あるぞ。
「ええと、……魔族に手伝ってもらう、なんて案はどうだろう?」
俺が言うと。
「「は?」」
二人は同時に目を丸くしたのだった。
あれから一度、冒険者ギルドの力を借りて大規模な魔物狩りを実施した。
ヴェガドを追い出すことで、魔物を呼びよせるという『大黒魔石』問題は解決したのだし、この狩りを経て魔物はだいぶ減るはずだ。
なので俺は、一度触れを出したのだった。
『この狩りの後は魔物が減る、だから商人を呼び込むために街道整備をする人員を募集する』
と。
しかしそのとき、領民は笑って信じなかった。『いくらギリアムさまが仰ることでも、そりゃあちょっと』、眉唾だと言わんばかりに肩を竦めていた。
だがこのところ、少し彼らはザワついている。
『あれ? 本当に魔物を見掛けなくなってないか?』
そうだな、あれから二ヶ月なんだ。
そろそろ実感を伴って理解するはずだ。魔物が減ったということを。
「レン草の収穫時期なのに畑が荒らされないんだよ!」
「なんか森の葉がキラキラしてるんだ!」
「町外れの水留め場に、最近普通の動物が顔を出すんだよね」
領民たちのざわつきが、我が屋敷にも伝わってきた。
ふふふ、そうだろう? 皆さん気づいてくれましたか、よしよし。
もちろん、もうドラゴンが畑に現れたりもしない。
収穫がスムーズに行われ、例年の倍近い量のレン草がとれたことに領民は大はしゃぎだ。加えて森から魔物が減ったことで、普通に動物を狩ることが出来るようなったと喜んでいる。こうなるとこの町で起こることは、決まっている。
祭りだ。
三日三晩の大祭り。
俺もミューゼア嬢を連れて、祭りの夜を楽しむことにした。
大量に収穫された作物と、森で狩られた動物の肉で、これまでの祭りとは比較にならないくらいの食べ物が並んでいる。
領民たちは騒ぎ、歌い、中央広場で火を灯し、夜中まで踊り狂った。
「皆さん、すごく喜んでますね」
「そりゃあなー。この土地は、長らく魔物に脅かされてきましたので。あはは」
俺もエールがうまい。
「よかった……。頑張った甲斐がありました」
「そうですね。これで皆も分かったはずだよ、ライゼル領は大きく変わっていけるんだってさ」
目立たないところで飲んでいたつもりだったのだが、領民は目聡く俺のことを見つけてくる。彼らは口々に、俺への礼を言葉にした。
『これもそれも、ギリアムさまのお陰です』
『これから毎日レン草をお届けしますよ』
『今日森で獲れた鹿の肉です。一皿いかがですか?』
皆、浮かれてるなぁ。
でも俺にはわかってる、すぐに次の問題が浮上してくることが。
予想通り一週間もすると、今度は収穫しすぎた作物の扱いに困る彼らが居た。
保存できるものは保存するとしても、そこまで長く持たないものも多いのだ。あー勿体ない、勿体ない。
そして、我が屋敷に訪問客が訪れたのである。
この町の小さな商会をまとめる若き長、レグノア・フリューゲントだ。
応接間に通されたレグノアは、俺とミューゼア嬢に丁寧な挨拶をしたのち、ソファーへと座った。スラっとした長身に眼鏡、黒髪オールバックの青年だ。
「これはレグノアさん、今日はどのようなご用件でしょう」
俺がにこやかに笑うと、彼は苦笑いをして居心地が悪そうに応える。
「なんとも意地の悪い、ギリアムさま。用件はもうお判りでしょうに」
「急激に収穫量の増えた作物や肉などを持て余している、というお話でしょうか」
「その通りでございます」
レグノアは頭を下げる。彼もまた、俺が告知した『街道整備の話』を笑って聞き流していた一人だった。
「我が不明をお詫び申し上げます。まさか本当にこの地から魔物が減るとは思っておりませんでしたので」
仕方ない。なにせ昔の昔その昔から、ここは魔物に溢れていた。
この土地を最初に開拓したご先祖さまが魔物を一万匹倒した、などと言う逸話が残ってるほどに過酷な環境だったわけである。信じられなくて当然だったと思う。
特に信じてもらうための努力もしなかったしな、そこは時間が解決してくれると思ってた。実際皆はそれを実感し、祭りまでしたほどだ。
だけど、その先を考えている者は少なかったようで。
