兄が【剣聖】、妹は【聖女】になった双子の転生者はのんびり冒険者やってます♪

雪奈 水無月

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第34話 「祭りの闇に消えた影」

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 花火が打ち上がり、人々の歓声が波のように広がっていた。
 蓮たち四人も屋台の並ぶ路地を歩きながら、束の間の安らぎを楽しんでいた。

「もう食べられない~……」
 凛はお腹をさすりながら、ふらふらと歩く。
「だから言ったろ。食べ過ぎなんだよ」
 呆れ気味に蓮が返すと、シエラが笑みを浮かべて肩を貸した。
「ほら、気をつけないと転んじゃうよ」

 そんな微笑ましい光景に、ロゼッタも心を緩めかけていた。
 だが、その一瞬の隙こそが狙われていたのだ。



 群衆の中から、黒い布をまとった数人の影がスッと近づいた。
 歓声と花火の轟音がその気配をかき消す。
 そして、背後から伸びた手が——。

「……っ!」
 気づいた時にはすでに遅かった。
 凛の身体が闇の中へと引きずり込まれていた。

「凛ッ!!」
 蓮の叫び声が夜空に響く。
 振り返ると、屋台の幕の向こう、細い裏路地へと数人の影が消えていくのが見えた。



「追え!」
 蓮は即座に駆け出した。
 シエラも剣を抜き、ロゼッタはフードを深く被り直して後を追う。

 裏路地は狭く、薄暗い。海の街特有の石畳の道は湿っており、逃走者の足音と混ざり合って不気味に響く。
 必死に声を上げる凛の叫びが遠くでかすかに聞こえる。

「離せーっ! 蓮にぃーっ!」

 その声に、蓮の心臓が痛むように跳ねた。
 怒りが全身を駆け巡る。



 だが、敵は慣れていた。
 路地に差し掛かるたび、煙幕のような魔道具を投げ、追跡を妨害する。
 紫色の煙が視界を覆い、シエラが思わず口元を覆った。
「っ……! 毒かもしれない、気をつけて!」

 ロゼッタは煙を切り裂くように歩を進め、その目を細める。
「……ただの攪乱用。だが、厄介ね」

 煙の向こう、わずかに見えた盗賊風の男の腕に、確かに凛の姿が抱えられていた。



「お前ら……絶対に逃がさない」
 蓮の声は低く、怒りに満ちていた。
 その手は自然と剣の柄を強く握りしめる。

 しかし——敵は路地の奥で待っていた。
 黒い外套を纏った男が一歩前に出る。
 その顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。

「ようやくお出ましか、〈血を喰らう魔〉の仲間たちよ」

 蓮たちの視線が一斉にロゼッタへ向かう。
 ロゼッタはフードの奥で、ほんのわずかに目を見開いた。

「……やはり、私が狙いか」



 祭りの喧騒から切り離された裏路地。
 花火の光が遠くで炸裂する中、凛を人質にした敵との対峙が始まろうとしていた。
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