ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』

雪奈 水無月

文字の大きさ
8 / 11
一章 領主成長編

第7話 『監察官リディア、動く──裏切り者の影を暴け』

しおりを挟む
 倉庫の火事から一夜明けたエヴァレント領。
ロイドは早朝から執務室に集まった仲間たちを前に、険しい表情で立っていた。

「……昨日の火事は、偶然じゃない。
 誰かが意図的に領地を混乱させようとしている」

レベッカが頷く。

「はい。内部に“公爵側の協力者”がいる可能性が高いです」

ロイドは拳を握りしめた。

「だからこそ──リディアさん、頼りにしてる」

監察官リディアは静かに一礼した。

「承知しました。
 この領地に潜む裏切り者は、私が必ず炙り出します」

その声は冷たく、鋭く、揺るぎなかった。

◆ ◆ ◆

◆ 監察官リディアの調査開始

リディアはまず、倉庫の火事現場を調べた。

「……鍵の破壊痕。
 これは素人の仕業ではありませんね」

彼女は地面に落ちた小さな金属片を拾い上げる。

「帝都製の特殊工具……。
 やはり、外部の者が関わっています」

次に、リディアは警備兵や職人たちに聞き込みを行った。

「火事の前、見慣れない男を見た者は?」

「はい……黒い外套の男が倉庫の周りを歩いていました」

「その男はどこへ?」

「……北門の方へ向かっていきました」

リディアは目を細めた。

「北門……。
 あそこは帝都へ向かう街道に繋がっていますね」

レベッカが頷く。

「つまり、工作員は帝都から送り込まれた……」

ロイドは息を呑んだ。

(……公爵は本気で領地を潰しに来ている)

◆ ◆ ◆

◆ 裏切り者の存在

その日の夕方。
リディアはロイドの執務室に戻ってきた。

「ロイド様。
 内部に“情報を漏らしている者”がいます」

ロイドは驚き、椅子から立ち上がった。

「……まさか、領民の中に?」

「いえ。
 もっと“近い存在”です」

レベッカが眉をひそめる。

「近い……?」

リディアは静かに告げた。

「職人の中に、帝都から送り込まれた“スパイ”が紛れています」

ロイドは息を呑んだ。

「……そんな……!」

「ガチャで召喚された者ではありません。
 領地に元々いた職人の中に、帝都と繋がっている者がいます」

ロイドは頭を抱えた。

(……誰だ? 誰が裏切っている?
 みんな、領地のために働いてくれているのに……)

リディアは冷静に続けた。

「ですが、心配はいりません。
 すでに“候補者”は絞れています」

ロイドとレベッカは息を呑んだ。

「明日、証拠を揃えて報告します」

リディアはそう言って部屋を後にした。

◆ ◆ ◆

◆ 公爵の次の策

その頃──帝都ゲルドラン邸。

「……内部の工作がバレた、だと?」

公爵ゲルドランは報告を受け、苛立たしげに机を叩いた。

「役立たずどもめ……!」

側近が恐る恐る口を開く。

「ですが、公爵様。
 次の策はすでに準備が整っております」

公爵はゆっくりと笑った。

「そうだ……“あれ”を使えば、辺境などひとたまりもない」

側近が頷く。

「はい。
 すでに“魔物の巣”に刺激を与える準備が進んでおります」

公爵の笑みは、冷酷そのものだった。

「ロイド・エヴァレント……
 お前の領地は、魔物の群れに飲み込まれる運命だ」

◆ ◆ ◆

◆ ロイドの決意

夜。
ロイドは書斎でひとり、窓の外の砦の灯りを見つめていた。

(……裏切り者がいる。
 公爵は次の策を打ってくる。
 領地はまだ危険だらけだ)

だが──

(それでも、俺は守る。
 父さんが命を懸けて守ったこの地を。
 リーナやセバス、仲間たち、領民たちを……絶対に守る)

ロイドは拳を握りしめた。

その時、扉がノックされる。

「ロイド様。
 明日、裏切り者を炙り出します」

リディアの声は、冷たく、しかし頼もしかった。

ロイドは深く頷いた。

「……頼む、リディアさん。
 俺は絶対に負けない」

こうして、領地改革は新たな局面へと突入する。

次に待つのは──
裏切り者の摘発と、公爵の“魔物を使った大規模工作”の発動。

エヴァレント領の運命は、さらに激しく揺れ動こうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

処理中です...