「レグノアさんにもお分かり頂けたように、これからは増えた収穫を金に換えていく為の『交易』に目を向ないと」
「まさしく。ギリアムさまが仰る通り」
俺はレグノアに笑いかけ、顔を上げて貰った。これでやっと開拓の話を進められる。
横に座るミューゼア嬢に目配せをして、会話を変わって貰った。交渉事は、女性に頼むのがだいたい良い。
「実は先日、ギリアムさまは『魔物が集まる原因』だった鋼黒竜ヴェガドを、あの森から追い出したのです」
「えええ!? ギリアムさま、あの鋼黒竜を森から追い出したのですか!?」
「あ、うん。邪魔だったから」
「邪魔だったから、で成せる業ではありません! なにそんな平然な顔で、貴方は。まったく!」
そういや、ギルドにもこのことは報告してなかったっけ。
すっかり終わった話と認識してしまっていたので、忘れてた。
「だから森も平和になっていたというわけですな。ううむ」
レグノアは考え込む。
ミューゼア嬢はこちらを一瞬確認の後、話を進めますとばかりに小さく頷いた。頼んだ、全面的にお任せだぜ。
「お分かり頂けましたかレグノアさま。魔物も減り鋼黒竜も居なくなったあの森は、このライゼルにとって資源の宝庫となることでしょう。将来的なその開拓も見据えたら、まず他領との交易ルートを開くことがどれだけ重要か」
「はい。それがまさに、いま私がここに座っている理由」
レグノアが胸に手を当てて、ひとまず畏まった。
「ギリアムさま、ミューゼアさま。我がフリューゲント商会に、街道の整備をお任せ願えませんか」
「いいよ」
俺は軽く答えた。
「いえ、難しい案件かとは思いますが是非とも検討を――って、ええ!? 即決!?」
「もともとそこには異存はないんだ。条件はミューゼア嬢と煮詰めて貰う方向で」
「あ、はい」
ちょうど昨晩、セバスとミューゼア嬢を交えて相談はしてたんだ。
この町の商会は小さい物が一つあるだけ。つまりは今ここにいる彼の、フリューゲント商会のみなわけで。
そこに案件を持っていくこと自体は問題がない。
あとはどこまで彼らにお金を出させることが出来るか、という話になってくる。この町における商売の窓口役を任せる代わりに、ぶっちゃけ全額負担させたい。
公共事業としてウチから出金することも考えたんだけど、どうせ俺たちだけでは捌ききれない仕事量になるのは目に見えてる。ならば利権を餌に、フリューゲント商会を動かす方が無駄もないというものだった。
「なるほど、我が商会が窓口役に……」
「代わりに街道の整備に掛かる金銭の負担を。悪いお話ではないと思いますが」
「ふうむ。負担と仰られると、ミューゼアさまのお考えでは、いかほどを?」
色々と話をしてるなぁ。
こういうのを任せてしまえるのは、本当にありがたい。ミューゼア嬢は頼りになるな。
「そうですねレグノアさま……これくらいは最低限」
「それは厳しい!」
「未来への投資とお考えいただければ、と」
「その未来とは、ライゼルの未来でしょうか?」
「ライゼルとフリューゲント商会、共にある未来の為ですわ」
細かい金銭勘定は、俺じゃあ時間が掛かる。
そんなのはセバスやミューゼア嬢に任せてしまうのがいい。
ミューゼア嬢とレグノアの交渉を、横から無責任な気持ちで眺めるだけの俺だった。
しばらく二人のやりとりは続いたが、どうやらバランスを取ることに成功したようだ。少し悔しそうな顔をしながらも、そこそこは満足げな表情という、表現しずらい顔をしたレグノアがミューゼア嬢と握手をした。
「まいりましたな、ミューゼアさまは良い商人でもおありだ。絶妙なラインをついてくる。このような交渉術は、どちらで?」
「第一学園では何故か喧嘩の仲裁などを仕切る経験が多くありまして。そのときに学びました」
「ほほう、さすが都の第一学園きっての才媛と称えられたお方。おみそれいたしました」
こうしてミューゼア嬢と良い感じに話をまとめて帰ったレグノアだったが、二週間後にまた屋敷へとやってきた。困り顔で頭を抱えて。
「人手が集まらない?」
「そうなのです、ミューゼアさま」
街道整備のための人員が集まらないのだそう。
ライゼルの町は山のように出来た初夏の野菜を収穫している時期だ、間が悪かったらしい。
