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第14話 「女帝、港町で魅せる」
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シェルモアの港に戻った三人は、ギルドへの報告と報酬の受け取りを済ませたところだった。
「いやー、無人島は大変だったけど、報酬はなかなかだね」凛が袋を軽く振る。
「……もう海はしばらくいい」蓮はまだ船酔いの余韻を引きずっているようだ。
そんな時、港町の大通りから怒号が響いた。
「てめぇら! この宝は俺たちがいただくぜ!」
「盗賊団だ! 皆、逃げろ!」
広場に駆けつけると、先日の無人島で見つけた水晶柱の一部を運び出そうとしている連中がいた。十数人、武器はバラバラだが目は血走っている。
蓮が剣に手をかけた瞬間──
「任せて」ロゼッタが二人の前にすっと立った。
「お、おいロゼッタ! 数が多いぞ!」
「ふふ、こんなの朝食前よ」
ロゼッタは一歩、また一歩と盗賊団に近づく。その仕草は舞踏会でのステップのように優雅だった。
盗賊の一人がナイフを振りかざして突っ込んでくる。
「嬢ちゃん、引っ込んでろ!」
「お断りしますわ」
軽く身をひねってナイフをかわし、そのまま相手の手首を掴んでねじり上げる。
ごく自然な動作の中で、ロゼッタの指先から微かに紅い霧が滲み、相手の顔色がわずかに青ざめる。
次に向かってきた二人には、足払いからの肘打ちで同時に地面に転がす。観光客の子どもが「すごーい!」と声をあげた。
さらに後方から斧を振り上げてきた大男には、ひらりと避けて背中を軽く叩く──その瞬間、彼は力が抜けたように膝をついた。ロゼッタはほんの一口分だけ生命力を吸い取っていたのだ。
「ひ、ひぃ……なんで立てねぇ……」
「日頃の不摂生かもしれませんわね」ロゼッタは微笑む。
群がる盗賊たちを、殴る、投げる、崩す。いずれも致命傷を与えず、だが確実に動けなくしていく。
そのたびに、彼女はほんの一瞬、皮膚に触れる。見えないほどわずかな吸収が、相手の動きを鈍らせ、勝敗を決定づけた。
やがて広場には、呻き声をあげる盗賊たちと、涼しい顔のロゼッタだけが残った。
「お、お嬢さん……あんた何者だ……」倒れた盗賊の一人が息を切らしながら呟く。
「ただの旅人の従者ですわ」
◇
周囲から一斉に歓声が上がった。
「すげぇ……丸腰であれだけの盗賊団を……」
「いや、武器持ってたけど全然使ってないぞ!」
「まるで舞踏みたいだった……!」
港町の魚屋の親父がロゼッタに駆け寄り、ガシッと手を握る。
「嬢ちゃん、あんたのおかげで商売道具を盗まれずにすんだ! 恩に着る!」
観光客たちも次々と声をかけ、拍手や感謝の言葉が飛び交う。
「おいロゼッタ、なんか人気者になってるぞ」蓮が苦笑する。
「当然ですわ。こう見えて人心掌握は得意ですの」ロゼッタは胸を張った。
凛が小声で蓮の袖を引く。
「ねぇ……ロゼッタさん、あの盗賊たちの顔色……ちょっと悪くない?」
「あぁ、たぶん……気のせいじゃないな」
二人は顔を見合わせ、口元だけで笑った。
◇
ギルドに引き渡された盗賊団は、なぜか全員が「妙に疲れて立てない」という状態だったが、罪状は明らかなのでそのまま留置所行きとなった。
広場の一件でロゼッタの名は港町中に広まり、「赤き女帝様」と呼ぶ者まで現れた。
「やっぱり私って目立つのよねぇ」
「……まぁ、いいことなんだろうけど、目立ちすぎて次はもっと厄介なのが来そうだな」蓮はため息をつく。
「その時はまた、任せてくださいな」ロゼッタはウィンクを返した。
「いやー、無人島は大変だったけど、報酬はなかなかだね」凛が袋を軽く振る。
「……もう海はしばらくいい」蓮はまだ船酔いの余韻を引きずっているようだ。
そんな時、港町の大通りから怒号が響いた。
「てめぇら! この宝は俺たちがいただくぜ!」
「盗賊団だ! 皆、逃げろ!」
広場に駆けつけると、先日の無人島で見つけた水晶柱の一部を運び出そうとしている連中がいた。十数人、武器はバラバラだが目は血走っている。
蓮が剣に手をかけた瞬間──
「任せて」ロゼッタが二人の前にすっと立った。
「お、おいロゼッタ! 数が多いぞ!」
「ふふ、こんなの朝食前よ」
ロゼッタは一歩、また一歩と盗賊団に近づく。その仕草は舞踏会でのステップのように優雅だった。
盗賊の一人がナイフを振りかざして突っ込んでくる。
「嬢ちゃん、引っ込んでろ!」
「お断りしますわ」
軽く身をひねってナイフをかわし、そのまま相手の手首を掴んでねじり上げる。
ごく自然な動作の中で、ロゼッタの指先から微かに紅い霧が滲み、相手の顔色がわずかに青ざめる。
次に向かってきた二人には、足払いからの肘打ちで同時に地面に転がす。観光客の子どもが「すごーい!」と声をあげた。
さらに後方から斧を振り上げてきた大男には、ひらりと避けて背中を軽く叩く──その瞬間、彼は力が抜けたように膝をついた。ロゼッタはほんの一口分だけ生命力を吸い取っていたのだ。
「ひ、ひぃ……なんで立てねぇ……」
「日頃の不摂生かもしれませんわね」ロゼッタは微笑む。
群がる盗賊たちを、殴る、投げる、崩す。いずれも致命傷を与えず、だが確実に動けなくしていく。
そのたびに、彼女はほんの一瞬、皮膚に触れる。見えないほどわずかな吸収が、相手の動きを鈍らせ、勝敗を決定づけた。
やがて広場には、呻き声をあげる盗賊たちと、涼しい顔のロゼッタだけが残った。
「お、お嬢さん……あんた何者だ……」倒れた盗賊の一人が息を切らしながら呟く。
「ただの旅人の従者ですわ」
◇
周囲から一斉に歓声が上がった。
「すげぇ……丸腰であれだけの盗賊団を……」
「いや、武器持ってたけど全然使ってないぞ!」
「まるで舞踏みたいだった……!」
港町の魚屋の親父がロゼッタに駆け寄り、ガシッと手を握る。
「嬢ちゃん、あんたのおかげで商売道具を盗まれずにすんだ! 恩に着る!」
観光客たちも次々と声をかけ、拍手や感謝の言葉が飛び交う。
「おいロゼッタ、なんか人気者になってるぞ」蓮が苦笑する。
「当然ですわ。こう見えて人心掌握は得意ですの」ロゼッタは胸を張った。
凛が小声で蓮の袖を引く。
「ねぇ……ロゼッタさん、あの盗賊たちの顔色……ちょっと悪くない?」
「あぁ、たぶん……気のせいじゃないな」
二人は顔を見合わせ、口元だけで笑った。
◇
ギルドに引き渡された盗賊団は、なぜか全員が「妙に疲れて立てない」という状態だったが、罪状は明らかなのでそのまま留置所行きとなった。
広場の一件でロゼッタの名は港町中に広まり、「赤き女帝様」と呼ぶ者まで現れた。
「やっぱり私って目立つのよねぇ」
「……まぁ、いいことなんだろうけど、目立ちすぎて次はもっと厄介なのが来そうだな」蓮はため息をつく。
「その時はまた、任せてくださいな」ロゼッタはウィンクを返した。
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