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第3話 「初めての街、初めてのギルド」
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霧の森を抜けた瞬間、視界がぱっと開けた。
遠くに高い城壁がそびえ、屋根の尖った塔が空を突いている。
街道沿いには荷車を引く商人や、武装した冒険者らしき人々の姿もあった。
「……おお」
蓮が小さく声を漏らす。
異世界《イングレイス》に来て初めての街──【ベルディア】。
城門に近づくほど、人の声や香辛料の香り、鉄の匂いが混ざり合っていく。
「すごーい! お祭りみたいだね!」
「いや、普通の日だろこれ……」
テンションの高い凛を横目に、蓮は人混みを警戒しながら歩く。
門番の検問を抜けると、そこは石畳の大通り。
露店からは焼きたてのパンや串肉の香りが漂い、子供たちが駆け回っている。
◇ ◇ ◇
「とりあえず、冒険者ギルドだな」
蓮がそう言って向かった先は、黒い木造の二階建ての建物。
看板には交差する剣と杖の紋章──冒険者ギルド【蒼鷹の牙】。
扉を押すと、中は活気に満ちていた。
カウンターで依頼を受ける者、掲示板の依頼書を奪い合う者、酒をあおって騒ぐ者。
場慣れしていない二人は、少し圧倒される。
「いらっしゃいませ、新規登録ですか?」
声をかけてきたのは、栗色の髪をポニーテールにした若い受付嬢。
名札には【リサ】とある。笑顔は柔らかいが、目は鋭い観察眼を持っているようだった。
「はい、二人で登録をお願いします」
「わかりました。それでは……お名前と得意分野をお聞きしても?」
蓮と凛は簡単に自己紹介をする。
剣聖と聖女というジョブ名に、リサの眉がわずかに上がった。
「珍しい組み合わせですね……あ、苦手なものも登録しておきますね。安全管理のためです」
「え……苦手なもの?」
「はい、戦闘でのパーティ編成の参考になりますので」
蓮は少し口ごもりながら答える。
「……ホラー系。骸骨とか……そういうやつ」
凛は即答した。
「虫です! とくに足がいっぱいあるやつ!」
カウンター近くの冒険者たちがくすくす笑う。
「剣聖がホラー嫌い?」「聖女が虫嫌い? 可愛いじゃねぇか」
蓮は肩をすくめ、凛はむっと頬を膨らませた。
「はい、登録完了です! ギルドカードをお渡ししますね」
手渡されたカードは銀色で、二人の名前とランク【F】が刻まれている。
◇ ◇ ◇
登録を終えた途端、リサが依頼書を差し出した。
「ちょうど初心者向けの討伐依頼が入っています。報酬は少ないですが、街近くの安全な場所ですよ」
依頼内容にはこう書かれていた。
『街道沿いに出没する巨大ムカデ《アーマード・センチピード》の駆除』
「……ムカデ?」
凛の顔色が一瞬で青くなる。
「だ、大丈夫。お前は後ろにいろ」
「え、蓮にぃ一人で行くの? でも……蓮にぃ、もしホラーっぽかったら?」
「ムカデはホラーじゃねぇだろ! 虫だろ!」
「同じくらい嫌だよ!」
そんなやり取りをしていると、横から声がかかった。
「おいおい、その依頼は俺たちも受ける予定だったんだがな」
振り向くと、赤髪で屈強な青年と、その後ろに長耳の弓使いが立っていた。
二人の視線は、まるで新入りを試すように冷たい。
こうして、蓮と凛の初めての依頼は──思わぬ共同戦線から始まることになる。
遠くに高い城壁がそびえ、屋根の尖った塔が空を突いている。
街道沿いには荷車を引く商人や、武装した冒険者らしき人々の姿もあった。
「……おお」
蓮が小さく声を漏らす。
異世界《イングレイス》に来て初めての街──【ベルディア】。
城門に近づくほど、人の声や香辛料の香り、鉄の匂いが混ざり合っていく。
「すごーい! お祭りみたいだね!」
「いや、普通の日だろこれ……」
テンションの高い凛を横目に、蓮は人混みを警戒しながら歩く。
門番の検問を抜けると、そこは石畳の大通り。
露店からは焼きたてのパンや串肉の香りが漂い、子供たちが駆け回っている。
◇ ◇ ◇
「とりあえず、冒険者ギルドだな」
蓮がそう言って向かった先は、黒い木造の二階建ての建物。
看板には交差する剣と杖の紋章──冒険者ギルド【蒼鷹の牙】。
扉を押すと、中は活気に満ちていた。
カウンターで依頼を受ける者、掲示板の依頼書を奪い合う者、酒をあおって騒ぐ者。
場慣れしていない二人は、少し圧倒される。
「いらっしゃいませ、新規登録ですか?」
声をかけてきたのは、栗色の髪をポニーテールにした若い受付嬢。
名札には【リサ】とある。笑顔は柔らかいが、目は鋭い観察眼を持っているようだった。
「はい、二人で登録をお願いします」
「わかりました。それでは……お名前と得意分野をお聞きしても?」
蓮と凛は簡単に自己紹介をする。
剣聖と聖女というジョブ名に、リサの眉がわずかに上がった。
「珍しい組み合わせですね……あ、苦手なものも登録しておきますね。安全管理のためです」
「え……苦手なもの?」
「はい、戦闘でのパーティ編成の参考になりますので」
蓮は少し口ごもりながら答える。
「……ホラー系。骸骨とか……そういうやつ」
凛は即答した。
「虫です! とくに足がいっぱいあるやつ!」
カウンター近くの冒険者たちがくすくす笑う。
「剣聖がホラー嫌い?」「聖女が虫嫌い? 可愛いじゃねぇか」
蓮は肩をすくめ、凛はむっと頬を膨らませた。
「はい、登録完了です! ギルドカードをお渡ししますね」
手渡されたカードは銀色で、二人の名前とランク【F】が刻まれている。
◇ ◇ ◇
登録を終えた途端、リサが依頼書を差し出した。
「ちょうど初心者向けの討伐依頼が入っています。報酬は少ないですが、街近くの安全な場所ですよ」
依頼内容にはこう書かれていた。
『街道沿いに出没する巨大ムカデ《アーマード・センチピード》の駆除』
「……ムカデ?」
凛の顔色が一瞬で青くなる。
「だ、大丈夫。お前は後ろにいろ」
「え、蓮にぃ一人で行くの? でも……蓮にぃ、もしホラーっぽかったら?」
「ムカデはホラーじゃねぇだろ! 虫だろ!」
「同じくらい嫌だよ!」
そんなやり取りをしていると、横から声がかかった。
「おいおい、その依頼は俺たちも受ける予定だったんだがな」
振り向くと、赤髪で屈強な青年と、その後ろに長耳の弓使いが立っていた。
二人の視線は、まるで新入りを試すように冷たい。
こうして、蓮と凛の初めての依頼は──思わぬ共同戦線から始まることになる。
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