「なるほど……。ではレグノアさま、多少の賃金上昇は受け入れる形で、他領から人を集めるというのは?」
「もちろんそれも試みましたが……」
ライゼルから魔物が減ったということを信じて貰えず、半端ではない賃金を要求されることになってしまったらしい。
「確かに他領の方々では実感もないでしょうから、理解して貰うのが難しいというのもわかります」
「わかって頂けますか、ミューゼアさま。それに、他領から人を集める場合は宿泊所も作らないといけませんから」
「さらに相場よりお賃金自体が高いとなると、予算のメドすら立たないという感じですか」
「はい」
二人は共に腕を組んだ。
なるほどね、確かにこの時期はウチだと人手が足りない。他領の奴らがライゼルの変化を理解できるとも思わない。
安い、とは言わずとも適正な賃金で雇うことのできる、有能な働き手かぁ。
「困りましたね……。ギリアムさま、なにか良い案はありませんか?」
「あるよ」
「そうですか、そうそう良い案など――え?」
「あるよミューゼア嬢、悪くない案が」
「ええっ!?」
ミューゼア嬢が少し飛び上がるように驚いた。相変わらずオーバーな人だ。
「あるのですか!?」
と、これは同時に驚き顔を見せたレグノアの声。こっちは一見冷静そうに見えて、身を乗り出してきている。うーん食いついてるな。あるとも、あるぞ。
「ええと、……魔族に手伝ってもらう、なんて案はどうだろう?」
俺が言うと。
「「は?」」
二人は同時に目を丸くしたのだった。
54
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す
さとう
ファンタジー
大陸最大の王国である『ファーレン王国』
そこに住む少年ライトは、幼馴染のリリカとセエレと共に、元騎士であるライトの父に剣の稽古を付けてもらっていた。
ライトとリリカはお互いを意識し婚約の約束をする。セエレはライトの愛妾になると宣言。
愛妾を持つには騎士にならなくてはいけないため、ライトは死に物狂いで騎士に生るべく奮闘する。
そして16歳になり、誰もが持つ《ギフト》と呼ばれる特殊能力を授かるため、3人は王国の大聖堂へ向かい、リリカは《鬼太刀》、セエレは《雷切》という『五大祝福剣』の1つを授かる。
一方、ライトが授かったのは『???』という意味不明な力。
首を捻るライトをよそに、1人の男と2人の少女が現れる。
「君たちが、オレの運命の女の子たちか」
現れたのは異世界より来た『勇者レイジ』と『勇者リン』
彼らは魔王を倒すために『五大祝福剣』のギフトを持つ少女たちを集めていた。
全てはこの世界に復活した『魔刃王』を倒すため。
5つの刃と勇者の力で『魔刃王』を倒すために、リリカたちは勇者と共に旅のに出る。
それから1年後。リリカたちは帰って来た、勇者レイジの妻として。
2人のために騎士になったライトはあっさり捨てられる。
それどころか、勇者レイジの力と権力によって身も心もボロボロにされて追放される。
ライトはあてもなく彷徨い、涙を流し、決意する。
悲しみを越えた先にあったモノは、怒りだった。
「あいつら全員……ぶっ潰す!!」
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~
黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。
待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金!
チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。
「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない!
輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる!
元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる