ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』

雪奈 水無月

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一章 領主成長編

第8話 『裏切り者の正体──領主としての初めての裁き』

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 翌朝。
ロイドが執務室に入ると、すでにリディアとレベッカが待っていた。

「ロイド様。
 裏切り者の特定が完了しました」

リディアの声は冷たく、しかし確信に満ちていた。

ロイドは息を呑む。

「……誰なんだ?」

リディアは一枚の書類を差し出した。

「《建築補助職人》の一人──
 “ダリオ・フェルマン”。
 帝都ゲルドラン家の密偵です」

ロイドは驚きに目を見開いた。

「ダリオ……?
 あいつは、砦建築を手伝ってくれていたはずじゃ……」

レベッカが静かに言う。

「はい。ですが、彼は建築材料の一部を盗み、
 倉庫の鍵を破壊した犯人でもあります」

ロイドの胸に、怒りと悲しみが入り混じる。

(……信じていたのに。
 領地のために働いてくれていると思っていたのに……)

リディアは淡々と続けた。

「すでに拘束済みです。
 ロイド様──領主として、裁きを下してください」

ロイドは深く息を吸った。

◆ ◆ ◆

◆ 裁きの場

倉庫横の広場に、職人や兵士たちが集まっていた。
中央には、縄で縛られたダリオが座らされている。

ロイドは前に立ち、静かに口を開いた。

「ダリオ。
 君が帝都の密偵であり、倉庫の火事を引き起こした……
 本当なのか?」

ダリオは顔をそむけ、吐き捨てるように言った。

「……ああ、そうだよ。
 どうせお前の領地なんて、半年後には公爵様のものだ。
 抵抗したって無駄なんだよ!」

周囲がざわつく。

ロイドは拳を握りかけ──
しかし、ゆっくりと開いた。

(怒りに任せて裁くのは違う。
 俺は……領主なんだ)

ロイドは静かに告げた。

「ダリオ。
 君の行為は、領地と領民を危険に晒した。
 その罪は重い」

ダリオは笑った。

「どうせ処刑だろ? やれよ、若造領主」

ロイドは首を振った。

「処刑はしない。
 だが──領地からの追放を命じる。
 二度とこの地に足を踏み入れるな」

広場が静まり返る。

リディアが小さく頷いた。

「……妥当な判断です。
 領主としての慈悲と責任、両方を示しました」

ダリオは歯ぎしりしながら、兵士に連れられていった。

ロイドは深く息を吐いた。

(……これが、領主としての“裁き”か)

◆ ◆ ◆

◆ 領民の反応

その日の午後。
ロイドが中心街を歩くと、領民たちが次々と声をかけてきた。

「領主様……ありがとうございます!」

「裏切り者を見つけてくれて……安心しました!」

「領主様の判断、立派でした!」

ロイドは照れくさく笑った。

「みんなを守るのが、俺の役目だから」

レベッカが隣で微笑む。

「ロイド様。
 領民の信頼が、確実に戻ってきています」

ロイドは胸が熱くなった。

(……よかった。
 これで、改革を続けられる)

だが──その時。

エルナが血相を変えて駆け込んできた。

「ロイド! 大変よ!」

「どうした?」

「北の森で……魔物の大群が動き始めてる!」

ロイドは息を呑んだ。

「魔物の……大群?」

エルナは頷く。

「普通じゃない動きよ。
 まるで“何かに追い立てられてる”みたい……!」

レベッカの表情が険しくなる。

「……公爵が動きましたね」

ロイドは空を見上げた。

(……来るのか。
 公爵の“次の策”が)

◆ ◆ ◆

◆ 公爵の大規模工作、発動

その頃──帝都ゲルドラン邸。

「ふふ……始まったようだな」

公爵は地図を眺めながら、冷酷に笑った。

「魔物の巣を刺激すれば、
 辺境など簡単に飲み込まれる。
 ロイド・エヴァレント……
 お前の改革はここで終わりだ」

側近が震える声で言う。

「公爵様……魔物の大群が、すでに北の森を出ました」

公爵は満足げに頷いた。

「よし。
 辺境領は混乱に陥る。
 半年を待たずして、あの領地は我がものだ」

◆ ◆ ◆

◆ ロイドの決意

北の森から吹きつける冷たい風。
その向こうに、魔物の咆哮が響く。

ロイドは剣を握り──
静かに、しかし強く決意を込めた。

「……来るなら来い。
 俺は絶対に負けない。
 この領地を守るために──戦う」

レベッカ、リディア、エルナ、そして仲間たちが並び立つ。

「ロイド様。
 ここが正念場です」

「全員で守るわよ!」

「砦は完成間近だ。絶対に突破させねぇ!」

「領主様、私たちも戦います!」

ロイドは深く頷いた。

「みんな──行くぞ。
 エヴァレント領を守り抜くんだ!」

こうして、
“魔物大群襲来編”が幕を開ける。


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